2015/04/26 本日の日本経済新聞より「がん社会を診る 進行度で違う治癒率 中川恵一」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の健康面にある「進行度で違う治癒率 中川恵一」です。





 現在、がん全体の6割近くが完治しますが、がんの治りやすさの指標である5年生存率はがんができる臓器によって大きく違ってきます。乳がん、前立腺がん、甲状腺がん、皮膚がんで9割近くになりますが、食道がん、肺がん、肝臓がんで3割程度、膵臓(すいぞう)がんでは7%にすぎません。

イラスト・中村久美

 同じ臓器のがんでも、がんの病巣がまだ小さく、臓器にとどまっている段階なら、完治の可能性は高くなります。がんの増殖が進むと、臓器の外に出てリンパ節などへ転移します。この段階になると進行がんと呼ばれますが、まだ完治の望みはあります。しかし、他の臓器に転移してしまえば、治癒は非常に難しくなります。

 一般的にがんは、できたもとの臓器である原発巣からリンパ節へ広がり、さらに遠隔臓器へ転移します。がんの進行の度合いは、もとの臓器にあるがんの大きさ、リンパ節への転移の程度、離れた臓器への転移の有無によって表現します。それぞれの英語表記の頭文字であるT、N、MをとってTNM分類と呼ぶ方式をもっとも使います。

 一般的にはT1~T4と数字が大きくなるほど病巣が大きくなります。N0~N3は数字が大きくなるほど、遠くのリンパ節に転移していることを指します。M0は遠隔転移なしで、M1の遠隔転移ありと区別します。たとえばT2N1M0のように表記します。T1N0M0はステージ1で最も早期ですが、遠隔転移のあるM1となるとTやNの数字にかかわらず、ステージ4の進行した状態ということになります。同じ胃がんであっても、ステージ1の5年生存率は98%に達するのに対して、ステージ4では同8%で、12倍の差があります。

 肺がんでもステージ1と同4の5年生存率はそれぞれ80%と5%で17倍近い差があります。ただ、肺がんの2割弱を占める小細胞性肺がんと呼ばれるがんの組織のタイプはとくに難治性で、完治は例外的になってしまいます。

 同じ臓器のがんであっても、TNM分類に基づく進行度の違いやがんの組織型によって、治療方法も治癒率も大きく変わってきます。がんと診断された際には、TNM分類や組織型まで医師に確認しておくとよいと思います。

(東京大学病院准教授)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です