インド与党総書記、モディ首相で「10年政権」 中国台頭に対抗 2015/12/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際1面にある「インド与党総書記、モディ首相で「10年政権」 中国台頭に対抗」です。





 【ニューデリー=黒沼勇史】インドの与党、インド人民党(BJP)の国家総書記ラム・マダフ氏は日本経済新聞のインタビューで、同党のモディ首相のもと「10年政権を目指す」と表明した。19年の次期総選挙もモディ氏を首相候補とし、長期政権を築く考えだ。モディ氏の外交方針をBJPとして支持し、中国を念頭に「覇権国の台頭には日米豪と共に対抗する」と述べた。

インド人民党(BJP)の国家総書記ラム・マダフ氏(ニューデリー)

 マダフ氏が就く総書記はBJP内で総裁、名誉職の副総裁に次ぎ、8人で構成する。同氏はBJPの支持母体「民族義勇団(RSS)」が指名する総書記2人のうちの1人で、BJPとRSSとのパイプ役や、BJPの情報発信の役割を担う。

 マダフ氏は14年の総選挙でBJPが掲げたマニフェスト(政権公約)について「次の10年を念頭に置いた内容だった」と明らかにした。19年の次期総選挙でBJPが勝利した場合、BJPがモディ首相を続投させるかどうかについては「当然だ」と述べた。「次の総選挙もモディ氏がBJPを率いる」という。

 だが、東部ビハール州で10~11月に行われた地方選でBJPは惨敗した。マダフ氏は敗因を「打倒BJPという目的のみで地方政党が連合したため」と分析し、「次回からは少なくとも幾つかの地方政党と選挙協力する」との方針を明かした。今後の地方選を視野に国政で小政党と形成する「国民民主連合(NDA)」を拡大する。

 BJPは下院で単独過半数を握るが、上院では総議席数の2割にとどまり、税制改正などの法案の審議が滞っている。上院議員は地方議会で選ばれるため、地方選はBJPが上院で勢力を伸ばす上で重要になる。

 就任以来30カ国以上を訪れたモディ首相の積極外交については「前政権より国際政治で大きな役割を担うのは歓迎だ」と述べた。インド太平洋地域の平和維持では中国を名指しすることは避けつつ、「他国を出し抜こうと単独行動を取る国があるが、これは覇権国が持つ傾向だ」と懸念を示した。「日米豪など民主主義国は協力しこれに対抗すべきだ」と明言した。

 BJPはヒンズー教至上主義を全国民に強要していると批判されている。13億人弱の国民のうち8割をヒンズー教徒、1割強をイスラム教徒が占める。9月にヒンズー教が神聖視する牛を解体して食べたとされたイスラム教徒が殺された事件があり、BJPの政治家らが宗教対立を招く発言を繰り返している。

 マダフ氏はこの殺人を非難する一方、「雌牛については憲法が(解体禁止を各州が検討するよう)促し、23州が雌牛解体を禁じている。BJPは憲法が尊重されるべきだと考える」と述べた。「国民の大半がヒンズー教徒だ」とも強調。牛肉問題を含め、宗教対立の火種は今後も残りそうだ。



企業預金、伸び最大 10月末、年初から8兆円増 2015/12/30 本日の日本経済新聞より

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 企業の銀行預金が過去最高のペースで伸びている。国内銀行への預金は2015年初めから10月末までに8兆円超増え、伸び幅は比較可能な1998年以降で最も大きい。円安などを背景に企業の売上高が増えた一方で、設備投資などの伸びは限定的にとどまっている。賃金や投資の増加を通じて日本経済の好循環につながるかはなお不透明だ。

 日銀によると、企業による国内銀行への預金額は10月末に201兆円と14年末から8兆円増えた。10月末までの伸び幅で比較すると、7兆円だった13年を上回り過去最高だ。円安を受けて輸出企業を中心に増収となった影響が大きい。

 法人企業統計で、リーマン・ショック前の最高益だった07年度と直近の14年度を比べると営業利益は6兆円増えた。だが、賃金や設備投資は減っており、その分、社内の預金などに充てる内部留保は13兆円も増えた。上場企業のなかではパナソニックやトヨタ自動車など1年間で数千億円規模で預金が増える企業も多い。

 SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは「経済が好循環を取り戻すには企業が稼いだ利益をもっと設備投資や賃金に振り向ける必要がある」と指摘する。金融緩和を続ける日銀の黒田東彦総裁も「収益を使って将来のための行動に移るタイミングには早い者勝ちの面がある」と経営者に積極的な設備投資や賃上げを訴えている。



2016 針路を聞く(3)日本流の統合で潜在力を サントリーHD社長 新浪剛史氏 2015/12/30 本日の日本経済新聞より

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 ――米ダウ・ケミカルと米デュポンの統合など世界的な再編が様々な業界で動き出しています。

サントリーHD社長 新浪剛史氏

 「日本企業もこの流れについていくべきだ。成長するには日本市場だけでは難しい。再編で競争力を高める必要がある。石油元売り業界が動いたのは経済産業省の後押しが大きかった。官が介入すべきでないとの声はあるが、異次元金融緩和のように今は各産業が世界で勝つための『異次元政策』があってもいい」

 「M&A(合併・買収)はもともと狩猟民族である欧米の手法。効率化し短期に利益を上げるDNAがある。同じやり方は日本企業には合わない。中長期的な視点で統合作業を進める日本流を構築しなければならない」

カギは現場重視

 ――サントリーホールディングスは2014年、1兆6千億円を投じて米ウイスキー大手ビームを買収、蒸留酒分野で世界3位になりました。

 「統合のカギは相手を尊重しいかに潜在能力を引き出せるか。ビームの経営陣や米シカゴの本社機能は変えていない。互いに得意分野があり学ぶべきところがある。例えば我々のノウハウを生かし、標準価格帯のバーボン『ジムビーム』をプレミアム商品に近づけることは可能だ。そのために技術陣を送り込んでいる。現場重視は時間がかかるが欧米とは違う統合ノウハウを蓄積したい」

 ――グローバル化を進めるにはそれを支えていく人材も不可欠です。

 「現地企業を任せる人材の不足など、多くの日本企業が買収後のマネジメントに苦労している。ただ、『グローバル人材に』などと言っているのは日本だけ。日本人に力がなければ外国人だけで運営すればいい。だがスキルのある日本人は必要。語学力が足りないなら会得させるしかない。グローバル化は旗振り役が育てば、後はどんどん人材が出てくる。2年後にはサントリーとビームで自然に人材交流できている状態にしたい

 ――東芝の会計不祥事など、15年はガバナンス(企業統治)が問題となりました。

 「東芝に限らないが引退した歴代経営者に口を出させない仕組みは必要ではないか。口出しがあると経営陣は先輩が手掛けたことをやめられない」

 「一罰百戒も重要だろう。エンロン問題など米国は経済事件に極めて厳しく対処した。日本でも問題によっては上場廃止などけじめを明確にしてから再上場させるような手法も必要だろう」

健康寿命延ばせ

 ――17年には消費税率が10%に上がり消費への影響が懸念されます。

 「清涼飲料には適用され酒類は対象外など、軽減税率の区分が話題となっているが、日本経済全体に打撃となることは間違いない。他社とは違う商品を出し続けることで、消費量が減っても利益を確保できる体制を構築したい」

 「市場縮小を補うために、国には平均寿命ではなく、日常的に介護を必要としないで自立した生活ができる『健康寿命』を延ばす施策を打ってほしい。予防医療を徹底的にやれば社会保障費も減り、国内総生産(GDP)を30兆~40兆円は増やすことができる」

 「健康寿命を延ばすためには、新たな社会システムやインフラの構築に医師と産業界が一緒に取り組むことも不可欠だ。血液検査などで得たビッグデータを活用し、企業がサプリメントや食品を開発していくようなイメージだ。中国などアジアでも猛烈な速さで高齢化が進む見通しだ。日本が率先してこの社会システムを整備できれば、競争力のある新たな『輸出商材』にもなるだろう」

(聞き手は中村元)

 ローソン会長を経て2014年から現職。創業一族以外で初のトップ。政府の経済財政諮問会議の議員も務める。56歳。



経営書を読む ジョセフ・L・バダラッコ著「静かなリーダーシップ」(3) 複雑な状況に直面 投資家的にアプローチ 2015/12/29 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のキャリアアップ面にある「経営書を読む ジョセフ・L・バダラッコ著「静かなリーダーシップ」(3) 複雑な状況に直面 投資家的にアプローチ」です。





 静かなリーダーはリーダーシップと責任ある行動のコストの高さを認識しており、複雑な状況に直面したときは自分にどのくらいの「資本=自分の評価と仕事上の人間関係で構成される影響力」があるか確認します。そして、自分の影響力を危険にさらす前にリスクと報酬を考えます。

 その意味では、静かなリーダーは投資家のように見えるかもしれません。強く人の心を鼓舞することはないかもしれませんが、いつ、どのように正しいことをするのかを実践的に考えます。

 バダラッコは影響力を強化する最良の方法として「チーム・プレーヤーになること」を強調しています。皆と一緒にゲームはするが、派手なスタンドプレーはせず、全員が参加し相互支援によって組織が一つにまとまっている姿が理想です。

 行動とリスクに見合った結果を得るには、いくつかのポイントがあります。その一つが「具体的に考える」ことです。「現代の生活、仕事環境は複雑な専門分野に細分化されており、現実に何が起こっているのかを理解するために忍耐強さと粘り強さをもって取り組まねばならない」とバダラッコは主張します。

 さらに、責任を曖昧にしないこと、自分一人で複雑な問題を解決しようとしないこと、一歩下がって時間を稼ぎ適切な人間に対処させることの重要性を強調しています。

 もちろん、どんなに掘り下げて考えても問題を解決できないことがあります。しかし、静かなリーダーは諦めるという選択肢を嫌います。例えばしゃくし定規に規則を適用するのではなく、規則を拡大解釈する余地を探しながら本来の目的を果たす方法を考えます。

 「規則だから従う」と言うのは簡単ですが、策を講じる努力をしなければ、逆に責任逃れにもなりかねません。特定の価値観を守ることに固執するのではなく、静かなリーダーは新たな発想を持って起業家的なアプローチを実行します。



ゼミナール 日本財政は大丈夫か(6) 再建、税収の自然増頼み 2015/12/29 本日の日本経済新聞より

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 アベノミクスの「新3本の矢」の1本目は「希望を生み出す強い経済」だ。2020年ごろに名目国内総生産(GDP)600兆円達成を掲げる。これまで目標としていた名目成長率3%を5年間続けると、600兆円を達成できる。

 政府は名目成長率3%の「経済再生ケース」と2%の「ベースラインケース」で中長期の財政を試算。24日に閣議決定した16年度予算案では税収を57兆6千億円とする。3%の前提では20年度に約70兆円に増える。国と地方を合わせた公債残高のGDP比は14年度の195.6%から20年度に184.2%に減る。

 名目成長率が平均2%だと、公債残高はGDP比で膨らみ続け、20年度には198.8%になる。こうなった場合、今後の財政再建をどうするかという議論はされていない。現政権は、高成長下での税収の自然増により財政再建を進めようとしていると言える。高い名目成長率を前提とする財政見通しは、財政危機の過小評価につながる。

 海外の中期財政見通しはどうか。英国の予算責任局と米国の行政管理予算局の公表資料には、民間予測のGDP伸び率と消費者物価見通しの一覧表が、それぞれの局の見通しと比較する形で掲載されている。予算担当局と民間で大きな違いはなく、米英では中立的な成長率を前提として財政見通しを作成している。

 16年度予算で前提としている名目成長率は3.1%で、民間予測の平均2.1%と比べ甘い見通し。成長戦略としての高めの成長率の“目標”と堅実な財政再建に向けた“前提”は、区別して考えるべきだろう。

(日本経済研究センター)



サウジ財政赤字10.5兆円 16年予算、原油安が打撃 2015/12/29 本日の日本経済新聞より

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 【ドバイ=久門武史】世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアは28日、2016年予算を発表した。歳出から歳入を引いた財政赤字は3262億リヤル(約10兆5千億円)となり、15年実績見込みより約400億リヤル減らす目標を掲げた。底が見えない原油価格の下落が財政を直撃した格好。サウジ財務省は同日、財政改革を進める方針を示した。補助金の見直しや付加価値税をはじめとする新税の導入を検討している。

 サウジの16年予算は歳入が5138億リヤルと、15年実績見込み比で15%減少する。歳出は8400億リヤルで同14%減とした。

 サウジが同日明らかにした財政収支の15年実績見込みは、歳入が6080億リヤルで同年の予算より15%少なかった。逆に歳出は9750億リヤルと予算を13%上回り、3670億リヤルの赤字となった。15年予算は1450億リヤルの赤字を見込んでいた。サルマン国王が国民向けに打ち出した給付金支給のほか、隣国イエメンへの軍事介入の戦費がかさんだとみられている。

 財務省は28日の声明で、向こう5年間で水道や電気の料金などを段階的に見直すとし、こうした民生分野での手厚い補助金を削減する考えを示した。歳入面では「手数料と罰金の水準を見直す」とし、たばこや清涼飲料水を値上げの対象に挙げた。「幅広い経済活動の民営化」も盛り込んだ。

 サウジはムハンマド副皇太子の主導で経済改革プランを策定中だ。

 サウジは国債の発行や外貨準備の取り崩しで急場をしのいでいる。準備資産残高は11月時点で2兆3832億リヤルと前年同月に比べ14%落ち込んだ。このうち「外国証券への投資」は同22%減り、保有株の売却を急いでいるもようだ。国際通貨基金(IMF)は10月、このままでは5年以内にサウジの準備資産が枯渇すると警告していた。

 石油輸出国機構(OPEC)が4日の総会で生産枠の協議を棚上げしたこともあり、原油市場では供給過剰感が解ける兆しが見えない。国際指標の北海ブレント原油価格は1バレル37ドル前後で、14年の高値の3分の1という低水準だ。年明けにも米欧がイランへの経済制裁を解いてイラン産原油の輸出が増えれば、需給が一段と緩むのは必至だ。



中国と世界 膨張とあつれき(5) 海の覇権、百年の計 2015/12/26 本日の日本経済新聞より

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 米海兵隊が拠点とする豪ダーウィン港の経営権が中国企業の手に渡った――。10月中旬、こんな情報が米ホワイトハウスを揺るがした。同港は中国ににらみをきかせる米国のアジア回帰戦略の要衝だ。寝耳に水だったオバマ米大統領は11月17日、初会談したターンブル豪首相に苦言を呈した。「次は事前に知らせてほしい」

米海兵隊が拠点を置く豪ダーウィンの軍港

 豪北部準州から経営権を取得したのは山東省の嵐橋集団。民間企業だが幹部に軍OBで地元市政府の公安副局長だったとみられる人物がおり、豪シンクタンクが軍との関係を指摘する。契約期間は99年に及び、世紀をまたぐ布石になる。

■「孤独な大国」

 嵐橋の葉成董事長は中国国営新華社を通じ「投資は商機のためであり、未来のためだ」と説明した。25年間で2億豪ドル(約175億円)を投資し大型埠頭を設ける構想も披露したが、外交筋からは「100年後には中国海軍の拠点になっているかもしれない」との懸念が漏れる。

 日米の外交当局者には中国を「孤独な大国」と呼ぶ声がある。伝統的に特定の国と同盟を結ばず、自分だけで自分の身を守ろうとするという意味だ。13億人の生活を支える食糧・資源を安定調達するため、米国に対抗してシーレーン(海上交通路)の確保に動く。布石は世界に広がり、摩擦と警戒を引き起こす。

 アイスランドの首都レイキャビクの国際会議場。今年10月、大画面に映し出された王毅外相が声を張り上げた。「中国は北極の重要な利害関係国だ」

 温暖化で氷が急速に解けている北極海は近い将来、重要な海上交通路になるとみられている。中国政府関係者は北極海を開発・利用するための国際ルールづくりで主導権を握るため、近く戦略策定に着手すると明かす。国有の海運大手、中国遠洋運輸集団(COSCO)は世界に例のない北極海航路での定期輸送の検討を内々に続ける。

■少しずつ前進

 民主主義体制ではない中国の指導部は、選挙のたびに短期的な成果を求められることがない。できるところから少しずつ、時には融和姿勢も見せながら、じっくりと勢力拡大をはかる。

 中国の外交担当トップ、楊潔篪国務委員(副首相級)は10月に訪日した際、谷内正太郎・国家安全保障局長に「南シナ海は心配ない。いずれはまとまる」と伝えた。米軍が艦船を派遣しようが中国は譲歩せず、長期戦に持ち込むとの宣言だ。

 沖縄県・尖閣諸島の南方沖では11月11日、中国の軍艦が1日以上にわたって東西を行き来する不自然な動きを見せた。公海上だが、中国軍の艦船が確認されたのは初めてだ。中国の公船による尖閣周辺での領海侵入は今年だけで30回を超え、軍艦の接近が常態化することへの警戒も高まる。

 日中関係は昨年11月に約3年ぶりの首脳会談が実現した後、改善の動きが進んでいるが、海洋権益をじわじわ拡げようとする中国の長期戦略は揺るがない。

 孤独な大国の百年の計。日本を含む周辺国、そして世界は向き合う覚悟を問われている。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会合で厳重な警備がしかれた11月22日のクアラルンプール。開幕式が終わるやいなや、数台の黒塗りの車とそれに続く白い車の車列が会場を離れた。乗っていたのは中国の李克強首相。向かい先はマラッカ海峡だった。

 「平和と友情のために矛盾や対立を解決し、より交流を深めなければならない」。高台から海峡を見下ろした李氏がこう強調したのは、ここが中国経済の生命線だからだ。中国が輸入する原油の約8割がマラッカ海峡経由とされ、有事の際に米軍が海峡を封鎖することを警戒する。

 国際会議の合間に「針の穴を通すような強行日程」(外交筋)で視察したのは、シーレーン(海上交通路)確保への強い意思を示すためだった。李氏は明の時代の英雄、鄭和がマラッカを拠点にしていたと言及し、中国との歴史的なつながりを何度も強調した。中国は9月、マレーシアと共同でマラッカ海峡で初の軍事演習も実現した。

 毛沢東が提唱した「持久戦論」は日中戦争の最中に書かれた。「弱い中国」が「強い日本」に勝つための戦略論で、第1段階は戦略的防御に徹し、第2段階で敵の手薄な部分に拠点を設け、第3段階で反攻に転じるとした。第2段階では国際情勢も中国に有利になると見立てている。

 党関係者によると習近平国家主席は最近、「戦争を起こしてはならない」と述べたという。現時点で米国と正面から戦う自信はまだない。米国の今後の影響力の低下をにらんで勢力をじわじわ広げている現状は、第1段階から第2段階への移行期といえる。

 マラッカ海峡封鎖への備えも進めている。海峡を迂回する資源調達路として、ミャンマーを経由してインド洋に至る石油・天然ガスのパイプラインを建設中だ。タイ南部で南シナ海とインド洋をつなぐ運河を建設する構想もある。

 米国の影響力が強いパナマ運河でも同じだ。中国政府との関係が取り沙汰される香港企業が昨年末、隣接するニカラグアで大運河建設に着手した。計画通りに2019年に完成すれば、パナマ運河を通れない大型船も通過できるようになる。運営権は最長100年。太平洋と大西洋を結ぶ要衝の主導権を中国が握ることになる。

 ただ、この香港企業は11月下旬、本格的な工事の着工は16年末になると唐突に発表した。当初計画では15年末だったとみられ1年の遅れとなる。中国メディアでは「環境調査で重大な指摘を受けた」「香港企業のオーナーが今夏の中国株式市場の混乱で大損失を受けた」などの情報が飛び交うが真相は不明だ。

 中国が本格的に持久戦論の第2段階に入れば、世界との摩擦はさらに増える。説明責任を果たさなければ中国への不信と不安がよりいっそう増幅することになる。



様々な紛争処理 残業代の不払い分請求 労働審判なら短期で決着 2015/12/23 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマネー&インベストメント面にある「様々な紛争処理 残業代の不払い分請求 労働審判なら短期で決着」です。





 外食チェーンに勤めていたAさんは、残業代の不払いを不服として退職した。残業は毎日、数時間に及んだのに会社は「当社は固定残業代制だ」と説明し、一定額以上の残業手当を支給しなかった。不払い分を請求しようと思い調べてみると、地方裁判所の労働審判という仕組みがあると知った。有効だろうか。

 労働者側の代理人を多く手掛けてきた弁護士の水口洋介さんは「Aさんのケースではまず労働基準監督署に申し立てることになる

 外食チェーンに勤めていたAさんは、残業代の不払いを不服として退職した。残業は毎日、数時間に及んだのに会社は「当社は固定残業代制だ」と説明し、一定額以上の残業手当を支給しなかった。不払い分を請求しようと思い調べてみると、地方裁判所の労働審判という仕組みがあると知った。有効だろうか。

 労働者側の代理人を多く手掛けてきた弁護士の水口洋介さんは「Aさんのケースではまず労働基準監督署に申し立てることになる」と話します。労基署の介入や指導による改善が難しい場合、弁護士の助言を受けて会社に残業代支払いを請求するのが一般的です。

 それでも会社が応じない場合、労働審判を利用するか、本格的な訴訟を起こすかを判断します。労働審判は2006年に創設された制度で、紛争を迅速に解決することが目的です。1年程度はかかる通常の訴訟と異なり短期間で手続きが済むのが最大の特徴です。

 審理は原則3回以内で、平均では2カ月半ほどです。(1)法的な論点が複雑ではない(2)証拠保有などで状況が有利(3)条件面で譲歩の余地がある――ような場合に有効です。年間3500件前後の利用があり、残業代不払いなどの金銭的問題が半数を占めます。

 実際の審理では、裁判官1人と、企業や労働組合OBなどの有識者から選ばれた審判員2人から成る労働審判委員会が、双方から言い分を聞き取り、議論を整理したり証拠を調べたりします。互いが譲歩すれば話し合いによる解決が図られ、調停が成立します。

 過去5年の労働審判では全体の7割で調停が成立しました。委員会が審判を下し、その後、異議申し立てがなく終わった案件を含め、全体の8割近くが労働審判の枠組みで決着しました。それ以外は取り下げか、通常の裁判になります。

 残業代請求の成否は「残業していた時間をいかに証明できるかにかかっている」と水口弁護士はいいます。労働者側に立証責任があり、会社からの証拠提出はまず期待できません。最良の証拠はタイムカードのコピーです。作業日報や出勤簿のコピー、メールの履歴なども有効です。

 証明できれば裁判所は通常、労働基準法に基づき1日8時間を超える分について25%の割り増し分の支払いを認めます。Aさんの元勤務先が主張したように、固定残業代制度であっても、想定した時間以上の残業代は払う義務があります。

 請求者が、本来は残業代の対象外である管理職であったか否かは会社側に立証責任があります。肩書だけでは認められません。会社に時間管理を厳しく受けていたり、収入水準が低かったりすれば、管理職と認められないこともあります。労働審判の費用は、請求金額に応じて裁判所に払う印紙代などと、弁護士費用が必要です。



迫真 イエレンの決断(2) 「溶融は始まったばかりだ」 2015/12/23 本日の日本経済新聞より

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 「最優遇貸出金利(プライムレート)を明日から0.25%引き上げ3.5%とする」。16日午後に米連邦準備理事会(FRB)が丸7年続けたゼロ金利政策を解除すると発表したわずか12分後。米銀で時価総額首位のウェルズ・ファーゴが先頭を切って金利引き上げを公表した。

 同行は預金金利は据え置く方針を表明。預金者の視線は厳しいが、平時では「銀行に預金をかき集める動機がない」(銀行アナリスト)。収益が増えるとの楽観から米株式市場では金融株の買いに弾みがついた。

 08年秋以降、ウォール街の金融機関からマネーが払底する流動性危機を食い止めるため異例の危機対応に踏み込んだ米連邦準備理事会(FRB)。「今回の利上げで異常な7年間は終わりを告げた」。議長のジャネット・イエレン(69)は記者会見で言い切った。

 だが本当に危機は去ったのか。9日、高利回りを狙い危険度の高い低格付け債に投資してきた「サード・アベニュー・フォーカスト・クレジット・ファンド」が運用資産の一部を清算すると発表。「ストーン・ライオン・キャピタル・パートナーズ」も一部債券ファンドの清算で続き、多くの市場関係者は金融危機の伏線となった2007年8月のパリバ・ショックが頭をよぎった。

 「サード・アベニューは特殊な例。極めて偏ったポジションを取っていた」。会見で主張したイエレンだが、ジャンク(ごみ)とも呼ばれる低格付け債に警鐘を鳴らしていたのは彼女自身だ。14年夏、「低格付け債は過剰に評価されている」と警告。ウォール街で金融危機再来を予想する向きは少ないが、米著名投資家カール・アイカーン(79)は断じた。「ジャンク債のメルトダウン(炉心溶融)は始まったばかりだ」

 11月半ば、マンハッタンの高級ホテルの一室。大手ヘッジファンドが投資家の顧客らを厳選して招いた会合で、ある「大物」が口を開いた。

 「政策金利が1%程度になるころ、市場には重要な局面が訪れるだろう」。前FRB議長、ベン・バーナンキ(62)。いずれFRBは量的緩和策で買い込んだ巨額の長期債を売り、バランスシート(資産規模)を小さくし始める。マネーは絞られ、金融淘汰の圧力は強まる。長い出口の入り口に立ったFRBを見つめるウォール街の目には、楽観と警戒が入り交じる。

(敬称略)



真相深層 日本企業の改革は不十分 米KKR創業者・クラビス氏に聞く 選択と集中ためらうな 2015/12/23 本日の日本経済新聞より

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 米連邦準備理事会(FRB)が9年半ぶりに利上げし、世界経済や企業活動に与える影響に注目が集まっている。変化の時代に日本企業はどう国際競争力を高めるべきか。企業買収の草分け的な存在で、世界有数の投資家として知られる米大手投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の創業者ヘンリー・クラビス氏に聞いた。

手元資金多すぎ

 ――米利上げをどう受け止めていますか。

 「これまでの金融緩和で世の中にはマネーがあふれかえっている。(企業や個人など)誰もが容易に資金を借りられる状態は異常というほかない。金融の正常化に向けて利上げは必要な措置だった。多少の反動は出るかもしれないが、やむを得まい」

 「金融緩和が生む『イージーマネー』のおかげもあって、企業は巨額のM&A(合併・買収)に動いている。だが、従業員の実質賃金はほとんど増えておらず、消費者は節約志向を強めている。潤沢なマネーと、低成長が続く実体経済の溝は広がるばかりで持続可能とはいえない。日本も含めて多くの国が緩和策を続けてきたが、手詰まり感も目立つ」

 ――新興国経済の行方は。

 「中国がくしゃみをしたら、新興国全体が風邪を引くという構図は変わらない。中国の景気減速は数年単位で続くはずだ。金融当局が人民元安を誘導し、世界的な通貨安競争を招かないかを心配している。新興国の多くは輸出に依存しているが、自国通貨安による外需の喚起にはおのずと限界が来る」

 ――日本についてはどう見ていますか。

 「欧米に比べて日本企業の増益率は高く、投資対象としては魅力的だ。多くの企業が増配や自社株買いに動くなど前向きな変化も出ている」

 「ただし、注文もある。日本企業は手元資金を持ちすぎている。設備投資などに資金を有効に使っていない。改革は一歩進んでは半歩下がるといった具合だ。安倍政権は日本を変えるための施策に取り組んできた。今度は民間企業が汗をかく番だろう」

スピード足りず

 ――日本企業の改革スピードが遅い理由は何でしょうか。

 「日本には年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や生命保険といった巨大な機関投資家がいるのに、株主として十分な役割を果たしていない。彼らがもっと声を上げない限り、経営者が改革に本腰を入れることはないだろう」

 「もう一つ、日本企業はめったに経営破綻しない。経営が傾いた企業に政府や銀行が救いの手をさしのべるからだ。これでは市場の原理が働かない。米国のように新しい経営陣に入れ替わり、破綻した企業が再生を果たすことが経済の発展にもつながる」

 ――どんな変化を望んでいますか。

 「日本の企業には世界でも有数の技術があり人材がいる。問題は潜在力が十分にいかされていない点にある。大事なのは企業が事業の選択と集中を進めることだ。経営者が非中核の事業部門を売却し、その資金を技術の革新につなげて本業の生産性を向上させる。そうすれば日本企業の増益率はさらに劇的に改善するはずだ」

 「ファンドは企業が切り離す非中核部門の受け皿となり、新たな成長資金を提供する役割を果たす。世界中の企業に投資しているネットワークをいかし、日本企業が海外でM&Aをする際には共同投資もできる」

 Henry Kravis 1976年に共同でコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)を創業。「買収ファンドの父」と呼ばれる。日本ではパナソニックのヘルスケア部門などの買収実績がある。運用資産は9月末で約980億ドル(約12兆円)。71歳。