比大統領「仲裁判決を支持」 施政方針演説で南シナ海に言及 2016/07/26 本日の日本経済新聞より

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 【マニラ=佐竹実】フィリピンのドゥテルテ大統領は25日の施政方針演説で、南シナ海問題を巡るオランダ・ハーグの仲裁裁判所の判決について、「強く支持し、尊重する」と述べた。自国の主張が全面的に認められた判決について、ドゥテルテ氏が公式に態度を明らかにするのは初めて。判決の棚上げを迫る中国の呼びかけを否定し、法の支配を重視する日米などと歩調を合わせた。

 ドゥテルテ氏は25日、マニラの国会で6月末の就任後初めて演説した。南シナ海問題に触れ、「我々は仲裁裁判の判決を強く支持し尊重する。(判決は)紛争の平和的解決に向けた努力に大きく貢献する」と述べた。ただ中国を名指しせず、一定の配慮も見せた。全体で1時間半の演説時間のうち、南シナ海問題に触れたのは約1分だった。

 国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所は12日、南シナ海のほぼ全域に主権が及ぶと主張する中国の「九段線」について法的根拠がないとの判決を出した。南シナ海での中国の軍事化を懸念する米国や日本は、仲裁裁判の判決受け入れを拒否する中国をけん制しており、同盟国の意向を重視した。

 得意のジョークも交えた演説の大半をあてたのは、国内問題だった。南部ミンダナオ島のイスラム教徒との和平について、「不信の歴史を終わらせよう」と呼びかけた。アキノ前政権時代に前進した和平プロセスを確かにし地方の経済成長につなげる考えだ。まん延する薬物の問題については、「犯罪、薬物、汚職との戦いに人生をささげる」と決意を述べた。

 選挙期間中に見せた過激な「ドゥテルテ節」ものぞかせた。犯罪者の取り締まりについて、「慈悲は見せない。薬物の売人が獄中に入るか、土に埋まるまでやめない」と語気を強めた。ドゥテルテ氏は「犯罪者を殺害する」として有権者の支持を集めて当選した。地元紙によると、就任からこれまでに薬物関連で約3500人が逮捕され、約300人が殺害された。

 「人権は人間の尊厳のためであり、国家を破壊する言い訳にはならない」とも述べた。人権を無視した超法規的殺人などには批判もあるが、薬物のまん延に直面する国民からの支持は厚い。直近の世論調査では、同氏の信頼度が約9割と過去最高を記録した。

 大統領は年に1回、施政方針演説を行う。歴代大統領の演説では、出席者やその妻が豪華に着飾ることが注目され、ファッションショーと皮肉られた。ドゥテルテ氏は、派手に着飾ることは国民のためにならないとして以前からこうした風習を否定していた。今回の演説では出席者に簡素な服装で臨むことを指示し、本人はシャツの胸を大きくはだけて演説した。



市場の力学 選ばれる会社(下)荒れ地に茶畑・無償で薬… 成長と共生 1つの軸に 2016/07/26 本日の日本経済新聞より

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 大分県杵築市。由布岳を望む丘に青々とした茶畑が広がる。10年前まで荒れ果てた桑畑だった土地は伊藤園の茶産地育成事業で復活した。採れた茶葉は全て「お~いお茶」などに使われる。

地方の課題解決

 造成したのは地元の昭和建設工業(大分県日出町)だ。公共事業の減少に直面し育成事業に手を挙げた。伊藤園の荒井昌彦農業技術部部長は「茶木が寿命になる40年間は取引を続けたい」と語る。今や茶畑は東京ドーム10個分に広がる。

 茶葉の国内生産量は1980年から2割以上減った。広がる耕作放棄地の問題を聞いた伊藤園の社員が、茶産地の育成を提案した。茶葉の確保という経営課題が農家の減少という地方の問題解決につながった。

 企業は公害など多くの社会問題を起こしてきた。今はいかに社会と共生するかが問われている。片手間の社会貢献ではない。成長と共生は1つの軸に重なっている。

 株式市場に売上高や利益では表せない評価基準が登場した。環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字をとった「ESG投資」は3つの課題への取り組みで投資先を選ぶ。欧州やアジアで広がり、世界の運用残高はざっと2200兆円だ。国内でもSMBC日興証券がESGで企業を選んだ投資信託の販売を始めた。

 米MSCIは企業をESGで格付けする。「ダブルA」の評価を受けるエーザイはフィリピンなどで難病の「リンパ系フィラリア症」治療薬6億錠を無償で提供している。2020年までに22億錠を配布する予定だ。

 年数億円の費用がかかるが、柳良平常務執行役は「海外投資家からも反対されたことはない」と話す。海外工場の稼働率が上がりブランドも浸透する。30年ほどで「投資」を回収できる計算だ。

 5月末、東京・西新宿のカプコン東京支店では修学旅行で訪れた中学生に授業を開いていた。「勇者が出る確率は半分、ハンマーは3分の1。勇者がハンマーを持つ確率は?」と問いかけると「数学って仕事に使うんだ」との声があがった。

企業防衛の面も

 社会との共生は企業防衛の側面もある。学習の妨げになるとの風潮はゲーム業界に大きな打撃となる。カプコンは学校への出張も含めて毎年約60回の授業を開く。

 経営戦略から社会貢献まで1冊にまとめた統合報告書。15年の発行企業は205社と前年より5割増えた。しかし14年に「コンプライアンスを最優先する」とした東芝は会計不祥事で創業以来の危機を迎えた。信頼は冊子だけでは得られない。

 「事業を通じて社会に貢献し、報酬として社会から与えられるのが『利益』である」と松下幸之助氏は語った。社会貢献は企業の原点。古くて新しい取り組みが選ばれる会社をつくる。

 藤原隆人、星正道、湯浅兼輔、竹内弘文、松本裕子、花田幸典、増田有莉が担当しました。



グローバル・オピニオン 英とEU、「妥協」通じ協調を ベンジャミン・コーヘン氏 米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授 2016/07/25 本日の日本経済新聞より

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 英国の有権者がごく僅差で欧州連合(EU)からの離脱を決めたことで、市場の混乱や景気後退への懸念が高まっている。しかし、そうした懸念には根拠があるのだろうか。大半の人が考えているほど見通しは暗くないと主張することも可能だ。この物語はまだ終わりには程遠いため、深呼吸をして長期的な視点に立つことを勧めたい。

米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授のベンジャミン・コーヘン氏

 英国がEUを離脱すれば金融街シティーのビジネスのかなりの部門は大陸に移転すると予想される。売上高の半分がEU向けである英国の輸出企業にも不満が多い。スコットランドや北アイルランドの住民は残留をなんとか実現しようとしている。離脱の代償は明確になりつつある。

 では、英国はどのようにしたら有権者の民主的な意思を尊重しつつ、シティーなどが望むような「欧州の一部」にとどまることができるのだろうか。答えは「何とかやって行く」だ。

 EUには多くの課題に直面しながら何とか切り抜けてきた伝統がある。長年、さまざまな加盟国のニーズや要求を調整し、厄介な取り決めに依存してきた。EUはそうした「よれよれの妥協の精神」(エコノミスト誌)がなかったら、初期のうちに崩壊していた可能性が高い。異なる利害が簡単に折り合うことができない状況で、EUは混乱と不明瞭とあいまいさのテクニックを身につけ、何とか図体の大きな怪物を前に進める方法を見つけてきた。

 政策決定者は、EU離脱を巡る国民投票が明示していたにもかかわらず、選択肢が「残留」と「離脱」だけではなかったことを知っている。この2つの間には、英国が正式な加盟国でなくなってもEUの非公式なパートナーにとどまることができる一連の妥協が存在する。

 最も可能性の高いのは、「ノルウェー型」と呼ばれるものだ。ノルウェーは欧州経済地域(EEA)の加盟国で、EU単一市場へのアクセスを持つ。その特権と引き換えに、ノルウェーは毎年EUに拠出金を支払い、作成には関与していないEUの規則順守に同意し、EU市民の自由な移動を認めている。英国が交渉によって同じような地位を確保できることに疑いはない。

 最大の障害は、多くの人をEU離脱支持に突き動かした移民問題だが、ここでも外交官がさまざまな手法を駆使するだろう。

 厳密に言えば、英国は法的にEUの加盟国ではなくなる。しかし、2~3年後、霧が晴れれば、英国とEUの関係は実際的な意味としてはほとんど変わっていない可能性がある。EUの「よれよれの妥協」の精神は、ここでも勝利することになると予想する。

((C)Project Syndicate)

 Benjamin Cohen 専門は国際金融、国際政治経済学。米コロンビア大博士(経済学)。著書に「通貨の地理学」ほか。79歳。

■政治情勢で不透明化も

 英国のメイ首相は先週、メルケル独首相と会い「年内はEUからの離脱通知はしない」と伝えた。いったん通知すると「2年で正式離脱」というタイマーが動き出す。露骨な時間稼ぎだが、メルケル氏は「準備期間は必要」と理解を示した。コーヘン教授が言うEU流の「妥協の精神」がにじむ。だが離脱交渉をめぐる楽観シナリオは危うさも抱える。来年は独仏オランダで重要選挙が続く。EU中枢3カ国の政治情勢が揺らげば「妥協」の道筋は一気に不透明になる。

(編集委員 佐藤大和)



消費は語る 現場からの警告(中)ちらつくデフレ循環 円高と節約志向「共振」 2016/08/25 本日の日本経済新聞より

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 九州発の“価格破壊”が全国に広がろうとしている。

100円ショップなど低価格が特徴の店が注目されている

福岡市のコスモス薬品東光寺店

 福岡市に本社を置くコスモス薬品。2016年5月期の連結売上高は10%増の4472億円で、8期連続の最高益となった。昨年には中部地区に初めて出店し、首都圏への進出も視野に入れる。

 8月中旬、同社の店舗には1個88円のカップラーメンや低価格の洗剤などが山積みになっていた。医薬品で稼いだ利益などで食品や日用品を安く売る戦略で、近隣スーパーより1~2割安い。「消費者の節約志向が追い風」。柴田太取締役は自信を見せる。

 全国の小売店の販売データを集計する日経POS(販売時点情報管理)で食品と日用品の主要80品目の今春の平均税別価格を調べたところ、4割超が前年より下がった。約6割が値上がりしていた昨春とは様変わりだ。

 宮崎県延岡市の主婦(31)は最近「ファッションセンターしまむら」をよく訪れる。Tシャツ1枚500円など安さが売りの衣料品チェーンだ。かつては百貨店で買っていた自分の服も今ではしまむらで選ぶ。「母親仲間では『いつもぎりぎりだね』と話している。年金もきちんと出るかわからないし、蓄えを増やしたい」。しまむらは17年2月期に最高益を見込む。

 値上げから値下げへ。なだれを打つかのような安さの氾濫の裏には円高がある。現在の為替相場は1ドル=100円前後と年初より20円近い円高。第一生命経済研究所の試算によると、20円の円高で小売業とサービス業の売上高経常利益率は0.3ポイント改善し、値下げ余力につながる。

 靴専門店のエービーシー・マートは今秋以降、従来より2割程度安い商品を増やす。円高による仕入れコスト下落をテコに地方を中心に低価格戦略を打ち出す。「消費者は価格に敏感になっており、単価を上げる状況ではない」。小島穣取締役の言葉には円高で生じた値下げ余力と消費者の節約志向が共振し、デフレ懸念が強まる現状がにじむ。

 とはいえ、現状は08年のリーマン・ショック後の景気後退局面で目立った闇雲な値下げ競争とは一線を画す。吉野家は円安や原材料高で、14年12月に牛丼の並盛りを80円値上げして380円とした。その後の深刻な客離れを受けて、今年4月には牛丼より50円安い豚丼を4年ぶりに復活させたが、牛丼の価格は据え置いた。節約志向を取り込みながら、収益力も維持しようという狙いが見える。

 生活者にとって値下げは良いニュースだ。多くの経営者はかつての値下げ競争の苦い記憶を忘れてはいないが、客足が遠のいては元も子もないとも考える。脱デフレで収益が向上した企業が賃金を増やして消費拡大につなげるという好循環が逆回転する危うさをはらみながら、消費の現場は急速に変わろうとしている。



月曜経済観測 マイナス金利と住宅 先行き不安、着工数減も 大和ハウス工業社長 大野直竹氏 2016/07/25 本日の日本経済新聞より

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 アパートなど堅調だった住宅市場にマイナス金利政策はどう影響しているのか。住宅や商業施設にどんな新たな需要が生まれているのか。大和ハウス工業の大野直竹社長に聞いた。

 ――住宅市場の先行きをどう見ていますか。

 「2015年度は前年度よりも4万戸増えた。15年1月の相続増税への節税対策として賃貸住宅の建設の需要が大きく伸びた。貸家の着工は依然として底堅いが、いつまでも右肩上がりではいかないだろう」

需要喚起難しく

 「住宅着工戸数全体では今年度は昨年度より約6万戸減り、86万戸になると予測している。やや厳しめの見方かもしれないが、相続増税の効果が一段落することに加え、人口減少の影響もある。景気の先行への不透明感もある」

 ――先行きが不透明な原因は何ですか。

 「日本の景気がまるっきりだめというわけでもない。ただ中国経済の減速や英国の欧州連合(EU)離脱問題など海外の要因で、ここ数カ月、株安や円高など悩ましいことが起きている。1年先にどうなっているか消費者も不安を抱いているのではないか」

 ――マイナス金利政策の住宅市場への影響は。

 「もともと戸建て住宅を建てようと思っている人の後押しにはなるかもしれない。ただ住宅ローンの金利はすでに相当下がっており、需要喚起に効果があったとは思えない。一方、賃貸住宅は資産運用としての建設が主。家賃が変わらないなか、ローンの金利が下がればトータルの利回りはよくなるので、一定の影響は及ぼしているだろう」

 「政府も日銀も精いっぱい応援してくれている。後は民間ががんばらないといけない。むしろ金利のマイナスがもっと大きくなれば、傷つく企業が出てくる。将来の退職金の支払いに備える退職給付債務が膨らみ、積み立て不足が発生するケースなどだ」

倉庫建て替え加速

 ――住宅市場で新たな動きはありませんか。

 「アパートやマンションなどの賃貸住宅で、趣味のためという理由で部屋を借りる人が増えてきている。書道や工作をしたり、絵を描いたりするなど目的はいろいろあり、ここ1、2年需要が強まっている」

 「根底には、日本の住宅はやりたいことをすべて完結できるほど広くないという事情がある。所得の多い層を中心に、自分の空間で自分の技術をもっと高めたいという思いがあるのだろう。核家族化による住宅需要の変化の流れの一つだ」

 ――商業施設の建設にも力を入れていますね。

 「コンビニエンスストアなどライフスタイルの変化から生まれる需要に応えている業種は成長している。時間や場所を問わずに消費活動を行えるインターネット通販が様々な分野で拡大している影響も大きい。新たな消費ニーズに応えるため、物流施設の開発が全国で盛んになっている」

 「昔の倉庫と違い、買った商品が消費者のイメージと違ったときに返品を受け付けたり、1日に何回も配送したりするなど様々な機能が求められる。控えめに見て、いまの倉庫の7割は対応が難しく、それだけ建て替えの需要がある」

(聞き手は編集委員 吉田忠則)



富裕層、修正申告相次ぐ 課税逃れ対策の「国外財産調書」 パナマ文書で厳しい目 2016/07/24 本日の日本経済新聞より

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 パナマ文書問題などをきっかけに日本国内でも富裕層の租税回避に厳しい目が向けられている。2014年から5千万円を超える海外資産には「国外財産調書」の提出が義務付けられ、富裕層の修正申告も相次ぐ。ただ海外に日本の調査権は直接は及ばないため、国税当局は日本人が海外に保有する資産の全体像を把握しきれていない。

5千万円を超える海外資産について提出が義務付けられている「国外財産調書」

 「実はスイスに数億円の株などがある。国外財産調書のことは知っていたが、これまで資産を申告せず調書を提出してなかった」。東京都内の税理士(57)の事務所で、相談に訪れた50代の男性経営者が神妙な面持ちで切り出した。

 この税理士によると、経営者は20年以上前から海外で資産を運用し、規模は年々拡大。最近では海外の資産分だけで年間100万円前後の所得があったという。相談後、経営者はすぐに修正申告の手続きを取った。

 大手税理士法人の山田&パートナーズによると、同法人に寄せられる海外資産に関連する相談や修正申告の件数は、国外財産調書の導入前は年間10件程度だったが、導入後の14年以降は年間50件程度まで急増している。辻・本郷税理士法人も「海外資産に関連した相談件数は2~3割増えている」という。

 野村総合研究所の調査では、2013年時点で純金融資産(国内外の保有資産の合計から負債を差し引いた値)が1億円以上の富裕層は約101万世帯と推計されている。

 一方、国外財産調書を提出している人は約8千人(15年提出分)。個人の税務に詳しい税理士は「富裕層の厚みから考えれば、提出義務を果たしていない人の方が多いのではないか」と指摘する。「海外財産なら課税の網から逃れられる」との意識を持つ人も少なくないとみられる。別の税理士は「『無申告の海外資産を保有している』と相談に来た人に修正申告を勧めたら、二度と来なかったケースもあった」と話す。

 国税庁は実際にどれくらいの人が5千万円を超える財産を海外に持っているのか正確には把握していない。調査・徴収権は海外には及ばず、金融機関の口座を直接、調べることなどはできない。同庁幹部は「送金や入金記録などから海外資産の保有状況を地道に調べるしかない」と話す。

 各国とは租税条約による情報交換もしているが、別の同庁幹部は「税収の確保は国家権力そのもの。当事国の徴税権と対立し、簡単には協力してもらえないケースもある」と明かす。

 海外資産を使った課税逃れが横行すれば、「富の再分配」という税制の機能を損ないかねない。青山学院大学の三木義一学長(租税法)は「金融取引に対して課税するなど、富裕層に一定の負担を求める新たな制度も検討すべきだ」と指摘している。



こころの健康学 前向きな気持ちに まず笑顔や姿勢を意識 2016/07/24 本日の日本経済新聞より

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 坂本九さんの歌「上を向いて歩こう」の作詞などでよく知られる永六輔さんが亡くなった。以前に通っていた理髪店のラジオから流れてくる永さんの軽妙な語り口が好きだっただけに、とても残念な思いがする。

イラスト・大塚 いちお

 「上を向いて歩こう」というのは、こころの健康にとっても大切な発想だ。悲しいからといって下を向いて歩いていると、ますます気持ちが沈んでくる。上を向いて歩けばこころが強くなる感じがする。

 ある本にシンクロナイズドスイミングの選手の笑顔について書かれていた。選手は、会場に入るときに満面の笑みを浮かべている。演技をする前にさぞ緊張しているはずなのになぜあのような笑顔になれるのか不思議に思っていたが、その本によると、意識的に笑顔を作っているのだという。

 逆に、そうしなければプレッシャーに押しつぶされてしまう。そうならないために笑顔を作る。笑顔になれば緊張が和らいで、演技で本来の力を発揮できる。

 これは「外から内へ」と呼ばれるこころの働きだ。一般に私たちは楽しいから笑うと考える。悲しいから泣くというのも同じだが、これは内(こころ)が外(表情や態度)に影響するという意味で「内から外」への影響と呼ばれる。逆に、表情や態度がこころの状態に影響することが研究からわかっている。

 笑顔になればポジティブな情報が入りやすく、緊張が和らぐ。背筋を伸ばして前を向いて歩けば、気持ちも前向きになってくる。まさに「笑う門には福来たる」だ。だからこそ「上を向いて歩こう」の歌に励まされた人が多かったのだろう。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



中外時評 冷戦回帰するNATO ロシアとの対話模索を 論説副委員長 池田元博 2016/07/24 本日の日本経済新聞より

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 「欧州は大きく変容し、対立と大陸分断の歴史に終止符を打った」――。

 1991年7月1日、東欧の古都プラハ。ソ連、ブルガリア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、チェコスロバキアの6カ国の首脳が次々と議定書に署名した。盟主のソ連は欠席したゴルバチョフ大統領に代わり、ヤナーエフ副大統領がサインした。

 ワルシャワ条約機構が名実ともに解体され、36年の歴史に幕を閉じた瞬間だった。

 欧州にはかつて、2つの巨大な軍事機構が東西で対峙していた。49年に発足した米国とカナダ、西欧諸国による北大西洋条約機構(NATO)と、55年に創設されたソ連と東欧諸国によるワルシャワ条約機構だ。ともに相手陣営の軍事的な脅威に対抗するのが目的だった。

 ところが、85年にソ連の最高指導者となったゴルバチョフ氏は「欧州共通の家」を唱え、東西対立から融和へと大きくかじを切った。さらに東欧の民主革命が、欧州の「対立と分断」の構図を一変させた。ワルシャワ条約機構の解体はまさに、東西冷戦の終結を象徴する事例となった。

 歴史の皮肉だろうか。それからちょうど四半世紀。ポーランドの首都ワルシャワで今月8、9日に開いたNATO首脳会議は、冷戦時代に逆戻りしたかのようだった。旧ソ連の継承国ロシアの軍事的な脅威に対抗し、防衛体制の強化を打ち出したからだ。

 加盟国のうち、ロシアに隣接するエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国とポーランドに合計で最大4千人規模の多国籍大隊を新たに展開する。黒海周辺でも防衛力を強化し、ロシアに対する抑止力を高めるという。

 ロシアは軍事力を背景にウクライナ領のクリミア半島を併合し、同国東部にも軍事介入した。バルト海ではこのところ、ロシア軍機が米軍の駆逐艦などに異常接近する事件もたびたび起きている。

 ウクライナと同様、かつてソ連領だったバルト3国などがロシアの軍事的な脅威を懸念するのは当然だろう。

 ロシアのラブロフ外相はこうしたNATOの対応を「ロシアをわざと敵に見立て、足並みと結束を固めようとしている」と批判した。だが、冷戦後の国際秩序を乱したのは他ならぬロシアだ。ロシアはその責任を自覚し、ウクライナ東部の和平プロセス推進を含め、欧州の緊張緩和に前向きに取り組む必要がある。

 一方でNATO側もロシアの主張に耳を傾け、一定の配慮を示す姿勢が欠かせない。

 ロシアはかねてNATO不信が根強い。ワルシャワ条約機構は解体したのにNATOだけが存続し、かつ東方へと加盟国を増やしてロシア国境に迫ってきたからだ。プーチン政権は昨年末、「国家安全保障戦略」を改定したが、その中でもNATOの拡大と軍事的潜在力の増大を「脅威」と位置づけている。

 プーチン政権はそもそも、NATOの東方拡大を「西側の裏切り」とみなしている。大統領は今年1月、ドイツのビルト紙との会見で「ベルリンの壁が崩壊した後、複数の西独の政治家がNATOは東方に拡大しないと表明していた」と指摘。当時のヴェルナーNATO事務総長、かつてブラント政権で東方外交を主導した西独の政治家バール氏の名前を挙げている。

 とくにバール氏については「一度も公表されていない」ソ連指導部との会談記録を引用し、「少なくとも軍事機構としてのNATOは中欧に拡大してはならないと言明した」と明かす。当時は東西両独の統一と、統一ドイツのNATO加盟問題が焦点となっていた。大統領が示唆したように何らかの“密約”があったとしてもおかしくはない。

 実際、独週刊誌シュピーゲルもドイツ側の会談記録として、1990年2月10日、当時のゲンシャー西独外相がシェワルナゼ・ソ連外相に「明白なのは、NATOが東方に拡大しないということだ」と語っていたと報じている。

 「西側は何度も我々を裏切った」。プーチン大統領は2年前、クリミア併合時の演説でもNATO拡大をやり玉に挙げた。そのクリミアにロシアは今、NATOへの対抗策として最新鋭の対空ミサイルシステム「S400」の配備計画を進めているという。

 NATO嫌いのロシアを刺激すればするほど、軍事的な緊張は高まる。ストルテンベルグNATO事務総長は「新たな冷戦は望んでいない」とする。双方には「NATOロシア理事会」という政治対話の枠組みがある。これをもっと活用し、信頼醸成の道も模索していくべきだろう。



英EU離脱 揺れる世界(2)EU、硬軟両にらみ 交渉開始へ圧力、決裂は望まず 2016/07/24 本日の日本経済新聞より

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 「いつ交渉が始まるかは英国次第だ」。20日夕、ドイツのベルリン。メイ英首相と初会談したメルケル独首相は、離脱交渉に入るまで一定の準備期間が必要という英国の主張に理解をみせた。

メルケル独首相(右)は交渉に準備期間を求めたメイ英首相に一定の理解をみせた(20日、ベルリン)=ロイター

 欧州連合(EU)基本条約では、英国が離脱を正式通告しなければ交渉は始まらない。英国は事前の下交渉で条件闘争に持ち込みたい意向だ。EU側は「通告があるまで交渉に応じない」との原則論から「できるだけ早期に通告を」と英国に圧力をかけるが、ボールが英国側にある以上、交渉の開始時期は読めない。

 いらだつブリュッセルのEU本部では、内部で「核兵器オプション」と呼ぶ強硬手段もささやかれる。加盟国に対する最も厳しい制裁手段として、EUの政策決定に関与させない「議決権停止」を発動し、英国を交渉に引きずり出す荒技だ。一度も発動したことがない「伝家の宝刀」が取り沙汰されるほど英国の時間稼ぎへの不満は強い。

 もっとも、経済や安全保障の重要なパートナーである英国との決定的な決裂は得策ではない。EU側も硬軟両様で臨まざるを得ないのが実情だが、不透明な状況が長引くほど「反EU」の機運が高まる恐れは強まる。

 極右候補が僅差で敗れたオーストリアの大統領選がやり直しとなり、2017年のオランダの総選挙とフランスの大統領選挙でも極右勢力の台頭が予想される。メルケル首相の続投がかかる独総選挙も17年だ。EUの今後を左右する重要な政治日程と同時並行で、英国との離脱交渉は進む。

 残る27カ国の結束に腐心するEU内では今、将来像を巡り、大きく2つの潮流がせめぎ合う。

 1つが「モア・ヨーロッパ」を唱えて統合深化をめざす連邦主義だ。代表格は欧州議会のシュルツ議長と独社会民主党のガブリエル党首。英EU離脱が決定した6月24日朝、両氏は即座に「欧州の再発見」と題した政策提言を連名で発表した。欧州委員会を「真の欧州政府」とするよう訴える。ユンケル欧州委員長も提案に理解をみせる。

 だが反EU機運が強い中東欧諸国などを中心に、ブリュッセルの官僚組織への権限集中こそが英離脱の主因だとの見方は強い。足元では、EU本部から加盟国に権限を戻し政府間の連携を軸にEUを運営する「政府間主義」という名のもう一方の流れが勢いを増す。

 「EUはブリュッセルではなく、加盟27カ国の集合体に立ち返るべきだ」と訴えるハンガリーのオルバン首相に同調する首脳は少なくない。

 「モア・ヨーロッパかどうかが問題ではない」。英離脱でEU盟主の様相が一段と強まったメルケル独首相も、今は欧州統合を深化させる時機ではないと風向きを読む。雇用やテロ対策などの重要政策で「目に見える成果」をあげ、EU不信を拭うことを優先すべきだという「現実路線」は、オランド仏大統領ら主要国首脳らも共有する。

 対英交渉という爆弾を抱えながら、自ら進むべき道の再定義を迫られる。EUの苦悩は続く。



市場の力学 選ばれる会社(中)オーナー企業、株高の秘密 株主の視点、強さの源泉 2016/07/24 本日の日本経済新聞より

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 社内コードは「プロジェクトM」。ユニ・チャームは水面下で2030年の経営目標を策定している。10人ほどのメンバーは30代前半の社員だ。

 もちろん14年後の経営環境は分からない。それでも高原豪久社長は「人材も戦略も技術も常識外れに進化させる」と若手が描く未来に期待をかける。コード名の「M」は突然変異を表す。

 高原社長は創業者で父の慶一朗氏から01年に社長を引き継いだ。今も一族で約3割の株を握る。

 在任中に売上高を3倍に増やした原動力を求めると、オーナー社長ゆえの長期視点の経営に行き着く。全ての社員は手帳に10年後のキャリア目標を記して毎年1月に更新する。プロジェクトのメンバーである上田健次経営企画室長は「10年後の自分の姿を真剣に考えないと会社の成長についていけない」と話す。

リーマンの教訓

 リーマン・ショックの教訓は経営者も市場も短期の利益に偏りすぎたことにある。危機を経て投資家が要求するハードルは上がった。求められるのは短期の利益と長期成長の両立だ。

 創業100年を迎えようとする企業が5年で売上高を2倍に増やした。福井県坂井市の土木・建設資材メーカー、前田工繊はM&A(合併・買収)で急成長している。創業家出身の前田征利社長は00年以降、10件のM&Aをこなしてきた。

 最高峰の自動車レース、F1で採用されたタイヤのホイールまで今では前田工繊の事業だ。前田社長は「50%の成功確率があればM&Aはためらわない」と豪語する。スピードと決断力が老舗企業に活力をもたらした。

 在任中に株の時価総額をどれだけ増やしたか。経営者の通信簿ともいえるランキングには日本電産の永守重信社長などオーナー経営者が並ぶ。神戸大学大学院の三品和広教授は「長期の視点で大胆な飛躍を目指せる」と強さの秘密を解説する。

 出光興産は昭和シェル石油との合併を巡り創業家と現経営陣が激しく対立する。オーナーシップは継承が課題だ。ソニーも創業者世代が退くと経営が迷走した。平井一夫社長らが代替として選んだのが自己資本利益率(ROE)になる。経営の効率性を示し、投資家が重視する物差しだ。

最強の統治体制

 見違えたのが10年連続で赤字だった薄型テレビだ。16年3月期まで2年連続で黒字となり今や安定収益源だ。テレビ子会社の高木一郎社長は「株主視点が経営に緊張感をもたらし、利益を生む原動力になった」と話す。

 東京海上アセットマネジメントは経営者が実質的に株主である企業に投資するファンドを運用する。北原淳平マネジャーは「オーナーは株主と利害関係が一致する。最強のガバナンス体制だ」と話す。投資家とは未来の株主だ。株主視点の経営には資金が集まり、それが企業を強くする。