2015/03/22 本日の日本経済新聞より「がん社会を診る 子宮頸がん 予防も可能 中川恵一」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の健康面にある「子宮頸がん 予防も可能 中川恵一」です。





 子宮頸(けい)がんは年間約1万人の日本人に発症し、約2700人が死亡しています。原因の100%近くが性交渉によるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染です。

 性交渉開始年齢の若年化などに伴い、子宮頸がんが若い世代に急増しています。1970年代は60~70代がピークでしたが、80年代に40~50代に移行し、現在は30代にもっとも多く発症します。20~30代の罹患(りかん)率は過去20年間で2~4倍に達します。

 女性の約8割がHPV感染の経験を持ちますが、がん発症に至るのは、そのうちの0.1%程度です。ただ、ウイルス感染がなければ、子宮頸がんを発症することはまずありません。ワクチンによる予防が可能で、欧州では接種率が7~8割に上ります。

 HPVにはいくつかの型があり、すべての型の感染をワクチンで防げるわけではありません。しかし、接種すれば子宮頸がんの発症リスクは3割程度まで下がります。さらに、がん検診も受けていれば、このがんで命を落とすことはほぼなくなります。がん検診も当たり前の欧米では「過去のがん」になりつつあります。

 日本でも、HPVワクチンは予防接種法に基づく定期接種が可能です。しかし、接種後に痛みや運動障害などが生じ、健康を害したとする保護者らの声を受けて、予防接種の安全性を議論する厚生労働省の検討部会は2013年6月、ワクチン接種の「積極的な勧奨は一時控える」という判断を下しました。この状況は現在も続いています。

 韓国などでも、日本の影響を受け、ワクチン接種率の低下を招いているようです。しかし、世界保健機関(WHO)などは、日本が積極的勧奨を取りやめた後も、繰り返しワクチンの有効性と安全性に関する宣言を発表しています。

 痛みなどとワクチンとの因果関係については、専門家の間でも見解が異なっています。ワクチンを推進する立場と慎重な立場では、溝が深いのが現状です。一方、海外ではすでに子宮頸がんの原因となるHPV感染の約9割を予防する新しいワクチンも承認されています。

 当事者の不安や心配もよく分かりますが、日本が「子宮頸がん大国」にならないよう、国などが状況の打開に向けて取り組む必要があると思います。(東京大学病院准教授)

「2015/03/22 本日の日本経済新聞より「がん社会を診る 子宮頸がん 予防も可能 中川恵一」」への6件のフィードバック

  1. 初めまして。私は子宮頸がん患者で、がんの啓発活動などに携わっております。こちらの記事を私の周りの人達に拡散したところ、大変反響がありました。
    多くの意見は保護者や対象者がきちんとリスクとベネフィットを比較できるように、正しい情報を発信していくことが重要。現在はリスクばかりしか伝わっていない。というコメントでした。
    今後、子宮頸がんという病気の深刻さやワクチンによる何かしらの症状が出た場合の窓口や対策など、ぜひ引き続き記事の掲載をお願いします。

    1. ご投稿、ありがとうございました。がん患者でいらっしゃるとのこと、大変、心痛な思いで拝読いたしました。
      私は、祖父や父をがんで亡くした経験があります。その過程で、がんと闘い、散っていく方々、がんで生命が淘汰されている事実を見て、がんは「生命に科された自爆装置だ」と感じるようになりました。
      今日は「アンジェリーナ・ジョリーが、がん予防に卵巣を摘出した」と大きく報道されていました。
      少しでも多くの方々が、がんに対する意識を高められるよう、そして、個人的にも、がんと向き合っていきたいため、この「がん社会を診る」を引用させていただき、時には自分の考えも併せて掲載させていただいております。
      明日は今日よりよくなることを信じ、共に頑張って参りましょう。

  2. がんを語る時、1次予防、2次予防があります。1次は生活習慣と言われ、2次は検診と。でも、子宮頸がんの場合、1次はワクチンではないでしょうか。ワクチンを接種し、しかし、カバーできないウイルスもあるので検診でさらに、と。この2段構えという考えが定着しないうちに「副反応問題」が起きて足を取られてしまいました。でも、よくよく考えれば、検診受診率が急速アップする見通しはありません。となると、頸がんによる死者は減らないということです。検診は若い女性には抵抗もあります。ワクチンは費用の面などを除けば、ほぼ全ての女子中学生(高校生)が受ける可能性が大です。それによって、中川先生は3割に減る(発症リスク)と言われてますが、私も同感です。このような論考・主張を今、控える傾向があるなかで、勇気ある指摘と思います。検診だけを強調しては、ワクチン接種をますます遠のかせます。どこまでも、ワクチンと検診で、子宮頸がん発症・死者をゼロに、と訴え続けるべきです。私は1民間人ですのでいろいろ話しても理解してもらえませんが、このような専門家の記事を見せて話すと納得してもらえます。分かりやすく、かつ、正しいがん情報を伝える本連載に期待しています。

    1. ご投稿、ありがとうございます。大変、興味深く拝読させていただきました。
      どちらかの記事で、がん検診の受診率は上がっているが患者そのものの数は減っていない、この事実から日本政府のがんにまつわる政策は間違っている、というのを読んだことがあります。
      記事の内容自体もうる覚えでしかありませんが、国策として検診を大いに推進している中、非常にセンセーショナルな切り口との印象を持ったことを覚えています。
      がんは種類によって対処法も様々ですので、この記事の考え方も是々非々で判断すべきだと思われます。子宮頸がんにつきましては、ワクチンの有効性が証明されており、検診を含めた対処法が正しい選択と思われますので、社会生活の中にきちんと仕組みを植え付けるべきと考えられます。
      一人でも多くの方ががんについて考え、自らの行動にも反映させていただけるよう、これからも有用な記事を引用して参りたいと考えております。

  3. 子宮頸がん検診の先進国である英国では1987年に組織型検診が本格導入され、受診率が70~80%になった現在では子宮頸がん死亡率が2人(年齢調整10万人当たり)程度にまで下がっています。
    一方、日本では検診が無かった戦後直後から死亡率が一貫して、かつ検診の導入と普及に無関係なようにほぼ一定の減少傾向で下がり続けました。そして現在では、検診受診率が30%程度と言われているにもかかわらず、受診率70~80%の英国や欧米諸国と肩を並べる死亡率(年齢調整10万人当たり3~4人)にまで下がっています。確かに、ここ10年ぐらいは若年層での死亡率が若干上昇傾向にありますが、中川恵一氏や婦人科医が過剰に不安を煽るほどの増加ではないと思いますし、ここ20年間で急激にそして大きく増加したのは、若年層20~40代の罹患率、それも前がん病変と言われる「異形成」や「上皮内がん」です。
    この「増加」は、乳がん検診(マンモグラフィー)の普及によって生じたと最近、世界的に懸念されている「過剰診断」が、子宮頸がん検診でも生じていることを強く示唆するものです。

    中川氏の解説は、そういった面を見ないバランスを欠いたものだと思います。

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  4. nikkeimaster様、

    前二回の投稿はリンクの貼り方を間違えてしまいましたので、削除願います。

    前回のコメントについて、補足説明させていただきます。

    中川氏は「20~30代の罹患(りかん)率は過去20年間で2~4倍に達します。」と警笛を鳴らすような解説をされていました。
    以下に、国立がん研究センター「がん情報サービス」の子宮頸がんに関する各統計データのリンクを貼ります。


    (1)子宮頸がん(上皮内がんを含む) 年齢階級•年次別 罹患率 グラフ


    (2)子宮がん 年齢階級•年次別死亡率 グラフ

    (2)のグラフから分かるように、日本ではどの年齢階級でも、検診の普及前(1962年に一部地域で検診が開始され、1982年より全国的に開始)から一貫してずっと死亡率が低下してきています。しかし、(1)のグラフを見ると分かるように、前がん病変である「上皮内がん」を含めた子宮頸がんの罹患率は、特に若年層において1990年代後半ごろから急に大きく上昇しています。
    (増加の大部分は「上皮内がん」です)
    死亡率が上昇せず低下傾向にあるにも関わらず罹患率だけが急激に大きく上昇しているのは、がんの生物学的観点からは説明困難です。
    つまりこれは、乳がん検診で生じているのと同様に、子宮頸がん検診の普及によって過剰診断がんが大きく増えていることを強く示唆するものです。
    検診によって発見される「過剰診断がん」とは、現在の病理学では「がん」と診断されるが生涯に渡って症状も起こさず命を脅かすこともない「がん」を指します。そして、その殆どが不必要な過剰治療(子宮頸部円錐切除や子宮摘出)を受けています。
    「過剰診断」や「過剰治療」について、分かりやすく解説した本で強く推薦できるものを以下に紹介させていただきます。


    過剰診断: 健康診断があなたを病気にする

    因に、2000年以降検診が特別大きく普及したとは思われないのに「上皮内がん」が異常に大きく増えてきたのは、「がん統計情報」の全国推計において、2008年からそれまで統計として報告されていなかった「高度異形成」が「上皮内がん」に一括される形で加わって報告、計上されるように推計システムが変更されたことも影響しているかと思われます。

    欧米各国と比較した日本の子宮頸がん死亡率についてですが、厚生労働省の委託事業であるMins(マインズ)ガイドラインセンターのWebサイトの記事、


    「子宮頸がんの罹患・死亡の動向」

    の記事中にある「図2 子宮頸がん年齢調整死亡率の国際比較」というグラフに、日本と欧米各国の子宮頸がん年齢調整死亡率の年次推移グラフが示されています。
    これを見れば分かるように、日本の子宮頸がんによる死亡率は、現代においても、検診受診率70~80%の欧米各国に比して特に高いと言えるものではありません。(尚、このグラフは2005年までのデータですが、以後のデータでは欧米各国の死亡率低下は頭打ちで、日本はここ10年くらい若年層にやや上昇傾向が見られるといったところでしょうか)

    以上のことから、検診とHPVワクチン接種を強く推奨する婦人科医と学会やそれに歩調を合わせるかのような中川氏の言説は、罹患率の上昇だけをことさら誇張し、死亡率の推移や過剰診断など他の情報に目を向けない非常にバランスを欠いたものと言えるでしょう。

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