2015/02/08 本日の日本経済新聞より「目覚める資本 質を磨く4 今後必要な社外取締役1700人 扉を開けば成長の風」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「目覚める資本 質を磨く4 今後必要な社外取締役1700人 扉を開けば成長の風」です。





 「あの提案だけで60億円分の価値があった」。生活雑貨店「無印良品」を展開する良品計画。会長の松井忠三(65)は、昨年稼働した物流拠点を巡る取締役会を思い起こす。声を上げたのは当時の社外取締役。しまむら相談役の藤原秀次郎(74)とキヤノン電子社長の酒巻久(74)だった。

社外取締役を生かす企業統治が求められている(監査法人トーマツのセミナー、東京都中央区)

カイゼンの達人

 関東をカバーする戦略拠点の新設だった。場所は埼玉県鳩山町。当初は別の土地と建物を借りる計画だったが、藤原と酒巻が猛反対した。「買った方が安い」

 藤原は全国チェーンの衣料服販売で自社物流を磨いてきた。酒巻も「カイゼンの達人」で知られる。2人に従って探し直した結果、200億円の予算が139億円で収まったのだ。

 「そんな例が山のようにある」と松井。経営トップに就いた14年前、社内はベテラン社員に頼った経験主義が変化を拒んでいた。それを打破するために招いたのが社外取締役だった。今や小売り屈指の高収益企業。株価も当時の4倍だ。

 オムロンも社外の目を通して経営を磨く。産業再生機構などを手掛けた冨山和彦(54)が社外取締役だ。昨年のある取締役会。撤退方針を決めたはずの非中核事業を残したいと社内から声が上がった。しかし冨山は首を縦に振らなかった。「やはり売却すべきだ」

官主導に戸惑い

 業績を透明にするため、投下資本利益率(ROIC)という尺度で各事業を厳しく監視する。社長人事でも山田義仁(53)を40歳代で起用した4年前、最後のゴーサインは冨山らの社長指名諮問委員会が出した。外の目があってこそ経営を「見える化」できる。

 そうした風景がもっと広がらないか。金融庁と東京証券取引所は企業統治(コーポレートガバナンス)の新指針を6月に適用する方針だ。東証1部企業の74%が社外取締役を置くが、新指針では社外取締役を複数にするよう促す。

 ただ戸惑いも多い。複数になれば東証1部で1700人近く必要だ。しっかり時間を割け、知見を持った人材を確保できるか。「何から手をつければいいのか」。監査法人トーマツが1月22日に催した企業統治セミナーには企業の担当者ら458人が押し寄せた。

 社外取締役の候補になる側も大わらわだ。1月中旬に日本取締役協会が開いた勉強会。「おかしなことはなぜと聞くことです」。財務諸表の読み方が主題だった。役員経験者でも会計の知識が十分ではないのだ。

 日本全体で備えがないこともあり、懐疑論もくすぶる。一方で経営者も完璧ではない。暴走を防ぐブレーキと成長へのアクセル。この担い手となれるなら、社外取締役の役目は大きい。

 2003年に社外取締役を入れた日立製作所も、当初から成果が目に見えたわけではない。転機は巨額の赤字を出した09年3月期。「危機によって本当の意味で目覚めた」と執行役専務の葛岡利明(60)が明かす。

 増資したいと海外でお願いに回ると、経営を厳しく批判された。社外の目を入れた根幹からの構造改革が必要だと痛感した。今や取締役12人のうち社外は7人となり、3人が外国人だ。

 社内では見えない多様な視点をいかに取り込むか。外に開く扉となる社外取締役。それを生かすのは経営の意識次第だ。

(敬称略)

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