2014/12/14 本日の日本経済新聞より「けいざい解読 消えていた「円安で輸出増」 国内投資促す改革を」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合・経済面にある「けいざい解読 消えていた「円安で輸出増」 国内投資促す改革を」です。





 円安基調が続くなかで輸出が持ち直しの兆しを見せ始めた。10月の輸出数量指数は前月比2.1%上昇し、約2年半ぶりの水準を回復した。円安は輸出数量を押し上げ続けるのか。経済学者やエコノミストの間では懐疑的な見方が根強い。

 「企業が好調な収益を積極的に使っていくことが重要だ」。11月下旬、日銀の黒田東彦総裁は輸出企業が多い名古屋市内で開いた記者会見でこう訴えかけた。

 大幅な円安が輸出企業の収益を押し上げたのだから、国内の設備投資や雇用の拡大でもっと経済全体に還元してほしいとの思いを込めた発言だ。裏を返せば「円安でも輸出数量は横ばい圏内が続いている」(黒田総裁)との焦りがある。

 いつから円安が輸出増に直結しなくなったか。バークレイズ証券の森田京平チーフエコノミストは「既に2000年代初めから日本企業は円安が進んでも輸出増のための値下げに動かなくなっている」と指摘する。

 それを映しているのが輸出物価だ。輸出国で実際に販売している価格である契約通貨ベースの物価と、円相場で換算した価格である円ベースの物価を比べると、2000年代初め以降、円相場の値動きで円ベースの物価が大きく動いても、契約通貨ベースの物価はほぼ一定の水準で推移していることが分かる。

 2000年代初めに大きく変わったのは、日本企業の国際分業体制が確立されたことだ。内閣府の調査によると、海外生産を行う製造業の割合は円高で苦しんだ1990年代に倍増し、2000年度に6割を突破。それ以降はほぼ6割台で推移しており、2000年代初めに国際分業が整ったことを示している。

 国際分業が整った企業は円安が進んでも安易に輸出を増やさない。国内生産を増やした分だけ、海外生産を調整しなければならないからだ。企業は物流や賃金のコストも含め、どこでどれだけ生産したら最適なのかを判断するため、円安が必ずしも輸出数量の拡大に直結しない。学習院大学の清水順子教授は「最近の輸出数量の拡大も円安による影響だけでなく、世界経済の好転で海外の需要が高まった影響が大きい」と分析する。

 円安が輸出増を通じた景気回復につながらなければ、輸入品や燃料の上昇といった円安による負の側面に焦点が当たり、企業や消費者の心理を悪化させかねない。

 円安を輸出主導の景気回復につなげるカギは成長戦略だ。国際分業を整えた企業でも、法人税減税や経済特区による規制緩和で国内で生産する魅力が大幅に高まれば、国内への投資を強化する動きが出てくる。外国企業の日本進出を促す効果も期待できる。

 円安で輸出収益が増えた企業が国内投資に振り向ければ、経済全体に波及を見込める。国内投資の拡大は、設備投資や雇用を押し上げるだけでなく、部品などの受注拡大で円安に苦しむ下請け企業や中小企業にも恩恵が及ぶ。日本に求められているのは、円安を生かす改革の実行だ。

(編集委員 小栗太)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です