台湾総統「国際情勢の変動に直面」 米中巡り警戒 内外メデ ィアと懇談 2016/12/31 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「台湾総統「国際情勢の変動に直面」 米中巡り警戒 内外メディアと懇談」です。





 【台北=伊原健作】台湾の蔡英文総統は12月31日、内外メディアと懇談し、台湾への圧力を強める中国について「かつての恫喝(どうかつ)の道へと戻ろうとしている」と批判した。中国は米台の接近に反発し、台湾の外交関係を切り崩す強硬姿勢を鮮明にする。「(2017年)前半は国際情勢の変動に直面する」と警戒した。

蔡氏は懇談で中国にひるまない姿勢も訴えた(31日、台北市の総統府)

 「北京当局は台湾を分断し、圧力を加え、さらに威嚇し恫喝するかつての道へと一歩一歩後退している」。蔡氏は台北市の総統府での懇談でこう指摘し、台湾は「圧力に屈せず、対抗の道にも戻らない」と訴えた。

 中国は台湾について中国の不可分の領土とする「一つの中国」の原則を掲げ、台湾独立を志向する民主進歩党(民進党)の蔡政権に圧力をかける。16年12月にはトランプ氏が蔡氏との電話会談に応じ、さらに「一つの中国」に縛られないと発言。中国は猛反発した。

 西アフリカの島国、サントメ・プリンシペは台湾に断交を伝えたわずか5日後の12月26日、中国と国交を樹立。中国の空母「遼寧」は直近の演習で台湾の東側を回り込む針路をとった。いずれも台湾に圧力をかける意図が働いたとみられ、蔡氏は「台湾人民の感情を傷つけ、両岸(中台)関係の安定を損なっている」と批判した。

 一方、トランプ氏の台湾接近への受け止めは複雑だ。米国が「一つの中国」の原則をどう扱うかについて「米国が自ら決めること」とコメントを避けた。中国は対米関係を重視せざるを得ず、反発の矛先は台湾に向かう。トランプ氏の揺さぶりが過剰になれば、中国の台湾への圧力が際限なく膨らむとの懸念がある。

 蔡氏は1月7日から中米4カ国の外遊を予定し、往路で米国のヒューストン、復路でサンフランシスコに寄る。トランプ氏の関係者と接触するとの観測もあるが「単なる一時的な立ち寄りであり正式な訪問ではない」とするにとどめた。

 蔡氏は「台湾の国防、経済、社会は対応力を有しており、変動を過度に恐れる必要はない」とひるまない姿勢も強調した。中国の圧力が強まっても、国民党の馬英九・前政権のように親中路線に転じる可能性は低い。1月20日に米大統領に就任するトランプ氏の動き次第で、米中台で改めて火花が散る可能性がある。



検索サイトの犯罪歴削除、分かれる司法判断 2016/12/31 本日の日 本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の社会面にある「検索サイトの犯罪歴削除、分かれる司法判断」です。





 インターネット検索サイトに表示される犯罪歴の削除を求める訴えが相次いでいる。情報の公益性を重視して残すべきなのか、プライバシー侵害とみて削除すべきなのか。現状、司法判断は割れている。来年には最高裁が初判断を示す可能性があり、どんな基準が打ち出されるか注目される。

 「犯罪に対する公共の関心は薄まっていない」。10月、逮捕歴の表示を削除するよう検索サイト「グーグル」に求めた男性が東京地裁で敗訴した。判決は男性が振り込め詐欺の現金引き出し役グループのリーダー格だったことなどを理由に、削除を認めなかった。

 男性はすでに執行猶予期間を過ぎており、「新たな社会生活が破壊される」「10年前の犯罪で関心も薄れている」と主張。訴訟より先にあった仮処分の申し立てでは地裁が削除を命じており、同じ事例で地裁の判断が分かれる形となった。

 検索サイトの普及や検索機能の向上に伴い、過去の犯罪歴の削除を求める仮処分の申し立てや訴訟が近年、相次ぐ。

 犯罪歴をネットで簡単に調べられることの公益性や知る権利を重視すれば、削除を認めない判断となる。一方、表示される側のプライバシーや「更生を妨げられない利益」が優先されると考えれば検索サイトに削除を命じることになる。

 福岡地裁は10月、福岡県内の男性の主張を認め、グーグルに逮捕歴の削除を命じた。「犯罪情報は個人情報のなかでも最も繊細に扱うべきもので、知人に知られると円滑な人間関係の形成が困難になる」と結論づけた。

 最高裁は現在、上告された同様の訴訟を複数取り扱っている。公益性とプライバシーとのバランスや、犯罪への社会の関心が薄れる年月の経過について、最高裁が統一判断を示せば、今後の裁判などに大きな影響を与えそうだ。

 情報セキュリティ大学院大の湯浅墾道教授は2015年の改正個人情報保護法が犯罪歴を「要配慮個人情報」と定めたことを挙げ、「プライバシー保護を重視する流れがある」と指摘。「知る権利や表現の自由に深く関わる問題であり、表示される側の立場や犯罪の類型に応じて慎重に判断されるべきだ」と話している。



展望2017(5) 「賃上げは利益に」共有を 大阪大教 授大竹文雄氏 2016/12/31 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「展望2017(5) 「賃上げは利益に」共有を 大阪大教授大竹文雄氏」です。





 ――反グローバル化のうねりが出ています。

大竹文雄・大阪大教授

 「英国の欧州連合(EU)離脱決定やトランプ氏の当選は、所得の二極化が背景にある。トップ層はいつまでも金持ちなのに、中産階級より下はどんどん所得が下がっている。昔はアメリカンドリームで成功するチャンスがあったが、今は少なくなっている」

 「統計では、米国の所得格差の拡大は1980年代から観察されていた。人々が認識し始めたのはリーマン・ショック後だろう。もっと早く手をつけておけば、経済を縮小する恐れがある保護主義は台頭しなかった」

 ――資本主義は機能不全に陥ったのですか。

 「そうではない。資本主義が広がったおかげで世界は豊かになった。新興国が豊かになり、先進国が得していた部分が少なくなった。社会主義が出てきた時、資本主義国は福祉の充実や公的部門の拡大で所得格差を縮める努力をした。それがいま足りなくなっている」

 ――具体的に何をすべきですか。

 「一つは税や社会保障を使って、低所得者の賃金を補助することだ。もう一つは若者や中高年への教育投資をすることだ。企業に賃上げをしてもらうことは難しい。労働分配率を高めないと社会システムを維持できないという認識が共有され、賃上げによってより利益が上がるという考えが広がるといい」

 ――日本は賃金の伸び率は低いままです。

 「いや、むしろ上がっているとみるべきだ。中国やインドなど新興国の人的資本が厚くなり、米欧の先進国は厳しい競争にさらされている。賃金には潜在的な低下圧力がかかっている。そのなかで日本は人口減少による人手不足もあって、賃金に上昇圧力がかかり、トータルで賃金がわずかに上がっている」

 「日本をはじめ、先進国の長期停滞論がいわれ始めた。財政政策では、一時的な需要をつくれても持続的な成長は実現できない。企業経営や働き方を変えるような地道な取り組みの積み重ねでしか、成長は高められないからだ。長時間労働で、生産性が低い日本は非効率な点を改善する余地がある」

 ――なぜ、物価は日銀が描いた通りに上がらないのですか。

 「将来物価が上がるといくら日銀が言っても、期待は今までどうだったかを踏まえて形成されるものだ。期待が変われば、人々の物価感も変わると考えた日銀は甘かったのではないか。量的緩和を拡大することには限界があり、金利に軸足を置いた政策変更は妥当な判断だった」

 ――財政の立て直しも課題です。

 「消費増税の先送り決定はよくなかった。生産性を上げるための研究開発など他に予算を振り向けるべきところがあるのに、社会保障に食われて成長の芽を摘んでいる」

 「賃金が下落したら年金も抑制する法律を野党は年金カット法と呼んだが、シルバー民主主義を克服する手段としてその内容を高く評価している。経済を活性化しないと年金が増えないということを意識するようになれば、高齢者は若者をサポートする政策に賛成しやすくなる」

(聞き手は経済部 藤川衛)

 1983年京都大経卒、85年大阪大院修了。専門は労働経済学、行動経済学で格差問題の著書多数。研究と健康を兼ねて「ポケモンGO」にはまっている。55歳



フィリピン、対米手探り ドゥテルテ政権半年 2016/12/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「フィリピン、対米手探り ドゥテルテ政権半年」です。





 【マニラ=遠藤淳】フィリピンのドゥテルテ大統領が自立外交の旗の下、同盟国の米国から離反する一方で中国やロシアに接近し、南シナ海問題の構図を一変させた。ただ、トランプ次期米政権との距離を探る動きも。国内では薬物犯罪の一掃を進め、激しい言動は止まらない。大統領就任から30日で半年。圧倒的な支持を背に、自己の政治手法への干渉を嫌うドゥテルテ氏の強権ぶりに拍車がかかっている。

 12日、ドゥテルテ氏は笑顔で1人の男を大統領宮殿に迎え入れた。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の金立群総裁だ。金氏はアキノ前政権下で滞ったAIIB参加の手続きが済んだことに謝意を示し「フィリピンの2件に融資したい」と述べた。

 ドゥテルテ氏は19日、趙鑑華・駐比中国大使と会談。趙氏は「テロや薬物が国の問題だと承知している。手助けしたい」と1440万ドル(約17億円)相当の武器供与と5億ドルの融資を申し出た。

 「米国の4億ドル? そんなものいらん」。ドゥテルテ氏は19日の演説で、薬物犯罪に対する比警察の捜査手法を問題視して米国が経済援助を保留したことに反発。列席したソン・キム駐比米大使を前に豪語した。

 ドゥテルテ氏は「主権国家としての自立した外交」を掲げる。薬物犯罪対策を批判したオバマ米大統領を繰り返し罵倒。米国との決別を口にし、合同軍事演習の規模を縮小する一方、中国とは10月の習近平国家主席との会談後、距離を縮める。

 両国が領有権を争うスカボロー礁(中国名・黄岩島)近海で今月上旬、行方不明だったフィリピン漁民2人が中国海警局から比沿岸警備隊に引き渡された。警備隊が同礁に近づけたのは中国が実効支配を固めた2012年以来初。両国が火花を散らした南シナ海の景色は変わった。

 中国が南沙(英語名スプラトリー)諸島の人工島に防空設備を配備したことが表面化した際もロレンザーナ比国防相が「重大な懸念」と述べただけ。ドゥテルテ氏は逆に「石油を共同開発しよう」と中国に呼びかけた。

 ドゥテルテ氏はロシアにも秋波を送る。プーチン大統領を「私のヒーロー」と公言。ロレンザーナ氏を国防相として初めてモスクワに送った。報道によると、ロシアから軍装備品提供の申し出を受けた。ドゥテルテ氏は自身の同国訪問も探る。

 「中ロが新たな秩序をつくれば真っ先に加わる」。米国に対抗する二大国に擦り寄るドゥテルテ氏。大学では比共産党創設者シソン氏に師事した。旧宗主国の米国に好意的な一般国民と一線を画す外交姿勢を見せる。

 来月就任するトランプ次期米大統領とは、関係改善をにらみ出方を瀬踏みする。「あなたのしていることは素晴らしい」。ドゥテルテ氏は2日の電話協議でトランプ氏が発した言葉を紹介。米現政権が批判してきた薬物対策に理解が得られたとして「トランプ氏は友達だ」と持ち上げた。

 ドゥテルテ氏の登場で、南シナ海を巡る国際情勢は大きく変わった。日米が中国に対抗する構図は、中国と連携するフィリピンの変化で綻びを見せる。同国が来年議長国を務める東南アジア諸国連合(ASEAN)は対中強硬派が減り、存在感が低下しかねない。ドゥテルテ氏が世界に投げかけた波紋が広がるのはこれからだ。



タイもがく中進国(下)「聖域」の農業、改革遅れ優遇のツケ 競 争力低下 2016/12/30 本日の日本経済新聞より

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 2015年の1人あたり国内総生産(GDP)が10万3千ドル(約1200万円)と世界1位のルクセンブルク。高級スーパー店頭に最近、タイ産のコメがお目見えした。

EU認証を得た有機米の生産農家グルナティーさん(ナコンパトム県)

付加価値を模索

 生産地は中部のナコンパトム県。無農薬で化学肥料も使わない有機栽培だ。通常のコメに比べ単位収量は半分だが、10倍の価格で売れる。生産者のグルナティーさん(44)は「農家自ら工夫し付加価値を高めなければ生き残れない」と話す。

 欧州連合(EU)の厳しい有機の認証を持つ農家や農業法人はタイで約60だけ。グルナティーさん一家はその一つで、輸出までに10年かかった。

 ブランド化だけが農業の高度化ではない。クボタは東北部のコメ農家約100軒に4年前、機械化や肥料の使い方の稲作指導を始めた。種もみをまくだけの水田に比べ収量は最大4割上がった。

 「世界の台所」を標榜するタイは農業大国だ。コメ以外に天然ゴム、サトウキビ、キャッサバなどが世界有数の生産・輸出量を誇るが、国際競争力には陰りがみえる。

 30年以上も輸出で世界首位だったコメは12年にインドとベトナムに抜かれ3位に転落した。天然ゴム輸出は首位を保つが価格は3年前の半分だ。主因は生産性の低さ。農業部門は就業人口の4割を占めるのに、GDPは1割で、効率性はインドやベトナムを下回る。

 それは農民の「民意」が政治に反映されるようになった代償でもある。

 都市のエリート層が政治を主導してきたタイで01年に政権を奪ったタクシン元首相は農村を手厚く支援し、人気を不動にした。タクシン派はその後も選挙で連戦連勝。保守層との政治対立の火種になると同時に、大票田への配慮から農業分野は痛みを伴う改革ができない「聖域」と化した。

 そのツケが噴出したのが、妹のインラック前首相が11年に導入したコメ担保融資政策だ。市場価格より5割高で政府が事実上買い上げたため価格高騰と品質低下を招き、輸出競争力を損ねた。

 14年のクーデターを受けて軍主導で発足したプラユット暫定政権は、前政権のバラマキ政策を批判した。ところが今年、高級米が過去10年の最安値に沈むと、政府の無策に怒った農民が大規模な抗議活動を宣言。政権は慌てて500億バーツ(約1600億円)規模の無利子融資を決めた。コメが担保だが、結果的に実勢より2割高程度で買い上げることになりそう。前政権とは五十歩百歩だ。

労働力が逆流

 農民優遇は思わぬ副作用を生んだ。タイ中央銀行によると1990年代から漸減してきた農業就業人口は12年、前年に比べ4%、55万人増えた。コメ買い上げ政策の影響だ。桃山学院大学の江川暁夫准教授は「農村へのバラマキが都市製造業への労働力移転を停滞させタイの産業競争力の向上を阻害した」とみる。

 プラユット首相は11月に「スマートファーマー計画」を発表。農民1人あたり所得を20年以内に6倍の年39万バーツに引き上げると宣言した。零細農家を集約して規模を拡大しつつ、より高く売れる商品作物へ転作を促すが減反政策のような痛みを伴う改革は及び腰だ。

 言論統制のような強権ぶりが目立つ軍事政権も農村の民意は無視できない。だがタイが中進国の罠(わな)から抜け出すには、非効率な農業の革新は避けては通れない。

 (バンコク=京塚環)



大機小機 事業性評価による地方創生 2016/12/29 本日の日 本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合面にある「大機小機 事業性評価による地方創生」です。





 地方創生を実現する有力な手段として、地域の金融機関などによる「事業性評価等」に基づく融資がある。2014年の日本再興戦略に盛り込まれた概念で、財務データや担保・保証に必要以上に依存せず、企業の事業内容や成長可能性を適切に評価し、成長を後押しする融資や助言をするものだ。これによって産業の効率性が高まり、地方経済の活性化につながる。

 この手法は実際に企業や産業の成長過程において、どのような影響を及ぼすのか。創業期は融資よりもベンチャーキャピタルなどの投資に期待がかかる。不確定な要素が多く、適切な事業性評価は難しい。銀行にも相応の支援は求められるが、預金を融資に振り向けるのが基本業務だけに、ハイリスク・ハイリターンの融資を大きく増やすのはそもそも無理がある。

 成長期から成熟期は前向きな資金需要が最も旺盛なステージだ。マイナス金利下で金融機関の貸し出し競争は一段と激しくなっており、金利引き下げにとどまらず担保条件を緩和してでも融資を拡大しようとする動きが常態化している。事業性評価を適用しても融資が顕著に増える企業は限定的になるだろう。

 成熟期から衰退期ではどうか。企業の集約や退出は不可避であり、銀行が事業性評価に基づく対応を徹底すれば、融資額はむしろ減少する可能性が大きい。

 事業性評価、言い換えれば目利き力による企業価値の向上と劣化防止の支援は金融機関の果たすべき基本的な役割だ。現在の我が国、特に地方において潜在成長率を高める最も直接的で効果のある対策は生産性が低い企業の退出やM&A(合併・買収)による再編といった新陳代謝である。

 企業の緩やかな退出や転廃業の助言・勧告は地域金融機関の使命だ。それでこそ地域の限られた経営資源を成長分野へ移転・集約できる。銀行など貸し手が経営を監視する「デット・ガバナンス」の出番である。

 金融庁は金融機関がデット・ガバナンスを行使するにあたっての障害を軽減する施策も導入した。しかし中小企業金融円滑化法の終了後も金融検査のマニュアルが変わらないなど改善すべき点は多い。事業性評価の効果を高めるにはどうすればいいか。官民挙げて基本に立ち返った議論が求められている。

(眉山)



フィリピン外相「南シナ海議題に」 来年ASEANで、経済連携 を加速 2016/12/29 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「フィリピン外相「南シナ海議題に」 来年ASEANで、経済連携を加速」です。





 【マニラ=遠藤淳】フィリピンのヤサイ外相は28日、日本経済新聞と単独会見した。2017年に議長国を務める東南アジア諸国連合(ASEAN)の関連会議の議題として、中国と領有権を争う南シナ海問題は「避けて通れない」と言明。発効が困難になった環太平洋経済連携協定(TPP)に代わり、多国間の自由貿易の枠組みと注目される東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の議論を加速する考えも示した。

インタビューに答えるフィリピンのヤサイ外相(28日、マニラ)

 ――17年のASEANで南シナ海問題をどう取り扱いますか。

 「中国との間に横たわる同問題は、ASEAN加盟国が常に取り上げる関心事項であり、避けては通れない。来年も議題とするよう声が上がるだろうし、我々からもそう呼びかけたい。(中国とASEANの)相互の利益を追求することが問題の解決につながるということを示したい」

 「ラオスで9月に開催したASEAN首脳会議で声明を出し、挑発的な行動をとらず、国際海洋法条約など国際法の原則に基づき、紛争を平和的に解決することで一致している。これを確実なものにしたい。中国とは02年に『南シナ海行動宣言』に調印しており、できるだけ早く(法的な拘束力を伴う)行動規範の枠組みをつくりたい」

 ――ドゥテルテ大統領は中国の習近平国家主席との首脳会談で、南シナ海問題を2国間で話し合うことに合意しました。

 「我が国が中国と抱える個別の問題は(ASEANとは)別の話だ。国際的な仲裁裁判所で認められた我が国の権利について妥協するつもりはなく、中国との間ですぐに解決策は見つからない。だから今は議論をせず、まず貿易や投資、インフラ開発、人的交流などを推進することで中国と合意した。関係が深まれば南シナ海問題を議論する土壌ができるだろう」

 「実際、中国が海上での妨害行為をやめたため、比漁民は南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)での操業を再開できた。付近に軍事施設を建設するといった、緊張を高める行為はしないとも約束した。中国が(南沙諸島に)防空設備を配備したと伝えられたことは懸念しており、地域の平和と安定を守るよう改めて中国に確認したい」

 「中国を信用できず、フィリピンでは(対等に)話し合えないから米国に頼るべきだ、というのは古い考え。我が国は自立した外交を進めたい」

 ――トランプ次期米大統領が離脱を明言し、発効が見通せなくなったTPPの代替策として、RCEPへの関心が急速に高まっています。

 「ASEAN加盟国の中では特にマレーシアやインドネシア、ブルネイが高い関心を寄せている。一連の会議でも議題に取り上げ、活発に議論していきたい」

 ――ミャンマーではイスラム系少数民族「ロヒンギャ」に対する人権侵害が懸念されています。

 「ミャンマーでこのほど開かれたASEAN非公式外相会議では、ロヒンギャの問題はミャンマーの国内問題だということを全会一致で確認した。国際社会が騒ぎ立てるような人権問題とは考えていない。ただし人道的支援が必要であれば、いつでも手をさしのべる用意がある。来年も議題とするよう加盟国から求められれば、対応したい」

 ペルフェクト・ヤサイ氏(Perfecto R. Yasay) ドゥテルテ大統領の地元である南部のミンダナオ島ダバオ市の高校に通い、大学時代は大統領と同じ寮で学生生活を送った。弁護士などを経て、外相に就任する以前は米国の大学で法律を教えていた。ドゥテルテ氏の暴言の真意をくみ、穏当な表現に言い換えるといった「女房役」を担う。69歳。



迫真 まとめサイト不信の連鎖(3)グーグル検索をだませ 2016/ 12/29 本日の日本経済新聞より

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グーグルは複製ページに目を光らせるが…(米国のデータセンター)

 11月30日、ライオンは1枚のリリースを発表した。同社の機能性表示食品「ラクトフェリン」が、放射能汚染やがんに効果があるという記事がネットに流れ出したからだ。

 「表示以外の効果もあったんですね」。ライオンの担当者が気付いたきっかけは消費者からの1本の電話だった。その消費者はライオンが認めた新しい「効能」だと思い込んでいた。

 記事が載ったのは医療情報をまとめたディー・エヌ・エー(DeNA)のキュレーションサイト「WELQ」。記事の隣にはライオンのネット広告があった。健康や自社製品に関連するページに自動的に広告を掲載するよう代理店と契約していたからだ。記事の閲覧回数が伸びればDeNAが得る広告収入は膨らむ。WELQの広告料は業界内でも高めの設定だったが、月に延べ2000万人を超える閲覧者の数が「価値」を上げた。

 ウェブサイトが誕生して四半世紀。いまやネット上には130兆ものページがある。利用者に見つけてもらうには、検索結果で上位に表示される必要がある。そのための技術のひとつが検索エンジン最適化(SEO)だ。本来は利用者が情報を見つけやすくする技術だが、DeNAはそれを逆手に取った。

 利用者に必要な記事を発信するのではなく、SEOの技を駆使して検索で上位にくる記事を意図的に作っていた。7日開いた記者会見で社長の守安功(43)も「(サイト作りが)SEOに寄り過ぎた」と漏らした。

 もちろん検索エンジン側も自衛策を講じている。グーグルはキーワードを乱用した情報や無断複製があるページは順位を下げ、悪質な場合は表示しない。ただ、その警戒網をかいくぐる技術も次々と生まれている。

 「リライトツール」と呼ばれるソフトもそのひとつだ。他人の記事のコピペ(切り貼り)では盗用がすぐ発覚する。そこで特定の単語を置き換えたり、文章の一部をランダムにシャッフルし合成したりする。いったん他の言語に翻訳し、日本語に戻して痕跡を消すものもある。こうした技術が「記事の粗製乱造を生んだ」(ソフト会社)。

 「結局、ユーザーにとって役に立つコンテンツを作ることが重要なんです」。グーグルで検索技術の伝道師役を担う金谷武明(45)はSEOのコツをこう話している。

(敬称略)



日銀総裁「経済は良い方向とハッキリ言える」 2016/12/29 本日の 日本経済新聞より

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 異次元緩和から3年半。日銀の黒田東彦総裁が日本経済新聞のインタビューに応じ、世界経済と金融政策の今とこれからを語った。

 「世界経済全体が良い方向に向かっていることがかなりはっきりしてきた」。まず来年の経済情勢について、こう切り出した。中国経済の減速懸念や英国の欧州連合(EU)離脱決定で市場が動揺した2016年前半。それが一変。「米国経済は非常にしっかりしているうえ、新興国経済も成長が緩やかに加速しつつある。悲観論は完全に転換した」。円安・株高の追い風が吹いた3年半前の自信が戻ってきた。

 11月の米大統領選のトランプ氏勝利で再加速した円安・株高。「積極的な財政政策への期待で市場はリスクオンになっている。日本経済にとって非常にプラスになる」と評価したが、市場のトランプ・リスクが消えたわけではない。トランプ氏に保護主義への懸念が付いて回ることには「不確実性が残るのは事実だが、個人的には世界が保護主義に傾いてしまうと思っていない」と力を込めた。

 語り口が少し慎重になったのが政策目標に置く物価の見通しだ。米大統領選後初めてになる17年1月の経済・物価見通しについては「具体的に成長率や上昇率がどんな見通しになるかは金融政策決定会合でみんなで議論することだ」と多くを語らなかった。

 安倍晋三首相は26日、政権発足4年にあたって「デフレではないという状況をつくり出した」と胸を張ったが、首相の言葉を慎重に置き換えた。「持続的に下落するデフレ状態ではなくなったが、デフレに戻る可能性がない状態とは言えない。まだ2%の物価目標を実現できる状況になっていない」と率直に認めた。

 金融政策はどう進めるのか。金融緩和について「必要があれば、まだまだやれることはある」と強調。日銀が9月の総括的な検証で金融政策の操作目標を資金供給量から金利に移したことで市場に量の効果に対する限界論もくすぶるが「手法は変わったが、実質金利を引き下げて経済にプラスの影響を与え、最終的に2%目標を実現していくという考え方自体は変わっていない」と突っぱねた。

 総裁は構造改革についても言及した。目を付けたのは働き方改革だ。「生産年齢人口が年100万人近く減ってしまうなかで2%の成長率を持続的に達成するには女性や外国人の活躍が不可欠」と指摘。新産業の創造についても「日本は基礎技術も応用技術も持っているが、ビジネスに活用され、成長率を引き上げることには十分つながっていない」と課題を挙げた。

(NIKKEI ASIAN REVIEWに関連記事 BOJ chief upbeat on global economy, sees Trump as wild card を掲載)



もがく中進国(上) 産業高度化、産みの苦しみ 2016/12/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「もがく中進国(上) 産業高度化、産みの苦しみ」です。





 「アジアの工場」として発展してきたタイが低成長にもがいている。技術開発力に勝る先進国と、人件費の安い後発新興国の間で経済成長率が鈍る「中進国の罠(わな)」が影を落とす。軍事クーデターを招いた政治対立がくすぶるなか、産業高度化の殻を突き破り、輝きを取り戻せるか。

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タイは「アジアのデトロイト」の地位を確立したが…(東部ラヨーン県の自動車工場)

 バンコク北郊外のパトゥムタニ県。米グッドイヤーの工場で今月、航空機タイヤの新生産ライン建設が始まった。最先端のラジアルタイヤを2018年に製造開始する。耐久性が高いが構造は複雑。高い生産技術が必要で現在は米で生産する。幹部は「拡大するアジアの航空機市場が近い」とタイの優位性を語る。

 独ボッシュはアジアでは日本、中国に次ぐ自動車用の燃料噴射装置の研究開発施設を着工した。タイ法人のジョセフ・ホン社長は「汎用部品ではもはや低賃金の国にかなわない」と話す。

 こうした動きはタイ政府の新たな産業振興策に沿う。昨年、航空機やロボットなど10分野の高度産業誘致へ税制優遇を導入した。中国の華為技術(ファーウェイ)なども開発拠点を立ち上げる。

経済成長に陰り

 タイには1985年のプラザ合意後の円高対応で日系企業が進出。道路や港湾などのインフラ、素材・部品の裾野産業が整い、日本勢以外の参入にも拍車がかかった。

 その象徴が自動車と電機だ。2012年の車生産は245万台とフランスを抜いて世界10位に入り、ハードディスク駆動装置(HDD)の生産は世界全体の3割を担う。

 ただしかつての勢いはない。過去5年の平均成長率は2.7%。東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国中9位だ。11年の大洪水、14年のクーデターが響いたが、不振は一過性とは言えない。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査ではバンコクの工場労働者の賃金は月344ドル(約4万1千円)とベトナムやミャンマーの約2倍。世界経済フォーラムによると技術の「革新力」で16年のタイは54位。10年前の33位から後退し、中国やインドネシアに抜かれた。

 人件費上昇に見合う産業高度化が遅れ、1人当たり国内総生産(GDP)は2千ドル超えから22年が過ぎても継続的に6千ドルを超えられない。

 いかに先端的な投資を呼び込むか。税制優遇と並ぶカギは人材開発だ。

所得税を免除

 タイ石油公社(PTT)は昨年、東部に大学院大学を開校した。生分解性樹脂や再生可能エネルギーなどの実用研究に取り組む。チュムラット学長は「目標はノーベル賞候補の輩出」と話す。

 政府も約5兆円を投じて整備する東部臨海地域経済特区で、高度技術を持つ外国人の個人所得税を15年間免除する方針。投資と同様に「足りない人材は海外から呼び寄せる」(同特区推進委員会のカニット委員)。

 産業高度化の試みは今始まったわけではない。01~06年のタクシン政権は「アジアのデトロイト」「世界の台所」を合言葉に、低燃費車や食品加工の集積を図った。その後は政治対立が深刻化して猫の目のように政権が代わり、長期的な政策は置き去りにされてきた。

 軍主導のプラユット暫定政権は20年間の長期計画の策定に着手。来年に予定する総選挙と民政復帰後も計画実施を担保する法律を整備する。革新力は芽吹くか。タイは正念場を迎えている。

 (バンコク=京塚環)