家でおいしいコーヒーを(2) 蒸らしのお湯2ミリの太さで 震えよ止まれ 豆よ膨らめ 2015/06/30 本日の日本経済新聞より

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 自家焙煎(ばいせん)コーヒー店「カフェ・カルモ」の珈琲(コーヒー)教室では、まず、コーヒーの歴史、栽培や収穫の様子などを学ぶ。

お湯は同じペースで注げれば1度でもよい

 コーヒーの木になる赤い実の種を乾燥させたのがコーヒー豆。生産地から出荷されたときはグリーンだが、高温で焼く焙煎によって見慣れた茶色になる。その成分を抽出した液体がコーヒーだ。

 今のように飲まれるようになった時期は不明だが、まずオスマン帝国などイスラム世界で普及した。コーヒーの代名詞ともいえるモカとはイエメンの港名。17世紀半ばまではエチオピアとイエメンだけで栽培され、この港から出荷されていたそうだ。イスラム、オスマン……40年ちかく前、高校時代に教わった世界史を少し思い出す。

 苗木がオランダ人によって外に持ち出されると、欧州の植民地のうち、栽培に適した赤道を中心とする南北回帰線に挟まれた地域に広まった。国内でも沖縄や小笠原諸島の一部で栽培されているという。国産は店で見たこともないが、どんな味だろうか。

 教養編の後は、いよいよ実習。ペーパーフィルターによるハンドドリップだ。お店で使っているバッハ式というドリッパーを使う。東京都台東区にある自家焙煎コーヒーの名店「カフェ・バッハ」が開発した。マスターの関口恭一さんが開店の際の相談に乗ってもらった店でもあるという。ペーパーフィルターを使う場合の豆のひき方は粉というより粒という感じの粗さの中びき。1人分12グラムを入れて平らにならす。ここから大事なポイントとなる最初の蒸らし。焙煎後の豆は炭酸ガスを含むので、それを除いて香りやうまみを上手に取り出せるようにする。

 温度計で確認した82度前後のお湯を少しずつ中央に注ぐ。「コーヒー粉の上にお湯をのせる感覚です」。2ミリの太さで粉に真上から落とすのがコツ。手が震えてなかなかうまくいかないが、ひじを体につけるとかなり正確な作業ができる。粉にお湯がしみ渡ったら約30秒待つ。ガスによってコーヒー粉がみるみると膨らんでくる。

 後は中央に「の」の字を描くようにゆっくりとお湯を注いで一杯分130ミリリットルのコーヒーを抽出する。ここは2度にわけて注ぐやり方が一般的なのだが、同じペースで注げれば1度でも構わないそうだ。大事なのは、お湯を全部落とさないうちにサーバーから外すこと。出がらしが含まれて雑味がでてしまう。

 ドリッパーには結構、きれいに均一な層が残った。関口さんが味を見てくれた。「なかなか上手に入っていると思いますよ」。苦すぎず、上品な酸味を感じる。甘みもあるようだ。我ながらかなりおいしいと満足できた。

ひと言子どもの頃から手先が不器用であだ名は「ブキ」だった。少しずつお湯を注ぐなんて繊細な作業は最も苦手だ。



経営書を読む 成功はゴミ箱の中に(4) 死ぬまで「仕事大好き」 困難も努力も娯楽 2015/06/30 本日の日本経済新聞より

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 この本は全編「どうだ、俺の話、おもしろいだろう?」というクロックの「話したくてたまらない」モードで書かれています。フランチャイズビジネスを始めようというとき、あまりに夢中で話すので、彼の元秘書だったマーシャル・リードは「クロックの頭がおかしくなったのかと心配した」と語っています。

 クロックがいちばん好きだったのが、メニュー開発と店舗開発でした。本の中でも何度となく話が出てきます。仕事の実際を知らないのでいまひとつついていけないのですが、「だって、スキだからスキなんだよ!」という思いだけはビシビシ伝わってきます。

 クロックは「野球をして得るのと変わらない喜びを仕事からも得ていた」と書いています。彼にとっての仕事―事業をデカくすることとそのための経営―は、普通の人がおいしいものを食べたり、デートしたりするのとまったく同じ意味で、生理的な喜びであり、本能的な快感でした。

 マクドナルドで当てるまで、クロックは長い下積みを経験しています。経営者になってからも、さまざまな困難に直面し、粘り強い努力でそれを克服しています。しかし、本書の記述はあくまでも明るく、「下積み」「苦労」というトーンがまるでありません。好きな仕事を好きなようにやってきた彼には努力が娯楽になっています。

 クロックがマクドナルド兄弟をはじめて訪れたのが1954年、この本を書き終えたのが77年。その後亡くなる84年までクロックは働き続けました。死ぬまで大好きな仕事をやめることができなかったのです。いい加減にしてくれと夫人に懇願されながらも、メニュー開発や不動産開発を喜々として続けていました。

 彼の頭の中には「引き際」などという文字はありません。仕事に対する異常なほどの愛情と執着、理屈抜きのスキスキ精神がマクドナルド帝国の基盤にあったのです。

=この項おわり



ゼミナール 米国の強さと課題(9) 2つの超大国 並び立つか 2015/06/30 本日の日本経済新聞より

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 超大国としての米国の位置づけが揺れている。中国が台頭し、迫っているためだ。国際通貨基金(IMF)は、2020年の中国の国内総生産(GDP)が世界の16%に達すると予測している。米国(23%)には及ばないが、1990年の2%からは大きな躍進である。

 両国の外交姿勢は、対照的である。オバマ米大統領は「米国は世界の警察官ではない」と明言し「対外関与に消極的」との印象が世界に広まった。中国は、主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に主要な欧州諸国の参加を得るなど、米国中心の秩序を脅かそうとするかのようだ。

 世界の世論は、超大国の交代を意識する。14年に米調査機関のピュー・リサーチ・センターが20カ国で行った世論調査では「中国が米国の超大国の座に取って代わる」「すでに取って代わった」との回答が「取って代わらない」との回答を計20%近く上回った。両者が拮抗した08年と比べると米中逆転は、世界の共通認識になりつつある。

 米国の対中観は割れている。米外交問題評議会が15年3月に発表した報告書は「中国の成功は米国の国益を損なう」として、アジア地域で「意識的に中国を除外した」貿易協定を結ぶなど、断固とした対応を求めた。一方で、同年5月には、ルービン、ポールソンという2人の元財務長官が、米中の協力こそが「世界の様々な難問を解決する最大の希望である」として、両国の共存共栄を呼びかけた。

 2つの超大国は、並び立つのか。米国のみならず、世界にとって大きな問いかけだ。

(みずほ総合研究所)



ポジション 債券市場、はや「出口」に備え? 異次元緩和 スワップション取引拡大 夏以降の物価上昇にらむ 2015/06/30 本日の日本経済新聞より

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 債券市場で早くも日銀の異次元緩和の出口を見込んだ取引が広がり始めた。ヘッジファンドなど海外投資家を中心に、一定期間後の金利上昇リスクを回避するための金利デリバティブ「スワップション」の購入が増えている。いまはゼロ%近くにとどまっている消費者物価上昇率が夏以降に上昇に転じれば、長期金利も早晩上がり始めるとの読みが背景にある。

 29日の長期金利は、指標となる新発10年物国債利回りが0.440%と、前週末比0.030%低下(価格は上昇)した。ギリシャ債務問題を巡る不透明感を背景に「安全資産」の国債が買われた。一方で、長期的にみれば金利はいずれ上昇に向かうとの見方が増えつつある。

 こうした先行き見通しを映して取引が増えつつあるのがスワップションだ。スワップションは変動金利と固定金利を交換する「スワップ」と、将来権利行使する「オプション」を組み合わせた取引だ。

 予想通り金利が上昇すれば、金利上昇に備えてあらかじめ契約していたスワップ取引を実行し、利益を得られる。逆に金利が低下した場合にはスワップ契約を破棄できる。権利を買うだけなので、予想が外れても支払う損失はオプション料だけ。最近のように金利が将来上がる可能性はあるものの、確実とはいえない局面で効果を発揮する。

 最近購入する投資家が増えているのは「2~3年先に1~1.5%程度金利が上昇する」ケースを想定したスワップションだ。日銀は2016年度前半に目標である物価上昇率2%を達成すると見込んでおり、その後の金利上昇をにらんだ動きといえる。

 取引の主役は海外ヘッジファンドなどの投機筋だ。ただ「現物債を保有する銀行や生保など国内の機関投資家も、ヘッジのためのスワップション購入に関心を示している」(JPモルガン証券の山下悠也氏)という。

 市場参加者が金利上昇に備える背景には、物価指標の改善でドイツ金利が5月に急上昇したことがある。いったん金利が上がり始めると、中銀がいくら大規模に国債を買い入れていても、完全には抑えきれないという現実を印象づけた。

 日本でも原油価格の下げ止まりで夏以降には物価が上昇に転じるとみられる。市場が出口を織り込み始めれば、金利の上昇は避けられない。

 実際、債券投資家の金利見通しも上がり始めている。QUICKが29日公表した月次調査によると、6カ月後の新発10年物国債の利回りの予想は平均0.5%、3年後は1%、5年後は1.5%で徐々に上昇していく姿を描いている。5年後に3.5%まで上昇するとみる投資家もいた。

 金利上昇の可能性が高いと多くの人が思い始めるようになると、スワップションの価格は上昇する。過去と比べまださほど大きく上がっているわけではないが、価格の動きを映す予想変動率はじわりと上昇しつつある。このため「今のうちに割安に購入しようとする投資家が動き始めている」(モルガン・スタンレーMUFG証券の杉崎弘一氏)。

 スワップションは09年ごろにも、日本の財政破綻による国債暴落に賭けて「10年先に金利が5%上がる」といったシナリオで海外勢が購入する動きが目立った。こうした取引は実現可能性が低い分、オプション料が安い。「当たれば大もうけの宝くじ感覚で買うケースが多かった」(野村証券の松沢中氏)。最近の市場では、近い将来の比較的緩やかな金利上昇をにらんだスワップションの購入が増えている。

(浜美佐)



経済観測 百貨店から見る「真水」の消費 中間層、なお力強さ欠く 三越伊勢丹HD社長 大西洋氏 2015/06/30 本日の日本経済新聞より

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 アジアを中心とした訪日外国人の旺盛な買い物(インバウンド消費)で久しぶりに明るい話題が多い百貨店業界。果たしてこの特需を除いた“真水”の個人消費はどうなのか。業界最大手、三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長に聞いた。

都市部は手応え

 ――消費増税から1年がたちました。足元の商況はいかがですか。

 「4、5月の販売実績は計画値を上回っている。6月は天候不順などもあって若干、伸び悩んでいるが、表面上の消費は少しずつよくなっている。大手百貨店はどこも同じような傾向だ。目先のギリシャ債務問題は気がかりだが、インバウンド消費に加え、株高による資産効果で短期的にはお金が消費活動に回っているのは確かだ」

 「ただ手応えを感じているのは都市部だけで地方にある店は大変、きびしい。都市部と比較して販売実績の増減率の差は3~5ポイントくらいの開きがある」

 ――もし、インバウンド消費がなかったら、どうなっていますか。

 「(消費増税の反動減があった昨年4、5月ではなく)一昨年の同じ時期と比べるとぎりぎりプラスといったところだ。主に富裕層が動いているからで、中間層の消費についてはまだ力強さはない」

 ――それはどんな消費シーンでわかりますか。

 「例えば、(主に中間層が買う)婦人靴の中心価格帯を2万3千円から2万6千円にしているが、お店に来てもっといい靴を買おうと3万3千円前後の靴を手にする顧客が少ない。ところが、それよりも上の価格帯の靴は2桁の伸びを見せている。そこまで高い価格帯に手が届くのは富裕層なのだろう」

 「紳士のスーツでも同じ傾向がある。中心価格帯が8万円前後のものは伸びは鈍いが、13万円前後のスーツは好調だ」

 「婦人服全体としては10%くらい落ち込んでいる。その傾向はここ数年続いている。手ごろな価格のファストファッションに顧客が奪われているのではなく、ネット通販やリサイクルショップの影響があると考えている。紳士服は景気の遅行指標といわれたが今は景気と連動している」

 ――消費行動自体も変化しているのですか。

 「衣料品など季節によって必要になる商品を前もって買うよりも、『今着たい』『旬な時期に買いたい』という傾向が強くなっている。伊勢丹新宿本店のショーウインドーは6月には夏物を飛び越えて秋冬物を展示していた。ファッションに敏感な消費者は今もこの時期に秋冬物を買うが、昨年からこの時期のショーウインドーは夏模様に変えた」

先行きに明るさ

 ――2017年4月に消費税が引き上げられます。

 「昨年のような落ち込みがあるとは思っていない。賃上げもある。インバウンド消費はさらに存在感を増しているだろうし、よほど大きな国内外の経済情勢の変動が起きない限りは順調に行くと見ている。その先には20年の東京五輪・パラリンピックも控える。心理的に明るい要素がいろいろと織りなしながら消費はいい方向に向かっていくだろうと見ている」

(聞き手は

編集委員 田中陽)



家でおいしいコーヒーを(1) 毎朝の日課、イマイチ自信が… 焙煎店主の一杯、まるで違う 2015/06/29 本日の日本経済新聞より

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 早起きが苦にならなくなった50歳を過ぎてから、朝食を終えると必ず自分でコーヒーを入れるのが習慣になった。毎朝7時半、お気に入りの豆をミルでひき、先に仕事に出る妻との2杯分をハンドドリップで用意する。香ばしい匂いを吸い込みながら、ゆっくりとペーパーフィルターにお湯を注ぐのが、1日の始まりを意識する儀式にもなっている。

欠かせない嗜好品だからこそ、本当のおいしさが知りたい

 父親がコーヒー好きだったので、小学生のころから飲んでいたが、甘いコンデンスミルクをたっぷり入れていた。「こんな苦くて黒い液体をそのまま飲めるわけがない」と思っていた。今はブラック。毎日欠かせない嗜好品になったが、本当の意味でそのおいしさが分かっているのかと聞かれると自信はない。

 最近、近所にある自家焙煎(ばいせん)コーヒー店で豆を購入している。東京・水天宮前の「カフェ・カルモ」は、店の奥のスペースに赤い大きな焙煎機が置いてある。それまでスーパーで買っていたのだが、この店の豆を試してびっくりした。最初に蒸らす時、コーヒーの粉がスポンジケーキのようにみるみる膨れあがるのだ。立ち上る香りもふくよかで広がりがあるよう感じた。

 「焙煎して時間がたっていない新鮮な豆だからです」。マスターの関口恭一さん(50)が説明してくれた。スーパーの豆は焙煎から店頭で実際に購入されるまで何日もたってしまう。膨らみの差は粉にひいてからの時間が違うせいだと思って、ひき立てを飲むためにわざわざ電動ミルまで購入したのに。「羽根が回ってカットするタイプは粉にムラができることもある。すりつぶすタイプを勧めます」。

 お湯の温度も間違っていた。沸騰したのをすぐ使っていたが、温度が高すぎると雑味が出るし、苦味も強くなる。ペーパーフィルターで抽出する最適温度は、豆の種類や焙煎具合、器具などにもよるが、80度から85度だという。

 関口さんは大手コーヒー店に勤めた後、脱サラして4年前に店を開いた。日本スペシャリティコーヒー協会認定のコーヒーマイスターであり、店では初心者向けの珈琲(コーヒー)教室も開いている。

 実際にハンドドリップで入れてもらったコーヒーは酸味と苦味のバランスが取れ、甘みも感じられ、家で飲んでいるものとまるで違う。「要点さえつかめば、家でもおいしいコーヒーを入れることができますよ」。

 最近は新しいコーヒー文化「サードウエーブ」(第3の波)も話題になっている。ここは一つ、関口さんに入門してイチから教わってみよう。

(この連載は北川和徳〈55〉が担当します)

私は… ワインに中国茶、薫製作りと、一時のブームにすぐはまるお調子者。今度はコーヒーかと家族はあきれている。



ゼミナール 米国の強さと課題(8) 大統領選、変化に期待 2015/06/29 本日の日本経済新聞より

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 米国で、2016年の大統領選挙を目指す動きが本格化してきた。第1段階は、各党が指名候補を選ぶ予備選挙である。各州で16年1月から行われる投票・党員集会を経て、7月に行う各党大会で指名候補が決まる。両党の指名候補が対決する本選挙は、16年11月8日に投票が行われる。

 今回の大統領選挙は、必ず大統領が変わる「変化」の選挙だ。米国の憲法は大統領の3選を禁じている。17年には、オバマ大統領を継ぐ第45代の大統領が誕生する。

 変化を求める有権者の機運は高い。国の針路に対する意見を尋ねた米世論調査で「満足していない」という回答が「満足している」との回答を長期にわたり上回り続けている。16年の大統領選挙でも「経験豊富な候補より、変化を実現できる候補が望ましい」というのが、各社の世論調査に共通した結果である。

 もっとも、有力候補といわれるのは、身内に大統領経験者を持ち、変化というより過去とのつながりを感じさせる政治家だ。民主党の予備選挙では、元大統領の妻であるヒラリー・クリントン前国務長官が圧倒的な支持を集めそうだ。混戦の共和党でも、元大統領を父と兄に持つジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事が有力候補に名を連ねる。

 経済政策での論争も、昔ながらの対立の構図である。民主党は、公共事業の拡充など、政府の役割強化をうたい「大きな政府」に傾斜する。共和党は市場原理を重んじ、減税・規制緩和で「小さな政府」を目指す。

 「明日」を選ぶはずの選挙に、過去の残像が現れる。米国は、変化の具体像を模索している。

(みずほ総合研究所)



グローバルオピニオン 「インフレ目標」を捨てよ スイスUBS会長 アクセル・ウェーバー氏 2015/06/29 本日の日本経済新聞より

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 「インフレ目標」は金融政策の主流になってきた。米連邦準備理事会(FRB)、欧州中央銀行(ECB)といった主要な中銀が基本的にこれを採用してきた。だが、2008年のグローバル金融危機で、この政策が有効なのかどうか疑わしくなってきた。

 国際決済銀行(BIS)によると、純粋なインフレ目標政策は金融の安定と両立しない。景気循環を考慮しないため、経済を過度に刺激する一方的な政策になりかねないからだ。

 インフレ目標政策の支持派は1990年代前半からの物価引き下げに寄与したと主張する。ところが、世界で物価上昇圧力が低くなった主因は、中国の世界経済への参入をはじめとするグローバル化だったと考えられる。

 (いまは)多くの中銀が経済を再び膨張させること(物価の引き上げ)にてこずっている。インフレ率を上げられないのならば、(その前に)引き下げることもできていなかったと考えるのが自然だ。

 本来の中銀の目的は消費者物価の安定でなかった。戦争のための資金調達だった。通貨価値の安定という目標が認識(ある意味では再認識)されたのは、70年代に大幅なインフレが起きてからだ。

 通貨価値を測る方法の一つとして物価が注目を集め、消費者物価指数(CPI)が最も明確な指標とされた。問題なのは、通貨価値を最終的に決定する通貨供給量と物価の関係が一定でないことだ。

 通貨供給量を調節してから物価が変動するまでの時間差は長いうえに不安定で予測不能だ。2~3年先の消費者物価の誘導目標を設けたとしても、長期的な通貨価値の安定が保証されるわけではない。

 中銀側は消費者物価のほかの物価には責任を持たないと言明してきた。それは通貨価値があらゆる価格に映され、商品、不動産、株、債券のほか為替相場も例外でないという事実を無視している。

 消費者物価を偏重する中銀の姿勢は不適切だ。これを明示したのが08年危機前の住宅価格の高騰、リーマン・ショック後の資産・商品価格の急落、続いて起きた資産インフレの再燃、最近の大幅な為替変動である。どれもが通貨価値の安定に反する現象だ。

 CPIを過度に重視する金融政策は、資本の効率的な配分を妨げ、偏った投資につながる。必要なのは多元的で柔軟な政策だ。リスク管理を重視し、単純な公式でなく政策担当者の判断に任せるのだ。

 中銀は包括的で長期の金融政策を採用すべきだ。すると短期では、「価格の安定」とされている水準から消費者物価が乖離(かいり)する事態があるかもしれない。しかし、それは長期の通貨安定のための小さな代償にすぎない。

((C)Project Syndicate)

Axel A.Weber 2004~11年にドイツ連銀(中銀)総裁。並行してECB理事会とBIS理事会のメンバー。UBSは世界最大級の金融機関。58歳。



「コーヒーに健康効果」の裏側は 疫学、病気予防に生かす 信頼度は手法ごとに差 2015/06/28 本日の日本経済新聞より

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コーヒーが毎日の習慣になっている人にとって、このニュースは朗報だと思います。がんと因子の相関性なども表にまとめられており、その中でコーヒーがどのような関連性を持っているのかについても明らかにされています。

喫煙、飲酒、どれも習慣ですが、その代償はとても大きく、運動、野菜や果物の摂取などを心がけても補えないことが表から分かります。つまり、ストレスなどの発散をするためにそのような習慣に手を染めるのではなく、いかにしてストレスを抱え込まないようにするか、これが大切だということを示しているように思います。





日本経済新聞_20150628_「コーヒーに健康効果」の裏側は

 コーヒーを1日にたくさん飲む人は、飲まない人に比べて心臓病や脳卒中などで死亡するリスクが大きく下がることがわかった。研究をしたのは日本を代表する国立がん研究センターや東京大学などだ。コーヒーの愛飲者にとっては朗報だが、実はこの結果は疫学研究という手法で出てきた。コーヒーは本当に体にいいのか。疫学研究のカラクリを探ってみた。

 とりまとめたのは東大の井上真奈美特任教授らだ。1990年代から40~69歳の約9万人を対象に追跡調査され、生活習慣のアンケート結果などとともに得られたデータをもとに、今回はコーヒーを飲む量と死因との関係について調べた。地域社会など特定集団の中で、病気の発生などの頻度や分布を調べ、その要因を明らかにする疫学研究の一種だ。その結果、コーヒーを1日3~4杯飲む人は、ほとんど飲まない人に比べて心疾患や脳卒中による死亡の危険性が4割減った。肺炎などの呼吸器疾患も低かったという。緑茶でもほぼ同じ結果が出た。「コーヒーや緑茶が健康を害するということはなさそうだ」――。井上特任教授はこう解説する。

 今回の結果では、コーヒーではクロロゲン酸、緑茶ではカテキンといった含有成分が有効に働いたのではとも推察できるが、井上特任教授は「含有成分が効いたかどうか、その点は分からない」と言う。疫学研究では、何がどのように結果に結びついたか詳細なメカニズムなどまでつかみ取ることができないからだ。

 例えば野菜を摂取する人の方が、がんになりにくいという疫学研究の結果がある。ここからニンジンなどに含まれるベータカロテンだけを抽出して喫煙者に摂取を勧めれば、肺がんになりにくいのではないかと考え実施した海外の研究グループがある。しかし、結果はむしろ肺がんになる確率が上がってしまったという。一般の人が疫学研究の結果を自己流に解釈して特定の成分だけをサプリメントなどで摂取するのは危険と専門家は指摘する。

 「○○が△△の予防に効く」とする結果を導き出す疫学だが、「手法によって結果の信頼度が違う」(国立がん研究センターの岩崎基疫学研究部長)という点にも注意が必要になる。

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 結果の信頼度が最も高いのは、ある仮説を検証するために治療法や予防法を実際に試す介入研究だ。新薬の開発で薬の有効性を調べるのに実施する臨床試験などが代表例。新薬候補の物質を服用するグループと偽薬(プラセボ)を服用するグループに分けて、効果に差が出るか調べる。参加した本人や効果を判定する医師にも、どちらのグループに所属しているのかわからないようにするなど厳密なルールのもとで実施する。

 この手法は、調べたいものの有効性についてはっきりと出やすい。しかし、参加者にとって明らかに有害になりそうなたばこの影響などを調べることは難しい。そこで将来にわたって観察を続ける前向きコホート研究という手法が使われることがある。

 健康な大勢の集団を10年以上追跡して、各種がんなどの病気の発症を見る。アンケート結果から得た生活習慣別に比べて、その集団の中での発症の割合などを調べるわけだ。数千~10万人規模で見るため、信頼度は比較的高いとされるが、対象集団の中の傾向をみているにすぎない。コーヒーと心疾患などの関係を調べた今回の研究もこの手法。結果から「飲みたい人は辞める必要はないし、飲めない人が無理に飲む必要もない」(井上特任教授)。

 国立がん研究センターなどは、日本人の死因トップのがんの発症についても、たばこや食事内容などとの関係を調べるためにこの手法で研究を実施し、結果を公表している。ただ、前向きコホート研究は、結果が出るまでに長い年月がかかり、費用も必要だ。

 がんになった人に集まってもらい、自身の生活習慣を振り返ってもらい、予防法を見つけるという手法もある。症例対照研究というタイプだ。一見すると合理的だが、「過去の経験の思い出し方には個人差があり、バイアスがかかってしまう」(岩崎部長)といい、信頼性はコホート研究より低く見るのが一般的だ。

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 疫学研究の結果を利用する際、どういったデータからどういった結論を導き出しているかという点に注目してほしいと指摘するのは、新潟大学の岡田正彦名誉教授だ。例えば多くの新薬では「死亡率が減っているかが重要になる」という。

 血圧や血糖値を下げる薬が血圧や血糖値を正常値にしたとしても、長期間の服用による副作用で寿命が短くなったら意味がない。血圧も下げた上で、寿命が延びるのかどうかを調べるには、現在のところ疫学研究をするしか方法がない。

 疫学は、自身の生活習慣の見直しの参考になるだけではなく、次世代に残す共有財産にもなる。多くの一般の人の協力があって初めて成り立つ研究という側面も理解しておきたい。

(新井重徳)



こころの健康学 精神的な不調 考えて判断する力奪う 2015/06/28 本日の日本経済新聞より

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 7月中旬に東京で日本うつ病学会が開催される。その市民公開講座で音無美紀子さんに講演をお願いすることになった。音無さんは、乳がんをきっかけにうつ病になったことをカミングアウトしている。

 音無さんは、うつ病のときにはまったく頭が働かなくなっていたという。例えば、スーパーマーケットに行って買い物かごを持って店内をひと回りして気づいたら、かごの中には何も入っていなかったこともあったそうだ。店内をまわりながら何を買うか考えて判断するこころの力がなくなってしまっていたのだ。

 精神的に不調になると、これほどまでに考える力が奪われてしまうのだ。だが本人が気づけていないことが多い。気づくだけの判断力までも低下しているからだ。それだけでなく、自分で目をふさいでいるところもある。仕事が思うようにはかどらず自信がなくなってくると、できないことをできないと受け入れられなくなるのも同じだ。

 やっかいなことに、頭がいつものように働いていないことがまわりの人にはわからない。頭だけでなく、体もいつものようにキビキビと動かないので、まわりの人の目には怠けているように映ることさえある。

 だからまわりの人は励ましてしまうのだが、励まされても考える力が落ちているのだからどうすることもできない。できない自分がみじめに思えて、ますます自信がなくなっていく。

 こうしたときには、本人もまわりの人も、できないことを受け入れ立ち止まる勇気と、そこから焦らずに少しずつ進んでいく勇気を持つことが大切だ。

(認知行動療法研修開発センター 

大野裕)