保育所のナゾ(上) 待機児童ホントは何人? 100万人超の試算も 2016/03/31 本日の日本経済新聞より

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 子どもを保育所に預けたくても預けられない待機児童問題。参院選の争点になることを恐れた安倍晋三政権は慌てて対策づくりに乗り出したが、そもそも保育所はなぜ足りないのか。「3つの疑問」を調べた。

待機児童対策の充実を訴える声が強まる(23日、衆院議員会館)

 「本当は認可保育所がよかったんだけど……」。2歳の娘がいる東京都の主婦、梅川奈緒子さん(37)の表情はさえない。2014年秋から預け先を探し回った。保育所の助けが要ることをアピールするために土日は子どもを夫に預けて働きにも出たが、近くの認可保育所には軒並み断られた。

 2月末にようやく見つかったのが地域の認可外保育所。ただ保育料は月4万7千円と認可保育所の月2万5千円の倍近い。結局、今でも認可保育所への転園を目指して申し込みを続けている。

 保育所に入れない待機児童は全国に何人いるのだろうか。厚生労働省の説明では昨年4月時点で2万3千人。ただここには梅川さんのような例は含まれない。2001年に待機児童の定義を変更。やむなく認可外保育所に通っていたり、特定の認可施設を希望して空きがある施設の入所を断ったりしたケースを待機児童から外したからだ。

 野党から「なぜ数字を小さくみせるのか」と追及された厚労省は昨年4月時点で「潜在的待機児童」が6万人いることを明らかにした。だがこの2つの人数を合わせた「8万3千人」という数字でさえ実態にはほど遠いとの指摘がある。

 「本当の待機児童は171万人」。民間シンクタンクの社会保障経済研究所は最近こんな試算をはじいた。これは子どもを預けて働きたい気持ちがありながらも「どうせ保育所に空きがない」と申し込んでいない人を含めた数字だ。意欲あるすべての人が働ける環境をつくる「一億総活躍」の観点に立てば、この人数こそが「潜在的待機児童」ともいえる。

 塩崎恭久厚労相は待機児童の範囲を狭くとらえて公表していることについて「緊急性の高い人を把握するため」と説明している。ただ「待機児童が膨らんで巨額の予算が必要になることを避けようとしているのではないか」(社会保障経済研究所の石川和男代表)との指摘もある。

 共働きが主流になり、保育サービスの需要はどんどん拡大している。14年度の1年間で保育受け皿は14万6千人分増えたのに、厚労省が公表する待機児童数はこの間に逆に約1800人増えた。

 仕事との両立に悩む親たちは保育所に滑り込もうと必死だ。「彼女が辞めると地元の医療は崩壊します」。東京都の30代の女性医師は上司のこんな推薦状を提出し、諦めかけていた保育所入所を勝ち取った。保育所入所の「テクニック」を指南するマザーネット(大阪市)の上田理恵子社長(54)のアドバイスが奏功した。

 政府や自治体が待機児童の実態に向き合わない限り、保育所を巡る親たちの切実なバトルはもっと過熱しかねない。



スクランブル 上値阻む「割安のわな」 マネーは成長株に集中 2016/03/30 本日の日本経済新聞より

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 日経平均株価の上値が重い。29日は3営業日ぶりに反落した。積極的な買いが入らないのは、業績の下振れリスクが意識されているからだ。相場が膠着するなか、割安株がそのまま放置される「バリュートラップ(割安のわな)」の警戒感も高まる。投資マネーは押し出されるように、一部の成長(グロース)株に向かっている。

 29日は金融株の下げが目立った。東証第1部の売買代金は連日で2兆円を割り込み、証券株は全面安。銀行株もみずほフィナンシャルグループが2%安など軒並み安くなった。

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 日銀のマイナス金利政策で長期金利が低下し、大手銀は利ざやの縮小が避けられない。みずほ証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジストは「来期業績は10%減益まで落ち込んでもおかしくない」と収益の先行き不安が株安の主因とみる。

 三井物産など2月は好調だった大手商社株も資源関連の巨額損失を計上するに至り株価は浮揚力を失った。

 大手の銀行や商社株に共通するのは株価が割安圏にあるという事実だ。投資指標であるPBR(株価純資産倍率)はいずれも解散価値の1倍を大幅に割り込む0.5~0.6倍まで下がった。株価反転への期待が高まっても不思議ではない水準だが、来期業績への懸念が頭をもたげる。世界景気の減速と円高に直面する自動車株も「バリュートラップにはまっている」との指摘は多い。

 割安株の不振はデータが裏付ける。SMBC日興証券の伊藤桂一チーフクオンツアナリストの分析によると、低PBR銘柄の値動きは低調だ。伊藤氏は「バリュー株は昨年から低調な場面があったが、今回は業績悪化が根っこにあるだけにより深刻だ」と警戒する。

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 大型の主力株が苦戦するなか、マネーはどこに向かっているのか。三井住友アセットマネジメントの上村孝広シニアファンドマネージャーは「こんな時でも安定して収益を拡大するグロース株は買い安心感が強い」と話す。特に市場で注目されているのがヘルスケアや小売りなど新興国の内需から恩恵を受ける企業だ。

 29日も中国やタイで自社製品が伸びるライオンが昨年来高値を更新。中国で稼ぐエムスリー株も続伸した。さらにグロース株の代表格ともいえるヨネックス株は年初からの上昇率が4割を超える。バドミントンブームに沸く中国では中間層が厚みを増し「中高価格帯の用品販売が好調だ」(IR課)。PBRは3倍だが、株高の勢いは衰えていない。

 「中国でも2ケタ成長が続くサービス産業は心配していない」。先週来日した投資会社ブラックストーンのスティーブン・シュワルツマン最高経営責任者(CEO)も新興国の内需は成長のフロンティアであると強調していた。

 株式市場で鮮明になる成長企業の優位。だが中小型を軸にしたグロース株が、大型株も多いバリュー株の低迷を補うだけの力はない。買われる銘柄が偏るマネーの一極集中は、買える材料に乏しい市場の苦境を浮き立たせているようだ。

(川上穣)



真相深層 「タワマン節税」はや下火? マンション契約率、7年半ぶり低水準 相続税軽減、当局が対抗策 2016/03/30 本日の日本経済新聞より

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 相続税の負担を減らす目的で高層のタワーマンションを買うタワマン節税。2015年1月の相続増税を機に需要がかさあげされ「相続税バブル」と評されたが最近は下火になりつつある。首都圏の今年1月のマンション契約率は7年半ぶりの50%台に沈んだ。国税庁と総務省の二段構えの節税策封じがきっかけだ。

高層階の評価額は平均で実勢価格の3分の1どまり(大阪市内のマンション群)

 「新規のタワーマンション購入は去年より減った。国の規制強化を心配したお客からたくさん電話がかかってくる」。東京の都心部でマンション売買を仲介する営業マンは浮かない顔だ。

 不動産経済研究所(東京・新宿)によると、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で1月に売り出された新築マンションの契約率は58.6%と前年同月より16.3ポイント下がり、市況の好不調の境目とされる70%を2カ月続けて割り込んだ。

 契約率を押し下げたのは20階以上のタワーマンションの低迷だ。1月の契約率は32.0%となり過去10年で最低を記録した。2月以降は持ち直し傾向だが、タワマンの契約率が90%を超していた昨年夏ごろとは様変わり。価格高騰に加え「節税に使いにくくなったことが影響した」(不動産業界関係者)。

実勢価格と乖離

 タワマン節税のしくみはこうだ。相続税の計算では、1戸あたりの土地の持ち分が小さいマンションは実勢価格より大幅に安く評価される。特に眺望の良い高層階は実勢価格が高いにもかかわらず低層階と同じ基準で評価されるため節税効果が大きい。現金のまま相続するよりも税負担は格段に軽くなる。

 「タワーマンション節税」という言葉は不動産仲介を手がけるスタイルアクト(東京・中央)の登録商標だ。沖有人同社社長が14年に出したタワマン節税の指南書は昨年1月からの相続税の非課税枠縮小や最高税率の引き上げでヒット作になった。富裕層向けの節税セミナーには昨年1年間で約2000人が詰めかけた。

 だが、沖氏でさえ最近はタワマン節税のセミナーで受講者を集めにくくなった。3月に東京・丸の内で開いたセミナーでは、空き地を高く売る方法など幅広い話題に触れる形にした。関西でも状況は同じ。大阪市内の不動産仲介会社の男性は「『相続税対策になる』とのうたい文句は控えるようにした」と言う。

 市場を揺さぶる当局の税制の変化。発端は14年秋に国税庁がひそかに実施した調査だ。全国の20階以上の住戸343物件を調べたところ、評価額は平均で実勢価格のわずか3分の1。「行きすぎだ。看過できない」。分析にあたった松山清人資産評価企画官は昨年秋、全国各局の担当者を集めた。実勢価格と評価額が乖離(かいり)しているケースや取得、相続、売却の時期が不自然に近い場合は追徴課税するよう指示した。

 昨年11月には総務省の関係団体が開いた固定資産税の制度改正を議論する有識者検討会で、委員の大学教授が提案した。「タワーマンションは階数で補正をかける方法もあるのではないか」

明確な基準なく

 相続税の算定基準となる「評価額」は総務省令で定めている。現在はマンション1棟の評価額を各戸の所有者がそれぞれの床面積で均等に分割するため、階層や日当たりの条件によって差がつかず一律だ。同省はこれを高層階ほど評価額が上がるように見直す検討に入った。早ければ18年にも実施される見通しだ。

 ただ、国税庁の指示は追徴課税するかの基準が曖昧で、総務省の制度改正も詳細が決まっていない。税制改正への警戒感が先行している段階だ。

 スタイルアクトの沖氏は「ルールが多少変わっても節税になることに変わりはない」と指摘する。「早く明確にしてくれたほうがお客に売り込みやすくなる」と語る不動産大手の幹部もいる。

 15年1月からの相続増税は、タワマン節税などの新手の節税策を生み出してきた。タワマン節税封じに納税者はどう動くか。攻防はヤマ場にさしかかった。

(江渕智弘)



経営書を読む 吉原英樹著「『バカな』と『なるほど』」(3) 多角化と経営トップ カラ元気はOK、スケベ心はNG 2016/03/29 本日の日本経済新聞より

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 最初に本書が出た当時、私はコンサルタント3年目、バブルの始まりということで多くの新規事業のプロジェクトに関わりました。本書が多角化とそれにかかわるリーダーシップに数章を割いているのはそうした時代背景もあると思います。

 「新規事業が軌道に乗るまでは5年とか10年の長い期間の経過が必要で、しかもその間には予期せざる様々な問題が発生する」「その時、社長など経営者は内心ではしまったと思っても、その内心の不安を顔に出してはならない」「しばしばカラ元気のリーダーシップを必要とする」とはその通りで、現在でも当てはまると思います。

 カラ元気を潔しとしない方もいるかもしれませんが、トップの言動は常にメッセージであることは吉原先生も指摘される通りです。トップが弱気になれば成功することも成功しません。

 ただ、人は知らないうちに自信過剰になります。本来努力と工夫を重ねて初めて成功するような新規事業にもかかわらず、「当社のブランドを使えば大丈夫」「大手が中小に負けるわけはない」などという「常識」を自分の中で作ってしまうと失敗のもとです。

 稲盛和夫氏が経営者として「私心なかりしか」を問うことの重要性を言っておられますが、私心というのはおごりや油断、さらにいえば「これだけの資源があるんだから(そんなに努力しないでも)もうかるに違いない」という思い込み、つまりスケベ心ではないかと思うのです。本書に挙げられる成功企業がいずれも大企業でないことは示唆的ですし、バブル期の多角化の多くが失敗しているのもわかります。

 現在のような成熟市場に直面する日本企業の多角化がより真剣であることは間違いありません。ただし「プライドが許さない」「社長が始めたから」というようなことが5年も10年も取り組む理由だとすれば、それもまた「スケベ心」であることをお忘れなきよう。



大機小機 世界経済に雪解けの兆し 2016/03/29 本日の日本経済新聞より

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 桜の季節になっても世界経済はまだ冬景色だ。だが、雪解けの兆しはある。

 昨年12月、米連邦準備理事会(FRB)は物価と雇用の2つの目標達成にメドを付けて利上げに踏み切った。しかし、金融正常化を急ぐあまり、ドル高のデフレ効果を過小評価していたようだ。今後の利上げを織り込んでドルが高騰した結果、米国の輸出と設備投資が減少しただけでなく、世界経済の先行き不安が高まり世界の株価が暴落し、国際金融市場の動揺を招いてしまった。

 ドルは貿易信用状の8割強、国際金融取引の過半を占める基軸通貨だ。米国は基軸通貨国としてドルを安定させる責務がある。5年間に4割ものドル高を放置した結果、世界貿易が縮小し国際商品価格が暴落、新興国の失速で世界不況に逆戻りしかねない情勢だ。

 こうした中でドルが下落し始めた。日銀がマイナス金利を導入し欧州中央銀行(ECB)は追加緩和に踏み切ったが、ドル安が進む。FRBが利上げを急がない姿勢に転じ、ドル安の流れは鮮明になった。

 ドルの実質実効レートは変動相場制への移行以来43年間の平均に比べて、まだ1割程度高い。米国経済を浮上させ、世界経済を安定させるにはドルの一段安が必要だ。今後、FRBは利上げを物価上昇率の範囲内に抑え、実質的なマイナス金利を維持しつつドル安誘導に向かうのではないだろうか。

 ドル安になれば世界の景色が変わる。原油市場はドル建てで取引されるため、ドルが下落すれば原油価格は上がる。資源国は原油価格の回復で危機から脱出するだろう。すでに資源国経済の回復を織り込んで資源国通貨が上昇している。

 中国の輸出下支え効果も期待できそうだ。人民元の実効レートはドル高に連動して4年間に3割上昇し、競争力を失って輸出が激減した。だが、昨年8月以来、人民元は対ドルで約6%、バスケットレートで約7%下落した。今後、ドル安とともに人民元がさらに下落すれば輸出減少に歯止めが掛かり、中国経済も小康を取り戻すだろう。

 世界経済は国際金融危機の後遺症を抱え、いぜん不安定な状況が続く。だが、ドル高の冬将軍が去れば雪解けが始まり、世界景気にも薄日が差すことになるだろう。

(富民)



スクランブル 中国株の小康、油断大敵 景気対策のいびつさ再び 2016/03/29 本日の日本経済新聞より

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 東京株式市場が良くも悪くも「安定」している要因の一つに、中国市場の落ち着きがある。約3兆元(約50兆円)の経済対策などで上海株は底入れモードだ。だが油断は大敵。景気後退リスクは遠のいたように見えるが、決して楽観できない。

 「日本独自の株価材料が乏しく、海外勢の大半は模様眺め」(シティグループ証券のアレックス・ミラー氏)。こんな声が聞かれた28日、目を引いたのが3%高となった新日鉄住金など鉄鋼株の堅調ぶりだった。

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 買い材料は中国の鋼材市況の好転だ。先日の全国人民代表大会(全人代)で鉄鋼業の生産能力の削減が決まり、景気対策による需要拡大も期待される。中国勢の安値輸出が止まれば日本勢にはプラスに働く。

 鉄鋼や建機など中国関連株の上昇が目立ち始めたのは、中国の旧正月休み明け(2月15日)以降だ。全人代を前に要人の発言や報道で新たな政策期待が広がり、中国株の小康状態を演出している。

 ここで思い出されるのはリーマン・ショック後の2008年末に決まった4兆元の景気対策だ。結果、投機マネーが乱開発を呼び、中国各地に誰も住まない「鬼城(ゴーストタウン)」を生んだ。

 今回も同じ兆候がある。緩和マネーは不動産に向かい、上海や深圳では不動産価格が急騰中だ。上海市は今月、不動産の取得規制を強化する動きに出た。一方で地方都市では不動産の販売不振が続く。

 景気対策を懐疑的にみる日本企業もある。コマツが25日に上海で開催した中国事業説明会。出席したアナリストの一人は「15年より16年の方が需要環境は悪い」と現地幹部から説明を受けたという。コマツは建機に全地球測位システム(GPS)を取り付け、稼働状況を把握している。がぜん先行きに不安が漂う。

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 中国政府は輸出とインフラ投資中心から消費主体の経済に切り替える方針。だが、生産コストの上昇に耐えかねた広東省は最低賃金の上昇を2年間凍結する方針を打ち出した。給料が上がらず消費を抑えて節約するというデフレにつながる動きが、全土に広がりかねない状況になっている。

 「日本のデフレが起きたのはなぜか」。24日に海南省で開催された経済フォーラムで問われた野村ホールディングスの氏家純一氏はこう答えた。「賃金が下がったから」。中国も急上昇してきた賃金が下落に転じれば、バブル崩壊とデフレに沈んだ日本と同じ道をたどる恐れがある。

 上海総合指数は3000ポイント近辺で一進一退。「景気対策の効果で、夏場にかけて4000ポイントまで上昇する」というSMBC日興証券の肖敏捷氏も、その後は「経済の矛盾が表面化し、株価調整リスクがある」と警戒する。本当に中国でデフレが起きれば、原油や鉄鉱石など国際商品市況を再び冷え込ませ、日本株にも間違いなく波及する。

 この数年で上海総合指数と日経平均株価の連動性は高まった。中国ショックはまた来ると覚悟しておいたほうがいい。(戸田敬久)



GLOBAL EYE スタバ「仕事帰り」戦略 次の成長、ワインでつかむ 2016/03/29 本日の日本経済新聞より

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 コーヒーからワインへ――。米コーヒーチェーン大手のスターバックスが「帰りがけの一杯」の需要取り込みを進めている。アルコールも提供する店舗の展開を米本国で加速している。ひととおりの出店を終えた先進国市場での次の成長の芽に育てようと、英国に続き30日に日本に海外2番目となる店を開く。競合の激しい「酒場」市場でも「スタバ」ブランドを確立できるのか。

ワインや地ビールを提供する「イブニングス」(米シアトル)

 「仕事帰りにふらっとワインを飲みに来るのが楽しみ」。ジョセフ・テージャスさん(36)は週に3~4回、米西海岸のシアトル市内のアルコールも提供する「スターバックス・イブニングス」を訪れる。時には1人でリラックスしに、あるときは同僚や友人との会話を楽しみに来る「最も好きな場所の一つ」だ。

 スタバは2010年から「イブニングス」の展開を始めた。全米の約1万2700店のうち、イブニングスを約300店にまで増やした。年内にさらに100店を出す計画を持つ。

 通常の店舗と同様、コーヒーやラテも提供するが、目玉はアルコールだ。メニューには500種類から選び抜いたという10種類のワイン、200~300種類からよりすぐった5種類の地ビールが並ぶ。料金もワインは7ドル(約800円)から、地ビールは4ドルからと、米国の大都市では比較的手ごろな設定だ。

 スパークリングワインに合うトリュフ味のポップコーン、赤ワインに組み合わせるマカロニ・チーズなど飲み物が主役となるつまみもそろえた。

 イブニングスワイン・地ビール担当ブランドマネジャーのダニエル・エックマン氏は「一日の休息時間に、コーヒーの代わりに手軽にワインを楽しめる第3の場所」と位置づける。

 スタバの15年9月期の売上高は前期比17%増の191億6270万ドルと好調だ。最大市場の米国が順調なうえ、中国での展開が加速している。

 「中国は世界で最も重要かつ成功している市場の一つで、いつか米国をしのぐだろう」と、ハワード・シュルツ最高経営責任者(CEO)は中国事業の成長に期待を寄せる。中国では現在約2千店を展開し、今後5年間は年500店のペースで新規出店する計画だ。

 かたや北米など先進国の成熟市場ではひととおりの店舗展開を終えた。さらなる事業拡大に向けアルコールの提供でコーヒー以外の需要開拓をすることにした。海外展開も進め、30日に東京・丸の内に新店を開く。海外では英国に続く2店目でアジアでは初となる。

 日本では働く女性が仕事帰りに立ち寄れる店として展開する。ハウスワインは1杯850円で提供する。日本の外食チェーンでサラリーマン向けの「ちょい飲み」サービスが広がる中、「気分転換の一杯」という文化を女性にも植え付けられるかどうかがカギとなりそうだ。

 地方の小さなコーヒーショップから始まり、今や世界70カ国で2万4000店近くを構えるグローバル企業に成長したスタバ。そのサクセスストーリーに新たな1章が加わるのだろうか。

(シアトルで、高橋里奈)



アジアの安定日本に責任 2016/03/29 本日の日本経済新聞より

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 日本の安全保障路線は新しい時代に入った。意識するしないにかかわらず、これは世界の変化に迫られたものだ。

米の役割が変化

 オバマ政権は「米国は世界の警察官ではない」と公言し、その通りに行動している。

 米国防総省ブレーンによると、南シナ海で人工島を広げる中国をけん制するため、米軍首脳は昨秋以降、艦船や軍用機のさまざまな派遣案を進言してきた。だが、ホワイトハウスにことごとく却下されているという。

 中国との衝突を避けたがっているだけではない。米国が単独で行動するより、アジアの国々に関与を促すことが先決だと信じているのだ。

 これはオバマ政権に限ったことではない。共和党の大統領候補であるトランプ氏は、日韓が駐留経費の負担を大きく増やさないなら、米軍を撤収させると主張する。

 「彼の発言はめちゃくちゃだが、戦争に疲れた米世論の一部を映している」(共和党関係者)

 米ソ冷戦の終結から四半世紀。米国には独りで警察役を担う余裕も、理由もなくなった。米国に頼りきりで日本の平和を守れた時代は、幕を閉じた。ならば、米国の役割の一部をみなで分担し、治安を守るしかない。

 「これからは国内総生産(GDP)の2%を国防費に割いていく」。英国のファロン国防相は取材にこう語った。日本の約2倍の比率だ。

 米国といちばん緊密な英国ですら、強い同盟を保つには自助努力を増やすしかないと感じている。こうした世界の潮流を考えれば、日本の選択は理にかなうものだ。

 安全保障関連法は違憲だという批判がある。だが、日本が集団的自衛権を使えるのは、国の存立が危うくなったときだけだ。憲法が認める範囲内といえるだろう。

 もっとも、この法制を使って自衛隊の活動を広げるまでには、やるべきことがたくさんある。

 まず、「どんなとき、どこまで」自衛隊を出すのか、基準はかなりあいまいだ。このままでは世論の理解はなかなか広がらないだろう。

政治の判断重く

 朝鮮半島や東シナ海、南シナ海でどんな事態になれば、派遣が認められるのか。政府は抽象的な法律の規定をおぎなう基準をつくり、できる限り国民に説明すべきだ。

 より危ない任務をになう自衛隊は入念な準備が欠かせない。「いちばん大事なのは新たな行動基準を徹底し、とっさに行動できるよう訓練することだ」。イラクの復興支援を経験した自衛隊幹部は、こう強調する。

 そのうえで、肝に銘じなければならないのは、政治家の責務がかつてなく重くなることだ。自衛隊派遣の法的なハードルが下がる分、政治家には極めて高い判断力と責任感が求められる。

 「夜も眠れなかった」。国際貢献に自衛隊を送りだしたことがある元閣僚は、現地の情勢が緊迫したときの日々をこう語る。戦場に近い所に部隊を派遣するとなれば、重圧はこの比ではない。

 国民が「この人の決断なら間違いない」と安心できるリーダーでなければ、この法制は機能しない。最高指揮官である首相は当然として、派遣の「承認権」を委ねられた国会議員も同じだ。

 軍事カードがないから外交力が弱い。政治家や官僚はこう言ってきた。今後は軍事力を使わずにすむためにこそ、外交がさらに大切になる。アジアの安定に日本が負っている責任を、忘れてはならない。

(編集委員 秋田浩之)



サイト上のプライバシー「消して!」 削除どこまで、運営者悩む 表現の自由と綱引き 2016/03/28 本日の日本経済新聞より

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 自分の名前をインターネットで検索したら、隠したい過去について書かれたサイトの情報が提示された――。誰でも検索結果を消してほしいと思うだろう。だが、検索事業者に簡単に削除してもらえるとは限らない。安易に応じれば憲法上の「表現の自由」を侵しかねないためだ。

 ヤフーは昨年3月、削除対応の基準を公表。検索結果について、プライバシー侵害かどうかを判断する要素などを例示した。以前も自社の判断で削除してきたが、今回は有識者会議を開き基準を明文化した。「社会的関心の高まりに対応した」とネットセーフティ企画部の吉川徳明マネージャー。だが公表後も運用は手探りが続いている。

 最も対応が難しい削除依頼は犯罪歴に関するもの。同社の基準は「過去の違法行為の情報は公益性が高い」と分類し慎重に構える。だが依頼者側の削除への要望は強い。

 吉川氏は「迷う案件は社内で合議する」と話す。考慮要素は「犯罪の内容、時間の経過、立場」など。だが「とらえ方は人により異なり、合意を形成しづらい」(吉川氏)。判断が難しい場合は削除しないという。

 プライバシー権は秘密をみだりに公開されず自己の情報を制御できる権利だ。判例の蓄積で認められている。憲法の幸福追求権などが根拠とされる。何を隠したいかは人それぞれで一律の判断にそぐわない面も大きい。

 検索事業者が自主的に削除しない場合、依頼者は地方裁判所に削除を求める仮処分を申し立てることが多い。グーグルやヤフーは日本各地の裁判所で対応をしている。

 2014年10月、東京地裁がグーグルに対し削除を命じる決定を出したことを皮切りに、犯罪から一定期間経過したことなどを理由に裁判所が削除を求める案件が相次ぐようになった。だが犯罪歴を消すことについては検索事業者も慎重で、争いは長引くこともある。

 係争では「検索結果画面の情報の、どの部分まで削除すべきか」が新たな争点となっている。検索結果は当該サイトに接続する「リンク(タイトル)」や「スニペット」と呼ぶ数行のサイト内容の抜粋で構成される。

 ヤフーは「スニペットが権利侵害しているなら、そこだけを削除すればいい」と主張する。リンクまで消すと侵害情報だけでなく、ページ内の適法な情報にもたどり着けなくなってしまうことを懸念するためだ。表現の自由や知る権利を守るためには、対症療法にならざるを得ないという。

 一方、依頼者の代理人を務める神田知宏弁護士は「スニペットだけが消えた状態はむしろ目を引く。リンクをクリックすればすぐページが読めるようでは、削除の意味がない」と批判する。

 さいたま地裁が今年2月に出した決定は「忘れられる権利」に言及し、犯罪歴の削除を認めた。欧州ではネット上の個人情報を消す際の根拠とされる権利だ。ただ、新しい権利のため「内容や必要性も含め議論を醸成すべきだ」と神田弁護士は指摘する。

 検索事業者と依頼者の表現の自由とプライバシー権をめぐる綱引きは、まだ一例も最高裁での決着をみていない。明確な法的規範がないなか、事業者は「難しいものはその都度、裁判所の判断に委ねていく」という対応を続けていくことになりそうだ。

(児玉小百合)



起業の軌跡 相次ぎ事業転換 細心大胆、経営は速度 ボヤージュグループCEO 宇佐美進典氏 2016/03/28 本日の日本経済新聞より

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 VOYAGE GROUP(ボヤージュグループ)は多彩な事業を手がけるネットベンチャーだ。最高経営責任者(CEO)の宇佐美進典(43)は、目まぐるしく変わる経営環境に翻弄された。その経験のなかで「事業が縮む予兆」に目を光らせ大胆に事業を転換。「新事業の芽を常に抱える」ことで成長力を保つ。

 広告配信、オンライン調査、ベンチャー投資――。ボヤージュは子会社で多様な事業を次々と手がける。宇佐美は「ネットビジネスのライフサイクルは3~5年。新事業を創り続けないと生き残れない」と話す。

 宇佐美の事業戦略に強烈な印象を与えたのは、創業2年後に傘下入りしたサイバーエージェントだった。その後にMBO(経営陣が参加する買収)で再び独立したが、社長の藤田晋の経営手法を役員として間近で学んだ。そのひとつが「取締役を2年で入れ替える制度」。経営陣が自分の事業に安住せず、常に新規事業への投資リスクをとり続ける企業風土を肌で感じた。

 経験が生きたのが2004年の事業転換だ。米国の流行をみて始めた祖業の懸賞サイトは順調に売上高を伸ばし、社内でも安泰ムードが漂っていた。ところが社内の反対を押し切り価格比較サイトに刷新した。「広告単価が落ち始めた……」と異変を感じたからだ。

 ひとたび単価が落ちれば売上高の低下は止まらないと判断。ネットのビジネスでは1度伸びが止まると「売上高は1年で急落する」というのが持論だ。事業転換は成功し増収を保った。

 だが、その後も経営は揺れ続ける。国内大手ポータルサイトと検索連動型の広告を手がけていたが、10年に契約を突然打ち切られ売上高の3分の1を占める主力事業が苦境に陥った。この時はウェブ広告仲介サービスで穴を埋めた。

 14年にはマザーズに上場。15年には東証一部にくら替えした。それでも「まだ取り組んでいない技術や領域がある」と金融にIT(情報技術)を活用するフィンテック分野など新事業に意欲を示す。

=敬称略

(阿曽村雄太)