大機小機 構造変化の渦中にある日中経済 2015/10/31 本日の日本経済新聞より

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 つい先日、米ニューヨーク・タイムズに「息切れする日本経済」と題する解説記事が掲載された。

 消費増税と中国経済の減速による需要減に加え、労働力の減少を主因にした潜在成長率の低下(現在はほぼゼロ)によって、ちょっとしたショックで景気後退に陥る状況にある、というのだ。

 専門家の共通見解といってよいが、労働力減少による供給制約が進行していることを改めて想起させられた。日本経済の構造問題はここにある。

 中国経済も大きな構造変化に見舞われている。2桁の実質成長率を堅持した高度成長時代は2010年で終わった。今年は4~6月まで7%成長という政府目標を維持したが、7~9月に6.9%に低下した。

 内需の状況を示す輸入額は、昨年11月からマイナスに転じ、今年9月は20.4%の大幅減を記録した。内需は急激に萎縮している。

 構造要因として日本と同様に労働力の供給制約を重視する見方が有力である。農村部から大都市への労働力供給が減少し、経済学でいう「ルイスの転換点」、つまり労働力の無限供給が終わる転換点を通過した、というのだ。たしかに成長率は低下しているのに都市部の失業率は4%と最低水準にある。

 日本はルイスの転換点を1960年代初頭に通過したとされているが、その後も人口は増え続け、大都市圏への人口流入も継続した。この結果、大都市圏での家計需要が盛り上がり高度成長が実現した。70年代初めに大都市圏への人口移動が収束すると高度成長時代も終わりを告げた。

 中国は大都市への人口移動の減少と、これまでの一人っ子政策の影響による生産年齢人口の減少が同時並行で進んでいるようだ。

 中国経済のもう一つの構造変化は、サービス経済化が徐々に進展していることだ。国内総生産(GDP)構成比でみると家計消費が着実に増え、第3次産業が第2次産業を上回ってきている。中国は家計消費、サービス産業を基盤にした安定成長への移行期にあると見ることができる。

 日中経済はともに構造変化の渦中にあり、それに対応した構造改革が求められている。両国とも技術革新、規制緩和による需要創出、生産性向上と人口減対策が急務である。



東南ア、中国けん制へ傾く 米の関与拡大に呼応 インドネシア「南シナ海、懸念共有」/マレーシア「建設行為、不当な挑発」 2015/10/31 本日の日本経済新聞より

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 【シンガポール=吉田渉】東南アジア諸国連合(ASEAN)が南シナ海で埋め立てを強行する中国のけん制に傾きつつある。駆逐艦派遣など米国の対中圧力強化に呼応し、「中立」を保ってきたインドネシアやマレーシアも対中批判を公言し始めた。中国は巻き返しを狙っており、11月に相次ぐ国際会議で米国との綱引きが続く見通しだ。

 ASEANが11月3、4日にマレーシアで開く国防相会議が公の場での米中攻防の第1幕となる。米駆逐艦が中国が「領海」と主張する南シナ海の人工島12カイリ(約22キロ)以内を航行してから初の大規模な国際会議で、日米中韓豪も参加する。米中は紛争当事国を抱えるASEANの支持をそれぞれ取り付け、主導権を握る構えだ。

 ASEANは米中双方に配慮する姿勢を続け、南シナ海を巡る紛争を巡って曖昧な対応を繰り返してきた。だが足元では中国の強硬な海洋進出への反発が目立つ。

 「南シナ海で緊張を高め、信頼を損ねる動きへの懸念を共有する」

 インドネシアのジョコ大統領は26日に開いたオバマ米大統領との会談後に共同声明を発表した。人工島に軍事施設の建設を進める中国が念頭にあるのは明らかだ。

 「南シナ海での中国の建設行為は不当な挑発だ」

 ロイター通信によると、マレーシアの軍高官は18日、北京の安全保障関連会合で中国を公然と非難した。

 ASEAN加盟10カ国の南シナ海問題を巡る対応は分かれてきた。(1)領有権紛争を抱えて中国を批判するフィリピン、ベトナム(2)米中両国に配慮して「中立」を決め込むインドネシアやマレーシア(3)中国の立場を支持するカンボジアやラオス――の3つだ。

 中立を保ってきたインドネシアなどが対中批判にカジを切った背景には米国の対中政策の転換がある。9月末の米中首脳会談で南シナ海を巡る議論が平行線をたどり、オバマ政権は「説得」から「圧力」に軸足を移した。

 「米国が関与拡大を明確にしたことで、中立国も対中批判を公言しやすくなった」(外交筋)。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が大筋合意に達したことで、米国との関係強化が経済成長に欠かせないとの思惑も背景にありそうだ。

 米や日本は東南アジアで11月中に開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)や東アジア首脳会議でASEAN支持を表明し、中国の埋め立て停止に向けて共同戦線を張る青写真を描く。

 ただ「中立国」の一つとみなされてきたタイは軍事政権を批判する米国から距離をとり中国に接近する気配もみえる。中国の習近平国家主席は11月上旬にベトナムとシンガポールを訪問し経済連携の拡大を通じて対中批判を抑え込む構えを示す。



真相深層 辺野古移設、反対だけでは意味がない 仲井真前沖縄知事に聞く 基地の危険除去進めるべき 2015/10/31 本日の日本経済新聞より

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 沖縄県の米軍普天間基地の名護市辺野古への移設問題で、政府と沖縄県の対立が深刻さを増している。2013年末に埋め立てを承認した仲井真弘多前知事が、日本経済新聞のインタビューで、かつて行動を共にした翁長雄志知事や本土への思いを語った。

仲井真弘多前知事

行政の責任放棄

 ――政府は埋め立て工事に踏み切った。

 「尖閣諸島など安全保障環境を考えれば、前に進めないといけない。安全保障の問題を最終的に決めるのは政府だ。安倍晋三首相や菅義偉官房長官のような能力のある人がそろっている時じゃないとなかなか進まない」

 ――代執行など政府のやり方は強引だとの批判がある。

 「政府は20年間抱えている懸案だ。普天間基地の危険を取り除くために必要なことはやるべきでないか。現実的なものに手をつけず、反対だと言い続けるのはナンセンス。激しい議論は当然だが、政治家ならずっと平行線では意味がない」

 ――翁長氏は一歩も引かない。

 「ただ反対するのは市民運動ですよ。知事が市民運動のリーダーシップをとるのは行政の責任を放棄したのと同じ。政府とどこかで折り合うつもりがあるなら別だが、ないとすればどこまでいっても何のプラスもない」

 ――仲井真さんも10年知事選では普天間基地の県外移設を訴えていた。

 「県民からみて最も望ましいのは県外移設だ。私もずっと追求してきた。しかし実現性が高く、最も早く普天間基地の危険性を除けるのはやはり辺野古だ。米軍が絡む事件・事故を限りなくゼロにする。日米地位協定を変えていく。こういうことをしっかりやってもらえば、県内も落ち着いてくると思う」

 「沖縄が過重負担なのは確かだ。演習場や海・空の制限区域が多く、植民地とまでは言わないが、文字通り外国があると言っていい。基本的な感覚は革新も保守も僕も9割は一緒。ただ最後の結論がね」

 ――翁長氏はいつから考えが変わったのか。

 「聞いてみてくださいよ。(翁長氏がかつて当選した)那覇市長選は頑張って応援した。それを裏切って向こうに行った。政敵とは言わないけど、考え方が違う」

人権問題でない

 ――翁長氏が知事になって1年近くになる。この間、話をしたか。

 「僕はずっと黙ってみていた。話をしたことはないですよ」

 ――翁長氏が翻意することは。

 「移設反対が選挙に有利なのは決まっている。それだけだ」

 ――翁長氏は国連で「基地問題は人権問題だ」と訴えた。

 「基地問題は安全保障問題だ。差別や人権と結びつけるのはおかしい。沖縄を誇りに思う人がいるのに、自らおとしめているのではないか」

 ――沖縄独立論も出ている。

 「昔からある『酒のみ論』ですよ。現実の話だと誰も思っていない。沖縄には昔からいっぱい人が来て、最近も海外の観光客で成り立っている。排他的なアイデンティティー論はだめで、オープンにしていかないと」

 ――心情的に中国に近づくことは。

 「重心が米国か中国かは日本にずっとある話だ。欧州だって中国に寄って来ている。沖縄の人は用心深いからね。中国とつきあって政治的に何かを得ようとするには慎重さがいる」

 ――南シナ海で起こっていることが東シナ海で起こったら。

 「そんなことが起これば沖縄はどうにもならない。政府にお任せし、我々は慎重にお付き合いするに尽きる」



軽減税率の論点(2)経理方法に3案 一長一短 不正防止か負担緩和か 2015/10/30 本日の日本経済新聞より

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 複数の消費税率が混在する軽減税率では、納税額を正しく算出する経理の方法が一段と重要になる。現時点では3案が浮上するがどの制度も問題を抱える。事業者の事務負担を減らそうと経理方式を簡素にすれば、益税が拡大する矛盾を抱えているためだ。

 「いろんな意味で一長一短はある」。29日の与党税制協議会終了後、宮沢洋一自民党税制調査会会長は複数税率導入に伴う企業の経理方式についてこう語った。

 消費税は客から受け取った税額から仕入れのときに支払った税額を差し引いた分を税務署に納める仕組みだ。事業者の取引でいくらの消費税がやりとりされているかを把握する経理方法として、財務省は長年、欧州連合(EU)型インボイス(税額票)と呼ぶ仕組みを推してきた。

 税額票はモノを売った側が買い手に渡す伝票で、商品ごとに消費税額を記録している。例えば消費税率8%で税抜き価格が100円の商品を売買すれば、価格の隣に8円と書く。税額を足し合わせるだけで納税額を計算できる。事業者ごとに割り振った番号も明記するためきちんと納税しているかも検証しやすい。

 だが、税額票方式になれば事業者は新しい伝票を作ることになる。「中小・零細事業者は耐えられない」(清水信次日本チェーンストア協会会長)と猛反発。現行の請求書を使う簡易版の税額票方式でも「複数税率に対応したシステムを導入する手間は変わらない」(日本商工会議所)。中小企業の間では「税額票が導入されれば、取引の実態が当局に筒抜けになり徴税強化になる」との声もある。

 与党内でささやかれているのが「みなし課税方式」と呼ばれる仕組みだ。売り上げと仕入れそれぞれに占める軽減税率の対象品目の割合を業種ごとにあらかじめ決めておく。対象品目をいちいち記録しておかなくても簡単に税額の計算ができるのがミソだ。

 だが、この方式は本来納めるべき税額と実際の税額に差が出てしまう問題がある。どんぶり勘定で売上高や納税額を決める面があり経済取引に応じて課税する消費税の原則から外れてしまう懸念が根強い。経理方式を巡る議論は袋小路に陥っているようにも見える。



「米、岩礁に主権認めず」米ハーバード大学特別功労教授ジョセフ・ナイ氏 人工島は「動けぬ空母」 2015/10/29 本日の日本経済新聞より

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 中国が「領海」と主張する南シナ海の人工島12カイリ(約22キロメートル)内の海域で米海軍が駆逐艦による哨戒活動に乗り出し、米中関係は緊迫の度合いを強めている。米国の意図、思惑、狙いは何か。2016年の米大統領選有力候補、ヒラリー・クリントン前国務長官の選対本部でアジア委員会の共同議長に就任したジョセフ・ナイ米ハーバード大学特別功労教授に聞いた。

 ――南シナ海で米中両国による対立の度合いが強まっています。

 「先にワシントンで行われた米中首脳会談で、習近平国家主席はサイバー問題について従来の立場を百八十度転換したが、南シナ海を巡る問題については何の進展も得られなかった。だから、我々は論争の対象となっている(人工の)島々の近辺で、航行の自由が確保されているかどうかを確認する作業に着手した」

 ――米国はどのような立場ですか。

 「我々は岩礁などに主権の存在は認めず、公海は海洋法にのっとって治められるべきだという見解、立場をとっている。海洋法は岩礁や砂を移動させることを認めておらず、それを領土、領海と見なすことも、排他的経済圏と呼ぶことも禁じている」

 ――中国が全ての人工島を完成させれば、南シナ海における米国の制海権は低下し、この地域における米中間のパワー・バランスが崩れるという見方もあります。

 「そうは思わない。実際、人工島はとても脆弱で、『動けない空母』のようなものだとする声も多い。固定された攻撃目標であり、沈めるのは容易だ」

 ――具体的な方策は。

 「ある米軍OBの友人によれば、例えばフィリピンに弾道ロケット施設を新設し、狙いを定めることができる。それによって、(人工島を)軍事的には完全に無意味なものにすることは可能だ」

 「我々が航行の自由を確かなものにすることができれば、(人工島が)情勢を大きく変える『ゲーム・チェンジャー』には成り得ない。そのために(人工島の)12カイリ以内で艦船を航行させ、上空に航空機を送り込んでいる。こうした行動は今後、数週間は続くことになるだろう」

 ――2001年に海南島で発生した米中両国軍機による接触事故のような危機は招きませんか。

 「確かに、EP3(偵察機)事件のような問題が起こる可能性は常にある。ただ、それは首都(政府)の決断にかかっているとも言える。EP3事件もきっかけは、一人の中国人パイロットが(米側に)タフであると見せつけようとしたことにすぎなかった。問題は北京(中国政府)が事態をエスカレートさせたいと思っているかどうかだ」

 「中国では今、経済成長が減速しつつあり、そうした中で米国との紛争は最も望んでいないはずだ。米国との紛争に足を踏み入れるなら、習氏は相当なリスクに手を染めることになる」

 ――習指導部による人民解放軍の統制に疑問符も付き始めています。

 「中国には政争があり、習近平は常に自身の政治的統制力を心配しなければならない。反腐敗のキャンペーンは政敵を追い込む武器であり、実際、多くの人間が『次は自分では』とおびえている。習氏の統制力に問題があることは確かだが、鄧小平氏以来、最も強い権力を握っていることもまた、事実だと思う」

(聞き手は編集委員 

春原剛)

 ジョセフ・ナイ氏 1958年に米プリンストン大学を卒業した後、米ハーバード大学で博士号を取得。国務次官補、国家情報会議(NIC)議長などを経て、クリントン政権で、国防次官補に就任、日米同盟の再強化などに尽力した。



軽減税率の論点(1)「益税」膨らむ懸念 現状でも5000億円が事業者の懐に 税額票導入には時間 2015/10/29 本日の日本経済新聞より

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 消費税率を10%に上げるとき一部の商品だけ税率を8%に据え置く軽減税率案作りが27日から与党で本格的に始まった。納税すべき消費税が事業者の手元に残る「益税」の防止、対象品目の線引き、財源の確保など論点は多岐にわたる。家計や企業の日々の経済活動に影響を与える軽減税率の論点を検証する。

 「軽減税率を導入すると、益税が大きくなっていくことは間違いない」。27日、1カ月ぶりに再開した与党税制協議会後、宮沢洋一自民党税制調査会長はこう語った。

免税業者500万超

 消費者が払った税金が事業者の財布に入ってしまう益税。公平の観点から長く問題視されてきた益税の原因は2つある。

 1つは「事業者免税点制度」と呼ぶ零細事業者向けの特例措置だ。この制度では年間売上高が1千万円以下の事業者はお客から8%分の消費税をもらっても税務署に納めなくてもよい。受け取った消費税と仕入れのときに払った消費税の差額が益税として自分の手元に残る。

 例えば、200円のモノを16円(8%)の消費税を払って仕入れた場合。販売時に300円で売って24円の消費税をお客から受け取ると、差し引き8円が残る。免税事業者は納税義務がないので益税として事業者の懐に入ってしまう。

 財務省によると、国内にある約800万の事業者のうち500万超は免税事業者だ。仮に免税事業者がなくなりすべての事業者が納税すれば、国・地方を合わせた消費税収はいまより約4500億円増えるという。

 売り上げが1千万円を超えても5千万円以下なら益税がある。業種ごとに売り上げに占める仕入れ額の割合(みなし仕入れ率)を推計し、簡単に納税額をはじく簡易課税制度。これが益税の2つめの原因だ。

 「みなし仕入れ率が実態より高い」。12年に調査した会計検査院はこう指摘した。

 みなし仕入れ率が高いほど仕入れ時にたくさん消費税を払ったとみなされる。受け取った消費税と実際に払った消費税の差額である益税が増える。検査院によると、運輸・通信業などは実際の仕入れ率が32.4%だったのに対し、みなし仕入れ率は50%と乖離(かいり)していた。

 鈴木善充近畿大講師の推計によると、益税の規模は総額で約5千億円。消費税率1%分の税収2.7兆円の2割弱に相当する。

不正の温床に

 現行制度のまま消費税率を10%に引き上げ、同時に軽減税率を入れた場合、何が起きるのか。

 まず、消費者から受け取る税金が増え益税が増えやすくなるので不正が増える。東京都内のある飲食店オーナーは証言する。「お客さんから消費税は受け取っているが、うちはレジがない。領収書を書いていない伝票をゴミ箱に入れれば売上高を操作できるし誰もわからない」。消費税率が高くなるほど、こんな脱税が横行し免税事業者になろうとする動きが活発になる構図だ。

 8%の軽減税率で仕入れた商品を10%の標準税率で仕入れたことにするケースも増えそうだ。仕入れ時にたくさん消費税を払ったことにした方が、益税が増えるためだ。税率が上がり、品目によって税率が変わると益税の規模は膨らむ。

 これを防ぐにはあらゆる商取引に商品ごとの税額を表示する厳格なインボイス(税額票)を入れる必要がある。だが、宮沢会長は「(公明党が提案した簡易型の税額票も含め)2017年4月の消費増税時の導入は難しい」とする。中小企業の事務負担が大きいと見ているためだ。

 与党は税額票の導入時期を20年ごろにする考えだが、遅れるほど益税が増える懸念がある。事業者の事務負担が増えず益税も膨らまない制度。与党はそんな経理方式を11月中旬までに打ち出す必要に迫られている。



JT、異次元投資に「勝算」 米たばこブランド、6000億円で買収 規模より伸びしろ、育成 2015/10/29 本日の日本経済新聞より

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 日本たばこ産業(JT)は米たばこ大手レイノルズ・アメリカンが手掛けるブランド「ナチュラル・アメリカン・スピリット(NAS)」の米国外事業を約6千億円で買収する。対象事業の利益実績の286倍もの買収額に株式市場は即座に拒否反応を示した。JTが「これまでのM&A(合併・買収)とは全く異なる新たな一歩」と訴える戦略は、実を結ぶのか。

市場で疑問噴出

 買収発表から一夜明けた9月30日、JTの株価は7%下落した。対象事業の2014年売上高は176億円、税引き前利益は21億円でしかない。JTの小泉光臣社長は「『高い』と言われることも想定していた」と打ち明ける。

 1999年の米RJRナビスコの米国外事業(買収額9400億円)、2007年の英ガラハー(2兆2500億円)と、大型M&Aをテコに成長してきたJT。買収前はわずかだった海外営業利益は今や全体の3分の2を占める。ただ、M&A巧者のJTでも1ブランドだけで6千億円の買収は異次元だ。アナリストらからは「なぜこれだけの金額が必要なのか」との疑問が噴出した。

 M&Aを指揮する新貝康司副社長は「従来と同じ物差しで測ってもらっては困る」と意に介さない。もともと資金力やノウハウを活用し大型買収対象を再浮上させた自負がある。そのうえで今回、NASのブランドや組織、企業文化を取り込むことで自社の成長を加速できると判断した。新貝副社長は「NASは小粒だが成長力のあるブランドで、会社には起業家精神もある。買収額はむしろ保守的」とさえ言う。

 急成長するベンチャーへの投資に近いのだろう。IT(情報技術)や医薬などの業界では成長可能性への巨額投資が珍しくなく、米フェイスブックは14年に対話アプリの米ワッツアップを218億ドルで買収している。

 新貝副社長が例に挙げるのが、米医薬大手ギリアド・サイエンシズのC型肝炎治療薬「ソバルディ」だ。基盤となったのがギリアドが12年に110億ドルで買収した米ファーマセット社。収益力が極めて弱いために過大投資との指摘が多かったが、見事に成長し、ソバルディは既に年間100億ドルを売り上げる。

 実はこうしたベンチャー投資を、JTは自社の医薬事業で多く経験してきた。かつて必要な物質の使用許諾を他社から得て抗エイズウイルス(HIV)薬を共同開発した実績もある。「JTはベンチャースピリットを持っている」(JT幹部)

 規模は小さくてもNASは日本でも急成長している。シェアは1%とわずかだが、14年の販売は約15億本と3年間で2.5倍に。この間、総需要は約1割減っている。売りは香料や保存料を使わずオーガニック(有機)栽培の葉タバコを原料とする独自色だ。1箱480円で、愛煙者の過半数は20~30代。JTが課題とする高価格帯や若い世代の攻略の武器として、単純な数字には表れない魅力も背中を押した。

リスク積極的に

 M&Aの実務経験も豊富な服部暢達・早稲田大学大学院客員教授は「NASが日本で(フィリップ・モリス・インターナショナルの)マールボロ並みの10%のシェアを獲得し、日本と同程度の売上高を海外で確保できれば6千億円に見合ったリターンが得られる」と指摘する。JTにとって低いハードルではない。

 JTが今回の買収をベンチャー投資に例えるなら、リスクも同じように伴う。喫煙を巡る規制や喫煙者減少で、市場の環境が劇的に変わる可能性も否定できない。

 たった1ブランドに6千億円を投じたJTの一手は「世界一のたばこ会社」(小泉社長)実現へ積極的にリスクを取った姿を示す。小泉社長は最近、あえて世界一の言葉を明確に使っている。

 英ユーロモニターによるとJTのたばこ販売は5065億本。中国勢を除くと、最大手フィリップ・モリス(8292億本)との差は大きいが、2位ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(6074億本)の背中は遠くない。異次元M&Aが妥当かは今後の収益の積み上げで示すしかない。

(綱島雄太、成瀬美和)



米同盟国から支持 南シナ海人工島12カイリ内航行 比「力の均衡歓迎」 韓国は評価言及避ける 2015/10/28 本日の日本経済新聞より

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 【マニラ=佐竹実】中国が人工島を造成した南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島周辺を米海軍の駆逐艦が27日に航行したことを受け、アジアの同盟国からは支持する声が広がった。領有権問題を抱えるフィリピンのアキノ大統領は、米国の関与拡大を歓迎する考えを表明。一方で、中国との距離感を図り評価を避ける国もあった。南シナ海問題は、今後相次ぐ首脳級の国際会議でもテーマになりそうだ。(1面参照)

 「力の均衡は、誰しもが歓迎することだ」。フィリピンのアキノ大統領は27日の記者会見で、米駆逐艦が南沙諸島の人工島の12カイリ(約22キロ)以内を航行したことについての評価を問われ、こう答えた。

 今回駆逐艦が航行したミスチーフ礁などは、フィリピン西部パラワン島から約200キロの位置にある。中国はここ数年で埋め立てを急速に進めており、軍事力に乏しい比は日米などとの連携強化に頼らざるを得ない。アキノ大統領は「航行の自由など国際的ルールに基づくものであれば(米国の活動は)問題ない」として、中国けん制の動きに期待感を示した。

 米国の同盟国であるオーストラリアのペイン国防相は27日に発表した声明で、米国の活動が「国際法にのっとったものだ」と評価した。南シナ海は世界の貿易の要衝でもある。ペイン氏は「豪州の輸出品の60%が南シナ海を通過する」と指摘し、同海域の平和と安定のために「米国や他のパートナー国と密接な協力を続ける」と述べた。

 軍事力を背景とした中国の海洋進出を懸念する国々は今回の米海軍の行動を支持する。一方で、経済的つながりの強い中国を過度に刺激することへの配慮も垣間見えた。

 韓国外務省の報道官は27日の記者会見で、駆逐艦の航行について、「そのような(内容の)報道があったのは知っているが、事実関係を把握中だ」として直接的な評価を避け、「南シナ海は重要な海上交通であり、航行の自由の保障などが重要だという点を一貫して表明してきた」と従来の立場を述べるにとどめた。

 中国と領有権を争うベトナムやマレーシア政府も、公式の見解を表明していない。南沙諸島で最大の太平島を実効支配している台湾の国防部(国防省)高官は27日、「状況は把握している」と説明。突発的な衝突に対しての行動計画をすでに準備しているという。

 今回の米国の艦船派遣は、中国の領有権主張を認めない米国の立場を鮮明にした。ただ、中国はこれに反発しており、同海域での偶発的衝突の懸念や緊張が高まった面もある。11月にマニラで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)など、年末にかけて国際会議が相次ぐ。南シナ海の領有権問題に各国がどう対応するかが大きなテーマになりそうだ。

Q&A 世界貿易の3割占める 南シナ海、なぜ日米が重視?

 Q なぜ南シナ海で領有権争いが起きているのか。

 A 第2次世界大戦が終わるまでは南沙諸島は日本の占領地だった。戦後のサンフランシスコ講和条約で日本は領有権を放棄したが、どの国に帰属するのか明確にならなかった。その後、1970年代に海底油田が見つかるなど豊富な天然資源が眠っていることが明らかになり、中国だけでなく、ベトナムやフィリピン、マレーシアなど周辺国が領有権を主張する事態に発展した。

 Q 日米両国が自国から離れた南シナ海を重視している背景は。

 A 中東の石油などの貿易品を太平洋側まで運ぶために重要なシーレーン(海上交通路)が通っているからだ。世界の貿易量の3割以上を占めるとされる。人工島を作り出して周辺海域を領海とする手法を認めてしまえば、南シナ海以外の領有権争いでも中国の影響力が広がりかねない。

 このため米ハーバード大のジョセフ・ナイ特別功労教授は27日、都内で開いた講演で「中国が軍事的行動に出れば、米国との関係悪化など大きな代償を払うことを示す必要がある」と指摘。さらに「埋め立てによる岩礁は国際海洋法上、領土と見なされないことを示すことが重要だ」と述べた。

 Q 中国が南シナ海を自国のものと主張する根拠は何か。

 A 大戦後の47年に当時の中華民国は南シナ海に11本の線を引いた海域を「11段線」と名付けて、領海を主張した。その後、当時は良好な関係にあったベトナムに配慮して同国北部近辺の海域で2本減らした。牛の舌のように見えるU字型の「9段線」を引いた地図を根拠に中国は自国領と主張している。

 ただ領土から12カイリを領海と定めた国連海洋法条約には中国自身も批准しており、自らの主張と食い違っている。



フィンテックの衝撃(3)低コスト・合理性が武器 投資、指南役はロボ 2015/10/28 本日の日本経済新聞より

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 「あなたの年収は」

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 「何歳で引退しますか」

 「運用益は再投資にまわしますか」

推奨投信を即答

 自己資金の運用に迷った都内勤務の弁護士、平岩正さん(38、仮名)は昨年末、資産運用アドバイザーの助言を仰いだ。矢継ぎ早の質問に答え終わると、相手は「最適の資産配分は先進国株2割、新興国株1%、原油8%……」と即答。平岩さんは推薦された低手数料の上場投資信託(ETF)に3千万円を投じた。

 銀行や証券会社でよくある風景のように見えるが、大きな違いがある。指南役はヒトではなく、「ロボ・アドバイザー」と呼ばれる自動プログラムなのだ。

 投資顧問会社「お金のデザイン」(東京・港)が独自開発したプログラムは、8つほどの質問に答えると、国内外の株式や債券、原油や金までを含む資産配分を提示。世界中の6千近くのETFから30~40の推奨ファンドを選び出す。

 実験的にみえるこのサービス、実は米国ではすでに普及期に入りつつある。

 「力強いスタートを切った」。米ネット証券大手チャールズ・シュワブのウォルト・ベッティンガー最高経営責任者は7月中旬の決算発表で胸を張った。3月に手数料無料のロボ・アドバイザーを投入し、わずか3カ月で30億ドル(約3600億円)を集めた。米国全体の市場規模は昨年末で推定200億ドル程度。経営コンサルティングのA・T・カーニーは2020年に2.2兆ドルになると見込む。

ヒト臭さ「不要」

 投資家のニーズを対面営業でくみ取り、預かった資金を運用のプロが殖やす。ヒト臭い既存のビジネスモデルを、フィンテックはあっさり覆す。米国ではロボットがこの分野の職を奪うと脅威論もささやかれる。

 「金融機関の担当者より『アルゴリズム(計算技術)』の方が信じられるわ」

 100万ドル(約1億2千万円)以上の個人資産を運用するサンフランシスコ在住の資産家ミシェル・サンマルティンさん(46)は1年ほど前、資産運用ベンチャーの米シグフィグが提供する人工知能を使った運用サービスに乗り換えた。年間コストは500ドルと従来利用していた証券会社の18分の1だが、運用成績は見劣りしない。「既存サービスは高いだけで情報提供も貧弱。ロボットで十分よ」

 日本にもこの波は及ぶ。そう信じて動く先駆者の一人が柴山和久さん(37)だ。9年間の財務省勤務を経て外資コンサルティング会社に転じ、今年4月に自ら「ウェルスナビ」を起業した。低コストのETFと自動運用を組み合わせたサービスを年明けに始める。コンサル時代、米国で資産運用ビジネスにかかわった柴山さんの目には、日本の現状は「手数料が高く、高リスクの商品に偏っている。適切なサービスがあれば、それは変えられる」と映る。

 低コストを武器に超合理的な投資手法が広がれば、資産運用ビジネスのあり方だけでなく、投資マネーの流れも大きく変わる。



経営書を読む 出現する未来(2) 本当の現実を見る 習慣的思考を保留せよ 2015/10/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のキャリアアップ面にある「」です。





 「U理論」をもう少し詳しく、各プロセスごとに見ていきましょう。

 まず「センシング」は自らの経験の積み重ねによって習慣的に持つに至った先入観や認識をいったん保留し、目の前に展開する現実をひたすら観察することによって、現実世界と一体となる段階と定義されています。簡単に聞こえるかもしれませんが、実際は大変難しいのです。

 多くの人は単に「メンタルモデルをダウンローディング」しているだけであり、自分で見ようとしているものを見ている、すなわち、本当の現実から目をそらし、自分のメンタルモデルに合うものだけを見ている。著者の一人、オットー・シャーマー博士はこう喝破しています。

 事例として、1980年代前半、生産性で米国企業を上回ったトヨタ自動車の工場を、米国の自動車メーカー幹部が視察した時のことが挙げられています。

 米社の幹部は視察のあと「本物の工場は見せてもらえなかった」と語ったとされています。「どこにも『在庫』がなかった、これは本物の工場ではない」というのが理由だそうです。

 この幹部は自分の習慣的メンタルモデルを当てはめてしまい、「ジャストインタイム」の生産システムの本質を見ることができませんでした。あらかじめ見るつもりのものを見てしまい、自分の習慣的思考を「保留」できなかったのです。

 しかし、彼を笑うことはできないのではないでしょうか。なぜなら、私たちの仕事の進め方や判断は過去の習慣的思考パターンを無自覚になぞっているだけのことが多いからです。

 もし組織変革やイノベーション創出を目指すならば、過去の思考パターンを再現するだけの「ダウンローディングモード」に陥っていないか、常に点検する必要があるのです。自分の「無意識の想定」に対する「保留力」を高めておかなければならないのです。