2014/12/27 本日の日本経済新聞より「成長戦略を問う(2) 企業の足かせ、今こそ外せ」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「成長戦略を問う(2) 企業の足かせ、今こそ外せ」です。





 「日本の設備投資が復活する予想を取り下げる」。12月5日。欧州系のUBS証券が、東京から世界の投資家に伝えた。

 企業業績が回復し、手元資金は空前の規模にある。国内設備の老朽化は限界にきており、停滞していた投資は今こそ再開する――。

 こんな見通しを立てたのは昨年9月。工作機械のツガミ、送電関連の日立製作所、不動産投資信託(REIT)など広範囲な銘柄を勧めてきた。

 「誤算だった」。投資戦略を立案した居林通氏は振り返る。「経営者はまだ、投資しても採算が合うのかどうか自信が持てないでいる」

負け越しの2年

 企業マネーは確かに動き出した。だが、資金の向かう先はもっぱら自社株買いや配当などの株主配分で、将来の成長のための投資は少ない。

 今年4~9月、上場企業の株主配分は昨年同期に比べて22%増えた。一方で設備投資は2%増にとどまっており、企業買収も含めた投資総額は逆に19%減った。手元資金は70兆円を上回る。

 積み上がった企業マネーは、萎縮する企業心理の鏡でもある。

 「6重苦」。安倍政権が誕生する以前、外国企業より不利な競争条件を嘆く経営者の間では、こんな言葉が交わされた。超円高、高い法人税率、貿易自由化の遅れ、エネルギーの制約、労働規制、温暖化ガス規制だ。

 その後どうなったのか。「2.5勝3敗」。長谷川閑史・経済同友会代表幹事(武田薬品工業会長)は、2年間の変化を負け越しで総括する。明らかに解消したのは超円高だけだ。

 安倍政権は法人実効税率を29%台に引き下げるというが、日本企業が生産拠点を展開する中国は25%、韓国は24.2%とはるかに先行している。貿易自由化の進展を狙った環太平洋経済連携協定(TPP)交渉は、漂流の気配すらただよう。

 長谷川氏によれば「残りの3つはバツ」だ。エネルギーについては原発稼働ゼロの状態が長引き、火力発電に使う燃料費は2014年度に3.7兆円の上乗せになると経済産業省は試算する。13年時点で米国の2.5倍だった日本の産業向け電気料金はさらに値上がりしている。

 「世界で最も高い電力コストはさらに高くなり、安定供給にも不安がある」。榊原定征・経団連会長(東レ会長)は不満を隠さない。企業が国内投資に二の足を踏むのも無理はない。

 6重苦の議論には「(やるべきことを)やらないための企業の言い訳」(三村明夫・日商会頭=新日鉄住金相談役)と冷めた声もつきまとう。言い訳をできなくするには障害をなくせばいい。

雇用増大焦点に

 少なくとも円安は、企業の目を国内に戻すきっかけになる。佐賀県鳥栖市。生活用品製造卸のアイリスオーヤマ(仙台市)の発光ダイオード(LED)照明の工場では、1月のフル稼働に備えた最終の準備が進む。

 これまで製品の8割を中国の大連で生産してきた。だが円安で国内の方がコストが安くなると判断。「メード・イン・ジャパン」に変えていく。

 こうした国内回帰の例はまだ少ないが、設備投資と雇用機会の増大を通じた潜在成長率の底上げには必要だ。円高是正だけでなく、アジア各国に遜色のない競争条件を整えない限り、海外生産の流れは止められない。新しい産業の担い手を育てる取り組みを進めると同時に、残る「5重苦」の解消を急ぎ、経営心理を温めないと、日本経済は成長力を回復する絶好の機会を失いかねない。

(編集委員 梶原誠)

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