円の先高観強まる 外為市場 リスク回避で買い 2015/09/30 本日の日本経済新聞より

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 外国為替市場で円高・ドル安が進むとの観測が強まっている。中国経済の減速や軟調な株式相場を受け、安全通貨とされる円を買う動きが強まりやすい地合いが続いているためだ。米連邦準備理事会(FRB)は年内にも利上げに踏み切る姿勢を崩していないが、6月までの円安・ドル高基調には当面戻らないとの見方が増えている。

 円の先高観は、将来の為替相場を予想して通貨を売買する権利を取引する通貨オプション市場に表れている。29日の東京市場で一定期間後に「円を売る権利」の需要から「円を買う権利」の需要を引いた「リスク・リバーサル」という指標をみると、期間1カ月で1.3%のマイナス、つまり円買い需要が多い状態になっている。期間1年まで円買い超過の状態で、円の先高観が強まっていることが分かる。

 投機筋も先行きの円高に備え、円売りの持ち高を減らしている。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、22日時点で投機筋(非商業部門)の円売越額は2万3千枚と直近ピークの8月11日から8割近く減った。

 円の先高観が強まった背景について、外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏は「(恐怖指数と呼ばれる米株式相場の変動率を示す)VIX指数が高止まりするなど、市場で景気悪化リスクの火種がくすぶっている」と指摘する。28日発表された8月の中国の工業企業の利益は前年同月比8.8%減と2011年の調査開始以来最大の落ち込みを記録。中国経済への懸念が再燃するなかで、29日の日経平均株価が714円下落するなど、市場でリスク回避の取引が再び強まっている。

 市場が落ち着き、円安基調に戻るには時間がかかるとの見方が多い。「リスク回避の動きが一巡するまで1ドル=122円を下回る円安・ドル高にならない」(あおぞら銀行の諸我晃氏)との声もある。独フォルクスワーゲンの排ガス試験の不正問題も不安要因になっており、円安に転じるには時間がかかりそうだ。



インド、今年4度目の利上げ インフレ抑制狙う 2015/09/30 本日の日本経済新聞より

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 【ムンバイ=黒沼勇史】インド準備銀行(中央銀行)は27日、政策金利である市中銀行への貸出金利(レポ金利)を0.25%引き上げ、年5.75%にすると決め、即日実施した。ブラジルやタイなど新興国で利上げが相次ぐが、インドは3月以来で4度目のハイペース。素材価格の上昇や食品価格の高止まりで、インフレ率は5カ月連続で10%を上回っており、準備銀は金融政策の引き締めスタンスを継続して物価上昇を抑える。

 市中銀行の準備銀への預入金利(リバース・レポ金利)も0.50%引き上げ年4.50%にした。両金利差を縮小することで市中の流動性を抑える姿勢を示し、引き締め効果を高める。

 準備銀はすでに3月、4月、7月2日に利上げを実施したが、インフレ指標である卸売物価指数の前年同月比上昇率は2月から10~11%で推移。直近6月も10.55%で低下の兆しは見えない。準備銀は今回、2010年度(10年4月~11年3月)末のインフレ率見通しを、従来の5.5%から6.0%に引き上げた。

 これまで年4回設けてきた政策決定会合の開催回数を倍増する方針も公表した。3月と7月2日の利上げを臨時会合で決めたことを踏まえ、声明で「3カ月に1度では間が開きすぎ」と説明。今後はおよそ1カ月半に1度の割合で政策を見直す。次回会合は9月16日。

 準備銀は10年度の実質国内総生産(GDP)成長率見通しも、従来の8.0%から8.5%に引き上げた。インドでは企業の設備投資意欲が旺盛で、準備銀も声明で「成長のけん引役である内需は堅調」と指摘した。

 ただ旺盛な需要が合成ゴムなど素材価格を押し上げる一方、印政府も石油製品価格を引き上げ、企業のコスト負担が増している。スズキ四輪子会社は原材料高などを受け、4~6月期に5四半期ぶりに前年同期比で減益に転じた。準備銀は積極的な引き締め策を通じてインフレ率を抑え、印経済の成長軌道を持続的なものにする考えだ。



経営書を読む 日本はなぜ敗れるのか(3) 思想的基盤の弱さ 虚構の上に議論、具体策出せず 2015/09/29 本日の日本経済新聞より

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 戦前の思想教育とその巧拙は広く論じられるところです。小松真一氏は「虜人日記」で敗因21カ条の一つに「思想的に徹底したものがなかった事」を挙げます。ここでいう「思想的徹底」とは、自らの思想的基盤を徹底的に考え抜き、批評にも正面から向き合い、自ら律するための土台とすることです。

 当時の日本では標語的な思想はあっても体系化されておらず、批判を許さず、物理的・社会的暴力で律していました。日本国内や暴力が及ぶ環境にいれば統率がとれる。ところが、海外で、責任を自覚しなければ無責任でいられるという位置におかれると極めてもろくなった。山本七平氏はそう分析します。

 また陸軍では白兵戦を戦闘の根本に据えつつ、その強みが最大限発揮できるゲリラ戦に注力せずに、一大会戦をやろうとしました。自らの本当の強みやよって立つべきものが一体何なのかが組織として徹底されていないことも、各地での惨敗につながっていきます。

 思想的不徹底は「基礎科学の研究をしなかった事」「兵器の劣悪を自覚し、負け癖がついた事」といった、他の敗因にも影響しました。思想的基盤や客観的な自己認識なく、虚構の上に議論を展開することは、基礎科学への軽視・無関心を生みます。基礎科学におけるギャップの認識の弱さが更なる虚構を助長するという悪循環に陥り、米国のような兵器・兵力の飛躍的発展を阻害します。

 一方で前線では兵器の劣悪・不足は明らかです。徐々に負け癖がつき、「大決戦」などと銘打っても戦いの端緒で戦意を喪失して敗走する、といった展開が各地でみられるようになります。

 太平洋各地に分散させた戦力が個別撃破され、兵士は生き残るためにジャングルに潜伏する。後半戦に至ってもなお、日本のエリートが戦争終結の具体的方策を打ち出すことができなかったのも、思想的基盤の弱さに起因しているのです。

(ケーススタディーなど全文を「日経Bizアカデミー」に掲載)



スクランブル 市場心理映す急落劇 業績、新興国の影響に身構え 証券部 松本裕子 2015/09/29 本日の日本経済新聞より

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 前週末の米国株高にもかかわらず、28日の日経平均株価は235円安で引けた。中国など新興国経済の減速に対する警戒感が強く、投資家は萎縮したままだ。新興国で稼ぐ銘柄の先行きに投資家は戦々恐々としており、28日はユニ・チャーム株が午後に突然、値を崩した。表だった材料が出たわけではなく、投資家心理の弱さを象徴している。

 「朝方は長期投資家からの買い注文が入っていた。目立った材料もないのに下げてびっくりした」。ある国内大手証券のトレーダーは28日のユニチャーム株についてこう話す。

 午前中は1%高で取引を終え、午後に入っても2%高と堅調に推移していた。急変したのは午後1時半ごろだ。1時間強で3%安まで振れた。「売りに回ったのはヘッジファンドなど短期投資家ではないか」とトレーダーは話す。

 アナリストが出した投資家向けコメントが震源では、との観測もあった。メモ程度のコメントなので詳細は不明だが「7~9月期業績が弱含んでいるとの内容だった」(外資系運用会社)。ユニチャームは中国や東南アジアへの依存度が大きい。投資家は業績悪化のニュースに身構えており、ネガティブな情報に反応しやすかったようだ。

 地合いの悪さは売り一辺倒だった総合商社株にも表れた。この日は三菱商事株が5%安、三井物産や住友商事の株価も4%強下げる大幅安となった。比較的配当利回りが高く、配当の権利を得たとたんに手放す投資家が相次いだとみられる。リスク回避を急ぐ市場心理を映し出した。

 これまで日本株を買う理由の一つだった企業業績への期待は明確に低下している。米バンクオブアメリカ・メリルリンチが世界の機関投資家を対象にした9月の調査では、日本企業が今期2ケタ増益となる可能性が「高い」と答えた投資家の比率から「低い」と答えた比率を引いた値はプラス8%で、前月から75ポイントも低下した。「投資家は製造業を中心に業績下振れを警戒している」(メリルリンチ日本証券の阿部健児氏)

 買われる銘柄を見ても慎重姿勢が浮き彫りになっている。海外要因に左右されず、中長期的に収益拡大につながるテーマがある銘柄に絞った買いが目立つ。

 28日はNTTデータ株が逆行高となり年初来高値を更新、新日鉄住金ソリューションズなどIT(情報技術)関連株が軒並み上げた。マイナンバー制度導入などで顧客のシステム投資が増える「特需」があり、恩恵は数年間にわたって続く見通しだ。

 とはいえ、主力輸出株にも全く手を出せないわけではない。「自動車株など一部の外需株はそろそろ買いの好機」(ビスタマックス・ファンド・アドバイザーズの藤原正邦氏)との声もある。中国懸念でまとめて売られたため、過度に業績悪化を織り込んでいる可能性もあるからだ。

 投資家が知りたいのは、新興国経済の悪化が業績にどれだけダメージを与えているかだ。業績の居所が見えてくれば不透明感は薄れる。本格的に動き出すには7~9月期決算で実態を見極めてからになりそうだ。



東南アで成長鈍化、日経センター15年見通し 中国経済減速で 2015/09/29 本日の日本経済新聞より

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 日本経済研究センターは中国と東南アジア主要4カ国の経済成長率予測をまとめた。中国経済の減速が東南アジアにも波及して各国の成長率を押し下げるとし、2015年はインドネシアやマレーシアで4%台の成長にとどまると予測した。先進国経済の回復で16年は東南アジアで緩やかな成長の回復を見込む。

 日経センターは「アジア経済短期予測」として年2回、中国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイの計5カ国の実質国内総生産(GDP)の成長率の予測を公表している。今回は15年前半の中国経済の減速を受け、1月時点の予測を下方修正した。15年の中国の成長率は14年の7.3%から7%未満に落ち込むと予想。東南アジア4カ国の成長率は14年から微減の4.4%とした。

 中国経済減速の影響を最も大きく受けるのはマレーシアで、昨年の6%から15年は4.4%に成長が減速する見通しだ。輸出が屋台骨の同国経済は貿易面で中国への依存度が高い。今年4月に導入した消費税の影響で国内消費も減速する。

 タイも中国への依存度が高いが、14年にクーデターなどの政情不安で主要産業の観光業が大きなダメージを受けた反動で15年は2.7%まで回復する。ただ、中国人観光客の減少が成長の重荷になる恐れは残る。

 インドネシアの成長率はリーマン・ショック後の09年以来、6年ぶりに5%を割る見通しだ。ジョコ政権が掲げた大規模なインフラ投資の実行が遅れており、1月予測を0.8ポイント下方修正した。主要な貿易相手の日本、中国向け輸出が減少しているほか、GDPの約5割を占める消費が減速して成長の足かせとなる。

 フィリピンはほかの東南アジア主要国と比べて堅調だが、来年に大統領選を控え、憲法の規定で出馬できないアキノ大統領の経済政策が継承されるかが不確定要素として残る。

 今後は先進国経済が回復する見込みで、16年の東南アジアの大半の国で、14年並みへの持ち直しかそれ以上の回復を予想した。日経センターは「政情安定や構造改革の推進がアジアの成長のカギを握る」とみている。



核心 中国症候群に悩む世界 生きなかった反面教師 編集委員 滝田洋一 2015/09/28 本日の日本経済新聞より

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 米中首脳会談を経て、中国経済をみる世界の目が確実に変わっている。無敵の昇竜ではないことが、あらわになりつつあるからだ。

 8月11日ショック。この日、中国人民銀行が突然の人民元の切り下げに踏み切った。中国株バブルが崩壊し、景気も失速気味とあって、輸出拡大を狙った元安誘導との見方が広がった。

 誰よりも慌てたのは、当の中国だったはずだ。今回の措置の狙いは、元相場の柔軟性を増すことで、国際通貨基金(IMF)のSDR(特別引き出し権)入りを狙うものだったからだ。現にIMFは11日の当日に、「歓迎すべき第一歩」との声明を発表している。

 金やドルと並ぶ公的準備資産であるSDRは、ドル、ユーロ、英ポンド、日本円の4通貨で構成する。そのSDRに元も加わろうという願望。普通の日本人にはピンと来ないだろう。

 来年、20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)を開催する習近平政権にとっては違う。国際金融の場でも自らを真の大国と認めさせる、重要なステップと位置づけているのである。

 その意図がうまく伝わらない。抜き打ちの政策変更は市場に疑心暗鬼を引き起こした。新興国通貨の連鎖安と株式市場の混乱の引き金となってしまった。

 「中国が売りに回っている」。8月下旬から米国債市場でそんな情報が駆け巡った。案の定、中国の外貨準備は8月中に1000億ドル近く減少した。昨年6月末には4兆ドルに迫っていた残高は、今年8月末には3.5兆ドル台まで減った。

 中国当局が意図的な米国債離れを仕掛けた。そんな観測もあった。ここでも市場は意図を読みあぐねた。

 米国債売りの主因は、中国からの民間資本の流出にこそある。当局が為替取引を管理する中国では、民間のドル買いには、人民銀がドルを渡さねばならない。その分、外貨準備で保有する米国債を処分しなければならない。米国債の売却は意図的なドル離れなどでなく、外貨のやり繰りが窮屈になった現れなのである。

 市場は長く伸びる中国の影に一喜一憂する。根っこの問題はいうまでもない。投資と外需を原動力にした経済の行き詰まりである。

 リーマン・ショックを中国は4兆元(1元=約19円)の経済対策で乗り切り、日本を抜き世界2位の経済規模となった。そこまでは見事な成功物語だった。

 だが鉄鋼の過剰生産能力だけで4億トンと、日本の鉄鋼生産の4年分。過剰設備の問題が深刻化した。その反対側にあるのは、過剰債務という爆弾である。

 中国の総債務は14年には149兆元と、リーマン前の07年の41兆元に比べ3.6倍に。名目国内総生産(GDP)に対する総債務の比率も234%と、その間に81ポイントも上昇した。企業債務のGDP比は157%で、バブル期の日本企業の140%前後をも上回った。

 こうした過剰設備と過剰債務は経済の足かせとなる。習政権が「投資から消費へ」の転換を試みたまではよい。だが消費が活発になる前に、投資を引き締めたことで、必要以上に景気を減速させてしまった。

 株価を高くすることで人々の懐具合を温かくし、経済を消費主導の成長へと軟着陸させよう。今年前半に中国当局はそうした思惑を抱き、共産党機関紙などを通じ株高を後押しした。

 「沼に落ちた時には、自分の髪の毛をつかんで脱出したものさ」。そんなほら吹き男爵の物語を思い出させる話である。沼は実際の経済、髪の毛は株価である。結局、株式バブルは崩壊し、事態は一層悪化した。

 中国の株式取引の8割以上は個人投資家で、機関投資家は2割に満たない。だから株価が下がっても、金融システムが深刻な影響を被ることはない。多くのエコノミストはそういう。

 見方を変えれば、「中国の夢」を信じて初めて株式投資に手を染めた人が、少なくないということだ。6月までの株高局面で、個人の株式取引口座数は2億口座を突破した。しかも個人株主の9割以上が、月収1.6万元つまり約30万円に満たない人たちなのだ。

 今月初め、アンカラで開いたG20財務相・中央銀行総裁会議で、人民銀の周小川総裁は中国のバブルに3回言及した。その意味は、ほかならぬ周総裁が誰より承知しているはずである。

 1985年のプラザ合意後に膨らんだバブルとその崩壊が、日本経済の失われた20年を招いた。「日本を反面教師にしている」。そう胸を張っていた中国は、前車の轍(てつ)を踏もうとしているかのようだ。

 ここ30年、世界中で様々なバブルが発生した。はじけた後は共通の爪痕が残る。身の丈に合わぬ信用膨張と過剰債務である。

 中国と日本のバブルに違いがあるとすれば、多くの新興国や資源国が中国の「爆買い」を頼りに経済を運営していることだ。今やその反動が起きつつあり、世界経済に悪寒が走る。

 米連邦準備理事会(FRB)は9月に利上げを見送った。その理由として、中国など新興国経済の不透明感を挙げた。市場はその言及に驚き、身をすくめた。

 中国の経済運営がブラックボックスである限り、世界は不確実性の霧に覆われる。日本も例外ではない。アベノミクスもプランB、つまり世界経済が万一の際の備えを、懐に用意しておく局面なのかもしれない。



グローバルオピニオン 波乱の夏、長期リスクに警鐘 米ユーラシア・グループ社長 イアン・ブレマー氏 2015/09/28 本日の日本経済新聞より

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 米国に本拠があるニュースサイトのチャイナ・デジタル・タイムズは7月、ある漏洩文書を公開した。金融市場を取材している中国人ジャーナリストに対し、中国政府が監視していると伝える内容とされる。この文書は「深く掘り下げて分析してはならない。市場の方向について臆測で記事を書いたり評価したりしてはならない」と警告している。「パニックや悲嘆を誇張してはならない。『落ち込み』『跳ね上がる』『急落』などの感情的な言葉を使用してはならない」。このところ国営メディアは、上海株式市場の混乱について責任を認めたジャーナリストの「告白」を伝えている。

 われわれが懸念すべきは、中国市場の不安定さや、それが中国経済に及ぼす影響ではない。中国政府が議論を禁じ、責任を認めるスケープゴート(いけにえ)を探すことでこの問題に対処したことだ。

 中国経済への不安は誇張されすぎているが、中国の景気減速が世界に及ぼす影響に恐れを抱くのは当然のことだ。中国は世界の主要貿易国であり、商品相場の主なけん引役だ。多くの国が、中国の成長鈍化で痛みを感じている。

 しかし中国経済が「ハードランディング」に向かうわけではない。戦略的に重要な部門に幅広く巨額の投資をする中国の能力は、中国が今年の成長目標である「約7%」に近づくことを示唆している。確かに上海株式市場は大幅に下落したが、市場の大幅な下落の方が、それ以前の(そしてはるかに大幅な)上昇よりも中国経済の基調について多くのことを教えてくれるとなぜ言えるのだろうか。

 また、中国人民元の基準値引き下げ決定を過度に警戒する必要はない。中国と貿易相手国とのバランスを大きく変えるほど大幅なものではないし、国際通貨基金(IMF)はこの動きを称賛した。人民元の価値が市場実勢により近くなるからだ。手短にいえば、中国経済は多くの人の認識よりも安定しており、その国際的影響力は拡大を続けるだろう。

 しかし中国についての不安を無視しても構わないと判断する前に、中国の波乱の夏によって、中国経済に依存しすぎている政府や企業が、中国への賭けをヘッジしなければ長期的な危険に直面すると認識することを期待しよう。

 中国の指導者が、市場への介入などによって必要な改革を遅らせる傾向があることは懸念される。さらに恐ろしいのは、中国の指導者が難題を管理するため検閲や処罰に依存する習癖があることだ。

 もう一つ懸念がある。中国は経済改革なしに強く安定した経済を維持することはできない。国民の中国製品の購買力を強化することによって、輸出依存から脱却する必要がある。その成否は中国の消費者に富を大規模に移転できるかどうかにかかっている。

 富の多くを引き渡さねばならない人々が改革に抵抗しないことを確実にするため、習近平国家主席は汚職撲滅運動に乗り出した。共産党から既に数千人が追放され、さらに数千人が収監されている。今のところ、習主席は全面的に権力を掌握しているが、増える一方の政敵は、習主席が国民の信頼を失う瞬間を待っているかもしれない。これは、より長期的なリスクだろう。

 要約すれば、短期的な懸念は誇張されすぎている。しかし、中国の成長に依存している政府や企業が不安定さに備え、リスクヘッジが必要だと考えるようになれば、そうした懸念は有益かもしれない。

Ian Bremmer 世界の政治リスク分析に定評。ユーラシア・グループは米調査会社。著書に主導国のない時代を論じた「『Gゼロ』後の世界」など。45歳。



こころの健康学 同じ状況の人を参考に つらさ乗り越える 2015/09/27 本日の日本経済新聞より

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 自殺対策の啓発活動の内容を表現するのに「ウェルテル効果」と「パパゲーノ効果」という言葉が使われる。ウェルテル効果とは、ゲーテの小説「若きウェルテルの悩み」が出版され注目を集めたときに、失恋をして自殺する若者が増えたことから名付けられた言葉だ。

 その後の調査から、有名な俳優や歌手が自ら命を絶ったという報道があると、後追いをする若い人たちが増えることがわかっている。こうしたことから、自殺報道はもちろん、自殺予防キャンペーンのような啓発活動でも、自殺だけを前面に打ち出すとかえって自殺を誘発する危険性があるので注意しなくてはならないとされている。

 一方、パパゲーノ効果というのは、モーツァルトの歌劇「魔笛」に登場するパパゲーノという人物をモデルに考えられたものだ。

 この中でパパゲーノは、愛する女性を失ったことに悲観して自ら命を絶とうとしたが、3人の童子の助けで思いとどまる。自殺対策キャンペーンでは、単に自殺の現状や対策の必要性を訴えるだけではなく、死にたいと思うほどに苦しい状況を乗り越えたエピソードを紹介することで、危機を乗り越えようという気持ちを引き出すことが大切だとされている。

 パパゲーノのようなモデルを紹介することは、日常生活でも有効だ。私たちは誰でも、つらく苦しい場面に直面する。そのようなときは、誰にでも起こることだと片付けるのではなく、同じような状況を乗り越えた人の話などを見聞きしてモデルにすれば、上手に対処できるようになる。

(認知行動療法研修開発センター

大野裕)



米中首脳会談 米、歓迎ムード抑制 2015/09/27 本日の日本経済新聞より

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 【ワシントン=吉野直也】中国の習近平国家主席の首都ワシントン訪問に対し、米国では警戒と歓迎が広がった。オバマ米政権は歓迎ムードを抑制し、首脳会談後の共同記者会見では緊張感が漂う場面もみられた。ホワイトハウスの外側では習主席の訪米を歓迎する人らと、中国の人権侵害への抗議デモが交錯した。(総合・経済面参照)

ホワイトハウス周辺で中国政府に政治犯釈放を求める民主派団体(25日)

 ホワイトハウスの大統領執務室に隣接するローズガーデンで開いた共同記者会見。約1時間に及んだ会見で2人はほとんど目を合わせず、オバマ米大統領は習氏が話している最中、真正面を向き、遠くをみつめたままだった。オバマ氏が「少数民族の平等な処遇を否定するのは問題だ」と人権問題の改善を訴えても、習氏は「各国には異なる歴史や現実がある」と平然と言い返した。

 米メディアは25日も、習氏と訪米時期が重なったローマ法王の国連での演説など詳細を報じた。ベイナー下院議長(共和党)の辞任問題も加わったことで、メディアでの米中首脳の関連行事はかすんだ。

 対中強硬論が高まる共和党の反発を見据え、習氏とローマ法王の訪米を同時期にして米中の協調演出を抑える――。この点だけはオバマ政権の狙い通りに進んだようにみえる。

 ホワイトハウス周辺には多くの在米中国人らが集まり、歓迎と抗議に分かれた。「熱烈歓迎 習近平主席」との旗を掲げたのは米中の文化交流団体のほか、中華料理店やエネルギー関連の業界団体など。

 これに対し、民主派団体、中国民主党全国委員会の徐聞さん(25)は、天安門事件のTシャツを着て政治犯の釈放を訴えた。「米国に留学するまで事件のことは知らなかった」という。チベットやウイグルの弾圧を非難する団体も習氏を批判する看板を掲げた。

 ミシェル・オバマ米大統領夫人と習近平国家主席の彭麗媛夫人が25日、ワシントン市内の国立動物園を訪れ、8月に生まれたばかりのパンダの赤ちゃんを「貝貝(ベイベイ)」と名付けた。彭麗媛夫人は「両国の人々をさらに近づける絆が必要で、パンダこそそうした絆の一つです」と語り、友好をアピールした。動物園によると「貝貝」は「かわいらしい宝物」を意味するという。

冷たい関係、世界に影

 米中西部アイオワ州の田舎町マスカティン。穀倉地帯の住宅街で、話題の家を見る機会があった。1985年、中国河北省正定県の書記だった習近平国家主席は、農業視察団を率いて初の訪米に臨んだ。その際に2泊した場所である。

 よほど印象に残ったのだろう。国家副主席として訪米した2012年には、当時のホストファミリーと旧交を温めた。この家を18万ドルで買った中国系の実業家は、米中の友好を象徴する博物館に改装したいという。

 習氏は25日の歓迎式典でマスカティンの思い出に触れ、オバマ米大統領との融和ムードを演出しようとした。だが首脳会談で際立ったのは、両者の埋めがたい溝だ。

 チャイナとアメリカを掛け合わせた「チャイメリカ」。そんな造語が生まれるほど、2つの経済大国は相互依存関係を深めている。それは冷戦下の米国とソ連のような決定的対立を回避する「安全装置」でもある。

 だが米中のパワーバランスは変わった。南シナ海での岩礁埋め立て、悪質なサイバー攻撃、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設――。米国の覇権に挑む習氏と、中国の台頭にいら立つオバマ氏の冷たい関係は、世界に影を落とす。

 習氏が初めて訪米した30年前、中国の国内総生産(GDP)は米国の7%だった。いまや60%に達し、今後20年程度で米国を抜く可能性がある。中国が「新型大国関係」を旗印に米国と対等に渡り合おうとするのは、経済発展に裏打ちされた強い自信の表れだ。

 アフガニスタン・イラク戦争とリーマン・ショックで国力が衰えた米国は、中国の挑戦に危機感を強める。バイデン副大統領はライバルを「利害関係者」ではなく「競争相手」と呼び始めた。

 米軍機への異常接近や米領海への侵入を繰り返す中国。中国のサイバー攻撃に対する制裁措置をちらつかせる米国。今回の首脳会談では、両国の緊張を和らげる最低限の枠組みで合意するのが精いっぱいだった。

 米ハーバード大のジョセフ・ナイ特別功労教授は、米国が対中戦略を使い分けるしかないと話す。(1)中国との対話を通じて世界との統合を深化させ、法とルールの順守を促す(2)日本を含む同盟国との関係を強化し、中国の挑発行動を抑止する――という二段構えの作戦である。

 中国も米国と事を構えることを望んではいない。習氏は訪問先のシアトルで、新旧の大国の衝突が避けられないという「ツキジデスのわな」に言及し、対話と協調の重要性を訴えた。

 米中関係が冷え込んだままでは、国際社会の安定もおぼつかない。世界の行方を左右する運命共同体「チャイメリカ」。その責任を行動で示す指導者の覚悟が問われる。

(ワシントン支局長 小竹洋之)



税金考 ビジネスの現場で(3) 仏つくって魂は 活力育む工夫乏しく 2015/09/27 本日の日本経済新聞より

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 「これで空振りは10件以上だ」。都内の大手法律事務所で企業買収を担当する中堅の弁護士(34)が天を仰いだ。ある上場企業から相談を受けていた同業他社の買収計画が白紙に戻った今年初めのことだ。

税制がインフラに民間マネーを呼び込めるかを左右する(青森県六ケ所村で前田建設工業が運営する風力発電所)

 買収規模は1千億円を超す。買収先企業の株主には、現金の代わりに自社株を渡すつもりだった。「自社株対価TOB(株式公開買い付け)」と呼ばれる手法だが、身売り企業の株主は税法上保有株を売却したとみなされ課税されてしまう。現金収入を手にしなくとも税金がかかる矛盾があり、とても株主の理解を得られない。結局、この会社は買収そのものを断念した。

■利用実績ゼロ

 自社株対価TOBは2011年施行の改正産業活力再生法(産活法)で「手続きは容易になったが税制のハードルが高い」(勝間田学弁護士、38)。同法に基づく利用実績はゼロのままだ。日本の上場企業は市場から買い取った自社株(金庫株)を今年3月末時点で約20兆円抱えるが、企業買収になかなか生かせない。

 経済の活性化を促す制度は整えたのに税制がその普及を阻む。そんな不思議な光景が広がっている。

 青森県・下北半島の付け根に位置する六ケ所村。強い風が吹き付ける尾駮地区で高さ約120メートルの巨大な風車が回っている。前田建設工業が4月に稼働させた風力発電所だ。

 同社は自己資金と銀行融資を活用して太陽光や洋上風力発電所の建設・運営にも乗り出しているが、岐部一誠常務執行役員(54)は不満げだ。「インフラファンド市場がきちんと機能していれば、お金が集めやすくなり事業も広げやすいのだが……」

 投資家から集めた資金で発電所や空港などの大規模施設を運営し収益を分配金に充てるインフラファンド。東京証券取引所が4月に専用市場を開設したが9月時点で上場実績はゼロ。ファンドがインフラ投資で利益を上げると法人税がかかり投資家への分配金が少なくなってしまう。税制が普及の障害になっている。

 2001年から始まった不動産投資信託(REIT)。利益の9割超を投資家に分配するなら恒久的に法人税がかからない仕組みを取り入れ、市場は一気に10兆円規模に広がった。

■終わらぬ特別措置

 インフラファンドも非課税になる特例はあるが、資産の半分以上を再生エネルギーで占めるファンドのみだ。加えて、非課税措置は10年間の時限措置で長期の投資マネーがそっぽを向いている。東証は「REITと同じ扱いにしてほしい」と求めるが、財務省は「インフラ市場はプロの投資家を相手にする市場だ」と慎重姿勢を崩さない。

 財務省内には優遇税制(租税特別措置)への根強い不信がある。1951年に当時の産業再生策として導入した船舶向けの租税特別措置は役割を終えたとの議論が再三浮上するが、負担増を嫌う関係業界は廃止論に猛反発。岩盤税制となって今も残る。

 だが、国の借金は1000兆円を超し経済規模の2倍になった。老朽化する公共インフラの維持や有効活用には民間マネーを生かす工夫がどうしても必要になる。課税の公平を名分に成長の芽を見過ごせば経済の活力は衰え税収も増えなくなる。活力か公平か。税制はそのバランスが日々試されているのだが……。