2015/02/16 本日の日本経済新聞より「グローバルオピニオン イスラムに広がる「屈辱」 仏国際関係研究所特別顧問 ドミニク・モイジ氏」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「イスラムに広がる「屈辱」 仏国際関係研究所特別顧問 ドミニク・モイジ氏」です。

日本の人口ピラミッドが人工オーナスに陥っている中で、労働者の多様な働き方を認めるだけでは底上げが難しいとの議論の延長線上で、外国人労働者の活用について議論がされています。欧米諸国にはかつて奴隷制度があったこともあり、異文化を比較的受け入れやすい素地があったと考えられ、日本と比べ、広く移民を受け入れてきました。しかし、この記事によると、連帯は受容となっておらず、心理障壁が政治、経済、性、文化で表面化しているとのことです。

わが国では異文化を取り入れ、戦後成長につなげました。しかし、日本には、はるか昔から身分上の差別制度が存在し、今でも同和問題として社会に存在していること否定できません。日本に移民の異文化を受容できるだけの素地があったとしても、乗り越えるには欧米以上の社会問題が生じるのではないか、このように懸念されます。





 フランスの風刺週刊紙シャルリエブドへの襲撃は「フランスの9.11」といえる。標的は米国の(国際テロ組織アルカイダによる同時テロ事件の)9.11が「ニューヨーク、資本主義、ツインタワー」で、フランスの事件が「パリ、表現の自由、メディア」だった。規模は異なるが、いずれも象徴的な意味があった。

 フランスは事件後、国民の「同化」、つまり連帯、平等に問題があると気づいた。バルス首相が都市郊外の貧しい一帯を「アパルトヘイト(人種隔離)状態」と指摘したことは驚きだが、現実である。

 2005年に仏各地で移民系の若者らの暴動が起きた際、教え子の1人が背景を説明してくれた。(若者らは)政治、経済、性、文化という4つの側面で疎外されているという。路上で話しているだけで警察官の職務質問を受ける。(移民とわかる)名前で郊外に住んでいるだけで就職できない。将来が見えないから結婚相手が見つからない。どの都市も美しいが、自分たちのためではない。あれから状況はさらに悪化している。

 フランスは(公の場で宗教色を排除する)ライシテ(政教分離の原則)を掲げているが、これ自体が宗教だともいえる。キリスト教、イスラム教、ユダヤ教に次ぐ第4の宗教というわけだ。ほかの宗教と同じく非寛容になり得る。

 政教分離は教会が非寛容で抑圧的だった時代の産物だ。思想家ボルテールがいた18世紀末のあたりは、宗教がいまほど広まっていなかった。21世紀の現代の方が宗教の存在感は大きい。物質文明が発達し、格差と不平等が広がり、多くの人が自分の価値やアイデンティティーを測る基準を求めているためだ。だから(政教分離の原則があるからといって)イスラムの人たちを侮辱すると、穏健派の人たちは離れ、過激派は増長する。

 (恐怖、屈辱、希望という感情の文化がどう世界を変えるかという)私が定めた類型に照らせば、アラブのイスラム世界は「屈辱の文化」だ。それが欲求不満の若者に人生の意味を与え、熱狂させる。

 欧米では恐怖の感情が高まっている。中東の屈辱の文化は「(反政府運動)アラブの春」の失敗で増幅され、チュニジアを除きイスラム原理主義が広がり、地域が不安定になる「冬」につながった。

 アジアでの希望はやや後退した。経済状況は以前ほどよくないし、新たな紛争のような状況が起きる恐れがある。日中首脳会談で両国が歩み寄る兆しはみられるものの、日韓関係はなお緊張している。

 感情だけで世界を語るのは傲慢な考え方だとは思う。そのほかに安全保障、経済、不平等という要素を考慮に入れなければいけないが、感情を語らずに最近の世界は理解できなくなっている。

(談)

Dominique Moisi フランスを代表する国際政治学者。仏国際関係研究所の設立に参加。パリ政治学院教授など歴任。欧米メディアに幅広く寄稿。68歳。

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