2015/04/17 本日の日本経済新聞より「早期がん「線虫」がかぎ分け 九大、尿使い判定 腫瘍マーカーより高精度、費用も数百円の見通し」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のニュースな科学面にある「早期がん「線虫」がかぎ分け 九大、尿使い判定 腫瘍マーカーより高精度、費用も数百円の見通し」です。

これは非常に衝撃的なニュースです。人間ドックなどでの検尿でがん検診が実施でき、しかも精度が高く、もしかすると10年後には健診現場で主流の診断方法になっているかもしれません。

がんは早期発見、早期治療と言われています、中には反対意見もありますが。しかし、知ることなくしてはアクションに至りませんし、放っておけば悪くなることは間違いありません。よって、早期治療でなくとも、なんだかのアクションが必要と考えています。官も研究に参加していただき、産官学で未来の扉を切り開いていただきたいものです。





 九州大学のチームが「線虫」という小さな実験用動物に人の尿のにおいをかがせ、がんの有無を精度よく判定できたと3月、米科学誌に発表した。検査費用も数百円で済む見通しという。ユニークな研究だが、実用化の可能性はどれほどあるのだろうか。

 がんは日本人の死因トップで、約半数が生涯のうちに患う。以前と異なり、早期に見つけて対処すれば治癒も見込めるようになった。ただ、早期発見が難しい例も多い。

 線虫は回虫などの仲間で体長は約1ミリメートル。ウナギのような形をしている。マウスなどと並んで実験によく使われる。線虫はにおいをかぎ分ける能力が高く、嗅覚の鋭さで知られる犬並みという。その特性をがん発見に応用したのが、九大大学院理学研究院で助教を務める広津崇亮さんと伊万里有田共立病院(佐賀県有田町)で外科部長をしていた園田英人さん(4月から九大助教)らのチームだ。

 がんの有無を見極める手法はこうだ。線虫がいる容器に、人の尿を1滴入れ、線虫の動きを観察する。実験では、がん患者の尿には線虫が寄りつき、健常者の尿からは避けるように離れていった。

1時間半で結果

 242人の尿を用いて反応を調べたところ、大腸や胃、乳房のがん患者24人中23人を陽性だと判断した。一方、健常な218人では207人を陰性と判断した。がん患者を見つけられる確率は95.8%。血液中のがんの目印である「腫瘍マーカー」を調べる検査より、精度が高かった。

 判定に必要な時間も1時間半ほどで済み、体の負担もほとんどない。がんを発症していると分かれば、画像診断装置などを活用して、どの部位にがんがあるかを絞り込む。

 なぜ、がん患者の尿だけに線虫が寄りつくのか。患者は汗や呼気、尿などのにおいが健常者と異なっているといわれる。体内でがん細胞が活動したり、死滅したりする際に出す物質が通常の細胞と異なっていることなどが原因だ。線虫は人では分からない、患者特有の微妙なにおいを好んで寄りついていくようだ。

 実験でがんと判別された人の中には、採尿時点でがんの発症が分かっていなかった5人もいた。通常の検査では分からなかったがんを線虫が見分けていたことになり、早期がんの発見にも威力を発揮できると期待されている。

 動物を使い、患者が放つにおいからがんを見分ける研究は犬が先行する。がん探知犬研究に取り組む日本医科大学千葉北総病院(千葉県印西市)の教授、宮下正夫さんは「子宮がんや乳がんなどが判別できている」と話す。ただ、がん探知犬は空港などで荷物から麻薬を見つけ出す犬と同じく訓練が必要で、検査時に犬を集中させなくてはならない。

 また、パナソニックは吐く息が含む微量の生体ガスで肺がんを検査する技術に取り組んでいる。がんがあると出てくる成分を高性能センサーを使って検出する方式だ。

 九大の成果は高い検査精度だけでなく、手法が簡単な点でも注目を集めた。実験に使う線虫は寒天の上で大腸菌を餌として成長する。約4日で世代交代し、増殖もしやすい。凍結しておいた線虫を解凍すれば再び活動を始めるなど生命力が強く、保存も容易だ。

日立と実用化研究

 九大は日立製作所、電子機器関連製造のJOHNAN(京都府宇治市)と組み、実用化に向けた研究を続けている。システムは線虫の飼育装置とカメラ、画像処理用ソフトウエアなどを組み合わせるだけなので、一連の作業も自動化できそうだ。1回の検査費用も数百円で済む見通しで数千円から1万円ほどかかる腫瘍マーカー検査より安い。

 広津さんは「がんの有無だけでなくがんの種類の特定にも使えそうだ」と期待を寄せる。参考になったのはがん探知犬の研究だ。がんの種類によりにおいが微妙に異なる可能性が示唆されている。あるにおいに反応するタイプや、逆に特定のにおいには反応しないタイプを作り出し、すべてのにおいに反応する線虫の行動と比べればよいという。

 宮下さんは「アイデアは画期的だ」と評価したうえで「今後はどんな条件だと線虫がよく反応するかなどを調べる必要があるだろう」と話す。一方、がんの診断方法などを研究する専門家は「今回は分析した症例数が少ない」と実用化に向け、データを積み重ねる必要性を指摘する。

 「課題は多く残るが、10年後をめどに実用化し、新興国を含め世界に広めたい」と広津さんは語る。

(新井重徳)

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