2015/03/23 本日の日本経済新聞より「グローバルオピニオン 米国の中東戦略に混乱 米ユーラシア・グループ社長 イアン・ブレマー氏」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「米国の中東戦略に混乱 米ユーラシア・グループ社長 イアン・ブレマー氏」です。





 過激派組織「イスラム国」の脅威が中東を越えて広がる中、米国はまったく異なる2通りの対応をして身動きがとれなくなっている。一つは、イスラム国の軍事力を「弱体化させ最終的に破壊する」という限定的な使命を帯びた有志連合への一層の協力を求める姿勢である。その一方、最近ではイスラム国の早期打倒を主導する攻撃的な構えも見せ始めた。

 こうした戦略の混乱で、同盟国は疑心暗鬼に陥っている。米国は後方から支援するだけなのか、それとも陣頭指揮をとる気があるのか。姿勢が変わった理由は何なのか。

 戦略転換を促す圧力はここに来て高まっていた。米経済が上向くとともに、共和党が多数を占める好戦的な議会や、ヒラリー・クリントン元米国務長官の陣営を含む次期大統領有力候補は、外交政策を俎上(そじょう)に載せ始めたからだ。

 同盟国との関係は緊張の度合いを増している。イスラエルのネタニヤフ首相は米議会で演説し喝采を受けた。カタール政府当局者はワシントンに赴き、有志連合の軍事的対応は十分な水準ではないと述べた。

 要するにオバマ米大統領は同盟国から盤石の支持を得ているとはいえず、彼らの堪忍袋の緒は切れかかっている。その間にもイスラム国の脅威は高まる一方だ。

 その結果、オバマ政権は強硬姿勢をとらざるを得ず、イスラム国排除に向けて打てる手をすべて打って批判の矛先をかわすためにも、性急な戦略転換に追い込まれた。米国とトルコが、シリアからのイスラム国掃討を目的として反体制派に軍事訓練と武器を提供する協定を結んだのは、その一つの表れだ。

 米国は、シリアのアサド大統領(および彼と同盟関係にあるイラン、ロシア、レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラ)と組むのか、それともアサド政権の転覆をもくろむのかという困難な政治的選択に直面している。そのため、シリアでの軍事戦略はイラクの場合よりも数段弱腰だ。

 シリアの反体制派への武器供与は大きな危険をはらむ。反体制派は結束しておらず、武器がイスラム国の手に渡る結果になりかねない。そうなればアサド政権との戦いは長引く可能性が高い。

 米国の一貫性を欠く戦略はイラクでも目につく。米政府は先月、イラク第2の都市モスルの奪還計画を明らかにしたが、結局は後退発言を余儀なくされた。そもそも3カ月以内の作戦実行に現実性が乏しいことは明らかだった。

 オバマ政権は岐路にさしかかっている。イスラム国への空爆開始当初と同じく、同盟国に有志連合への協力を求めるという立場を貫くなら、米国の関与は限定的であることを明確にすべきだ。

 米国主導でイスラム国掃討作戦を強化・加速するつもりなら、手の内を明かすべきだ。その中には、反イスラム国で立場が一致する米国の敵(アサド政権やイラン、ヒズボラ)と手を組むことも含まれよう。たとえイスラム教スンニ派の主要同盟国が憎悪する敵であっても、である。

 米国の戦略が近視眼的でどっちつかずのため、危機が深刻化する危険性は高まっている。せめてそれがよい方向に転ぶことを期待しよう。災厄が差し迫ってきたら、米国主導で、あるいは米国に圧力がかかって、一貫性のある有効な対応がなされるかもしれない、と。

Ian Bremmer 世界の政治リスク分析に定評。ユーラシア・グループは米調査会社。著書に主導国のない時代を論じた「『Gゼロ』後の世界」など。45歳。

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