2015/03/02 本日の日本経済新聞より「池上彰の大岡山通信 若者たちへ (34)ピケティ氏の格差論 質高い教育、社会のために」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の大学面にある「池上彰の大岡山通信 若者たちへ (34)ピケティ氏の格差論 質高い教育、社会のために」です。





 いまさらの感がありますが、フランスの経済学者トマ・ピケティ氏のブームが続いています。「資本主義経済の下では、放っておくと格差が拡大してしまう」という主張は、国会の論戦でも取り上げられ、改めて日本の格差問題もクローズアップされるようになりました。

 主な分析は、資本収益率(r)は経済成長率(g)を常に上回り、資本を持っている人は、一般の人より豊かになるというものです。

 ただし、ピケティ氏の書いた本の題名が『21世紀の資本』というだけに、マルクスの『資本論』と比較されることが多いのですが、マルクスが言う「資本」とピケティ氏の「資本」とは内容が異なります。マルクスの資本は生産手段のこと。資本家が所有する工場などを指します。これに対してピケティ氏の資本は、利息や配当金などの収入も含まれ、資産と言った方が実態に近いのです。

 資産家ほど財産が増え、財産を相続で子孫が受け継ぎ、富める者はますます富む。わかりやすい理論です。ピケティ氏の功績はこれを膨大なデータで実証したことです。

◇ ◆ ◇

 1月末、ピケティ氏が来日すると、講演会やインタビューが目白押し。売れっ子タレントのような過酷なスケジュールをこなして離日しました。

 フランスの思想家が、これだけ日本でもてはやされるのは、1966年に来日した実存主義の哲学者ジャン=ポール・サルトル以来ではないでしょうか。

 1月31日、ピケティ氏は東京大学の本郷キャンパスで、主に東大生を対象に講演しました。これを傍聴させてもらいました。

 講演の主な内容は、著書に書かれていることの説明です。学生たちは著書を読んできているものと思われるのですが、そんなことにはお構いなしに丁寧に解説します。隣で講演を聞いていた作家の佐藤優氏は、「ピケティという人は優しいねえ。聴衆が自著を読んでいないことを前提に話をするんだから」と感想を述べます。感嘆なのか皮肉なのか不明でしたが。

 ◇ ◆ ◇

 授業後、学生からの質問は英語に限定。学生たちは見事に英語で質問します。

 ピケティ氏は、講演の中で、所得格差は教育格差につながり、裕福な家庭の子は、君たちのように質の高い教育を受けることができ、それがまた格差を固定化すると話していました。

 これを受けて、学生の質問は、「質の高い教育を受けられる僕たちのような者は、何をすべきなのでしょうか」というものでした。これには会場が沸きました。

 ピケティ氏は、「親は選べないからね」と受け、「金持ちの家に生まれたことを卑下する必要はない」と答えました。これには会場が苦笑します。

 その上でピケティ氏は、「君たちは高いレベルの教育を受けることができたのだから、それを社会のために役立てることを考えてください」と呼びかけました。

 質の高い教育を、自分のために役立てるのでなく、社会のために役立てる。これこそ、本当の意味でのエリートの姿勢なのだということを、ピケティ氏は訴えたのです。

大岡山は池上教授の活動拠点である東京工業大学のキャンパス名に由来します。日経電子版に「大岡山通信」「教養講座」を掲載しています。▼ビジネスリーダー→就活・仕事→「池上彰の大岡山通信 若者たちへ」「池上彰の教養講座」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です