信頼されない日本のCEO編集委員 西條都夫 2017/2/28 本 日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「信頼されない日本のCEO編集委員 西條都夫」です。





 日本の経営者にとって、衝撃的な数字が手元にある。世界有数のPR会社、米エデルマンが毎年世界28カ国で実施する「トラストバロメーター(信頼度指標)」。各国で成人1千人強を対象に「あなたは政府やメディアを信頼していますか」を尋ねる世論調査だが、その中に最高経営責任者(CEO)の信頼度についての質問もある。

 その最新の結果を国別に並べると、日本はなんと最下位で、「CEOは信頼できる」と答えた回答者はわずか18%にとどまった。

 ちなみに1位はインドの70%。米マイクロソフトやグーグルの現CEOはインド出身者であり、「優秀なCEOは国の誇り」という感覚が国民全体に共有されているのかもしれない。

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 国別の傾向を見ると、先進国では総じてCEOへの信頼度が低い。経済全体が成熟するなかで、個別の企業もリストラを迫られ、社員や社会に痛みを強いることが多い。それがCEOに対する厳しい評価につながるのだろう。ただ同じ先進国でも日本の低さは突出し、ビリから2番目のフランス(信頼度23%)と比べても5ポイントの差がある。

 なぜこれほど信用が低いのか、不思議な気もする。東芝をはじめ企業をめぐるトラブルや不祥事は絶えないが、あえて弁護すれば、CEO個人が自分の強欲を満たすために不正を主導するといった、米国流の悪質な例は少ないと感じる。

 この疑問に対する、エデルマン日本法人のロス・ローブリー社長の仮説はこうだ。「日本の経営トップが何を考え、何をしているのか、一般の社員や社会が目の当たりにする機会が諸外国に比べて少ない。このvisibility(可視性)の低さが、信頼の低さにつながっているのではないか」――。確かに露出の少ない、なじみのない人間に対して、人々が親近感を抱いたり、その人のリーダーシップに信頼を寄せたりすることはまれだろう。

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 ではどうすればいいか。おそらく「可視性」の高さで傑出する経営者の一人が日産自動車のCEO退任が決まったカルロス・ゴーン氏だ。東日本大震災の直後に、東京電力福島原発にほど近い同社いわき工場に足を運び、「この工場は必ず復興させる」とテレビカメラの前で宣言した。

 米国企業ではユナイテッド航空のオスカー・ムニョスCEOが「visible(よく見える)経営者」として有名だ。愛嬌(あいきょう)のある風貌で各地の空港などを回り、社員と交流する。その結果、現場のモラールが目に見えて向上し、定時就航率が大きく上昇したという。

 政治への信頼が揺らぐと、増税のような「必要だが、痛みを伴う政策」を国民が拒否するようになり、国の将来が危うくなる。それと同じく、CEOへの信頼が薄いと、経営陣がいくら改革の旗を振っても社員が呼応せず、停滞が長期化する恐れがある。今の日本企業はその落とし穴にはまってないだろうか。



トレンドサーチ 銭湯女子会 思わず本音 朝までオー ル旅行気分 2017/2/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の企業面にある「トレンドサーチ 銭湯女子会 思わず本音 朝までオール旅行気分」です。





 最近、東京都心の銭湯に若い女性が押し寄せているという。岩盤浴や漫画の読み放題などのサービスを堪能し、週末の夜から朝まで過ごしていく。オールナイトの銭湯女子会「銭湯オール」をのぞいてみた。

岩盤浴などのサービスが充実していることも若い女性に支持されている(東京都新宿区のテルマ-湯)

 2月のある週末。20歳代とおぼしき女性3人が午後7時、歌舞伎町ゴールデン街(新宿区)を奥へ奥へと歩いていた。向かった先は「新宿天然温泉 テルマー湯」だ。

 「こんな都会に露天風呂があるなんて!」

 「ほんと幸せ、癒やされる~」

 お風呂に入り、岩盤浴で癒やされて、その後もうどんを食べたり、ハンモックに揺られたり。「これ、人をダメにする。動けない~」とソファに沈没したかと思いきや、雑誌を手に「ハワイ行きたい! 皆で行ける日あるかな」といきなりテンションが上がる。

 館内にはお酒やスムージーなどを注文できるバーカウンターも。「5年後は結婚して子供を産んでいたいな」「ハードな働き方は自分にはできないかも。でも結婚も仕事も子供も全部欲しい」。夜も深まれば、お酒の効果もあってか、ぽつりぽつりと本音が漏れる。

 「居酒屋ではネタっぽく話してしまいがちだけど、お風呂の後は自然と本音が出る。親しい友達とゆっくり話したいときに銭湯オールを選ぶことが多くなりました」。会社員の安達玲奈さん(25)はテルマー湯を訪れた理由をこう話す。この日、使ったお金は1人7000円ほどだった。

 杉並区の「荻窪 武蔵野温泉 なごみの湯」も若い女性が集まる。人気の理由は深夜の入館料に岩盤浴を組み合わせた3500円の「夜スパセット」だ。会社員の三浦あゆみさん(25)はある日、友人と2人で訪れた。入館したのは午前0時、「5種類の岩盤浴を制覇したら、2時間たっていました」。さらにお風呂で2時間、仕事や恋愛の話。「携帯はロッカーに置いていくので、自然と話す量も多くなります」

 友人4人と文京区の「スパ ラクーア」や江東区の「東京お台場 大江戸温泉物語」でよく朝まで過ごす荒川佳織さん(27)。「誰かの家で飲むこともあるけど、それだけではつまらない。気分はプチ旅行」と銭湯オールの魅力を語る。

 一晩語り明かした彼女たち。しかし、お楽しみは尽きない。「銭湯オールのときは早起きするので1日得した気になります」(三浦さん)と買い物などに繰り出していく。若いって羨ましい。

(随時掲載)



政策減税で税収減4兆円 15年度の法人税・所得税 2017/2/28 本日の日本経済新聞より

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 特定の個人や企業に対し、期限を区切って減税する政策減税が、法人税と所得税の4兆円分の減収要因となっていることがわかった。2015年度は比較可能な11年度以降、過去最高で消費税収の4分の1の規模。効果の検証がないまま残っている措置もあり、税制の不公平感を生んでいる。

 政策減税は恩恵が偏るため、期限が来たら廃止するのが筋だが、廃止は進んでいない。

 財務省が今国会に提出した資料で判明した15年度の法人税の政策減税による減収額は1兆9766億円。前年度より821億円減ったが、過去最高水準を維持した。減収規模が最大だったのは研究開発減税で6158億円。適用されている業種は偏りが大きい。15年度は自動車などの産業で3割、化学工業が2割近くを占める。

 リーマン・ショック後に中小企業を保護するために作った特例の減税措置も減収額が大きかった。1274億円の減収で前年度より約100億円増えた。もともと資本金1億円以下の中小企業には大企業より低い税率が課されているが、さらに低い税率を適用する措置だ。中小の反発を恐れ延長が繰り返されている。

 会計検査院によると、個人が支払う所得税の政策減税の減収額は2兆250億円。14年度より4900億円増える見込みだ。代表的なのが肉用牛の売却で得た所得には所得税がかからない特例措置だ。畜産農家の保護が名目だが、8000万円を超えるような高所得の農家にも適用されている。1967年に創設したが、約50年にわたり制度が続く。業界団体と与党の政治家との関係の近さを指摘する声もある。

 高齢者優遇の措置も続く。年金収入が330万円未満の人に最大50万円の控除額を上乗せする特例が05年から始まった。税負担が苦しい低所得の年金受給者を救済する措置のはずだが実際は不動産など年金以外の所得があり、総所得が1800万円を超えるような人にも適用している。減収額は1800億円に及ぶ。

 会計検査院は296の所得税の政策減税のうち「80件は所管省庁が必要性や効果を検証しないまま実施している」と指摘する。年金受給者への特例措置では、厚生労働省はどのような人に制度が使われているか実態を検証していないという。

 「政策減税は実態が国民の目にさらされていない」という批判が根強い。法人税は租特透明化法で11年度から適用状況を公表しているが、個別企業への減税の規模は明らかにされない。所得税はそもそも透明化法の適用外だ。政策減税は「隠れた補助金」(中央大学の森信茂樹教授)ともいえ、放置し続けると税のゆがみが広がりかねない。

(飛田臨太郎)



迫真 「自前主義はいらない」 背水の三菱重工 2017/2/28 本日の日本経済新聞より

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 2月24日、午前7時。名古屋駅近くの停留所。ラフな格好に身を包んだ500人ほどの外国人が社用バスに乗り込む。向かうのは三菱航空機の本社がある県営名古屋空港(愛知県豊山町)。いずれも航空機開発のエキスパートだ。「雇っている外国人には日給10万円の人もいるみたい。本気ですよ。三菱重工業さんは」。三菱航空機と長く取引のある関連部品メーカーの幹部は話す。

 その4カ月前の10月。三菱重工業社長の宮永俊一(68)は三菱航空機を訪れた。国産ジェット機「MRJ」の5度目の納期延期が避けられないことが判明し、至急対策を練る必要に迫られたためだ。会議室に米ボーイングOBの外国人も交えて膝詰めで対策を探った。

 「中途半端なことは一切やる気がないからね」。宮永の口調は穏やかだったが、荒療治への宣言でもあった。この会議をきっかけに「部品の配置を従来機と同じような配置に変更すべきだ」と主張した外国人技術者の考えを採用。かつて「零戦」を開発した三菱ブランドのプライドもかなぐり捨て、図面に手を加えることを決断した。

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 国策と共に歩んできた三菱重工のよりどころは信頼性だ。発電用タービンや鉄道部品など約500種類にも及ぶ多様な製品群は、ひとたび不具合が起きれば甚大な被害が出る。「モノは良いが高すぎる。コスト感覚がない」。航空機を日本の基幹産業に育てようとした経済産業省からの要請もあって最初にMRJを購入した全日本空輸の幹部が、三菱重工のエンジニアを面と向かって叱ったこともあった。時に顧客から苦言を浴びても、確かな技術と完成度は社員の支えになってきた。

 象徴的なのがロケットだ。最後に打ち上げに失敗した2003年。当時宇宙事業部の営業部長の小林実(68)は会長の西岡喬(80)とともに官房長官の福田康夫(80)を訪ね、「ロケットの打ち上げは失敗することもある」と釈明に追われた。「責任の所在を明らかにしろ」。世論のバッシングは続いたが、チェック体制の改善点を徹底的に洗い出し立て直した。

 ロケットの打ち上げは32回連続して成功、成功率は97.4%と世界最高水準に達する。16年にはアラブ首長国連邦(UAE)から火星探査機の打ち上げを受注、官需依存も克服しつつある。先行する欧米やロシアと張り合えるようになった。

 「変なプライドは捨てろ。行きすぎた自前主義はいらない」。開発の延期が続くMRJでは事態打開のため、宮永は外国人技術者を大量に受け入れることを断行した。日米合わせた航空機開発に携わる従業員の外国人比率は3割と、3年前の3倍にも膨らんだ。

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 「自分に降りかかる火の粉を振り払うので精いっぱいなのに、三菱自動車を支えることはできない」。三菱重工の分身である三菱自動車を日産自動車に託したのも宮永流だ。日産で副社長を務めた山下光彦(63)を開発のトップとして迎え入れた。その山下は「開発者のポテンシャルは高い。稟議(りんぎ)の多さなど、仕事のやり方に問題がある」という。足りないものは外から取り入れる。宮永にこれまでの「三菱重工」の肩ひじ張ったプライドはない。

 13年の社長就任から4年。合併・買収を繰り返して巨艦の現場に意識改革を迫ってきた宮永。失敗に終わったものの独シーメンスと組んで仏アルストムの重電部門買収を目指したり、フォークリフト4位のユニキャリアホールディングスを買収したりと一定の成果を上げた。トップ就任時から連結売上高は4割増え、同営業利益も16年3月期に過去最高の3095億円を記録した。

 「さすがにやり過ぎだ。信頼して任せなければ部下は育たない」。宮永は造船子会社社長に加え、技術系を外して自ら抜てきした三菱航空機社長の森本浩通(63)も2年での交代を決めた。同社OBから反発も上がるが宮永に迷いはない。

 「どうしたら米ゼネラル・エレクトリック(GE)やシーメンスに追いつけるか、そればかり考えている」。目標としていた売上高5兆円への道も険しくなってきた。残された任期にどう名門復活を果たすか。宮永の戦いは尽きない。

(敬称略)

 造船と航空機で深手を負った三菱重工は立ち直れるか。正念場の三菱重工を探る。



起業の軌跡 ITでアパート投資支援 土地在庫抱えず急成 長インベスターズクラウド社長 古木大咲氏 2017/2/27 本日の日 本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の新興・中小企業面にある「起業の軌跡 ITでアパート投資支援 土地在庫抱えず急成長インベスターズクラウド社長 古木大咲氏」です。





 IT(情報技術)で投資対象として賃貸アパートを経営する個人を支援するインベスターズクラウドが急成長している。用地の確保から建物の建設、経営の助言までを行う。利用者数は10万人を突破。古木大咲社長(37)は「不動産とITを組み合わせた新たな事業をつくりたい」と語る。

 21歳の時に、福岡の不動産会社に入社した。ネットで集客してアパート1棟を丸々販売する事業を立ち上げ、売上高は10億円まで伸びた。しかし拡大しようにも「ネットに投資する社内決裁が通らなかった」。2006年にインベスターズクラウドを設立した。

 リーマン・ショック時の不動産市況の悪化で倒産の瀬戸際まで追い詰められたことを教訓に事業モデルを再構築した。2年かけて滞留した土地の在庫を処分した後、自社で土地の在庫を抱えずに不動産会社から土地情報を集めてデータベースを作成した。ネット広告で集めた顧客にアパート経営に適した土地を紹介する仕組みを開発した。

 建築もITによる管理を徹底。その日に何をしないといけないか、約140項目もの業務フローを洗い出して工事の進捗を管理する。完成した建物を投資家に引き渡した時に得る収入が主な売り上げだ。

 営業担当者は個人顧客とスマートフォン(スマホ)のチャットで会話する。1人あたりの販売件数は年間10棟強と2~3棟程度とされる他社を大きく上回る。

 15年12月期に売上高は200億円を突破、株式上場も果たした。在庫を持たないモデルによって無借金経営を実現、不況に強い体質に改善した。

 上場後はIT技術者を大幅に増員し、新規事業の開発に取り組む。注力するのは民泊分野だ。民泊物件の入退室をスマホで管理したり、宿泊者の困り事を遠隔でサポートしたりする。不動産とITを融合させた事業モデルを目指す。東京五輪が開催される20年には「営業利益を(前期比約3倍)100億円に引き上げたい」と意気込む。

(鈴木健二朗)

 ふるき・だいさく 高校中退後、フリーターを経て2001年三和エステート入社。06年インベスターズクラウドを設立。鹿児島県出身。37歳。



グローバルオピニオン 反トランプへ若者動く ジェフリー ・サックス氏 米コロンビア大教授 2017/2/27 本日の日本経済新 聞より

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 米国における主要な政治的分断は政党や州の間ではなく、世代間にみられる。18~35歳のミレニアル世代の大半はトランプ氏に投票しなかった。トランプ氏の支持基盤は主に45歳以上だ。重要なのは、今日の若いリベラル派があす高齢の保守派になることはないということだ。今後、若い有権者は同氏の政策に抵抗する勢力の中核となるだろう。

 若者と年長者は、支持する政策に少なくとも3つの大きな違いがある。まず、若者は年長の世代よりも社会問題についてリベラルだ。彼らにとって、米国の人種や宗教、性的志向が複数あることは、大きな問題ではない。

 第2に若者は情報革命による未曽有の経済問題に直面している。彼らの参入する労働市場はロボットや人工知能(AI)が急速に台頭し、従来の労働にとって代わろうとしている。一方、高齢の富裕層はこうした技術革命による株価上昇から利益を得ている。

 トランプ氏は法人税や遺産税(相続税)の減税を進めている。高齢の富裕層には恩恵となるが、財政赤字を通じ若者には一層の負担を強いることになる。若者が必要とする政策はその正反対で、高等教育や職業訓練、再生可能エネルギーのインフラ投資への財源とするために年長世代の富への課税を強化することだ。

 第3に若者は両親や祖父母に比べ気候変動とその脅威に対する意識が高い。トランプ氏は化石燃料をいま一度後押しして年長の世代の関心を引こうとしているが、若者はそんな話には乗らない。彼らはクリーンエネルギーを求め、自分や子どもの世代が受け継ぐ地球の破壊と戦うだろう。

 トランプ氏の経済政策は年配で、白人で、米国生まれの人々に焦点を合わせている。同氏はロボットやAIが提起する21世紀の雇用問題に向き合わず1990年代の北米自由貿易協定(NAFTA)の自由貿易を巡る議論を蒸し返す。そして将来の環境の大惨事という代償を払ってまでも米国の石炭、原油、天然ガスからあと数年間利益をしぼり出すことに取りつかれている。

 トランプ氏は歴代のどの大統領よりも近視眼的だ。メキシコや中国との貿易戦争や、悲劇的なほど誤解に基づいたイスラム教徒の移民の入国禁止などでは若者の求めに応えることはできない。

 トランプ氏の政治的な成功は例外的な出来事にすぎず、転換点ではない。2020年にはミレニアル世代が支持する大統領候補によって、彼らの時代がやってくる公算が大きい。米国は多民族で、社会問題にリベラルな考え方を持ち、気候変動に対する意識が高く、新技術の経済的利益をもっと公平に共有する国になるだろう。((C)Project Syndicate)

 Jeffrey Sachs 米ハーバード大卒。コロンビア大地球研究所所長。専門は開発経済学。南米、東欧など各国政府の経済顧問も務める。62歳。

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■4年後、修復できるか

 次の米大統領選ではトランプ政権と正反対の政権が誕生する公算との見方だが、今回だって全米での票数は民主党候補が300万近く多かった。トランプ氏の勝利は州ごとに勝敗を決める米独自の選挙制度の産物にすぎない。問題は、トランプ氏の向こう4年間の暴走によって、次の政権の手に負えないような国際紛争が起き、米社会の分断がさらに深まるおそれがあることだ。保守にもリベラルにも希望を見いだせなくなったとき、米国はどこへ向かうのか。想像するだに恐ろしい。(編集委員 大石格)



月曜経済観測 世界経済の好転は本物か 中国に勢い、内需 も底堅く ブラックロック・ジャパン会長 井澤吉幸氏 2017/2/27 本日の日本経済新聞より

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 グローバルに政治の不透明感が漂うなか、世界経済は底堅さを指摘されだした。その背景は何か。日本の経済と企業の行方をどう見るべきか。世界最大級の資産運用会社、米ブラックロック日本法人の井澤吉幸会長に見通しを聞いた。

■信用拡大の局面

 ――足元の世界経済の好転は本物でしょうか。

 「回復の足取りは確かとみている。米国は賃金が上昇しだした。欧州も政治の先行きは不透明だが、信用拡張が始まっている。息の長いグローバルリフレーション(信用再拡大)の局面を迎えつつあると思う」

 ――新興国の景気は。

 「昨年初めには好調なのはインドくらいだった。今や回復の裾野が広がっている。見逃せないのは内需をけん引役とした中国の持ち直しだ。石炭や鉄鉱石の需要回復につながり、商品相場の上昇を促している」

 ――中国のプラス寄与が大きいのでしょうか。

 「その通りだ。石炭や鉄鉱石の輸出国であるオーストラリアやブラジルの経済が上向いている。原油相場の底打ちでロシア経済は窮地を脱しつつある。中国向けの輸出が多いアジア諸国の景気も回復している。日本の外需は中国発の好循環の恩恵を受けつつある」

 ――どんな経路で?

 「日本の輸出入に占めるアジア貿易の比率は1990年には30%だったが、今や50%超。中国のおかげで東南アジア諸国連合(ASEAN)が上向いているので、日本のアジア向けの輸出が増えている」

 ――内需はどうですか。

 「外需ほどの勢いはないものの、底堅い。衣料に比べて、食料の好調が目立つ。肉や卵の消費を占ううえで飼料業界に注目しているが、その業績が良い。住宅は貸家以外の受注が意外に堅調だ。サービスではとくに介護が伸びている。インターネットを通じた消費が年15兆円規模に達したとみられるなど、内需の構造は前向きに変化している」

 ――日本企業はそんな変化の波に乗れていますか。

 「2000年ころと比べると、日本企業の体質は確実に高まっている。資産をスリム化し、事業の選別を進めてきた。キャッシュフロー(現金収支)経営が定着し、製品やサービスの地産地消というべきグローバル化が加速している」

■企業統治が定着

 ――対日投資判断は。

 「当社は1000社以上の日本企業の株式を保有し、日本株の保有残高は20兆円を超える。長期投資家として企業価値を向上させる経営者との対話を心がけているが、ここへきての大きな変化はコーポレートガバナンス(企業統治)が定着してきたことだ。流れに弾みをつけてほしい」

 ――安倍晋三政権の経済政策をどう評価しますか。

 「カギは構造改革だ。日本では成長戦略といわれるが、そもそも事業を伸ばすのは民間企業の仕事だ。安定政権の強みを生かし、過剰な規制はどんどん取り払うべきだろう」

 ――どんな分野ですか。

 「農業や医療は規制を取り払えば、まだまだ伸びる。海外での日本食の人気は高いのだし、日本の医療を受けたいと希望するアジアの人たちも多い。肝心なのは自由にビジネスができる環境を整えることだ」

(聞き手は編集委員 滝田洋一)

 いざわ・よしゆき 三井物産からゆうちょ銀行社長を経て現職。69歳。



働く力再興 成長の条件(下) 未来は自力で切り開け 2017 /2/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「働く力再興 成長の条件(下) 未来は自力で切り開け」です。





 「あした肩たたきにあったら」。そんなことを考えながら働いている40~50代の人は少なくないだろう。それを不安と感じるか、前向きに受け止めるかで、その先の働きぶりはかわってくる。

島崎正彦さんは専門知識と経験を生かして、4足のわらじを履く

 島崎正彦(59)が朝日生命保険の希望退職に手を挙げたのは2002年。入社22年目の時だ。「同期の競争も激しくなく、安定している」。あえて選んだ業界5番手だが、その会社も経営悪化で安住の地でなくなった。

 島崎はその後、外資系生保など3社を渡り歩き、今は英語学校を運営する。同時に米生保調査団体の日本副代表、翻訳家、大学講師も兼ねる。60歳目前で4足のわらじを履けるのは、保険の専門知識と国際業務で培った英語力があるからだ。

 ミスミグループ本社などで47の新規事業を立ち上げた守屋実(47)。今は会社に属さずフリーランサーとして働く。「人生80年と考えれば少しの間」。約20年、会社員生活を送ったが、周囲の勧めもあって独立した。

 今はミスミで培った知見を生かし、大手企業から新規事業の相談を受けたり、自らベンチャーの経営にかかわったりしている。独立後に立ち上げた事業は18。会社員時代よりペースをあげた。

 「20代、30代ならやり直せる。40代になって、いまさらどうしろというんだ」。働き方改革に注目が集まる中、こんなぼやきを聞く機会が増えた。リクルートワークス研究所の戸田淳仁(37)はベテランの域に入った働き手にもどかしさを感じる。「40代、50代は将来を見据え、自律的にキャリアを伸ばそうとする意志や発想がない」

 働き盛りが途方に暮れたままでは困る。年金支給開始年齢の引き上げなどで、中年以下の世代は社会保障の負担が受益を上回る。今の20代は生活のために60歳を超えても働く人のほうが多いだろう。40~50代も逃げ切れるわけではない。健康であれば、できるだけ国の世話にならずに働く。その稼ぎが自らを潤し、国を豊かにする。

 働き続けるハードルは思ったほど高くない。働き手に高度な能力も特殊な技術も求めない会社もある。ほしいのは経験。

 加工メーカーの加藤製作所(岐阜県中津川市)が採用するパートは60歳以上の“人柄のよい人”。異業種出身の中高年を若手正社員と組ませ、若者に仕事のノウハウを注入してもらう。かつての和菓子職人が部品の加工に、市役所の窓口担当者が検品作業にあたる。社会人としての経験があれば務まる。

 肩たたきにあったらという問いを「いまの会社以外で働くとしたら」と言い換えてみる。自分の売りは何か、何をしたいか。そんな自問に答えが出たら、動くにせよ、残るにせよ、自力で生む成果は今までより大きくなる。=敬称略



こころの健康学 新年度の不安 変化への適応、一歩ずつ 20 17/2/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の日曜に考える面にある「こころの健康学 新年度の不安 変化への適応、一歩ずつ」です。





 新年度を前にしたこの時期は、年代を問わず不安になりやすい時期だ。様々な変化が起きるために、新しい環境にうまく溶け込めて力を発揮できるかどうか心配になるからだ。

 子どもたちは、進学する学校や新しいクラスの雰囲気になじめるかどうか考えて不安になる。そうした子どもたちを受け入れる教師もまた、新しい生徒を迎えてクラス運営がきちんとできるか心配になる。

 働いている人たちも同じように、異動などで新しい環境に足を踏み入れなくてはならなくなる。異動はなくても職場の組織替えや人間の交代があったり新しい仕事を与えられたりし、その中でうまくできるか考えて心配になってくる。

 家庭を預かっている人たちは、子どもや働いている人たちが新しい環境になじんでいけるか心配だし、自分がそうした人たちを上手に支援できるかどうか考えて不安になったりもする。

 不安は、この先何が起きるかわからないから注意をするようにということを伝えるこころの警戒警報の働きをしている。だから、新しい状況を前にして不安になるのはやむを得ないし、必要なことでもある。経験がない状況に足を踏み入れると危険な目に遭うかもしれない。そのようなときに、大丈夫だと楽観的に考えると、取り返しのつかないことになりかねない。

 だからといって心配しすぎるのもよいことではない。不安だからといってやみくもにブレーキをかけてしまうと、何もできなくなる。こうしたときには、思い切って先に進んで、現実の問題にひとつひとつ対処していくことが大切になる。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



日本の安定、おごりは禁物 財政や雇用試練これから 論説副 委員長 実哲也 2017/2/26 本日の日本経済新聞より

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 何でこんな人を大統領にしたのか――。

 唐突に7カ国からの入国制限を命じた大統領令。メディアから裁判官まで気に入らない者に容赦なく放たれるツイート砲。あげくは存在しない海外のテロまで持ち出して謝らない厚顔無恥さ。お茶の間のテレビは「きょうのトランプ」を面白おかしく伝える。

 民主主義のお手本だったはずの米国がなぜ。失望、驚きに軽侮も入り交じった反応が日本を覆う。マッカーサーはかつて日本人の文明度を12歳と評したが、「どちらが12歳なのか」(経済官庁幹部)という声まで聞こえてくる。

 混乱は米国だけではない。欧州でも反移民などを掲げる異端政党が台頭。今年実施するフランスの大統領選やドイツ、オランダの総選挙では台風の目になる可能性がある。

 こうしたなかで、内外の投資家の間では日本の政治・社会の安定度を再評価する見方が高まっているという。

 国の信用リスクの大きさを示す国債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保証料率は最近、約7年半ぶりに日本が米国を下回った。日本の保証料率が低下する一方、政権が漂流する米国はやや上昇しているためだ。

 極右政党「国民戦線」のルペン党首が4~5月の大統領選候補として支持を伸ばすフランスは、この数字が1月以降、跳ね上がっている。

 日本経済は2008年の米欧発金融危機の波をもろにかぶった。当初は「蜂に刺された程度」(閣僚)との見方もあったが、経済の悪化は先進国で最大級だった。だが、米欧で広がる政治混乱の影響は今のところ蚊に刺されたほども受けていない。

 それ自体は喜ぶべきことだろう。いったん既存の政治への不信が広がれば収拾は難しく、大衆扇動的な政治家の台頭を招きやすくなるからだ。

 とはいえ、だから日本のやり方は優れていると自己満足に陥るのも禁物だ。

 BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「日本の足元の政治的な安定性は将来世代を犠牲にする形で保たれている」と指摘する。

 先進国でも突出して高齢化や人口減少が進みつつある日本。財政は、国内総生産(GDP)比で見た債務残高、赤字ともに先進国では最悪レベルだ。本来ならば、膨らむ社会保障の給付や負担について厳しい選択を国民に求めなければいけないところだが、問題を先送りしている。

 そのツケは若者世代に回る。「若い層の先行き不安は高まっており、世代間の分断はすでに起き始めている」と語るのは元衆院議員の亀井善太郎・東京財団研究員。将来世代の視点で改革を促すため、財政や社会保障の先行きを推計する独立機関の国会設置などを提言しているが、政治の反応はなお鈍い。

 米欧の政治混乱の火種になった移民・難民問題。日本政府は「いわゆる移民政策は考えていない」とし、日本は外国人が少ないから安定しているとの見方も少なくない。

 だが、実際には外国人の雇用は100万人を超えるところまで増え、こうした人々なしには経済や社会は回らなくなっているのが現実だ。

 その多くは、日本の国際協力の一環として入れ替わりやってくる「技能実習生」という名目で働いているため、日本社会に溶け込めるよう支援する体制はできていない。

 中川正春衆院議員(元文科相)は「なし崩し的にではなく、どこからどのような形で外国人を受け入れるのかを、将来を見据えて正面から議論することが不可欠。そのための包括的な基本法を超党派でつくりたい」と意気込む。だが、永田町では問題を直視して動こうという機運は薄い。

 一方、米欧の政治不安の火種になった雇用の喪失問題は人手不足が課題となる日本では心配ないとの声がある。

 数だけみればそうだが、人工知能(AI)やロボットの活用が進めば、これまで持っていた技能だけでは失職したり、仕事がみつからなかったりする人材のミスマッチが深刻になる恐れがある。転職がしにくく、新技能を学び取る機会も少ない硬直的な雇用システムを変えていかないと、社会への打撃は米欧以上に大きくなるかもしれない。

 米欧の政治混乱は対岸の火事にも映る。だが、日本も今のうちに対処しておかなければ、将来社会を揺さぶりかねない懸案を幾つも抱え、その多くが手つかずのままだ。

 敵をつくってたたく大衆扇動政治はまっぴらごめんだ。しかし、問題があたかも存在しないかのように思わせて安心させる政治の大衆催眠術にも気をつけないといけない。