2015/03/19 本日の日本経済新聞より「真相深層 アジア通貨外交 後手に回る日米 日韓協定打ち切り/インフラ銀に欧州勢 中国警戒も構想持てず」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「アジア通貨外交 後手に回る日米 日韓協定打ち切り/インフラ銀に欧州勢 中国警戒も構想持てず」です。





 通貨を軸とするアジアの経済外交が風雲急を告げている。日本と韓国が緊急時にドルを融通する通貨交換協定を打ち切る一方、中国主導で年内に設立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に英仏独伊が参加を表明した。存在感を増す中国に旧来型の日米連携が対応しきれない現実が浮かび上がる。

米ワシントンでの会談前に握手する麻生財務相(右)と韓国の崔経済副首相(昨年10月)=財務省提供・共同

円逆転の可能性

 転機の第1幕となった今年2月の日韓通貨協定の打ち切り。日韓は通貨融通枠を2012年10月時点の700億ドルから段階的に縮小した。14年続いた協定の失効は従軍慰安婦などの政治問題が響いたが、外交関係の悪化が打ち切りにつながるほど日韓協定が「軽い存在」になっていたのも事実だ。

 韓国は日韓協定を打ち切る一方、最大の貿易相手国である中国との協定は延長している。貿易決済で人民元を使うケースが増え、韓国をはじめ各国にとって中国と通貨協定を結ぶことは実利の意味で重みを増している。

 国際的な貿易決済や送金で人民元建ての割合は14年12月に2.17%と2年弱で1.5ポイントも上がり、世界13位から5位に上昇し円を追い抜く可能性も出ている。「危機時には中国がドルを供給できる枠組みになっている」(国際金融筋)との見方もあり、中国の協定は魅力が増している。

 第2幕は中国主導のAIIBを巡る動きだ。「こんな時にいつも欧州勢は抜け駆けする」。英国がAIIBへの参加を表明した直後、日本政府関係者はこうこぼした。英国の参加表明を皮切りに一枚岩のはずの日米欧7カ国(G7)に亀裂が広がっている。

 一連の動きの淵源をたどると、日米の対応が後手に回っている現実が浮かび上がる。

 日韓通貨協定は1997年のアジア通貨危機後に発足した国際金融の安全網の一つ。この時期に日本はアジア通貨基金(AMF)の創設を目指した。アジア各国への資金支援の動きが鈍かった国際通貨基金(IMF)から独立した組織の設立を探ったが、アジアでの影響力低下を懸念する米国の猛反対で頓挫した。

 当時の経緯は今も尾を引く。日本がアジア各国と結ぶ通貨協定では両国の独自判断で使えるのは総額の3割まで。残りはIMFの支援が前提となっており、使い勝手が悪い。

使いづらさ響く

 日本は13年5月にタイ、マレーシアと2国間通貨協定を結ぶことで合意したが、実際には2年近くにわたり実現していない。財務省は「現在も実現に向けて調整中」(国際局幹部)とするが、両国にとって日本と通貨協定を締結しても、実際の通貨危機時に使いづらく利点が薄いためとみられる。

 通貨協定を使いやすくしようとすれば、アジア情勢に疎いIMFとは一線を画した仕組みが不可欠だが、「米国との緊張が再び強まる懸念がある」(日本政府関係者)。ためらっている間に人民元の国際化を進める中国主導の通貨圏が広がる。

 AIIBへの対応でも、日米連携がうまく機能していない。

 アジアのインフラ資金を供給する国際機関としては66年に日米が主導して設立したアジア開発銀行(ADB)がある。ADBは17年から融資枠を5割増やす。ただ増資は見送り、現在の自己資本に低所得国向けの基金を統合するなどのやりくりで資金を確保する方針だ。

 増資時に中国の出資比率が拡大すれば中国の発言権が拡大してしまうとの警戒感が日米に根強いためだ。中国の発言権拡大を封じ込めようと増資をためらっているうちに、欧州勢も参画するAIIBの設立が今年末に迫ってきた。

 「意見を調整していく必要がある」。麻生太郎副総理・財務相は17日の記者会見でAIIB参加の是非を問われG7で参加への対応を協議すべきだとの考えを示した。

 確かにG7各国の協議が必要だろう。だが、アジア経済外交に関してG7の両軸となる日本も米国も時代の変化に対応した新たな戦略はまだ練り切れていない。そこが進まない限り、再び後手に回りかねない雲行きだ。

(中村亮、小倉健太郎)

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