2015/02/08 本日の日本経済新聞より「がん社会を診る データ集積 広がる検証 中川恵一」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の健康面にある「データ集積 広がる検証 中川恵一」です。





 日本のがん対策で遅れている点の一つに「がん登録」があります。これは、がん患者の診断情報や治療方法とその結果などを個人情報を保護しながら登録し、分析したうえで治療に生かす仕組みです。

イラスト・中村久美

 がん登録は、過去の患者からの「プレゼント」といえます。過去のデータが十分にあれば、自分ががんになっても、どの治療法が適切なのか、自宅近くの病院ではどこが治癒率が高いのかといった情報が得られるからです。

 しかし、日本はこの整備が遅れています。たとえば、一昨年に何人が肺がんになったのかさえ正確には分かりません。現在、年間約88万人が何らかのがんを発症するといわれますが、これは28府県の情報からの推計です。がんの種類や進行度ごとの「5年生存率」も7府県のデータがもとになっているのが現状です。

 一方で、結核や梅毒などの感染症は届け出の義務があり、全国データがそろっています。たとえば、2013年に発症した結核と梅毒の患者の概数は、それぞれ2万495人、1236人といった具合です。正確なデータを持たないがん対策は、第2次世界大戦で懲りたはずの「相手を知らない戦い」といわざるを得ません。

 そんな中、全病院にがん患者の情報提供を義務付ける「がん登録推進法」が一昨年の12月6日にようやく成立し、長年の懸案の解消のめどが立ちました。全国約8500病院と一部の診療所が、がんの種類や進行度など25項目程度を同じ様式で都道府県に報告し、全国のがん情報が国立がん研究センターに集約されることになります。

 この全国がん登録によってデータの集積が進めば、科学的分析が可能になるだけでなく、将来は、病院間の治療結果の検証も可能となるなど、患者側にも大きな利益になります。

 個人情報の管理は徹底する必要があり、16年から運用が始まる社会保障と税の共通番号(マイナンバー)の活用も今後の課題でしょう。ただ、この法律が特定秘密保護法と同日に成立したこともあって報道も少なく、内閣府の調査でも82.5%が「知らない」と答えています。がん対策の推進には国民の理解と後押しが不可欠ですから、制度の周知も大事だと思います。

(東京大学病院准教授)

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