2016けいざいあの時(1) 日銀、マイナス金利を「総括」 2016/12 /27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「2016けいざいあの時(1) 日銀、マイナス金利を「総括」」です。





 「金融機関や預金者の不安を高めるだけだ」

 「市場に政策の限界を印象づけてしまう」

 1月29日の日銀金融政策決定会合は大荒れだった。市場に衝撃を与えたマイナス金利政策導入への賛否が真っ二つに割れ、9人の政策委員のうち、4人が賛成しなかった。その後、反対派の不安は的中する。

日銀の総括検証について会見する黒田総裁(9月21日)

 政策決定を受け、2月から銀行が日銀に預けるお金の一部に年マイナス0.1%の金利が課された。政策金利をマイナスにして「ゼロ金利制約」と呼ばれる利下げの限界のカベを越えようと、日銀はひそかに先行導入事例としてスイスを研究していた。

 日銀の事務方は会合直前に、黒田東彦総裁に資金供給量の拡大やマイナス金利政策など複数案を提示。総裁が「マイナス金利で行こう」と指示すると、一部の日銀幹部は驚嘆した。「現時点ではただの選択肢だと思っていたが」

 日銀は資金供給量も年80兆円増を維持しつつ、景気刺激を狙った。マイナス金利政策の導入を受け、住宅ローンや企業向け融資の金利は史上最低水準まで下がり、不動産市場には強い追い風が吹いた。

 予期せぬ誤算もあった。国民の間で銀行に預けるお金もマイナス金利になるのではという不安が広がり、金庫が飛ぶように売れた。年金受給者の生活不安も高まった。日銀幹部の一人は「ほとんどの人がマイナス金利をネガティブに受け止めた」と漏らした。

 金融市場も日銀の緩和策を好感しなかった。理論上は金利が下がれば、低金利の円が売られ、円安効果が見込めるはず。だが実際は夏場にかけて円相場が1ドル=99円台まで急上昇した。海外景気への不安や英国の欧州連合(EU)離脱決定ショックを背景に年初から20円も円高が進み、日銀内に焦りが募った。

 金融政策の目標である物価上昇への効果も限定的にとどまった。日銀は物価2%目標の達成時期を5回先送りし、市場が追加緩和を求め続ける催促相場が続いていた。先が見通せないなかで日銀は9月21日、過去の金融緩和策の総括的な検証を公表し、政策の大転換に踏み切った。

 新政策の正式名称は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」。マイナス金利の名前は消え、新たに長期金利を金融政策の誘導目標に加えた。「手詰まりではない」。黒田総裁は記者会見でこう強調。日銀は緩和手段をお金の供給量から金利の操作にシフトすることで、粘り強く金融緩和を続ける姿勢に転じた。

 そこに「神風」が吹く。11月にトランプ氏が米大統領選を制すると、政策期待から米国の株価や金利が急上昇する。長期金利をゼロ%程度に抑える日本との金利差が広がり、高金利のドルが買われて円安が急ピッチで進んだ。円相場は1カ月余りで約17円の円安に転じ、国内の景況感も急速に改善した。想定外のトランプ相場の渦中で波乱の1年が過ぎるが、この高揚感がいつまで続くかは誰にも分からない。

(馬場燃)

 数々の激動に見舞われた2016年の日本経済。記者が振り返る。



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