2015/02/08 本日の日本経済新聞より「けいざい解読 CEO高額報酬、日本への示唆は 攻めの動機づけ重要」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合・経済面にある「CEO高額報酬、日本への示唆は 攻めの動機づけ重要」です。





 仏経済学者トマ・ピケティ氏の世界的ベストセラー「21世紀の資本」は、米国社会の格差の象徴として「スーパー経営者」を批判した。桁外れの高額報酬を得る最高経営責任者(CEO)のことだが、今の日本経済にはむしろスーパーCEOが必要とされているのかもしれない。

 JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン会長兼CEOの2014年の報酬総額は2000万ドル(約23億円)で、その内の現金賞与は740万ドル。一方、ゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファイン会長兼CEOの報酬総額は2400万ドルに。1月下旬、欧米メディアは開示資料や独自の分析に基づいて、こんな情報をいっせいに流した。

 リーマン・ショックから7年目となり、批判の対象だった金融機関トップの高額報酬に復活の兆しが出ている。米国では役員報酬が株主総会の議題となり、拘束力のない株主投票にかけられる。格差が世界的な問題になっている時だけに、その象徴であるウォール街の高額報酬が株主の批判にさらされる可能性もあるという。

 役員報酬が1億円に満たない企業トップが多い日本から見ると、米スーパーCEOたちはまるで別世界の住人だ。報酬に関する限りピケティ教授の指摘する問題を心配する必要はないだろう。しかし、スーパーCEOの存在は日本に対して、格差とはまったく逆の問題を提起している。

 日本の経営者報酬には、企業価値を高めるために積極的にリスクをとっていこうという動機づけ(インセンティブ)が足りないのではないか、という点だ。

 米コンサルティング会社、タワーズワトソンがまとめているCEO報酬の国際比較が興味深い。最新の集計によると、売上高1兆円以上の米企業のCEOは平均して総額11億5000万円の報酬を受け取った。日本企業は1億3000万円にとどまり、総額だけを比較すれば米CEOの報酬は突出している。

 しかし、この中から業績や株価の動向に影響されない「基本報酬」を抜き出すと様相が異なる。米CEOの基本報酬は総額の11%にあたる1億2000万円にとどまり、対照的に日本企業は総額の59%、7400万円となり日米の差は急速に縮まる。

 日本の経営者は業績や株価がふるわなくても報酬が減る恐れが、米国よりも小さい。裏を返せば業績を拡大しようとするインセンティブが不足しがち――。タワーズワトソンの櫛笥隆亮ディレクターは指摘する。

 95兆円の手元資金を抱える日本の上場企業にとって、配当などの株主配分と並んで、投資をいかに増やしていくかが重要な課題となっている。経営の観点だけでなく、消費の刺激や雇用拡大といった経済全体の問題としても、企業マネーの有効活用は重要だ。

 しかし、現状の報酬構造が変わらないと、リスクをとって資金を使おうとする日本企業が、なかなか増えない可能性がある。今の日本の懸念は、攻めの動機づけを与えられたスーパーCEOが不在であるということではないか。高額報酬批判が強い欧州はCEO候補の不足問題もあるという。国際的な人材獲得の視点も欠かせない。

(編集委員 小平龍四郎)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です