2015/04/06 本日の日本経済新聞より「グローバルオピニオン 欧州は寛容の原則忘れるな 前スウェーデン首相 ジョン・フレデリック・ラインフェルト氏」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の面にある「欧州は寛容の原則忘れるな 前スウェーデン首相 ジョン・フレデリック・ラインフェルト氏」です。





 フランス、ドイツ、英国をはじめとする欧州各国で移民排斥を訴える極右勢力が伸びている。この現状を強く憂慮する。スウェーデンも例外でない。昨年の総選挙では極右政党の議席が倍増し、議会第3位に浮上した。極右は既存の産業界、メディアなどにも不満を抱くが、長期的な視野を持っているわけではない。

 スウェーデンは最近10年ほど極めて多様な移民を受け入れてきた。私は2006年の首相就任で、さらに開放的な移民政策に取り組んだ。

 なぜなら、日本と同様にスウェーデンも人口の高齢化が進んでいたからだ。労働人口が減り、比較的広い国土に分散するようになっていた。首相に就任した際、この状況で十分な社会福祉や年金制度を維持できるのか考えた。結論は移民受け入れだった。

 移民国家であるオーストラリアはポイント制を設け、いわゆる高度人材を選んで受け入れようとしている。スウェーデンは異なる。国内で就職先が決まっている人は受け入れるシンプルな仕組みだ。スウェーデンで職を得た移民の勤労意欲は高い。移民はわが国の経済規模を拡大し、税金を納め、福祉制度の維持に役立っている。内戦が続く中東のシリアから5万人ほどの難民を受け入れ、スウェーデン語の教育を施した。そして中高年の大半も職を得た。

 スウェーデンは08年のリーマン・ショック後も欧州で最も高い水準の成長を続け、国内総生産(GDP)に対する公的債務比率も低下した。移民を迎えていなければ、労働力が圧倒的に不足していたと思われる。移民の出身地は中東、アフリカ、東欧だけでない。アジアからも技術者などがやってきている。急成長するベンチャー企業にも移民の活力が生かされている。

 欧州のいくつかの国は移民数制限や国境警備強化の動きを見せているが、グローバルな時代にこうした規制はほとんど意味をなさない。むしろ移民を受け入れた後、自国の社会へいかに統合するのかを考えるべきだ。その場合、職を得て働く移民とともに、その家族へのケアに力を注ぐ必要がある。受け入れ先の社会との摩擦は起きやすい。住宅や子どもの教育などで柔軟に対応することが大事だ。

 インターネット上には異なる文化、宗教、人種とは共存できないという主張があふれる。それを許せば欧州の暗い歴史が繰り返される。異質なものを排除する動きには断固として反対しなければならない。強い社会やイノベーション(革新)は同質の人々だけでは実現できない。

 スウェーデンでは様々な人々がダイナミックな社会をつくり上げた。負の側面にばかり着目してはならない。欧州は寛容の原則を忘れるべきでない。

(談)

John Fredrik Reinfeldt 2006~14年スウェーデン首相。規制緩和や開放政策で経済を成長路線に乗せ、福祉と両立する「北欧モデル」を実現。49歳。

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