パナマ文書が問う(上) いたちごっこどこまで 逃げる富、揺らぐ税の信頼 2016/04/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「パナマ文書が問う(上) いたちごっこどこまで 逃げる富、揺らぐ税の信頼」です。





 世界の著名人らの税逃れを暴いた「パナマ文書」が国際社会を揺さぶっている。マネーと企業が世界を行き交うグローバル時代の税のあり方が今、問われる。

 「顧客が動揺している。手を組もう」。東京都千代田区の弁護士事務所に米ニューヨークの大手法律事務所から電話が入った。4月のパナマ文書発覚以降、氏名公表を心配した富裕層からの問い合わせがやまない。節税を得意とする事務所が連携し、「脱パナマ」の節税網に顧客を取り込もうとしている。

 パナマの法律事務所モサック・フォンセカの内部資料には約400人の日本人も含まれると報じられた。

逃れ続ける「旅人」

 「日本は稼いだ人間が損をする」。高山透氏(仮名、51)は2年前から日本、香港、マレーシアを渡り歩いている。短期滞在を繰り返し所得税を逃れるためだ。税への不満はこんな「永遠の旅人」まで生んだ。

 相続などに悩む多くの事業オーナーらはタックスヘイブン(租税回避地)を使った節税に走る。マレーシアのラブアン島にはアジアなどから流れ込む富裕層のマネーが急拡大している。相続税がゼロのためだ。

 同じく相続税がない香港。日系資本も入るある富裕層向け銀行は預かり資産が10万ドル(約1100万円)からと低めだ。回避地に法人名義で口座を開いて運用するケースが多く、実態は霧に覆われている。

 資金の国外流出が止まらない背景には、日本で富裕層増税が続いたこともある。所得税は最高税率が45%に上がり高年収サラリーマンは控除縮小で税の重みがぐっと増した。相続税は経済協力開発機構(OECD)加盟国でもっとも高い。

 1990年代以降、税制改革は「底面積」にあたる課税ベースを広げる一方、所得や資産の税率を下げて個人の成功を後押しするのが世界の潮流とされてきた。

「出国税」で対抗

 現実には日本でも財政悪化と格差拡大への批判を受けて政治が高所得者の税金を増やし、富裕層は国境を越えた節税で対抗した。税務当局もあの手この手だ。国税庁は5千万円超の海外財産を持つ人に報告を義務付ける国外財産調書を2014年1月から導入。資産家が海外移住する際に一定以上の株式含み益に所得税をかける出国税も始めた。

 捕捉には限界もある。「4億~5億円の無申告財産を海外に持っている男性に修正申告を勧めたら二度と来なかった」。国税庁OBの税理士(57)は苦笑いする。海外資産の申告数は14年分が前年比47%増の8184人。財産総額は3兆1千億円強と2割強増えたが、「実感より1桁少ない」と別の国税庁OB。

 節税自体は違法ではない。だが消費増税などで負担が増す中で、富裕層だけが特権を行使しているとみなされれば国民にしらけムードが広がり、税制の基盤である信頼が失われる。違法な脱税に近い「灰色取引」の温床となり資金洗浄などの犯罪も誘発しかねない。

 クレディ・スイス証券によると純資産100万ドル(約1億1000万円)を超える富裕層は日本に212万人で世界3位だ。「国ごとの税率の違いを突く富裕層の動きは止まらない」(税理士法人、山田&パートナーズの川田剛顧問)。当局と富裕層らのいたちごっこは続く。



大機小機 セブン&アイ人事と社外取締役 2016/04/29 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合2面にある「大機小機 セブン&アイ人事と社外取締役」です。





 セブン&アイ・ホールディングスの取締役会が実力派会長の人事案を否決した件は、創業家との関係など様々な臆測が流れている。だが、社外取締役が決定的な役割を果たしたことは、ガバナンスが機能した画期的なケースとして称賛する向きが多いようだ。

 しかし、これには大いに疑問がある。「指名報酬委員会」が設置されたのは今回の決定をしたわずか1カ月前である。この短い期間に委員会に参加する2人の社外取締役は何をし、何を考え、どう行動したのか。重大な判断をなしえた根拠とは何なのか。

 社外取締役には独立性が求められる。だから会社内部の状況や人事についてよく知らない場合が多く、重要な経営判断をリードする立場にはない。社外取締役の職責は意思決定のプロセスや目的をきちんと見て、経営判断の正当性に根拠を与えるところにある。

 今回のケースなら臨時の会合を何度も開き、それぞれの主張を徹底的に聞き、社員の受け止め方や創業者の考え方、組合の見方などを十分に理解する必要がある。時間がなくて判断できなければ無理やり判断せずに、その理由を議事録に示して経営者による経営判断を尊重すべきである。

 経営の状態や株価といった外形的な数値だけで判断するのなら社外取締役は必要ない。現在の経営者に潜在的なリスクがあると考えるのなら、それが何かを理解しようとする努力が必要である。そのような努力をせずに、仮に海外ファンドなどの意見に影響されたとすれば問題だろう。

 指名委員会等設置会社の指名委員会には固有の決定権があるが、本来の独立した社外取締役の機能からすると過剰である。米国では経営体だった取締役会がモニタリング機関に変わる過程での過渡的な事象だ。日本で委員会設置会社が普及しないのは社外取締役の過剰な機能を嫌うためだ。

 今回の例では取締役会決議を無記名投票で行ったと伝えられる。取締役は一人ひとりの見識が常に問われる存在であり、意見が異なる場合には議事録に異議をとどめて後々の責任問題に対応するものだ。重要な経営判断に過大な影響を及ぼしつつ、誰がどう投票したか分からない状況にして責任を回避した。こう指摘されても仕方ないのではなかろうか。

(盤側)



世界経済のリスクに OECD「全欧州に悪影響」、英1~3月0.4%成長に減速 2016/04/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際2面にある「世界経済のリスクに OECD「全欧州に悪影響」、英1~3月0.4%成長に減速」です。





 【ロンドン=小滝麻理子】英国の欧州連合(EU)離脱問題の影響は世界経済のリスク要因になっている。経済協力開発機構(OECD)は27日、英国がEUを離脱した場合の分析報告書を発表し、離脱により英経済だけでなく、欧州経済全体に悪影響が出ると警告した。国際社会の指導者たちからは政治・経済への混乱を懸念する声が相次いでいる。

 OECDの報告書は、離脱となった場合、英国の国内総生産(GDP)が2020年までに3%減少すると指摘。対英貿易減少などに伴い、英国を除くEUのGDPも1%減少すると予想した。ロンドンで講演したOECDのグリア事務総長は「英のEU離脱を見て、同様の動きが広がりかねず、EUの結束を脅かすものだ」と力説した。

 離脱をけん制する動きは広がっている。国際通貨基金(IMF)は最近の報告書で「英のEU離脱は世界経済の主要なリスクだ」と指摘。今月訪英した米国のオバマ大統領は「EUに残り英国が指導力を高めることが米国にも重要だ」と述べ、EUを離脱すれば貿易交渉で英国は「列の後ろに並ぶことになる」と異例の強い表現を用いた。

 実体経済への影響は出始めている。27日に発表された英国の1~3月期のGDP成長率は0.4%増で、15年10~12月期の0.6%増から減速した。製造業や建設が減少するなど、国民投票を前に英国での投資を控える動きが広がったようだ。

 離脱が現実となれば、英国に製造拠点を持つ日立製作所や日産自動車など日本企業への影響も必至だ。英国からEUへの輸出にメリットが得られず、事業展開の修正を迫られる恐れもある。欧米金融機関の中には、一部業務の海外移転を検討する動きも出ている。



真相深層 統計に映らぬ訪日消費 「個人低迷」でも小売り好決算の謎 節約志向も食品に追い風 2016/04/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「真相深層 統計に映らぬ訪日消費 「個人低迷」でも小売り好決算の謎 節約志向も食品に追い風」です。





 個人消費が低迷しているのに、上場小売業の業績は伸びるという現象が起きている。総務省の家計調査によると、実質消費支出はうるう年の影響を除くと2月まで6カ月連続で前年割れだった。これに対し上場小売業の2016年2月期は1割の経常増益で、違和感もある。方向感が正反対なのはなぜだろう。

 12日、増収増益決算を発表した高島屋。記者会見で木本茂社長の口から漏れたのは逆に弱気な発言だった。「消費者心理は悪化している」。実態は良いのか悪いのか。

 マクロ統計と企業業績の乖離(かいり)の謎を解く鍵は、大きく2つある。一つはインバウンド(訪日客)だ。高島屋の国内百貨店事業は衣料品が落ち込んだ一方、訪日客向けが大きく伸びた。

 観光庁などによると15年の訪日客数は前年比5割増の約2千万人、訪日客の旅行消費額は7割増の約3兆5千億円と、ともに過去最高だった。これは三越伊勢丹ホールディングス、J・フロントリテイリング、高島屋の年商合計にほぼ匹敵する。全国百貨店の訪日客向け売上高は15年に1943億円と前年の2.6倍に増え、売上高全体の3%を占めるに至った。

 インバウンド消費は300兆円の個人消費の1%強に相当する。個人消費を支えてもよさそうだが、ここにからくりがある。インバウンド消費は政府が国内総生産(GDP)を計算する際、輸出に分類され、個人消費には反映されないのだ。15年10~12月期のGDPのうち個人消費は前期比0.9%減り、2四半期ぶりのマイナスになった。

「強者総取り」

 マクロ統計と企業業績のずれを解く鍵のもう一つは「強者総取り」だ。

 経済産業省の商業動態統計によると、15年3月~16年2月の小売業売上高は約140兆円と前年同期比微減だった。この2割程度に当たる上場主要小売り84社の売上高は計28兆円で、逆に7%増えた。非上場の中小や個人商店などが苦戦し、好調なのは上場大企業中心なのがうかがえる。

 強い大企業は大胆な商品戦略やコスト削減を打ちやすい。セブン&アイ・ホールディングスは自主企画商品「セブンプレミアム」のグループ売上高が前期に初めて1兆円を超えた。しまむらは月ごとだった在庫の棚卸しを週ごとに見直し、不採算在庫を減らした。こうした努力も上場企業の好業績を下支えしている。

 マクロ統計にも優勝劣敗は表れている。3月の日銀短観で小売業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業がプラス18に対し、中小企業はマイナス10と差が開いた。

 上場企業でも好調なのは大都市中心だ。神奈川県藤沢市などの百貨店、さいか屋の岡本洋三社長は「インバウンドの恩恵はない」とこぼす。靴販売大手、エービーシー・マートの野口実社長は「消費は都市部と地方で明確な差がある」という。

 これら以外にも、消費低迷そのものが好決算につながった側面もある。

 食品スーパー大手のライフコーポレーションやイズミの前期決算はともに増収増益だった。実質所得が伸び悩む中で節約志向は根強い。家計調査の消費支出で「被服及び履物」は2月まで7カ月連続で減った半面、「食料」の支出は3カ月連続で増加。限りあるお金を食費に優先的に回す消費者の姿が浮かび上がる。

円高・株安が影

 では、統計と業績の乖離は今後も続くのか。今年度は好調な上場小売業にも逆風が吹きそうだ。

 まず、円高で日本製品の割安感が薄れ、インバウンドが陰る可能性がある。松屋は今期のインバウンド売上高の伸びをゼロ%で計画する。「保守的だが楽観は禁物だ」(秋田正紀社長)。再び株安ともなれば「富裕層の消費に影を落とす」(Jフロントの山本良一社長)。百貨店トップは「高額品が売れなくなってきた」と口をそろえる。

 小売業のアナリストによる業績予想は昨年11月から下がり続けている。JPモルガン証券の村田大郎氏は「消費の減速が続けば、市場予想を下回る企業が出てくる恐れがある」と指摘する。

 消費低迷は今後の決算にじわじわと影を落としそうだ。統計と企業業績がともに減速すれば、今年は乖離が縮小する可能性もある。

(湯浅兼輔)



衝撃 パナマ文書 ロシア政権 透ける動揺 プーチン大統領「米の陰謀」 議会選控え 世論気がかり 2016/04/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際2面にある「衝撃 パナマ文書 ロシア政権 透ける動揺 プーチン大統領「米の陰謀」 議会選控え 世論気がかり」です。





 【モスクワ=古川英治】タックスヘイブン(租税回避地)の利用実態を暴いた「パナマ文書」が世界に波紋を広げるなか、ロシアの反応の異質さが際立っている。プーチン大統領の周辺で20億ドル規模の不透明な取引が指摘されたことに対し、「ロシアの不安定化を狙う米国の陰謀」と主張、国民からも抗議の声は上がっていない。政権の言い分にはちぐはぐさも目立ち、動揺も透けて見える。

「国民対話」で質問に答えるプーチン大統領(14日)=AP

 プーチン氏がテレビで数時間にわたり国民からの質問に答えた14日の「国民対話」で失態を犯した。パナマ文書を最初に入手した南ドイツ新聞が米金融機関ゴールドマン・サックスの資本の傘下にあるとの誤った情報を示し、「米国の陰謀」を印象付けようとした。翌日、ペスコフ大統領報道官が誤りを認め謝罪した。

 「新たなメディアのでっち上げが近く報道される」。ペスコフ氏は世界のメディアがパナマ文書を報じる1週間前にこう発言していた。政権が文書の内容を察知し、対応策を準備していたことがうかがえる。報道直後から陰謀論を展開した。

 パナマ文書により、米国の同盟国である英国のキャメロン首相らが批判にさらされるなど「ロシアの不安定化が狙い」との主張は説得力を失った。プーチン氏は14日、「文書の情報には信頼性がある」とこれまでの発言を修正。文書が名指しした友人のチェロ奏者について「財産の大半を楽器の購入に使った」などと長々擁護した。

 政権統制下の主要テレビはパナマ文書の内容を報じず、国民の反応は冷めている。ロシア紙によるとプーチン氏の弾劾を求めて議会前で抗議した市民は2人だけですぐに治安当局に拘束された。

 ネット上でも目立つのは冗談だ。「パナマ文書を巡る当局の会議の議題。なぜたったの20億ドルなのか、残りはどこだ?」「息子にチェロを習わせるべきだった」

 独立系世論調査機関レバダセンターの2月の世論調査では、6割が政府幹部の多くが腐敗していると考えている。ネットの書き込みは汚職に対してしらけた社会の空気を映し出している。

 「(首相が辞任に追い込まれたアイスランドの首都)レイキャビクのようにモスクワでも市民が街頭に出れば何かが変わるだろう。しかし、ロシア人は台所やネットで話すだけ」「ロシア人は誰もが盗みを働く現状に慣れてしまっている」

 それでも政権が神経質になるのは、9月に議会選を控え、原油安の影響で不況が深まっているからだ。14年にウクライナ領クリミア半島を武力で自国に編入して押し上げたプーチン氏の支持率は8割を維持するものの、政府支持率は5割程度にまで低下している。

 議会選の不正をきっかけにモスクワで数十万人規模に膨らんだ11~12年の反プーチン運動の根底には腐敗への怒りがあった。米国を敵に仕立てることでいつまでも国民の不満をそらせるとは限らない。



米の保護主義懸念 カトラー前USTR次席代表代行 TPPは年内承認見込む 2016/04/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際1面にある「米の保護主義懸念 カトラー前USTR次席代表代行 TPPは年内承認見込む」です。





 【ワシントン=河浪武史】環太平洋経済連携協定(TPP)で対日交渉を担当した米通商代表部(USTR)のカトラー前次席代表代行は、日本経済新聞の取材で、米大統領選でのTPP反対論について「論争は保護主義の色彩をより強めており、世界経済全体に悪影響がある」と懸念した。米議会のTPPの承認時期は「年内だとなお楽観視している」と述べた。

 カトラー氏はTPP交渉が昨年秋に大筋合意した後にUSTRを退き、現在は民間調査機関の副会長を務める。米大統領選では共和党のドナルド・トランプ氏らが、TPPへの反対論を掲げる。カトラー氏は「大統領選の論争は、米国をより保護貿易主義へと駆り立てるものだ。他国の保護主義を誘発するだけで、世界貿易の一段の減速につながりかねない」と強く批判した。

 大統領選では民主党のヒラリー・クリントン前国務長官も「TPPは水準を満たしていない」と反対姿勢を示す。カトラー氏は「TPPは日米だけでなく加盟国全体に莫大な経済効果があり、関税引き下げや市場のルールづくりにつながる高水準で野心的で包括的な協定だ」とクリントン氏の見方に反論した。

 米国ではTPPの批准が11月の大統領選の終了後にずれ込むとの見方が強い。カトラー氏は「年内に議会の承認を得られると引き続き楽観視している」と述べた。「長年、USTRに籍を置いてきたが、簡単に承認を得られた自由貿易協定など一つも思い出せないくらいだ」とも指摘した。

 TPPの参加国の拡大については「新しいメンバーの加入は重要だ」と強調し、中国や韓国、インドネシアなどが対象になるとの見方を示した。ただ「中国は長い目でみれば参加を検討すべきだが、事前に相当な国内改革が必要だ」とも指摘した。韓国は米韓自由貿易協定が既に発効しており「TPPに加わるのが自然だ」と述べた。

 中国の景気減速などで、世界貿易機関(WTO)は世界の貿易量の伸びが今年は2.8%にとどまるとみる。カトラー氏は通商交渉が停滞すれば国際貿易はさらに減速しかねないと指摘。「WTO交渉が自由貿易の主軸となるのが理想だが、実に困難になった」と述べ、2001年に始まった多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)の長期停滞に強い懸念を示した。



台湾、尖閣で中国と共闘せず 台湾次期駐日代表 謝長廷氏 日中間の安全弁に 2016/04/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の政治面にある「台湾、尖閣で中国と共闘せず 台湾次期駐日代表 謝長廷氏 日中間の安全弁に」です。





 5月から台湾の政権与党となる民進党が日本との関係強化を鮮明にしている。新総統に就く蔡英文氏は近く、駐日大使にあたる台北経済文化代表処代表に、首相級の行政院長や同党主席を歴任した謝長廷氏が就任すると発表する。異例の人事を受け、日台関係は国民党政権時とどう変わるのか。謝氏に展望を聞いた。

 ――党の重鎮である謝氏が代表に就く意味は。

 「2つの象徴的な意味があると思う。一つは対日関係を非常に重要視しているとのメッセージ。また、代表が外交官でないのは今後、対立的交渉の必要はないとの意味もある」

 ――日台間には沖縄県・尖閣諸島(台湾名は釣魚島)を巡る対立があり、国民党政権下では中台共闘の懸念も出ていた。

 「釣魚島は台湾の領土との立場は変わらない。ただ、日台間の協定で漁業権益の問題はほぼ解決している。領有権の問題で日本との関係に悪影響を及ぼすべきではない。また台湾と大陸(中国)は個別に領有権を主張しており、協力して取り組む問題ではあり得ない」

 ――国民党の馬英九総統は従軍慰安婦問題で日本に謝罪と賠償を求めていた。民進党の対応は。

 「一部の社会運動家、国民の感情に触れる微妙な問題だ。歴史的な被害者に何らかの対応が取られることを願うのが民進党の原則だ。しかし我々が自ら問題を刺激し、日台関係に悪影響を与えるべきではないと考える」

 ――中国は台湾独立への動きを警戒している。

 「蔡氏の両岸(中台)政策は安定した現状の維持で反中ではない。現状維持こそがアジア太平洋の安全と秩序につながる。また台湾は日中の間で緩衝地帯、安全弁としても機能できる」

 ――前回の民進党政権下では陳水扁総統が急進的な独立志向を示し、米国との関係も悪化した。

 「絶対に同じ事は起きない。米国は突発的な事態を望んでおらず、民進党は十分に反省した。米国との関係は台湾の安定の基礎だ」

 「日本は台湾にとり国民感情の面で最も親密な国だ。運命共同体になれると信じている」

(聞き手は台北=伊原健作)

 台湾大卒、京都大大学院で法学修士号を取得。高雄市長や民進党主席、行政院長(首相)を歴任。69歳。



真相深層 マレーシア、独裁のワナ マハティール氏・ナジブ首相、対立収まらず 政情混乱、外資誘致の成長に影 2016/04/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「真相深層 マレーシア、独裁のワナ マハティール氏・ナジブ首相、対立収まらず 政情混乱、外資誘致の成長に影」です。





 マレーシア首相を22年間務めたマハティール氏(90)が、現首相のナジブ氏(62)の退陣を求めて執拗な政権批判を続けている。政府系投資会社を巡る資金疑惑が表向きの理由だが、発言の背後にはナジブ氏への根深い不信が見え隠れする。自身が道筋を敷いた国家戦略がことごとく否定され、孤独な戦いに追い込まれたとの指摘もある。

ナジブ氏の退陣を求めるマハティール氏(3月、クアラルンプール)=AP

 「年内に100万人の署名を集める」。マハティール氏は3月末、首都クアラルンプール近郊で声を張り上げた。首相退陣を求める集会。90歳の元首相は最前列中央に陣取り、5時間にわたって中座しなかった。

 マハティール氏は昨年からナジブ批判を強めた。自らが総裁を務めた与党・統一マレー国民組織(UMNO)を離党し、ナジブ氏を相手取って「汚職捜査を妨害した」とする訴訟も起こした。

 ナジブ氏が政府系投資会社「1MDB」から7億ドル(約760億円)近い資金を受け取ったとする疑惑をただす目的というが、執拗な首相攻撃の真意を巡って臆測も呼んでいる。政界関係者らの証言から浮かぶのは「レガシー(政治的な遺産)」の否定への不満だ。

ブログで批判

 「世界は大笑いしている」。マハティール氏は昨年8月、自身のブログにこう記した。汚職疑惑に絡む資金の出所を「匿名の個人献金だ」とかわしたナジブ氏への皮肉だ。海外の反応を持ち出したのは「マレーシアの評判を気にしている」と見る向きが多い。

 マハティール氏は首相在任時に米欧から「独裁者」と嫌われたが、アジア通貨危機を独力で乗り切って批判を封じた。自伝には「小国だと見下されるのは我慢できない」とある。足元でナジブ首相を巡る疑惑は収まらず、同国から資金流出が続く。自らが育てた国の地位低下が「我慢できなくなった」(政治アナリスト)との見立てだ。

 対立の根はもっと深いとの見方もある。野党関係者が指摘するのはマハティール氏の焦りだ。2009年に首相の座に就いたナジブ氏は、元首相の影響下にある事業を相次ぎ縮小した。これに反発したマハティール氏が、資金疑惑を契機に首相攻撃を強めたとの読みだ。

 確執の象徴は国産自動車メーカー「プロトン」だ。同社はマハティール氏肝煎りで1983年に設立し、補助金や税優遇でシェアを高めた。だが足元では販売不振が止まらない。14年に会長に就任したマハティール氏は資金支援を求めたが、ナジブ氏は首を縦に振らない。「製造業への誇りがみられない」。マハティール氏は3月末に会長を退任し、ナジブ政権への不満をこぼした。

 ナジブ首相は同じ時期に政府による超高層ビル起工式に臨んだ。同国で最も高い「ペトロナス・ツインタワー」より約200メートルも高い。マハティール氏が成長の象徴として建てたツインタワーを見下ろす存在となる。

 ナジブ氏がマハティール氏の痕跡を消そうとする背景には2つの要因がある。表面上の理由は成長戦略の相違だ。元首相は発展途上国からの脱皮のために製造業を重視した。ナジブ氏は金融やサービス産業の誘致で先進国入りをうかがう。

影響力恐れる

 もう1つが「恐れ」だ。前任のアブドラ氏はマハティール氏の手で辞任に追い込まれた。国民人気の高いマハティール氏は年齢を重ねても衰えの兆しが見えない。影響力の源泉であるマハティール氏肝煎りの事業を細らせ、自身の地位を守る狙いが透ける。

 足元ではナジブ氏が圧倒的に優勢だ。マハティール氏の支持者を要職から追放し党内の異論を封じた。自身の疑惑に関する報道を許さないため世論は盛り上がらない。マハティール氏が政敵を追い落とす際に使った「独裁」の手法を引き継いだ。

 だが強権が国外にも通じるか。マレーシアは先進国入りを前に成長が鈍化する「中所得国のわな」に直面する。ナジブ氏は外資誘致で成長加速を目指すが、政情の混乱を嫌って企業は進出に二の足を踏む。20世紀後半の成長をけん引した「開発独裁」のひずみがいま噴出する。マハティール氏もナジブ氏も解を持っていないようにみえる。

(シンガポール=吉田渉)



「顧問」でスキル生かし働く 中小企業にシニアが知恵 数値化営業伝える/研修の意義提案 2016/04/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のくらし面にある「」です。





 「積み重ねたスキルを自分でも思ってみなかった企業で活用できる」「会社に雇われない働き方がいい」。現役時代に身に付けた能力を生かし、複数の中小企業のプロジェクトの「顧問」として働くシニアが目立つ。営業、生産の管理、企業風土の改革など、半年から2年ほどの単位で課題解決に知恵を出し、成果が出たら契約は終わり。新たな働き方として人材サービス会社が後押しに乗り出している。

打ち合わせに熱が入る宮崎博さん(左)

 宮崎博さん(60)は昨年から「顧問」という働き方をしている。「大手が出てくる前に、短期で新事業を始めたい。どうすればいいかアドバイスをしてほしい」「製品はいいと信じているのだが、売り上げが伸びない」。そんな悩みを抱える中小企業の相談を受けている。

 まずは営業の会議に立ち会い、何を話し合っているか確かめる。営業マンに「売り上げ目標は達成できそうか」と聞いて「まずまずです」などとあいまいな答えが返ってきたら、「まったく営業体制が整備されていない」と判断する。なぜか。

 目標達成が「まずまず」では現状把握が甘いからだ。現役時代は外資系パソコンメーカーのゼネラルマネジャーを務めた。たたき込まれたのは「営業を数値化、見える化して分析する手法」だ。取引先に何回電話し、中心人物にどれくらい接触したのか。日報を部内のメールで共有、ライバル企業になぜ勝てたか、なぜ負けたかを明らかにする。「この手法がどんな分野でも通用すると気づいたから自信を持って勧められる」

 宮崎さんが登録するのはリクルートキャリア(東京・千代田)のサービスだ。現在契約先は3社で、1社を訪ねるのは週に1回、2~4時間ほど。スキル、取り組む仕事の内容次第で、紹介企業から1日数万円の報酬が出る。宮崎さんの今の報酬は年収換算で約900万円。定年後同じ会社に再雇用されても転職を選んでも、収入は半分以下に減ることが多いだけに、破格といえる条件だ。

 外部人材の提案がすんなり受け入れられることはまれだ。「そんな提案は実現できない」という抵抗勢力は多い。しかし社員として転職するのでなく、独立した立場で意見を言う顧問だから、正しいと思ったことは主張できる。「業務が改善するまでしっかりお世話し、結果、すべての会社で売り上げの成果が上がっている。うれしい」

 ◇  ◇

 平林明夫さん(66)はプラスチック加工企業の工場で生産技術を高め、生産管理を効率化する仕事を長年してきた。顧問という働き方により自分の専門技術を他の会社でどれだけ生かせるのか。当初は疑問に思っていた。ところが実際に契約先に行くと、異業種でも自分の様々な経験を活用できることを知った。

 ある中小企業の場合、社員の多くが創業社長からの指示待ちに慣れ、二代目に代わっても命令がないと動かないのが悩みになっていた。「まず幹部が積極的に意見を出すための勉強会を開こう」「社員研修で前向きな姿勢を引き出しては」と提案した。工場の技術力向上、効率化で慣れ親しんだ手法だ。じわじわと成果が出始めている。

 平林さんは退職後に一度、転職活動をしたが、返ってきたのは「化学系は就職先がほとんどありません」との言葉ばかり。しかし顧問サービスに出合った。サーキュレーション(東京・千代田)など4社と契約している。面談では生産管理でどんなことをしたのか、見かけの職歴だけでなく詳細に質問を受けた。潜在的なスキルに着目したのだろう、想定外の業種の企業を紹介されることが多く、面白いという。

 ◇  ◇

 柴田実さん(61)は転職を重ね、業種の違う4社の社員として働いてきた。人事、総務畑が長い。そこで人材大手、インテリジェンスの顧問サービスを知った。「幅広い人脈を利用して、各企業の新製品を売り込むきっかけとなるよう、知り合いに連絡をとる営業の発掘役になってはどうか」。思ってもみない提案だった。「今は夜が完全に自由なのがうれしい。勉強会や飲み会に現役時代よりもよく出られ、さらに人脈が広がっている」と柴田さんは話す。

 シニア人材には経験やスキルがある。だが、転職では収入や働く時間の長さ、新たな企業文化に溶け込めるかなどに悩む人は多い。自分のスキルを意外な形で生かす「顧問」が、シニアの無理のない働き方として広がりそうだ。

(相川浩之)



経営書を読む C.K.プラハラード著「ネクスト・マーケット」(3) エコシステムづくり 貧困層へのビジネス教育 重要 2016/04/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のキャリアアップ面にある「経営書を読む C.K.プラハラード著「ネクスト・マーケット」(3) エコシステムづくり 貧困層へのビジネス教育 重要」です。





 世界に40億人いる貧困(BOP)層へのビジネスは、企業単独では成しえません。途上国には先進国以上に多様な取引先・ステークホルダーがおり、彼らを巻き込む仕組みをつくらなければならないのです。この多様なプレーヤーを巻き込む仕組みをプラハラードはエコシステム(生態系)と呼びます。BOP市場に進出する先進国企業にはエコシステムの形成が求められます。

 例えば同書は、欧州企業ユニリーバのインド子会社HULを取り上げます。日用品・食料品を扱うHULのエコシステムにも、150の工場からなる中小サプライヤー、1万2000の卸業者、30万の中小・零細の小売業者、4万の部族民、あるいは州政府など、多様なプレーヤーがいます。

 中でも興味深いのはシャクティ・アマと呼ばれる多数の個人起業家です。インドのような巨大BOP市場では農村部までHUL単独の直販網が届きません。代わりにシャクティ・アマが農村部の直販を担っています。

 ここで彼らをエコシステムに巻き込むポイントは「教育」である、とプラハラードは述べます。それも学校教育のような座学ではありません。実際に市場でのビジネスを経験させ製品・価格・収益の知識を学ばせます。

 さらに重要なのは契約の知識です。彼らに契約の概念を教え、契約を順守すれば利益が得られることを体感させることで、シャクティ・アマは一人前の起業家として育っていくのです。

 ビジネスを通じてBOP層の人々を教育することは、彼らの尊厳の向上にもつながるようです。本書によると、あるシャクティ・アマは「(この仕事を始めて)やっと一人前の人間になれた」と言ったそうです。HULがインドで契約するシャクティ・アマは、いまや100万人に達します。BOPのエコシステムとは、このように民間企業が市場メカニズムの規範を植え付けることで形成され、それが貧困問題解決にもつながるのです。