2014/12/23 本日の日本経済新聞より「展望2015(3)日中安定へ英知蓄積を 東大教授 宇野重規氏」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「展望2015(3)日中安定へ英知蓄積を 東大教授 宇野重規氏」です。





 ――与党が勝利した衆院選で示された民意は何でしょうか。

 「3.11の東日本大震災と中国の台頭により、日本政治のフェーズ(段階)は大きく変わった。3.11は天災であると同時に人災でもあり、日本政治のトップレベルにおける統治機構の脆弱性が明らかになった。民主党政権のような不安定な状態に戻るのはごめん被りたいと思い、政治の安定を求める民意が依然として強いことが分かる結果になった」

 「中国の台頭で、国民は中国に強く主張できるリーダーシップをほしがっている。安倍晋三氏が2度目の首相に就き、衆院選でも信任されたのは時代の流れだ。一方、次世代の党は議席が激減した。ナショナリズムをあおるだけではダメで、挑発行為はしないでほしいということも国民は希望したのだろう」

 ――「自民1強」は維持され、二大政党制はかすんでいます。

 「これで二大政党制がなくなったとは思わない。小選挙区制では二大政党の可能性は残るし、そうでないと批判勢力ができない。政治的な選択肢はなければならない。だが今の民主党には経済政策がそもそもなく、選択肢たりえない」

 ――2015年の日本の政治をどう展望しますか。

 「衆院選を乗り切った安倍政権だが、前途多難だ。アベノミクスはいよいよ真価を問われ、原子力発電所の再稼働、集団的自衛権の法整備など世論が割れる案件が続く。沖縄の米軍基地問題も待ったなしだ。これらの課題にどれだけ丁寧に対応できるか。憲法改正を急ぐようだと、足をすくわれる可能性もある」

 ――自民党の行方は。

 「自民党は衆院だけで300近い議席を持ち、統治は難しい。保守主義の本流はどこにあるのか。吉田茂元首相以来の軽武装・経済重視をめざす吉田ドクトリンもあるが、安倍首相は岸信介元首相以来のナショナリズムの路線を継いでいる。継承すべき伝統、真の保守は何かをめぐる競争が起きる可能性がある」

 「地方の問題は一番重要になってくる。自民党は地方に根があり、地方を大切にしようと言うが、地方より都市部を発展させたい志向の人もいる。東京五輪や地方創生という大きな2つの課題がある中で、価値観の違いが出てくるだろう」

 ――政府は50年後も1億人程度の人口を維持する目標を掲げています。

 「出生率を2.07まで回復する必要があるが、現状では非現実的な目標だ。仮に7000万人まで減るとしても、世代間のバランスさえ回復すればサステイナブル(持続可能)な社会は実現できる。日本社会のダイナミズムを維持するためにもアジアを中心に海外の優れた人材を獲得することは必須の課題になる」

 ――15年は戦後70年で、歴史問題が注目されます。

 「近隣諸国との間に、いかに『共通の歴史』を築いていけるかが問われる。容易な課題ではなく、時間をかけて考えていくべきだ。アジア諸国からの観光客が激増しているように現実の人的交流は拡大し、経済的な相互依存関係も深まっている。現状を正確に認識し、生産的に競い合っていく関係を築くべきだ」

 「近隣諸国との関係で、どこまで強く出て、どこでブレーキをかけるのか、日本外交は成熟していない。中国とどう競い合っていくか、難しい。潜在的には緊張が続く中で、日中がいかに政治的な英知を蓄積できるか。アジアの中での日本にとって安定した関係をつくる仕組みを、数十年から1世紀レベルの視野でつくらないといけない」

(聞き手は編集委員 佐藤賢)

 専門は政治思想史、政治哲学。著書に「トクヴィル 平等と不平等の理論家」など。47歳。

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