2015/03/15 本日の日本経済新聞より「がん社会を診る 福島の現実正しく理解 中川恵一」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の健康面にある「福島の現実正しく理解 中川恵一」です。





 東京電力福島第1原子力発電所の事故から4年たちましたが、福島県では約12万人が依然、避難生活を続けています。この避難は原発から放出されたセシウムなど放射性物質による被曝(ひばく)を避けることなどが目的です。

 ただ、福島の一般住民の被曝量は少なく、とくに、食物による内部被曝はほぼゼロといってよい状況になっています。これは、食物や飲料水などの放射能について、国際的にも厳しい流通基準を策定し、農家や流通業者がそれをしっかり守ったことが大きな要因だと思います。

 食品の放射能については、国の指針に沿ってサンプル検査を実施していますが、福島産のコメは「全量全袋検査」により、徹底した流通管理をしています。福島で昨年とれたコメはすべて1キロ当たり100ベクレルという基準を下回りました。この基準値は欧米の12分の1以下です。ただ、首都圏の消費者を対象に福島県商工会連合会が実施した意識調査で、3割が福島県産の食品を買わないと答えるなど、残念な状況は変わっていません。

 水俣病の原因となった有機水銀と異なり、体内に入ったセシウムは尿として排せつされ、大人で3カ月、乳児では10日程度で半分になります。体内のセシウムから出る放射線を測定する「ホールボディーカウンター」による検査でも、今は、ほぼ全員が検出限界以下となっています。

 一方、4年におよぶ避難生活で、住民の生活の質は悪化しています。私は、全村避難を続ける飯舘村の支援を続けていますが、村民からは「身体を動かす機会が少なくなった」「話し相手がいない」「たばこやアルコールが増えた」「イライラすることが増えた」といった声が出ています。

 健康診断の結果でも、村民に肥満、高血圧、糖尿病などが増えています。がんの原因の約3分の2が生活習慣によるものです。糖尿病になると、がん全体で発症リスクが2割程度上昇し、すい臓がんでは約2倍になります。がん予防の点でも要注意です。

 もちろん、国や電力会社の責任は甚大ですし、汚染水問題や進まない除染など課題も山積しています。専門家の間で議論も続いていますが、福島の現実を正しく認識することが、難局を乗り切るための第一歩だと思います。

(東京大学病院准教授)

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