2015/03/02 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「グローバルオピニオン 東南アは陣営に属さない 元シンガポール外務次官 ビラハリ・カウシカン氏」です。





 第2次世界大戦の終結から70年が過ぎたいま、安倍晋三首相は「積極的平和主義」を掲げる。日本が東南アジアでさらに重要な役割を担おうとしていることは歓迎すべきことだ。日本を重視しない国は東南アジアに存在しない。

 戦時中は多くの国が日本に占領され、一部は甚大な被害を受けた。だが各国は戦後、過去にとらわれず前を向いて対日関係を強める道を選んだ。経済成長のためだ。日本の政治的な影響力は低下したが、貿易、投資、技術での存在感はなお大きい。

 一方、中国や韓国は歴史問題で日本を批判する。中国はこれを利用し、東南アジア諸国を自分たちの側につけようとしている。この戦略は効果が小さい。中国は政治的な思惑を持ち時代により歴史解釈を変えているようにみえるからだ。東南アジア諸国は「次の(中国)矛先はこちらに向かうかも」と不安に思う。

 日本はアジアで重要な役割を果たそうとしている。だが南京大虐殺の被害者数や、従軍慰安婦の強制性の有無について歴史を否定する行為は支持を得られない。日本の首相が靖国神社に参拝すれば、不要な障害を自ら設けることになる。東南アジアはこうした論争に巻き込まれたくない。

 アジアは東西冷戦後の新たな秩序のあり方を模索している。その過程で偶発的な紛争が起こるかもしれない。米国は東アジアの安定に必要な条件(要素)だが、もはや十分条件ではない。米国は急速に力をつけた中国との間で新たな均衡の形を探っている。東南アジア諸国はその動きを凝視している。大国による秩序に適応するしかないからだ。

 米国と中国の間で戦争が勃発することはないだろう。両国の経済的な相互依存はとても密接になり、関係を断ち切るのは不可能だからだ。紛争のリスクを避け、摩擦を速やかに解決するための規範やメカニズムを米中が共同でつくり上げることは急務だ。

 日中間にも規範が必要だが、それをつくるための話し合いは進んでいない。尖閣諸島を巡る領土争いに根本的な解決はない。日中はうまい対処方法を編み出すしかない。

 南シナ海の島々の領有権を巡る中国の態度は東南アジアにとって不安のタネだ。中国は「国際法に準拠して対応する」と説明するが、時には逆の行動をとる。世界秩序に中国の利益を反映させようとしていることは理解できる。大国としては自然な振る舞いだ。だが、プロセスは国際規範に沿わなければならない。

 東南アジア諸国が目指すのは、主要国のすべてとよい関係を保つことだ。いずれかの陣営を選ぶよう大国が迫るべきではない。「中国と領有権を争うベトナムやフィリピンは日本陣営」といった見方はあまりにも短絡的だ。

(談)

Bilahari Kausikan シンガポール外務省に入省後、国連大使、駐ロシア大使などを歴任。2010~13年に外務次官。現在は無任所大使。60歳。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です