2人の「商人」と車の未来本社 コメンテーター中山淳史 2017/3/31 本日の日本経済新聞より

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 2人の「商人」は違いが多い。一人は不動産王のドナルド・トランプ氏、もう一方は日産自動車社長のカルロス・ゴーン氏だ。

 前者はドイツ移民の3世として米国で生まれ育ち、家業を大きくしてpresident(大統領)に上り詰めた。31日に日産のpresident(社長)を退く後者はレバノン系ブラジル人だが、フランスで教育を受け、欧州や米国、日本の自動車産業で成功を収めた。

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 単一か多様性か、だけではない。最も対照的なのは「時間軸」だろう。「トランプ自伝」によれば、トランプ氏は「計画をたてる際はもっぱら現在に視点を合わせる」と語っている。経営の軸はどちらかといえば「短期」らしい。

 ゴーン氏は多分、長期だ。「PDCA」といわれる日々の業務管理やキャッシュフロー経営に厳格だといわれるが、実は長期の投資や事業戦略でも欧米のビジネススクールでは頻繁に研究対象になっている。社内で猛反発を受けつつ進めた「中国進出と成功」やリーマン・ショックでもやめなかった「電気自動車開発」が代表例だ。

 2人の間にはまだ直接対話がない。だが、トランプ氏は「アメリカ・ファースト」という自国主義政策を掲げ、グローバル化の象徴である自動車産業、とりわけ日本のメーカーに対米投資の拡大を迫る。15日の業界を交えた会合ではトヨタ自動車と日産を再び名指しした。

 米自動車メーカーは快哉(かいさい)を叫んでいるはずだ。トランプ氏は日本の自動車市場が閉鎖的との議論や為替問題を蒸し返し、大型車の多い米国メーカーに配慮した燃費規制の緩和策まで検討しているという。

 一方、ゴーン氏は表向き無言の構えだ。今年初め、トランプ氏の政策について質問を向けたことがあるが、答えは「世界を見渡したらいい。米国も特別な国ではなく、政権が変われば政策も変わる。それだけのことだ」と簡単だった。要は、大統領が決めたなら「従うだけ」との立場である。

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中山淳史(なかやま・あつし) 産業部、米州総局(ニューヨーク)、証券部などを経て、論説委員、編集委員を務めた。専門分野は自動車、電機、運輸など

 だが、そこには無言の抵抗もあるかもしれない。ゴーン氏は日産社長を退くが、今後もルノー、日産、三菱自動車の取締役会議長であり、「ルノー日産アライアンス」の長でもある。日産社長という日常を離れれば、より大きな課題に時間を注ぐことが可能だが、ゴーン氏が今後取り組みたいと話すアジェンダ(論点)には、トランプ氏が言うような単純な「米国工場建設」はみあたらない。

 では、ゴーン氏のアジェンダとは何か。一つは社長退任を発表した日に語った「IT(情報技術)と自動車の連携・融合」だろう。

 自動車産業は今、100年に一度の大きな転換期を迎えつつある。英バークレイズが発表した調査報告書によれば、複数の人で車を保有するカーシェアリングや米ウーバーテクノロジーズのようなライドシェアリング(乗り合い)が普及したら、世界の自動車需要は現在の6割程度にまで減少する可能性があるという。米国で言えば、フォード・モーターやゼネラル・モーターズ(GM)の北米での自動車生産は半分以下に減るそうだ。

 日本も例外ではない。「自動車はすでに米国よりも低稼働な資本財になっている」とみずほ銀行産業調査部の斉藤智美調査役は指摘する。日本の1日あたりの車の平均利用時間は28~37分。乗車人数も1.3人だ。「カーシェアやシェアライドで十分」という世代が運転年齢人口で多数になれば、日本の自動車メーカーもハード重視のままではいられなくなる。

 車には「移動価値」「体感価値」「所有価値」の3つがあるとされている。このうち移動価値と所有価値は徐々に陳腐化していき、経営の仕方も限られた販売台数を起点にどう高収益を上げるかに重心が変わる可能性がある。米国のグーグル、アップルなどIT産業からの新規参入企業も間違いなく、そうした状況をつくり出そうと動くはずだ。

 異業種がそこまで影響力を持つのは初めてだ。産業界では今、人工知能(AI)の進歩を背景に既存産業を揺るがす破壊的技術、いわゆるディスラプションが生まれやすい状況だ。ハードはもちろん重要だが、付加価値が「つながる車」や「モビリティー」といわれる情報サービス分野に流出するのは止めようがないだろう。

 今年1月。ゴーン氏が仕事始めに向かった先は恒例のデトロイト自動車ショーではなく、シリコンバレーだった。日産が米航空宇宙局(NASA)と進める自動運転の共同実験を視察した。車輪とハンドル、ガソリンエンジンの発明で産業の王に上り詰めた自動車産業には今またイノベーションの大波が押し寄せる。ライバルも味方も散らばっているのは「世界」である。米国に閉じこもり、アナログな車をつくり続けたり、反グローバルを叫んだりすることなど「ありえない」のが今なのである。

 歴史をひもとけば、「グローバル化やイノベーションの担い手は古来、国際商人だった」と京都産業大の玉木俊明教授は話す。ゴーン氏の遠い祖先、古代フェニキア人はアルファベットを発明し、地中海沿岸の貿易、商取引を活発にした。大航海時代や東インド会社、蒸気機関も時々の商人たちの野心、ニーズが生んだものだ。国内の内なる成長にこだわるトランプ氏とグローバルな産業再創造を志向するゴーン氏。歴史に進歩のダイナミズムを刻むのはどちらの国際商人だろう。



迫真 働き方、労使で変える(4) トップが動いてこそ 20 17/3/31 本日の日本経済新聞より

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 「生産性の向上なくして、労働条件の向上なし。そう受け止めた」。2月16日午後、味の素の中央労使協議会は、味の素労働組合中央執行委員長の武田建(40)の言葉によって締めくくられた。社長の西井孝明(57)の発言を受けての回答だった。

味の素では自主的に朝型シフトしている社員も多い

 味の素は4月から従業員の月額給与を一律1万円ベースアップする。働き方改革の推進で減少するであろう残業代を補填し、従業員の働く意欲が損なわれないようにするためだ。

 「賃金については、俺から話す」。事前調整のために西井と話していた人事部の森卓也(50)は耳を疑った。労使協議の場で、社長自らが賃金について発言するのは異例中の異例だからだ。2009年から4年間、人事部長を経験した西井にとって、長時間労働是正に関する思い入れは特別強い。

 「働き方改革は単純な時間短縮活動ではない」。西井は中央労使協議会の場で強調した。「世界の食品メーカーと戦っていくためには、異なる強みを持った多様な人材による相乗効果が必要だ。働き方を変えなければ、優秀な人材は集まらない」

 「ワークライフバランス」と社会で言われ続けながらも、なにも変わらない日々が続いたことに疑問を持っていた武田も、西井の言葉に共感した。強烈なトップダウンは、実際に社内の働き方を変える。この春からベアのほか、東京本社は午後7時に閉館する。

 従来、春季労使交渉は正社員の賃上げが中心だったが、非正規従業員の待遇改善を目指す動きも広がる。味の素はパート従業員についても4月から時給を5~6%増額する。

 「正社員の処遇だけに目を向けていては将来の発展は困難になる」。2月16日、オリエンタルランドの労組のチェアマン(委員長)を務める石橋慎哉(46)は、臨時大会で職場代表の組合員約150人に語りかけた。議案の中心は東京ディズニーリゾート(TDR)で働く約2万人の非正規従業員を組合員にする規約改定だ。

 労組が議案を可決すると、翌日の労使協議会で会社側も即座に了承した。TDRでは全従業員の8割を占めるアルバイトが接客の最前線に立つ。会長の加賀見俊夫(81)は「第一線で働く人たちの気持ちが最大の武器」と語る。

(敬称略)

 村松洋兵、岩野孝祐、黒瀬泰斗、薬文江が担当しました。



習近平の支配 人治の担い手(4) 華僑、世界の同胞強権 支える 2017/3/31 本日の日本経済新聞より

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 1月に米国で大統領が交代し、中国では秋に最高指導部が入れ替わる2017年。国際政治の激動が避けられない時期を控え、中国国家主席の習近平(63)は足元の火消しに動いた。

華僑を使いフィリピンを「親中」に転換させた習氏(右)と握手するドゥテルテ氏=AP

 「自分には中国人の血が流れている」。16年7月27日、フィリピン大統領に就いたロドリゴ・ドゥテルテ(72)は華僑財閥のトップに打ち明けた。その男の名は黄如論(65)。世界で不動産開発を手掛ける世紀金源集団を率いる。中国でトップ50に入る大富豪だ。

■「雪解け」演出

 黄は習の「密使」だ。ドゥテルテの看板政策、麻薬対策を支援する薬物依存患者1万人の収容更生施設と、地元ダバオの港湾施設建設などを提案した。満足したドゥテルテは自身の祖父が黄と同郷の福建省の「呂」姓であると強調した。南シナ海での主権を巡り、国際司法の場に争いを持ち込んだフィリピンとの関係が雪解けした瞬間だった。

 「黄と習は兄弟と呼び合っていた」。福建省福州市出身の華僑は振り返る。福州市生まれの黄はフィリピンに渡って現地で創業。習が福州市トップに就いた翌年の1991年に帰郷し、不動産開発を進めて市トップとして経済成長で点数稼ぎを狙う習を支えた。

 「中国だけが我々を助けてくれる」。ドゥテルテは16年10月の訪中で華僑を中心とする総勢250人の企業経営者を引き連れて、約2兆7千億円の経済協力を獲得。見返りに南シナ海問題で中国側に譲歩し、米国との「決別」を宣言した。

 「海洋進出を狙う習の夢」と「麻薬撲滅、経済成長を狙うドゥテルテの夢」を華僑がつなぐ。フィリピン華僑のリーダーで財界の世論形成に影響力を持つ施乃康(58)も習の父の墓を訪れて忠誠を誓ったという。

■人脈と金脈駆使

 「僑夢苑」。中国全土13カ所に広がる「経済特区」で、華僑の投資を引き出すための仕掛けだ。中華民族の偉大な復興という「中国の夢」を掲げる習の呼びかけに、すでに約3500社の華僑企業が進出。投資額は3千億元(約5兆円)規模に達する見通しだ。

 「中国の歴史で華僑の貢献は大きい」。華僑の専門家で、著書に福建省代理省長だった習が序文を送った庄国土(64)はいう。辛亥革命を起こした孫文はハワイへの移民。1989年の天安門事件で外資の投資が急減し、危機に陥った中国を救ったのも約六千万人の華僑だ。その総資産は日本の国内総生産(GDP)の半分に達する規模という。

 権力を強める習は、すでに太平洋を挟み対峙する米国に視線を注ぐ。台湾寄りの姿勢がにじむ米大統領、ドナルド・トランプ(70)にどう対応するか。

 ここでも華僑がうごめく。1月下旬、米ニューヨークのタイムズスクエアに中国企業100社が広告を出した。「トランプ大統領、新春快楽」。黄が出資する福州航空も名を連ねた。世界の人脈と金脈を駆使し、大国の座を争う総力戦が始まっている。

(敬称略)



中国、南シナ海での猛進続くフィリピン、利点探り対抗を 2017/3/29 本日の日本経済新聞より

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 中国は先週、フィリピンが領有権を主張する南シナ海パラワン島沖のスカボロー礁(中国名・黄岩島)に環境監視用の構造物を作ると発表した。中国が南沙(英語名スプラトリー)諸島のサンゴ礁に覆われたスカボロー礁の計画を発表するのは初めてだ。アキノ前大統領は中国政府に果敢に対抗したが、ドゥテルテ大統領は極めて消極的だ。

 とは言え、同氏がスカボロー礁をやすやすと放棄してしまうとみられてはまずい。同礁は同国が昨年、国際仲裁裁判所に訴えた問題の最重要事項だ。同裁判所は南シナ海のほぼ全域に主権が及ぶとする中国の主張について、明確な法的根拠がないとの判決を下したが、中国はこうした判決に縛られないと述べている。

 ドゥテルテ氏はタイ訪問の直前にこの難問について発言した。同氏の反応は強気でも革新的でもなく、メディアに「中国のこの行動は止められない」と述べた。だが、同氏が探究していない選択肢がまだある。

 ドゥテルテ氏は中国の行動を逆手にとった方法で対抗すべきだ。世界はより多くの優れた気象情報や観測を必要としている。だから中国は同礁でのプロジェクトを国際的な取り組みに変えるべきなのだ。フィリピンの学者や科学者は中国に自分たちも参加させるよう強く要求すべきだ。

 東アジア外交では、領有権が争われている地域はあたかも共同で所有しているかのように統治されるのが今や固定した仕組みとなっている。そうすることで領有権争いの最終決着が先延ばしされるのは明らかだ。直接的な対立や戦争を避けられるだけでなく、関係国双方に恩恵をもたらすというという大きな利点がある。中国は共同で環境測定を行うフィリピンからの要請を断れば、面目を失うことになるだろう。(26日付)



一目均衡 ハーバードは見ている 編集委員 小平龍四 郎 2017/3/28 本日の日本経済新聞より

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 2月28日午前8時半、米国ボストン。ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)の授業に1人の日本人が招かれていた。中神康議氏。企業価値を高めるため投資先に経営・財務戦略を提言する資産運用会社、みさき投資の代表だ。

 この日の授業でチャールズ・ワング助教授は、みさきが実施した名古屋のインテリア商社サンゲツへの投資を、ケースと呼ばれる授業の教材に使った。中神氏はケースの主人公として学生との議論に参加し、自社の運用哲学や日本での企業統治(コーポレートガバナンス)改革の進捗などを約90人の学生に訴えた。

 株主の立場から経営改革を促すみさきの手法は、日本が米国から学んできた資本の論理の実践だ。米資本主義の総本山とも称されるHBSが、日本に関して研究しようとしているものは何だろうか。

 中神氏を招いたワング氏の見解はこうだ。

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 米国企業は株主の圧力を受け、あまりにも短期志向になってしまった。株主だけでなくすべてのステークホルダーを重視する日本の事例は、米国とは異なる長期志向を具現しているのではないか、と。

 ステークホルダー重視とはいっても、メインバンク制と株式持ち合いに守られた往年の日本型経営への回帰ではない。ケースに記されたのは、資本効率の向上や株主還元などについてのみさきの提案だ。ただ、その姿勢が要求ではなく説得、時間軸が四半期ではなく5年程度という点が、HBSの学生の関心を引きつけたようだ。

 「みさきに投資したい人はいますか?」。授業の始まりと終わりに学生は同じ質問をされた。始めに手を挙げたのは全体の3分の1以下だったが、議論を経た後は4分の3に高まった。「行き過ぎた短期主義への反省は本当に強いのだろう」。授業後に中神氏はこんな感想を抱いた。それと同時に、資本主義の新しいパラダイムを探そうとする貪欲な姿勢に息をのむ思いでもあった。

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 医療・介護用ロボットのサイバーダインや、新幹線の清掃会社、通称「テッセイ」。さらには日本人がシンガポールで経営する宇宙ゴミ除去のベンチャー、アストロスケール。HBSのケースで近年取り上げられた日本関連のリストを見ると、こうした企業の名前が目を引く。独自の経営哲学や技術、長期ビジョンを持つ企業ばかりだ。そこに今回、「みさき」と「サンゲツ」が加わった。

 「昔ながらの『ニッポン株式会社』の代表企業ばかりでは関心を集められない。特徴ある個別企業の変化を訴える必要がある」。HBSの日本リサーチ・センター長としてケースづくりに関わる佐藤信雄氏は最近、特にそう感じる。

 染みついた短期主義を克服しようとする米国。市場の力で競争力の立て直しをはかる日本。ハーバードが見ているのは、日米がそれぞれ資本主義の位相を進化させようともがく姿だ。



ダイソン創業者「AIで家電変える」技術者不足 世界で発掘 2017 /3/28 本日の日本経済新聞より

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 英大手家電メーカー、ダイソンがコードレス掃除機やヘアドライヤーの新製品でアジア市場を開拓している。掃除機では人工知能(AI)などの活用も検討する。今後の投資方針や英国の欧州連合(EU)離脱の行方について、創業者のジェームズ・ダイソン氏に聞いた。

 ――高成長のけん引役は何ですか。特に、中国の売上高は3.4倍と増加が顕著です。

 「新しい技術と新しい製品だ。回転速度の極めて速いモーターがスリムな形状のデジタル掃除機を可能にし、ヘアドライヤーの持ち手にすっぽり収まる小型の軸流タービンモーターが(重量の)バランスやドライヤーの使い方に変革をもたらしている」

 「中国には日本と同様に新しいテクノロジーや良いデザイン、機能が良く作りの優れた製品を好む人々が大勢おり、我々の製品に魅力を感じている。一般的に極東地域では、新しいテクノロジーや良いデザインに対する飢えのようなものがあり、我々の成長を大きくけん引している」

 ――今後の研究開発で重視している分野は。

 「我々が電気モーターを開発していることは、ありふれたことのように見えるかもしれない。それでもモーターの性能を大幅に改善することができれば製品は変わる。そのため、私は人々の掃除機の使い方を劇的に転換したダイソンの掃除機(の可能性)を信じている。バッテリーやモーターを開発しながら、マシン・ラーニングやAI、アルゴリズムの要素を加えることで製品はとても面白くなる」

 「モーターが自らを制御できるようになれば、モーターに多くの電子部品を用いる必要がなくなる。技術やハードウエアにAIなどが加われば、ハードはますます強力になる。重要なのはそのコンビネーションだ。ロボティクスにも大きく投資しており、英国で最大の投資家になっている」

 「一方、ソフトウエアのエンジニアが不足しているという問題もある。米国の大手IT(情報技術)企業などは特定のタイプのエンジニアを採用している。我々は世界の人材を必要としており、シンガポールに研究センターを開設したのもそのためだ。その他の国でも開設を検討している」

 ――英国のEU離脱交渉をどう見通していますか。

 「いずれにしてもEUとは(貿易交渉で)合意に至るだろう。さもなければ欧州が傷つくだけだ。英国は欧州だけでなく、その他の国にも目を向けており、とてもよいことだ」

 「EUとの交渉では、英国に住むEU市民やEUに住む英国民が今後も現地にとどまれることが重要だ。外国人居住者を追い出す国があるとは想像できない」

 「自由貿易も大切だ。英国は(財の)純輸入国で、EUは英国への輸出で潤っており、EUが英国との自由貿易を拒むとは考えづらい」

(聞き手はロンドン=黄田和宏)

 James Dyson 1991年にダイソンを創業。サイクロン掃除機の発明で家電業界に革命を起こした。チーフエンジニアとして研究開発を率いるほか、財団を通じてエンジニア育成に力を入れる。69歳



東京・大手町、ホテル多彩 長期滞在向けや高級旅館 2017/3/28 本日の日本経済新聞より

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 東京・大手町に相次いで高級宿泊施設が進出している。シンガポールのサービスアパートメント運営世界大手、アスコットは30日、最高級ブランド「アスコット」の1号店を開く。大手町はビジネス街として知名度が高いが、観光拠点としても注目が集まりつつある。新興ホテルは「長期滞在」や「旅館」という特徴を明確に打ち出し、多様化する富裕層のニーズをすくい上げる。

 キッチンや洗濯機を備え、窓からは都心の景色が一望できる――。アスコットが28日に内覧会を開いた中長期滞在向けの宿泊施設「アスコット丸の内東京」は、高級住宅のような趣がある。

 標準タイプの客室の宿泊料金は1泊4万7千円(税・サービス料別)、1カ月だと63万円(消費税別)を想定。ホテル内はシンガポール料理のレストランや都心のビル群を望むプールを設けた。

 大手町では高級ホテルの進出が相次ぐ。カナダ系高級ホテルのフォーシーズンズ・ホテルズ・アンド・リゾーツは建設中の再開発ビルに出店する。客室は約190室で、2020年の開業をめざす。星野リゾートは昨年7月、高級旅館「星のや東京」を開いた。料金は1泊1室7万8000円から(食事別)だ。

 高級感のある宿泊施設の新設が相次ぐのは、大手町が観光の拠点としても注目されつつあるためだ。出張で海外を訪れる際に観光を楽しむトレンドが欧米を中心に広がり、外資系の富裕層向け宿泊施設が商機を見いだしている。

 「海外に出張するときに家族を連れて行くことがある」。新施設の開業に合わせて来日したアスコットのリー・チー・クン最高経営責任者(CEO)もその一人だ。リー氏は「キッチンなどの設備はレジャーを兼ねたビジネス需要に適している」と自信を見せる。

 迎え撃つ帝国ホテルやパレスホテルなどの国内勢は千代田区にホテルを構え、ビジネス利用も好調だ。16年の訪日客は2400万人超と過去最高を更新。ホテル各社は需要拡大が続くとみている。一方で民泊の普及やビジネスホテルの開業ラッシュで競争は激しさを増している。



迫真 働き方労使で変える(1) 生き生きと働くために 20 17/3/28 本日の日本経済新聞より

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 「労使一体で働き方改革を実現しよう」。16日夜、東京・銀座のヤマト運輸本社。社長の長尾裕(51)は労働組合中央執行委員長の森下明利(55)と固い握手を交わした。ヤマトと労組は今年の春季労使交渉で、宅配便の総量抑制や時間帯指定サービスの見直しで合意。企業の成長を抑制する異例の合意を促したのは、インターネット通販の拡大と人手不足で急激に悪化した労働環境だ。

 「ヤマトはいつからネット通販会社の下請けになったのか」。さかのぼること約50日前。全国から約900人の組合員が参加した労組の集会で、労働環境の是正を求める意見が相次いだ。昨年12月は年の瀬が迫るにつれ荷物が増え、単月で過去最高の2億3400万個に達していた。

 トラック運転手らは昼食を抜いたり残業したりして対応したが、それでも一部で荷物がさばききれず、遅配が起きた。

 13年にアマゾンジャパン(東京・目黒)の宅配を引き受けてから荷物の増加ペースが加速。15年度の宅配便取扱数は5年前に比べて3割増えた。労組は人員増強を求めてきたが、社員数は同1割強の増加にとどまった。会社は最新鋭の物流倉庫の稼働や他社との共同配送、LINEを使った不在通知の導入など、人手不足を補う策を取ってきたが焼け石に水だった。

 「要求を実効性のある内容に変えなければならない」。意を強くした森下は、組合員の訴えをまとめ、荷受けの総量抑制や時間帯指定サービスの見直しを初めて盛り込んだ要求を決めた。

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 「これ以上働かせられない」。サービス維持に危機感を抱いていた社長の長尾も素早く動いた。労組などからサービス残業問題の指摘を受け、年明けから労働実態の把握に着手。運転手ら約7万6000人を調査し、未払い残業代を支給する方針を示した。2月1日には社長直轄の「働き方改革室」を新設。通常は4月に行う組織改正まで待っていられなかった。

 2月10日に労組から要求を受けると、21日には全社員に働き方改革の意志を伝える社長メッセージを発信。役員を全国に派遣した。常務執行役員の森日出男(61)は1泊2日で愛知県、大阪府、北海道にある各支社を訪ね、「社員に生き生きと働いてもらうための改革だ」と説いて回った。

 3月15~16日に開かれた団体交渉。例年妥結するのは2日目の深夜だが、今年は午後7時半に決着した。賃上げの攻防はあったものの、働き方改革に関しては、労組の要求を会社側がほぼ受け入れた。「大切なのは実際に労働現場が変わるかどうか」。森下の視線は既に先を向く。

 きめ細かなサービスで消費者をつかみ、成長してきた日本企業。人手不足は従来のサービス水準の転換を迫る。

 4月1日から全店の8割にあたる12店で閉店時間を30分前倒しするファッションビルのルミネ。社長の新井良亮(70)が売り上げ減のリスクがある施策を決断したのは、「このままでは人材の草刈り場となってしまう」という危機感からだ。

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 テナントの従業員は、低賃金や長時間の立ち仕事によるつらさを理由に退職するケースが後を絶たない。3年前から従業員向け食堂や休憩室の整備を進めてきた新井の総仕上げが営業時間の短縮だった。「働く女性が輝く商業施設でないと生き残れない」

 「ナチュラルビューティーベーシック」などの店舗を展開するサンエー・ビーディー(東京・世田谷)の取締役、百々和宏(55)は「帰宅時間が早まれば自宅が遠いアルバイトの応募も増えそうだ」と効果を期待する。

 「まず8時間から始めてはどうだろうか」。退社から出社までに11時間以上の休息時間を設ける「インターバル勤務制度」の導入で合意した外食大手のゼンショーホールディングス。組合の提案を受けて制度設計を始めた当初はこんな意見も社内にはあった。欧州連合(EU)では11時間以上が一般的だが、先行導入する日本企業は8時間以上とするところが多い。

 だが、労務担当常務の国井義郎(66)は「先回りしてノウハウを蓄積した方がいい」と社内をまとめた。3時間の差は将来、大きな果実として経営に返ってくるとみる。

(敬称略)

 人手不足で様々な産業にきしみが生じ始めた日本。17年春の労使交渉の焦点は賃上げから働き方改革に移った。最前線の動きを追う。



こころの健康学 優しい表情、周囲に安心感 2017/3/27 本 日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の健康面にある「こころの健康学 優しい表情、周囲に安心感」です。





 前回の本欄で、表情や姿勢などの外見を明るくすることで、こころを元気にすることを提案した。外見は自分のこころだけでなく、他の人のこころも元気にする。それは非言語的なコミュニケーションといえ、職場や家庭、学校など、いろいろな場面での人間関係にも影響する。

 もう30年以上前のことになるが、赤ん坊の行動から非言語的コミュニケーションの大切さを研究している米国の施設を見学したことがある。「ビジュアル・クリフ」と呼ばれる装置を使った実験だった。

 「視覚的断崖」とでも訳せばよいのだろうか。物々しい印象を受けるが、それは普通の机の上に分厚くしっかりとしたガラスを置いただけの装置だ。ただ、そのガラスは机の端で終わるのではなく、その先1メートルくらいまで延びている。

 実験では、そのガラスの先に母親が立って、8カ月の赤ん坊に反対側からハイハイで母親の方に進んでいくように促す。赤ん坊は机の端までたどり着くと、そこで動かなくなる。その先に机がなく、崖のように見えるからだ。

 そのとき母親が「こちらにおいで」と優しい表情で声をかけると、赤ん坊は再び進み始める。ところが、母親がおびえたような表情でまったく同じ言葉をかけても、赤ん坊は先に進もうとしない。赤ん坊は、言葉の内容ではなく、言葉にならない雰囲気に反応しているのだ。

 雰囲気に反応するのは赤ん坊に限ったことではない。だからこそ、新年度には、新しい環境で緊張している人たちが安心できる環境作りが大切になる。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



日本の科学力「この10年で失速」 英ネイチャー誌が特集 20 17/3/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の科学技術面にある「日本の科学力「この10年で失速」 英ネイチャー誌が特集」です。





 日本の科学研究はこの10年間で失速している――。英科学誌「ネイチャー」が23日付の最新号で日本の科学力の低下を指摘する特集を掲載した。発表論文数などをもとに分析した。1990年前後には躍進する日本を取り上げたが、四半世紀を経て論調は一転、激しい国際競争の中で埋没する姿を浮き彫りにした。

 特集では、各国が研究開発投資を増やす中で日本は2001年以降は横ばいで、国立大学への交付金を削減したため若い研究者が就ける任期のないポストが少なくなった点を低迷の要因にあげた。影響は主要な科学誌に占める日本の論文の比率が低下する結果に表れ、日本が強かった材料科学や工学分野でも「15年の発表論文数は05年と比べ10%以上減少した」と指摘した。

 16年のノーベル生理学医学賞を受賞した東京工業大学の大隅良典栄誉教授やロボットベンチャー企業、サイバーダインを創業した筑波大学の山海嘉之教授らの研究を紹介し、日本の科学研究はまだ世界のトップレベルにあると解説。しかし衰えもみえており、このまま課題を放置すれば、世界での地位が脅かされると警告した。

 指摘した内容は国内の研究や政策に関わる人たちはすでに把握しており、若手のポストを増やす予算措置や挑戦的な研究の支援強化などを打ち出し始めている。ただ中国やドイツをはじめとする欧州の活動はもっと積極的で、日本の改革が世界のスピードに追い付いていないのが実態だ。

 豊かな先進国を目指し発展してきた日本には、海外の成功モデルに追随する「キャッチアップ」の考え方が強く残る。新たな科学技術を生み出して社会へ行き届かせるためには「フロントランナー」として挑戦し、やり抜く強い意志が重要だ。それにふさわしい体制が大学や企業、行政のそれぞれに整えられているのか。いま一度問い直す必要がある。

(編集委員 永田好生)