2015/04/13 本日の日本経済新聞より「米キューバ首脳会談 新時代の戦略練る試み」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「新時代の戦略練る試み」です。

アメリカを取り巻く外交戦略がとても難しい状況になっていることを端的に、しかも明快に説く秀逸な記事です。世界の警察官としての役割は終えたと言われていますが、西側諸国の代表としてイニシアチブを持つ姿勢に変わりないことがこの記事から見て取れます。





 1956年7月、中米パナマ。キューバのバティスタ大統領は米国のアイゼンハワー大統領と会い、両国間の貿易や投資の拡大を訴えた。輸出の9割近くを砂糖に頼ってきたキューバにとって、経済発展の促進が何よりも重要な時期だった。

 フィデル、ラウルのカストロ兄弟がメキシコからキューバに渡ったのは4カ月後だ。腐敗したバティスタ政権を打倒するためだった。59年の革命を経てキューバは社会主義国家の道を歩み、ソ連を中心とする東側の一員となる。西側の盟主である米国とは61年に断交し、わずか150キロメートルの両国の間に「鉄のカーテン」が下ろされた。

 それから半世紀の時を経て、両国の首脳がくしくもパナマで会談した。

 「新たな挑戦を始める時がきた」と語るオバマ米大統領。「あらゆる課題を議論したい」と話すキューバのカストロ国家評議会議長。正常化に向け、歴史的な一歩を踏み出したのは間違いない。

 両国の対立は東西冷戦の象徴だった。だが89年の冷戦終結と91年のソ連崩壊で、キューバは米国の脅威ではなくなった。歴史の節目から四半世紀遅れて、ようやく冷戦の遺物の清算が始まる。

 会談を主導したのは米国だ。残りの任期が2年を切り、求心力の低下に悩むオバマ氏は、キューバとの正常化をレガシー(遺産)としたい。

 その姿は72年2月に中華人民共和国を訪問したニクソン大統領にも似る。当時の米国は共産党一党支配の中国と国交がなかった。ベトナム戦争の泥沼化や経済の悪化にあえぎ、米中関係の正常化という偉業に活路を求めようとした。

 背中を押したのはオバマ氏の思惑だけではない。この問題の本質は、米国が戦略の修正を迫られた点にある。

 キューバとの断交は、トルーマン大統領に始まる米国の「封じ込め政策」の典型でもあった。だがグローバル化や市場化が進むいまの世界で、ヒト、モノ、カネの流れを遮断するのは難しい。

 アフガニスタン・イラク戦争と金融危機で傷ついた米国には、圧倒的なパワーで敵をねじ伏せる余裕もない。断交や制裁ではなく、政治的、経済的な関与を通じて民主化や自由化を促す――。「北風」よりも「太陽」の力を借りて米国の国益を守る対外政策への転換は、イラン核開発問題の枠組み合意にも共通する。

 現在の国際情勢は複雑だ。ロシアのクリミア編入、中国の海洋進出、北朝鮮の核開発などといった地政学的な脅威を甘くとらえ、融和政策へ過度に傾斜するのは危うい。

 一方、地球規模での相互依存が深まり、どんな国でも根っこの部分ではつながる時代だ。限界や弊害が表面化した封じ込め政策にこだわり続けるわけにもいかない。

 米国にとってキューバとの関係正常化は、世界が意識し始めた「新冷戦」時代の対外戦略を練り直す試みのひとつだといえる。それはヒラリー・クリントン前国務長官ら次の大統領候補たちの重い課題でもある。

(ワシントン支局長 小竹洋之)

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