2015/02/21 本日の日本経済新聞より「大機小機 ピケティの格差、日本の格差」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「ピケティの格差、日本の格差」です。





 ピケティ教授の「21世紀の資本」が注目を浴びている。一般には退屈と考えられがちな学術書が、ここまで売れるのは異例のことである。それだけ格差拡大に対する関心が高いことの裏返しかもしれない。確かに、膨大なデータを用いて示されたトップ1%の人々への富の集中という結果は、衝撃的である。従来の経済学で十分に注意が払われてこなかった富の格差に正面から取り組み、問題提起を行った意義は大きいといえる。

 邦訳版で728ページにも及ぶ大著である。最近出回るようになった解説本や図解本で、そのエッセンスを手っ取り早く理解しようとするのは危険である。まず、「r(資本の収益率)がg(経済成長率)を上回ること」が、富の格差拡大の唯一の源泉だという見方はすべきではないことを指摘したい。ハーバード大学のマンキュー教授によればこれだけで富の格差を説明するには、rはgを7%も上回らなければならないという。本書でもこれだけの差は示されていない。

 富の格差拡大の要因はさまざまで、しかも国によって大きく異なる。富の集中が特に顕著な英米では、しばしば「強欲資本主義」とも批判される金融市場にその原因があるかもしれない。しかし、英米ほどは1%に富が集中していない日本や他の欧州諸国における格差は、また別の次元の議論が必要であろう。

 統計学的な観点からみた場合、1%への集中は富の分布における右端の裾野が広いという議論である。これに対して、最近日本で問題になっている相対的貧困率(大多数よりも貧しい者の全人口に占める比率)の上昇は、低所得者の数が増えているという指摘であり、所得分布で言えば左端の裾野が広がっていることを意味する。日本では、一部の大金持ちの存在より、高齢者の貧困、不安定な若者の雇用、母子家庭の増加などが、格差拡大を考えるうえでより重要といえる。

 市場経済では、ある程度の格差の発生は不可避である。しかし、それが許容範囲を超えて広がれば社会不安につながり、経済にマイナスの影響が発生しかねない。格差発生の原因は様々で、その解明には膨大な労力が必要である。本書を手にした読者は、なぜこの本が膨大なページ数なのかの意味を、まずは考える必要がある。

(甲虫)

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