2014/12/20 本日の日本経済新聞より「原油安と世界 (下)覇権巡り新たな攻防」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞総合1面にある「原油安と世界 (下)覇権巡り新たな攻防」です。

サウジと米シェール企業の我慢比べが長期化するほど、原油価格は低位定着の時を刻み、これは資源輸入国の経済安定、資源輸出国の経済不安定をもたらします。国家の力関係が大きく変貌する可能性を秘めています。





 「水道ってただじゃなかったの?」。11月、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビの市民に驚きが広がった。政府が来年1月から水道料金を初めて市民から徴収すると決めたためだ。

シェールが主導

 UAEが加盟する石油輸出国機構(OPEC)は1973年、5割超の世界シェアを武器に価格決定権を欧米メジャー(国際石油資本)から奪った。高騰した原油が生む収入を元手に福祉や教育を国が丸抱えしてきた夢の世界。40年を経てその常識が変わろうとしている。

 今回の原油安は3つのショックが重なった。

 第一に米国主導で進んだシェール革命による供給ショックだ。米国の原油生産量はこの3年、日量100万バレルペースで増え、OPECのシェアは3割台まで低下した。新興国の高成長神話が崩れ世界の石油需要が弱含んだことも需給の緩みに拍車をかけた。

 だめを押したのは10月の米量的緩和の終了だ。余剰マネーの収縮が進み、原油先物の買いが減った。この10年で進んだ原油の金融商品化は相場を1バレル140ドル超まで押し上げたが、金融の引き締め局面では原油価格の下げをきつくする作用も果たす。

 マネーがかさ上げしてきた原油価格が実際の需給に近づいていく。何が起きるのか。

 OPEC総会で減産見送りを主導し低価格戦術を仕掛けたサウジアラビアと米シェール企業の我慢比べは「1~2年は続く」(大手電力幹部)公算が大きい。

 2000年代に台頭したシェールオイルは1バレル100ドル時代の申し子だ。生産コストが10ドル以下のサウジの攻勢で「整理される企業が出てくる」(米エクソンモービルのティラーソン最高経営責任者)のは当然だが、OPEC主導の73年体制に戻ると考えるのは早計だろう。

 「1バレル40ドルでも利益は出る」とシェール大手の米EOGリソース。テキサス州では1油井あたりのピーク生産量がこの4年で3倍以上に増えた。米ハリバートンなどの油田開発会社は掘削場所や手順を最適化する技術を導入。ゼネラル・エレクトリック(GE)は掘削に使う大量の水を再利用しコストを下げる技術の開発を進める。

 原油急落が鍛えるイノベーションの芽は技術に限らない。強い経営を求め石油会社の大再編が幕を開ける可能性がある。

メジャーも渦中

 「原油安に耐えられるメジャーはどこか」。エネルギー業界でこんな会話を耳にする機会が増えた。メキシコ湾での原油流出事故で体力が低下した英BPなど欧米メジャーすら再編と無縁でいられるかわからない。エネルギー産業の未来図を巡る攻防は年明けから本格化するだろう。

 原油安の恩恵が最も深いのは日本かもしれない。原発事故後の日本は原油や液化天然ガス(LNG)の調達費が急増。電気料金の高騰は日本経済のアキレスけんになってきた。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングによると、この1年で日本が輸入した原油は14兆5000億円。1バレル60ドルなら円安を考慮しても年間5兆4000億円安くなる。ガス価格の下落も加えれば今春の消費増税に伴う8兆円の負担増を相殺するインパクトがある。輸出企業や富裕層に恩恵が偏りがちな円安株高と違い、原油安を受けた値下げは内需型の企業や家計にも及びやすい。

 喜んでばかりもいられない。エネルギーの安定調達は日本経済の生命線。割安になるシェール権益の取得にいつ動くか。動かざるべきか。混沌の先にある新秩序を見据えた戦略作りで優劣を問われる局面だ。

(編集委員 松尾博文)

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