2015/02/07 本日の日本経済新聞より「真相深層 晩節オバマ氏の「深謀」 残り任期2年、富裕層増税のワケ 内政で影響力狙い取引?」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「真相深層 晩節オバマ氏の「深謀」 残り任期2年、富裕層増税のワケ 内政で影響力狙い取引?」です。





 残り2年の任期となったオバマ米大統領が富裕層増税を打ち出した。上下両院で多数を握る野党・共和党が伝統的に猛反対する政策で、議会を通る見込みはない。中間選挙で敗北を喫し「吹っ切れた」との解説がつきまとうが、晩節のオバマ氏の言動には周到な計算も浮かび上がる。

富裕層増税を盛り込んだ予算教書を発表するオバマ米大統領(2日、ワシントン)=AP

講演するクリントン前米国務長官(1月21日、カナダ・ウィニペグ市)=AP

「反共和」色濃く

 米大統領が内政と外交の基本方針を示す一般教書演説。1月20日の今年の演説で、オバマ氏は封印していた言葉を使った。「レズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダー」――。

 同性愛者などを示すこれらの単語が一般教書演説で使われたのは初めて。保守層の「反発」に特段配慮せず、リベラル色を鮮明にしたオバマ氏の表情は高揚感にあふれていた。

 遊説の場所選びにも心境の変化がにじむ。一般教書演説の翌日は大統領としてアイダホ州を初めて訪問、その次の日はカンザス州を訪れた。

 この2州は共和が伝統的に強い「レッドステート(赤い州)」だ。実際、オバマ氏は2回の大統領選で選挙人を獲得できなかった。それでもアーネスト大統領報道官は「オバマ氏は大統領在任中に、全米50州を訪問したいと考えている」と明言する。

 その「敵地」での遊説で訴える政策は、キャピタルゲイン(株式譲渡益)課税や相続に絡む資産課税の強化を柱とする富裕層増税や最低賃金の引き上げ、コミュニティーカレッジの授業料の無料化など。共和の保守的な支持層が反発し、同党が賛成しない政策に的を絞っているように映る。

 議会を共和が掌握したいま、同党が同意しなければ政策は実現しない。それを承知のうえで、あえてリベラル色の濃い政策を相次ぎ打ち出すのはなぜか。

 「大統領としてのレガシー(政治的な遺産)づくりならもう少しうまくやるだろう」。共和系の政治コンサルタントはオバマ氏がすでに、2016年の大統領選に向けて動きだしているとみる。

 共和への高めのボールの主眼は任期中に法案を通すことではない。大統領退任後を見据えた自らの影響力の行使だ――。オバマ氏周辺から聞こえてくるのは民主党の次期大統領候補の本命、ヒラリー・クリントン前米国務長官への支持を巡るオバマ氏とヒラリー氏の駆け引きだ。

 08年大統領選の民主候補の指名争いで死闘を演じた2人。オバマ氏は1期目に「政敵」だったヒラリー氏を国務長官で取り込み、ヒラリー氏も忠実に仕えた。オバマ氏の再選のかかった12年大統領選では夫、ビル・クリントン元大統領と手分けして応援行脚した。

 黒人や中南米出身者を核とするヒスパニック系の集票に圧倒的な強みがあるオバマ氏。その実力をもっとも知るのはヒラリー氏だ。08年の指名争いで負けて以来、ヒラリー氏が念頭に置いてきたのは、16年大統領選でオバマ氏の支持層を獲得することだった。

支持獲得の条件

 この2人にしか分からない貸し借りの関係。支持の条件としてオバマ氏が最後に提示したのが、富裕層増税など反共和色の強い政策をヒラリー氏が打ち出すことだったと関係者は解説する。

 ヒラリー氏はシリアを巡る外交ではオバマ氏に異論を唱えるが、集票と直結する内政ではオバマ氏と距離を置くのは難しい。民主内では中道路線とされるヒラリー氏にリベラル・反共和の色をつけ、内政での影響力を狙うオバマ氏の「深謀」が透ける。

 昨年1月から大統領上級顧問としてオバマ氏を支えたジョン・ポデスタ氏が今月退任する。クリントン政権の大統領首席補佐官として内政と外交に調整能力を発揮したポデスタ氏は昨年11月の中国との温暖化ガス削減目標を秘密裏にまとめた。

 「私は彼女が頼むことは何でもするつもりだ」と言い切るポデスタ氏は、これを置き土産にヒラリー陣営に加わる。オバマ氏が列挙する反共和色の濃い政策と併せ、ヒラリー氏の16年大統領選への出馬表明の時期が近いことを示唆している。

(ワシントン=吉野直也)

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