2014/12/28 本日の日本経済新聞より「がん社会を診る 生活習慣が格差を克服 中川恵一」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の健康面にある「生活習慣が格差を克服 中川恵一」です。





 第2次世界大戦以前、日本人の死亡原因でもっとも多かったのは結核です。しかし今では、年間の死亡数は2000人程度と激減しています。結核が減った主な理由は戦後、日本が豊かになって国民の栄養状態が改善し、免疫力などが向上したことです。

 1951年、結核に替わって脳卒中が日本人の死因トップになりました。ただ、60年代後半以降は減少し、81年にその座をがんに譲りました。脳卒中が減ったのも、減塩や血圧降下剤のほか、たんぱく質や動物性脂肪の摂取量が増え、血管が破れにくくなったことが大きな要因と考えられています。肉の消費量は半世紀で10倍近く増えました。

 つまり、結核や脳卒中は日本が豊かになったことで克服されていったわけです。そして、明治元年(1868年)で35歳程度、大正元年(1912年)でも40歳程度だった日本人の平均寿命は世界トップクラスに延びました。

 健康や寿命と所得水準は密接に関連します。横軸に各国の人口1人当たりの国内総生産(GDP)、縦軸に平均寿命をとったグラフを描くと、見事に相関しているのが分かります。所得が高い国ほど平均寿命が長くなりますが、同じ国のなかでも、お金持ちは健康で長寿、所得の少ない人は病気がちで短命の傾向があることが知られています。

 それは日本人でも同じです。約1万5000人を対象とした調査研究の結果、所得が200万円未満の高齢男性のがん死亡リスクは、所得が400万円以上の男性の約2倍にもなりました。低所得者(とくに男性)は喫煙率が高いなど、生活習慣が乱れやすい点が大きな要因です。

 がん検診の受診率も所得水準が下がると低くなります。がんの原因の約3分の2が生活習慣で、早期発見のカギはがん検診ですから、結果的に、低所得者にがんによる死亡が多くなります。

 しかし、女性については収入や教育の格差によるがん死亡リスクの違いはほとんど見られません。女性の喫煙率はもともと低く、社会的・経済的立場にかかわらず、男性ほど生活習慣が乱れにくいことが背景にあると思います。逆にいえば、男性でも生活習慣を整えれば、ある程度まで格差を克服できる可能性があるということになります。

(東京大学病院准教授)

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