こころの健康学 不眠の改善 生活リズムの安定 大事 2016/07/31 本日の日本経済新聞より

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 蒸し暑い夜が続いて寝つくのに苦労する季節になったこともあり、友人の睡眠の専門家と睡眠薬のプラセボ効果が話題になった。睡眠薬というのは睡眠導入剤ともいわれ、睡眠を改善する薬のことだ。そうした薬の効果を探る調査をすると、薬を飲んだという行為だけで眠気が出てくることが少なくないという。

 理由のひとつに偽薬効果ともいわれるプラセボ効果がある。薬の効果のために眠気が出てくるのではなく、何の効果もない粉を固めただけの偽の薬であっても、薬を飲んだという安心感のために眠気が出てくる心理的作用の効果だ。

 それでは、眠れるようになったのは心理的効果のためだけかというと、必ずしもそうではないと友人はいう。日常生活に支障が出るような不眠のときには睡眠薬は役に立つ。不眠に苦しんでいた人が睡眠薬で生活のリズムを取り戻し、精神的に元気になることは私も外来でよく経験した。だから薬の効果を否定するのは好ましくない。

 大事なのが生活習慣だ。薬の効果を調べるときには生活習慣も同時に調べる。何時に床に入って何時に起きるのか。日中はどのような生活を送り、いつ食事をして、風呂に入っているのか。調査に参加している人は自分の生活パターンに目を向けるようになり、意識するようになる。

 その結果、規則正しいリズムで生活するようになってくる。薬の効果を調べているときに、生活のリズムが安定して不眠が改善することがある。不眠改善薬の効果の研究が、生活のリズムの大切さも実証していたのだ。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



南シナ海 苦境の習氏 仲裁裁判で完敗→「微笑外交」に微修正 2016/07/31 本日の日本経済新聞より

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 南シナ海での中国の主権を認めない判決を仲裁裁判所が下した。苦境に陥った中国の習近平国家主席は受け入れを拒む一方、新たな動きも見せる。それは米国や日本との関係にも微妙な変化をもたらした。

習氏は参院選で基盤を固めた安倍政権を無視できなくなった

 12日の判決から1週間余り、米海軍制服組トップのリチャードソン作戦部長は山東省青海の中国北海艦隊司令部にいた。「米海軍は南シナ海を含む世界中で法に基づく軍事行動を続ける」。伝えた言葉は判決を無視し、岩礁施設の建設続行まで宣言した中国への警告だった。

G20へ「一時休戦」

 それでも中国は青海でリチャードソン氏に唯一の空母「遼寧」を参観させた。注目すべきは、飛行甲板以外に、艦載機格納庫なども公開した事実だ。海軍大将だけに一目で装備水準を判別できる。中国がリスクを冒したのは「米国との衝突だけは避けたい」という本音を伝えるためだった。

 習主席は25日、訪中したライス米大統領補佐官と北京で会談した。ケリー米国務長官は翌日、ラオスでの東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)に出席する。習主席がライス氏に「現行の国際秩序と規則に挑戦するつもりはない」と語ったのは、米国への秋波だった。

 そこには、9月に中国・杭州で開く20カ国・地域(G20)首脳会議の成功に向けて「一時休戦」の雰囲気を醸し出す狙いもあった。

 判決が出た12日、中国は対日外交でも動いた。モンゴルでのアジア欧州会議(ASEM)の際、中国の李克強首相が安倍晋三首相と会談する日程調整に早々と応じた。現地の事前折衝でも「条件をのまなければ会談自体やめる」という常とう句は封印した。

 8カ月ぶりの日中首相会談は15日、あっさり実現した。南シナ海問題ではぶつかったが、双方とも内容公表は控えた。直前、李首相はモンゴルで南シナ海問題のカギを握るカンボジアの首相らとも会談。ラオスでのASEAN会合を前にねじを巻いていた。中国は翌週、杉山晋輔外務次官の北京入りも受け入れた。

 「経済を含む対日交流は大切だが、中国に厳しい安倍は相手にしたくない」。中国がそんな姿勢を微修正したのはなぜか。「完敗」判決を受け、中国の選択肢は狭まった。国際的な孤立は避けたい。体面さえ保てるなら周辺国との対話に応じる「微笑外交」である。

 参院選での自公勝利も影響した。安倍政権の基盤は盤石になり、中国が気にする憲法改正さえありうる。習指導部も安倍政権を無視できない。「中国は口でどう言おうと相手の力に応じて対処する。中国自身が力の信奉者だからだ」。中国外交を知るアジアの外交官の弁だ。25日、ラオスでは日中外相会談が実現した。

 中国の王毅外相は4月末、北京で岸田文雄外相と会談した際、突出した「日本たたき」に出た。今回も南シナ海問題では原則論に終始したが、年内に日本で予定する日中韓首脳会談の調整には初めて前向きな姿勢を示した。日中の「海空連絡メカニズム」の運用開始も実現させたいとした。

主権問題譲歩せず

 日中韓外相会談が実現すれば王氏の外相就任後の初訪日になる。杭州G20で約1年半ぶりの安倍・習会談があるのかも焦点だ。とはいえ、中国は一連の国際会議の声明で判決に触れるのを力ずくで阻止した。南シナ海での演習も強行している。主権問題では一切、譲歩していない。

 「既存の国際秩序を変えるのは本当に難しい」

 外国訪問中だった習主席が周囲にぽろっと本音を漏らしたことがある。自ら提起した「新しい形の大国関係」が米オバマ政権に事実上、拒まれた後だった。今回、ライス氏に語った「現行の国際秩序と規則に挑戦するつもりはない」との融和姿勢は、既に国際法を無視した以上、方便にすぎない。

 習主席が掲げる「中華民族復興の夢」には米主導の現体制への反発がにじむ。今後も海洋での摩擦は続く。日本は各国と連携し、国際法による解決を根気強く促すしかない。

<仲裁裁判所判決の骨子>・中国が南シナ海に設定した独自の境界線「九段線」には主権、管轄権、歴史的権利を主張する法的根拠はない・南沙諸島には排他的経済水域(EEZ)を設けられる国連海洋法条約上の「島」はなく、中国はEEZを主張できない・中国がスカボロー礁でフィリピン漁民を締め出したのは国際法違反である・ミスチーフ礁とセカンドトーマス礁はフィリピンのEEZ内にある・中国は南沙諸島で人工島を建設するなどして国連海洋法条約の環境保護義務に違反している



風見鶏 効くか、寸止めの圧力 2016/07/31 本日の日本経済新聞より

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 南シナ海をめぐり、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は今月12日、中国の主張をことごとく退ける判決を下した。その2日後、米国のバイデン副大統領は、ハワイで開かれた日米韓の外務次官協議に出席した。

 閣僚より格下の次官級会議に副大統領が出ることなど、ふつうなら考えられない。異例だったのは、それだけではなかった。

 その冒頭、約50分の長広舌をふるい、伏せられていた習近平・中国国家主席との会談の一部を、暴露してしまったのだ。

 バイデン氏が2013年12月初め、訪中した際のやり取りである。テーマはこの直前、日中台に囲まれた東シナ海に中国が「防空識別圏」を設定し、外国機の出入りを監視しようとした問題だった。

 この措置を批判したバイデン氏に、習近平氏は「では、私にどうしろと言うのか」と開き直った。そこでバイデン氏は「あなたがどうするか、さほど期待していない」と切り捨て、こう警告したという。

 「米軍は(最近、中国への通知なしに防空識別圏内に)B52爆撃機を飛ばした。我々はこれからも、飛び続ける。中国の『防空識別圏』を認めることはない」

 実際、米軍はその後も、中国が設けた「防空識別圏」を無視し、自由に飛んでいる。バイデン氏はこの発言をあえて公表することで、南シナ海でも、中国の強引な行動は認めない決意を示したのだった。

 米政府は中国に対し、南シナ海でも「防空識別圏」を設定したら、強い対抗措置に出る、と水面下で伝えているという。

 先週、ラオスで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の会合でも、米国は日本と組み、中国に仲裁判決の受け入れを迫った。

 ところが、総じてみると、米国の対応はなぜか、いたって穏便だ。オバマ大統領は仲裁判決への発言を控えている。米国防総省でもいま、軍事圧力を強めることには慎重論が多いらしい。

 仲裁判決を受け、かさにかかって中国を責めるというより、刺激しすぎないよう、“寸止め”の圧力にとどめているようなのだ。どうしてなのか。

 内情を知る複数の外交筋はこう解説する。

 「中国は法的に完敗し、内心、かなり焦っている。さらにたたくより、静かに諭したほうが、前向きな行動を引き出しやすい

 米国にかぎったことではない。安倍政権の対応も似たところがある。

 今月15日、モンゴルで開かれた安倍晋三首相と李克強中国首相の会談。安倍氏は日本周辺での中国軍の動きなどをけん制したが、南シナ海問題には短くふれる程度にとどめたという。

 会談の前半では、9月初めに中国が主催する20カ国・地域(G20)首脳会議を成功させるため、最大限、協力するとも伝えた。

 「言うべきことは言うが、経済やテロ対策では中国との協力を進めていく」。周辺によると、安倍氏はこんな意向を示している。中国が窮地にある今こそ、日中打開の好機とみているフシすらある。

 この路線がうまくいくかどうか、日米両政府内ではなお、議論が割れる。要約すると、こんな具合だ。

 南シナ海の軍事化を主導しているのが習近平氏なら、対話によって彼らの行動を変えられるかもしれない。だが、軍が主導し、習氏が追認しているのだとすれば、融和策はほとんど効かないだろう――。

 このどちらかで、処方箋は全く異なる。答えを知るには、中国の言動にさらに目を凝らし、権力中枢の実態を探るしかない。

(編集委員 秋田浩之)



クルマ異次元攻防(1) 握手か対決か? 攻めるIT、トヨタ動く 2016/07/31 本日の日本経済新聞より

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 自動車産業に大きな変革の波が押し寄せている。環境規制の強化に加え、人工知能(AI)を駆使した自動運転車の開発や相乗りに象徴されるシェアエコノミーの浸透など、IT(情報技術)業界も入り交じった主導権争いが激しさを増す。次世代のクルマを巡る異次元攻防の前線を追う。

 「彼らはデータを欲しがっているが、そこは譲れない一線だ」。トヨタ自動車が5年ほど前から米グーグルと断続的に続けてきた協議。車載情報端末での協力などがテーブルの上に載っているもようだが、21世紀の「巨人たちの握手」はなかなか実現しない。

「つながる」がカギ

 車とIT業界の盟主による“異業種連携”。背景には車を取り巻く構造変化がある。「走る、曲がる、止まる機能に『つながる』が加わる」(豊田章男社長)。半導体の性能向上やコスト低下でデータの収集と活用が本格的に始まった。あらゆる情報を集め、新サービスを生み出そうとするグーグルにとって車から集まる膨大な情報は魅力だ。

 「全ての車のワイパーの状況が分かれば、各地の詳細な気象情報が把握できる」「最近あの通りでオープンした店は行列ができている」――。日米の乗用車に通信機能を標準搭載するトヨタ社内ではこんな会話が交わされている。世界で数千万台が走るトヨタ車がセンサーになり様々なデータを取れれば、無限のビジネスが生まれる。

 「トヨタは5、10年後に振り返ったら違う会社になっているかもしれない」(内山田竹志会長)。約90年前に織機メーカーとして出発したトヨタはその後、車メーカーに変身した。競争軸が車単品の性能からデータへと変わるなか、生産技術の「カイゼン」や部品の「擦り合わせ」などアナログともいえる技術で頂点に上り詰めたトヨタは大転換を迫られている。

 動きは速い。昨年11月に三井住友銀行などと共同で新技術に投資するファンドを設立。2カ月後には「日本では必要な人材を確保できない」(内山田氏)として、米シリコンバレーにAIの研究開発子会社を設けるなど、これまで貫いてきた自前主義と決別した。

人材引き抜き

 AI新拠点のトップにこの分野の第一人者、ギル・プラット氏を招くと、同氏を慕う技術者約10人が、車で15分ほどのグーグル本社から移ってきた。「AIは自動運転に加え、ロボットやトヨタ生産方式にも応用可能だ」(プラット氏)。表向きはグーグルとの協力を模索する一方、机の下では次世代の車開発の主導権争いでしのぎを削る。

 トヨタの挑戦が成功する保証はない。グーグルは、欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズと自動運転車の開発で提携。アウディ、BMW、ダイムラーの独3社は通信機器大手ノキア(フィンランド)の地図・位置情報子会社を買収。かつての「台数」ではなく、データを目的とした提携が相次ぐ。

 「ソフトも大切だが、最後は車という製品にする能力が要る。総合力で競争に勝つ」。トヨタの技術開発部隊を率いる伊勢清貴専務役員は強気だが、焦りも感じている。4月の先端技術の社内カンパニー発足の際にこう訴えた。「トヨタは今、変化に対応できた富士フイルムになるか、経営破綻したコダックになるか、岐路に立っている」

(関連記事企業面に)



英EU離脱 揺れる世界(5) 読めぬ安保への影響 ロシア、米欧の分断狙う 2016/07/30 本日の日本経済新聞より

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 「安全保障で妥協はできない」「同盟諸国の力を弱め、敵を勢いづかせるような賭けをしてはならない」

英下院は潜水艦発射型戦略核ミサイルの更新を可決した(スコットランドの潜水艦基地)=ロイター

 18日、就任後初の議会答弁に立ったメイ首相の力のこもった声が響いた。少なくとも4兆円超の費用が掛かり、世論も割れる潜水艦発射型戦略核ミサイル「トライデント」の更新を下院で可決させ、核戦力を通じて大国としての影響力を維持する決意をにじませた。

 英国民のEU離脱の是非を巡る議論は経済と移民の問題に集中したが、離脱が決まると、安保に目が向き始めた。

 いち早く動いたのは情報機関だった。フランスなど欧州の当局とこれまでと変わらぬ協力を保つことを確認したという。

 「安保分野は離脱の打撃を最小限に抑えられるはずだ」とポーリン・ネビルジョーンズ元英安保・対テロ担当相はいう。

 欧州の安保はEUではなく、米主導の北大西洋条約機構(NATO)が担う。英情報機関は相対でネットワークを世界に張り巡らしており、「欧州は何よりも英国の情報に頼っている」。

 それでも英国のEU離脱が世界に与える中長期的な影響は読み切れない。米国と歩調を合わせる英国は、ロシアの侵攻を受けるウクライナやイランなど中東の問題に欧州を関与させる役目を果たしてきた。

 7月、ワルシャワで開いたNATO首脳会議。ハモンド前英外相によると、議論の大半は英国のEU離脱問題に割かれた。

 米国はその場でダメージコントロールに動いた。オバマ大統領は英独仏伊の首脳を集め、「欧州の安定と健全さを保とう」と訴えた。この枠組みでウクライナの大統領と会談、同国の支援で米欧の結束が揺らがぬことを演出してみせた。

 英王立国際問題研究所のロビン・ニブレット所長は、NATOの政策決定機関である北大西洋理事会(NAC)が英欧や米英欧間の政策調整の場になると指摘する。「英国はNATOや主要7カ国(G7)を影響力のテコにするしかない」

 ロシアはほくそ笑んでいる。「世界はよりよい方向に進んでいる」。英国民投票の結果を受け、米欧の分断に腐心してきたロシア政府内ではこんな言葉が飛び交った。

 EU離脱派のリーダーだったボリス・ジョンソン氏の外相就任が決まると、独仏から批判的な声が上がるのを尻目に、ロシアのラブロフ外相は祝辞を送った。「英ロ関係は新たなページがめくられるのを待っている」(ザハロワ外務省情報局長)

 英王立防衛安全保障研究所のロシア人研究員、イーゴリ・ストゥヤーギン氏が分析する。「ロシアは米欧を結ぶ英国が切り崩し可能な“弱い鎖”になると踏んでいる」

 英国を大国たらしめる情報力と軍事力は経済が悪化すれば予算が目減りし、維持できなくなる。EU離脱交渉が難航し、景気が低迷したとき、英国に食い込む余地ができるとロシアは読む。米大統領選の共和党候補トランプ氏がNATOに冷淡なこともにらんでいる。

 英国ではEU離脱が決まった衝撃を1956年のスエズ動乱と重ねる論調が目立つ。エジプトが国有化を宣言したスエズ運河を取り戻すために出兵した英国は、米国の反対により孤立、ポンドは暴落し、撤退に追い込まれた。

 大英帝国の落日を決定づけたこの事件は、米国と「特別な関係」を再構築し、欧州大陸に接近していく契機ともなった。時計の針を巻き戻すかのようなEUからの離脱。その余波は米欧中心の秩序を揺さぶりかねない。

=この項おわり

 古川英治、岐部秀光、森本学、小滝麻理子、黄田和宏が担当しました。



英EU離脱 揺れる世界(4) 市場重視、軌道修正か メイ政権、企業規制強化の色彩 2016/07/29 本日の日本経済新聞より

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 「大企業に変革を提案するのはアンチ・ビジネスではない」

 首相就任の2日前、メイ氏は保守党党首選の遊説で訪れた英中部バーミンガムで経済政策の構想を披露した。買収規制の強化や企業統治の見直しなど、自由な市場経済を看板に掲げてきた保守党の政策とは一線を画す内容。ただでさえ英国の欧州連合(EU)離脱決定で不透明感が増すなか、政策の行方まで読みづらくなり、ビジネス界には戸惑いが広がっている。

 政策転換を目指すメイ氏の念頭にあるのが、英製薬大手アストラゼネカに対して米ファイザーが買収を企てた2014年の記憶だ。「資産を切り売りする実績があり、税逃れを買収の動機と自認する会社」とファイザーを名指しで批判。海外企業から英国の重要な産業を守るため、規制強化の必要性を訴える。

 ファイザー問題は当時の英議会で、買収後のリストラで英国の研究開発に悪影響が及ぶとの懸念から脚光を浴びた経緯がある。議会はイアン・リード最高経営責任者(CEO)を召喚し、雇用維持などを約束させた。アストラゼネカの経営陣の反対で買収は破談に終わったが、英国はその後、買収交渉時の約束に拘束力を持たせるようルールを改正した。メイ氏の方針はこの路線の延長線上にあるとみられる。

 今月中旬、英半導体設計のアーム・ホールディングス(ARM)の買収を発表したソフトバンクグループの孫正義社長は、英国内の雇用を倍増する計画について「法的拘束力を持たせる」と述べた。新政権の目指す方向性に沿った「空気を読んだ」動き方とも言えるが、今後の大型案件でも同じような配慮が求められるとしたら、門戸が狭まり、投資先としての英国の魅力が損なわれるリスクがある。

 格差是正を優先した左派寄りの企業改革を目指しているのもメイ政権の特徴だ。

 例えば大企業経営者の高額報酬問題では、株主総会での報酬議案に拘束力を持たせる考えを示す。大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)のパートナー、トム・ゴスリング氏は規制強化を避けるため、「役員報酬に対する一般の懸念に対応する手法を見つける必要がある」と企業に先手を打った変革を求めている。その他にも「消費者や従業員の代表が企業の取締役会に参加できるようにする」といった内容が改革案に含まれている。

 歴代2人目の女性宰相として、故サッチャー元首相と比較されることの多いメイ氏。だが、今のところ見えている改革案は規制強化の色彩が濃く、サッチャー氏がもたらした保守党の市場重視の伝統に大転換をもたらす可能性を感じさせる。

 一方で、EU離脱後の英経済をどう成長に導くのか、新政権は経済政策の全体像をなお明らかにしていない。産業競争力の向上や雇用拡大につなげる具体策も示せておらず、企業や投資家の不安はくすぶったままだ。

 マーケットは今のところ冷静だ。主要企業で構成するFTSE100種株価指数は約1年ぶりの高値圏に上昇し、通貨ポンドの下落にも歯止めがかかっている。通貨安で割安感の出た英国の企業や不動産などを取得する動きも出始めた。

 EU離脱後に内向きの規制強化が進めば、開かれた市場を成長の柱としてきた英国が、孤立の道をたどりかねない。神経質な海外マネーが新政権の政策からそんな匂いをかぎ取れば、金融市場は再び波乱に見舞われかねない。



フィリピン大統領、対中協議「仲裁判決が基礎」 米国務長官と会談 2016/07/28 本日の日本経済新聞より

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 【マニラ=佐竹実】フィリピンのドゥテルテ大統領は27日、マニラのマラカニアン宮殿(大統領府)でケリー米国務長官と会談した。南シナ海のほぼ全域に主権が及ぶとする中国の主張を否定したオランダ・ハーグの仲裁裁判所の判決について、中国との2国間協議の際の前提にする考えを伝えた。フィリピン国内への米軍の実質的な駐留を可能にした新軍事協定を履行し、軍事的な協力を深めることも確認した。

ケリー米国務長官(左)を出迎えるドゥテルテ大統領(27日、首都マニラ)=フィリピン大統領府提供

 6月末に就任したドゥテルテ氏が米閣僚と会談するのは初めて。両者はマラカニアン宮殿で昼食を取りながら会談した。アベリア大統領報道官によると、ドゥテルテ氏は、「いかなる協議をする際にも、仲裁裁判の判決が基礎になる」と述べた。中国との2国間協議による紛争の解決を目指すフィリピンは、全面的に勝利した判決を後ろ盾にする考えだ。

 米比両国は2014年、「拡大防衛協力協定」を締結した。これにより、米軍はフィリピン軍の基地を使用できるようになり、25年ぶりに実質的に再駐留する。米国にとっては、南シナ海に近いパラワン島の基地などに兵力を配備することで、軍事化を進める中国をけん制する狙いがある。

 ドゥテルテ政権は、米国との同盟を維持する一方で、中国を過度には刺激せず、交渉により利を引き出す考えだ。ラモス元大統領を特使として中国に派遣する構想もある。

 だが中国は2国間協議に際して判決の棚上げを主張しており、交渉がうまく進むかどうかは不透明だ。これについてアベリア報道官は「対話は前向きに進む」と述べた。

 ケリー氏は同日、ヤサイ外相とも会談した。記者会見でケリー氏は、「法の支配を強く支持する。仲裁裁判の判決は法的拘束力を持つ」と述べ、判決に従わないとする中国をけん制した。ラオスで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議の共同声明が仲裁裁判の判決に言及しなかったことに関して、「法の支配を尊重すると明記しており、満足している」と評価した。

 ヤサイ外相も共同声明を評価した上で、「ASEANの勝利だ」と述べた。共同声明から中国批判を取り除くようカンボジアなどに工作を続けた中国を念頭に置いた発言だ。ヤサイ外相はラオスでの会議の際、声明に仲裁裁判の判決を盛り込むよう強く主張したことも明らかにした。

 外交経験が少ないヤサイ外相は発言にブレが目立つが、ドゥテルテ大統領が指摘したように、判決を後ろ盾に中国と2国間交渉をして紛争の解決を目指すのが基本的なスタンスだ。同日の会見では「中国とフィリピンは、判決を平和的に履行するために前に進むことを望んでいる」と述べた。



米経済諮問委委員長「英離脱の影響 吸収可能」 日本の為替介入けん制、欧州には不良債権処理促す 2016/07/28 本日の日本経済新聞より

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 【ワシントン=河浪武史】オバマ米政権の経済ブレーンである米大統領経済諮問委員会(CEA)のファーマン委員長は日本経済新聞の単独インタビューで、英国の欧州連合(EU)離脱問題で「金融市場の不透明感が増し、欧州は一層の不良債権処理が必要だ」と指摘した。米国は内需が堅調で「成長が続く」と主張。日本には通貨安競争の回避を求めた。

 ファーマン氏は「英EU離脱は市場に不透明感をもたらした」としつつ、「世界経済は成長が続いて弾力性があり、英国問題の影響は吸収できる」と指摘。米国の金融システムも「銀行の資本増強がかなり進み、2008年の金融危機時と比べて財務体質は極めて強い」と分析した。

 7年もの景気拡大局面が続く米経済は「世界経済のけん引役の一つ」と強調。4~6月期も個人消費が底堅く、成長率は上振れすると予測した。

 金融危機後、米成長率は2%前後と低水準にとどまり、1990~07年の平均3%に及ばない。サマーズ元財務長官は「長期停滞論」を掲げて不安視するが、ファーマン氏は「金融危機後の余波で、足元の低成長は一時的な現象だ」と反論した。

 対日政策では「日本は主要国とともに通貨安競争を回避する合意をしている」と述べ、日本の円売り介入の思惑をけん制。為替相場は「市場が決定し、経済状況が左右するものだ」とした。多くの国際機関は1ドル=105円前後が適正水準とみており、ファーマン氏も過度な円高には当たらないとの見解をにじませた。

 安倍政権が決めた消費税増税の延期は「歓迎する」と評価した。日本経済は需要不足と人口減、生産性の低下という3つの問題を抱えていると指摘。女性の労働参加率を高める現政権の施策は「とても重要で成果も上げている」と述べた。

 環太平洋経済連携協定(TPP)を巡っては、「オバマ政権の最優先課題」と指摘。11月の大統領選後の「レームダック国会」での議会承認を目指す考えを強調した。TPP反対論には「(雇用減など)自由貿易への不安感がある」と認めたものの、TPPは幅広い貿易障壁の解消を目指しているとし、「自由貿易への不安をむしろ和らげる」とした。



決算 深読み 信越化、市場に募る不満 好業績なのに還元には慎重 低いROEの改善期待 2016/07/27 本日の日本経済新聞より

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 信越化学工業が株主還元に慎重姿勢を続けている。26日、2017年3月期の配当予想を110円と前期実績から据え置くと発表したが、この水準に市場は物足りなさを感じている。余剰資金が積み上がっているため、自己資本利益率(ROE)は7%前後で停滞している。業績の安定感は抜群だが、市場はもろ手を挙げて評価できずにいる。

 「中長期の成長投資の道筋を示すか、それができなければ株主還元に資金を振り向けるべきだ」。みずほ証券の山田幹也シニアアナリストはこう指摘する。

 信越化学は15年3月期まで7年連続で100円の年間配当を実施し、16年3月期は110円に引き上げた。配当を積み増す姿勢に転換したかと見えただけに、今回の4~6月期決算で「大幅増配発表ならサプライズ」(国内証券)といわれていた。自社株買いはほとんど実施していない。

 財務体質は良好だ。6月末の現預金と短期有価証券を合わせた、手元流動性は8319億円。株主資本の4割にあたる。売上高純利益率が17年3月期予想で14%に上るにもかかわらず、ROEがさえない原因だ。設備投資は年間800億~1300億円程度で、手元資金は増え続けている。

 業績は好調だ。4~6月期決算は売上高が前年同期比4%減の3007億円、純利益が20%増の453億円だった。塩ビ事業は増産投資の効果により販売数量が増加。半導体ウエハー事業は高付加価値品を中心に需要が伸び、採算が改善した。

 26日は17年3月期通期見通しも公表した。売上高は前期比8%減の1兆1800億円、純利益は7%増の1600億円を見込む。7月以降の想定為替レートは1ドル=100円で設定した。円高が懸念材料だが、主力事業は順調に推移しそうだ。

 資金をためこむ裏には経済や市況が変動しても、成長の原動力となる大型投資を機動的に自己資金で実施したい、との意向や、減配回避への強い思いがある。ただ6月に就任した斉藤恭彦社長は26日のアナリストとの電話会議で「増益に向けてまず努力する。その中で配当についても考えていく」と話すなど、市場との距離を縮めようとしているようにも見える。

 アナリストらは「信越化学ならROEで2ケタはほしい」と口をそろえる。株価は14年12月の8529円から3割安い水準だ。期待にどこまでこたえるのか、市場はここを注目している。



FT特約 メール流出 ロシア関与か 米安保への注意喚起 2016/07/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際1面にある「FT特約 メール流出 ロシア関与か 米安保への注意喚起」です。





 米大統領選で民主党候補に指名されるヒラリー・クリントン氏の選挙戦は、民主党指導部の裏工作に関する電子メールの流出で混乱に陥った。党内の分裂を深めるものだが、共和党も喜んではいられない。メール流出にロシア政府が関与していた可能性がある点を警戒すべきだ。ロシアが長い間繰り広げてきたサイバー攻撃がエスカレートしているのだ。

 ロシアはサイバー攻撃を犯罪集団などに任せる傾向があるため、真犯人を特定するのは極めて難しい。だが、サイバーセキュリティー会社が信頼できる証拠を示し、米民主党全国委員会のネットワークに侵入したハッカー集団を特定した。APT28、APT29の名でよく知られたグループだ。手口、活動時間帯、過去の標的からロシアの政府か情報機関と強いつながりがうかがえるという。彼らは過去にも米ホワイトハウスや東欧諸国政府などを標的とした。

 懸念されるのは、ロシアが入手した情報を実際の政治や経済の活動に悪用しようとしている点だ。冷戦時代の盗聴と脅迫という手法が、ソーシャルメディアと内部告発サイト「ウィキリークス」が多用される時代に新たな危険性を帯びてきた。ロシアは旧来のスパイ技術を使って偽の情報を流し、他国に混乱を引き起こして政府機関や当局への信頼を損なわせようとしている。

 ロシア政府が民主党全国委のメール流出に関与したのが事実なら、米民主主義制度の根幹に対する大胆不敵な攻撃だ。

 しかし、米政府には情報流出について抗議できる余地がほとんどない。民主党の失態が露呈されるからだ。しかもこの種の攻撃を効果的に防御するのは非常に困難だ。外交面で米国は、中国とサイバー攻撃の禁止で合意し、少なくとも効果を生んでいる。ただ、これは中国政府が実態の暴露を恐れ、商業的利益の保持を強く望んだから可能だった。ロシアのプーチン大統領には、そうした取引材料は持ち合わせていない。

 今回の情報流出は米国が大西洋の安全保障に対し、関与を弱めるときではないと注意喚起するものだといえよう。

(26日付、社説)

=英フィナンシャル・タイムズ特約