対北朝鮮、強硬意見も ASEAN首脳会議南シナ海問題、中国に 配慮か 2017/4/30 本日の日本経済新聞より

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 【マニラ=小谷洋司】東南アジア諸国連合(ASEAN)は29日、フィリピンのマニラで首脳会議を開いた。同日朝の北朝鮮の弾道ミサイル発射を受け、強硬意見も出たもよう。会議の議論を踏まえて公表する議長声明に盛り込まれる見通し。日本経済新聞社がミサイル発射後に入手した声明案は朝鮮半島情勢に「重大な懸念」を表明。「北朝鮮に国連安全保障理事会決議に違反するすべての行為の即時停止」を求めた。

議長を務めたフィリピンのドゥテルテ大統領(29日、マニラ)

 外相声明は軍事圧力を強める米国も念頭に「北朝鮮と全関係国に緊張緩和のための自制」を求め、北朝鮮への一方的な批判を避けた。ミサイル発射を受け、首脳会談では北朝鮮批判を強めた。

 フィリピンのドゥテルテ大統領は会議後の記者会見で、朝鮮半島情勢に関し「2つの国がおもちゃで遊んでいるようだ」と北朝鮮と米国を批判。トランプ米大統領と29日夜にも電話協議し、慎重な対応を求める考えだ。

 中国が軍事拠点化を進める南シナ海問題では、声明案は「深刻な懸念に留意する」とした。フィリピンの意向で表現が弱められている。インドネシアなどとの間で最終調整が続いている。



経営書を読む 「戦略プロフェッショナル」(1) 戦略理 論は役立つか間違った問い 2017/4/29 本日の日本経済新聞より

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 スタンフォードMBA(経営学修士)、ボストンコンサルティンググループ日本人1号採用、そして現ミスミグループ本社取締役会議長。きら星のような肩書の並ぶ三枝匡氏が25年以上前に自らの経験を基に書いたのが本書です。その後多く出版されている実話仕立ての経営書の先駆けと言ってもいいでしょう。

 本書で投げかけられているのが「戦略理論は役に立つか」という基本的な問いです。私もしばしば受ける質問です。著者の答えを少々単純化して言えば「正しく使えていないのに役に立つわけはない」ということです。

 「正しく使えていない」理由は2つです。1つは、戦略理論の価値は「単純化」にあるにもかかわらず、それを良しとしない感情的な問題。「そんなに単純なものではない」「一概には言えない」という反応はよく聞くところですが、それはおおむね「原理原則と枝葉末節を混同」していることの裏返しです。

 何でもそうですが原理原則を明らかにした上で個別の問題に取り組まなければ、解決できることも解決できません。「当社はちょっと特殊だから」。そう言い続けて迷路にはまり込んだ企業を再生してきたのが著者なのです。

 もう1つは「戦略理論を使えばすぐ問題解決」という短絡的な発想です。しかし、これも当たり前ですが、原則は同じでも応用(あるいは実践)はその企業に合ったものでなくてはなりません。ハーバード大学のクリステンセン教授も指摘するように、抗がん剤がどんなに良い薬でも、風邪は治らないのです。

 そう考えると「MBAは役に立つか」、あるいは「英語は役に立つか」も全く同じで、そもそも問い自体が間違っています。欧米でもそうですが、ビジネススクールとは端的に言えば「高級就職専門学校」です。MBAを取ること自体は目的でもなんでもなく、自分のキャリアアップこそが重要なのです。「自分(あるいは自社)の目的」があって、初めて正しい問いが成り立つのです。



大機小機 中国経済4つの誤算 2017/4/28 本日の日本経済 新聞より

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 先の米中首脳会談でトランプ大統領は習近平国家主席に黒字削減要求を突き付けながら、北朝鮮政策での協力を引き出した。中国に様々な思惑があるにせよ、中国経済が対米強硬路線を取れるほど盤石でないことが外交面で妥協せざるを得なかった背景だろう。

 習主席は就任以来4年間、人民元高に歯止めを掛けて輸出を下支えしつつ、内需主導型経済への転換を図り、高成長から中成長への軟着陸を図ってきた。だが、4つの誤算があった。

 第一は、為替政策の誤算だ。人民元の対ドルレート上昇に歯止めを掛けたが、米国の金融出口戦略でドルが20%高騰した結果、人民元の実効レートが15%上昇して輸出が失速した。15年8月に人民元を切り下げたが、ポンド急落などで実効レートが高止まりして輸出減少が止まらない状況だ。年初来、世界貿易の回復にもかかわらず、輸出の減少(数量ベース)が続き、景気の足かせになっている。

 第二は、人民元切り下げで資本流出が始まったことだ。1年半で流出額は1兆ドルを超えた。昨年末の資本流出規制強化で、逆に対中直接投資が一段と減少し、設備投資の停滞をもたらしている。

 第三は、財政赤字の拡大だ。内需主導型への転換に伴う社会保険料や公共サービス支出増大と景気減速等による税収鈍化が背景だ。年初来、インフラ投資拡大で景気は底堅いが、財政出動で1~3月の歳出は前年同期比2割増だ。大型減税もあり、今年の財政赤字の国内総生産(GDP)比は日本を上回るだろう。

 第四は、マネー膨張だ。成長率が半減する中で2桁の融資拡大を続けた結果、中国の通貨供給量(M2)は米国の1.7倍になり、世界の3分の1を占めるに至った。年初来、引き締めに転じたが、住宅バブルが止まらず、インフレの兆しも出始めた。輸出減少、資本流出、財政赤字拡大、バブル膨張の4重苦に見舞われ、手詰まり状態だ。

 米中間の貿易不均衡是正に向けた「100日計画」で合意したが、中国はGDPの2%以上を対米貿易黒字に依存する。黒字を削減すれば成長率が低下し、財政出動で景気を支えれば財政赤字がさらに拡大する。中国は対米黒字削減という新たな重荷を抱え、一段と厳しい経済運営を迫られることになる。

(富民)



Deep Insight 巨熊ロシア 暴れさせぬ策本社コメンテーター 秋田浩之 2017/4/28 本日の日本経済新聞より

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 前半生の大半を、ロシア(ソ連)のスパイ機関ですごしたプーチン大統領。相手に警戒を解かず、本心を明かさない人物として知られる。彼にとって、安倍晋三首相は主要国の首脳の中でも、数少ない友人のひとりだ。

 そんなプーチン氏は27日、通算17回目となる会談のため、モスクワに安倍氏を迎えた。「両者は互いの考えを知り尽くし、本音で語り合える仲だ」(首相周辺)。

 ところが、舞台裏に光を当てると、プーチン政権の態度はむしろ日本に対してとげとげしくなっている。原因は日本自身というより、強まる米国への警戒心にある。

 3月下旬に来日したラブロフ外相とショイグ国防相は、日本が米国と進めているミサイル防衛協力にこう不満をぶつけたという。

 「米主導のミサイル防衛網によってロシアは包囲されている。西はポーランドとルーマニア、東側は日本と韓国だ。このままではわが国の核抑止力が傷ついてしまうではないか」

 日本のミサイル防衛網は北朝鮮をにらんだものであって、ロシアを狙っているわけではない。ロシアはそれでも、自分たちの封じ込めに利用されると疑っている。

 日ロ関係筋によると、プーチン氏の懐刀であるパトルシェフ安全保障会議書記は、昨年11月に訪ロした谷内正太郎・国家安全保障局長にこうも迫った。

 「在日米軍のミサイル防衛システムのレーダーはロシアにも向けることができる。そうじゃないと日本は言うが、米軍のシステムを制御できるのか? できないはずだ」

 米ロが対立を深めたのは、ロシアによる2014年のクリミア併合がきっかけだ。親ロ的なトランプ大統領の就任で雪解けするかにみえたが、米軍のシリア空爆にロシアが猛反発し「過去最低の状態」(トランプ氏)に冷えた。

 ロシアは米国と同盟を結ぶ欧州諸国にも軍事挑発を強める。日米のミサイル防衛協力を敵視するのも、同じ流れだ。ロシアは世界最大の国土を持ち、強大な核戦力も抱える。本気で暴れたら、世界は混乱してしまう。彼らと、どうつき合ったらよいのか。

 その手掛かりは、なぜそこまで彼らが米国に疑心暗鬼を募らせるのかを、考えることにある。日米欧の専門家らによると、ロシアは米国に限らず「いつも、敵対国に包囲されている」との強迫観念を抱き続けているという。

 それは歴史に根ざしたトラウマだ。ロシアは13世紀から約240年間、モンゴル人の支配を受けた。19世紀にはナポレオン軍、第2次世界大戦ではナチスドイツに攻め込まれた。米ソ冷戦では西側諸国に封じ込められ、1991年に旧ソ連は崩壊した。

 そしていま、北大西洋条約機構(NATO)と日米同盟を足場にして、米国が再びロシアを包囲しようとしている。プーチン氏はそう考え、激しく押し返そうとしているというわけだ。

 ロシアは時に熊にたとえられる。体が大きく、警戒心が強い。普段はおとなしいが、縄張りを侵されると牙をむき、凶暴になる。そんなロシアに対応する選択肢は3つに分かれる。

 【路線(1)封じ込める】外交や軍事圧力を使い、東欧などに挑発を強めたり、縄張りを広げたりできないよう、厳しく対抗する。米国の議会保守派や国防総省で聞かれる戦略だ。

 【路線(2)融和策で友人になる】首脳間の交流や経済交流を深め、友好的パートナーになろうとする。安倍路線はこれに通じる。

 【路線(3)信用せず、つき合う】友好的パートナーになるとの期待は抱かず、強い警戒心を絶やさない。ただし追い詰めることもせず、必要な協力は保つ。「今のドイツがこれに近い」(欧州外交筋)。

 いずれも短所がある。封じ込め路線を突き進めば米ロ冷戦が再燃し、ロシアはさらに凶暴になるだろう。欧州でのロシア軍による挑発の現状は「冷戦後、最大の規模」(英軍事専門家)。シリアや北朝鮮問題での協力も難しくなる。

 かといって融和路線も限界がある。安倍政権は経済協力を提示しているが、ロシアは北方領土での軍拡をやめようとしない。そもそも強権国が自由や「法の支配」という民主主義の価値を共有するパートナーになれるのか、疑問だ。

 だとすれば、いちばん現実的なのが、(3)の中間路線だ。実は、ロシアの危なさを最もよく知り、この政策を忠実に実行しているのが、中国である。

 「ロシアとは長い国境を接している。両国はいまは友好国だが、いつまで続くのかわからない」

秋田浩之(あきた・ひろゆき) 政治部、北京支局、ワシントン支局などを経て、外交・安全保障担当の編集委員兼論説委員。近著に「乱流 米中日安全保障三国志」

 中国当局者はこう打ち明ける。1960年代末に中ロは戦火も交えた。両国は蜜月を強調しながらも、胸の内では決して警戒を解かず、つき合っている。

 そんな中国とロシアがしたたかに連携し、既存の国際秩序を崩しにかかるような展開は、阻まなければならない。中ロにくさびを打つには日米欧が足並みをそろえ、中国よりも巧みに、融和策でも、封じ込めでもない、現実的な対ロ戦略を再構築する必要がある。

 人気スパイ映画の007シリーズで、主人公の所属機関として描かれる英秘密情報部(通称、MI6)。2年半前までそのトップを務めたジョン・サワーズ前長官も、そんな外交を提唱する。

 「ロシアは危ないと思えば、むしろ危険な行動に出かねない。とはいえ(融和策が)行きすぎるのも危険だ」。彼は長官当時、ロシアによるクリミア併合危機に対処した。そんな経験に裏打ちされた現実論だけに、重みがある。



日本が動かすTPP11(中) 身構える農業・車焦る米、対 日FTA強硬に? 2017/4/28 本日の日本経済新聞より

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 「一つのアプローチとして間違っているとは思わない」。25日の参院財政金融委員会。麻生太郎副総理・財務相は米国抜きの環太平洋経済連携協定(TPP)の意義を聞かれ、理解を求めた。

 政府が「TPP11」にカジを切り、経済界に「焦る米国が日米自由貿易協定(FTA)を含む2国間交渉の要求を強めてくる」との不安が漏れる。

 トランプ氏に近い共和党関係者は「政権が目指しているのは日米FTAだ。日本が米抜きでTPPを進めれば、米政権は対日FTAを急ぐ必要が出てくる」と話す。

「第一の標的」

 とくに敏感なのは農業界だ。米通商代表部(USTR)の次期代表に就任予定のライトハイザー氏は3月の米上院委員会の公聴会で「農業分野の市場拡大は日本が第一の標的になる」と公言した。山本有二農相はTPP11を「慎重に考えていきたい」と漏らす。

 トランプ政権が農業とともに「不公正」と名指した自動車業界も身構える。この30年間に日本から米国の輸出はほぼ半分の170万台に減り、米国生産は6倍の400万台近くに増えた。だが、米国の2016年のモノの貿易での対日赤字は689億ドル。うち自動車が526億ドルを占め、標的になる可能性がある。

 経済産業省幹部は「日本の輸入関税はすでにゼロだ。米国と交渉することはない」と話すが、非関税障壁の是正などの要求への不安は消えない。

 もっとも、TPP11の有無にかかわらず、早晩、米側が2国間交渉を求めてくる状況に変わりはない。自動車は日本側が米国の関税引き下げを求めるのを懸念して米側が争点化を避ける可能性もあるが、農業分野の交渉は日本が不利との見通しが多い。このため「けん制材料として役立つのがTPP11だ」との見方は農業界にも少なくない。

 15年に大筋合意したTPPで、日本は国内農業の影響を和らげるため、コメ、牛豚肉、乳製品など重要5品目を「聖域」と位置づけ、農産品全体の関税撤廃率を81%とし、12カ国中で最も低く抑えた。交渉を経て得た国内の反発を抑えるぎりぎりのラインといえる。

EU交渉に期待

 政府は5月に始まるTPP11の協議で関税でも合意内容を変えずに維持する方針。農業で踏み込まれたくないという国内対策とともに、これで11カ国がまとまれば「日本は農業で譲らない」という米国へのメッセージになるという思惑がある。

 もう一つの米国へのけん制球が、年内の大枠合意をめざす欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)だ。ここでの焦点も農産品。首相周辺は「日本がEUと合意すれば、米も焦ってTPPに戻ってくる」と期待する。

 日本商工会議所の三村明夫会頭は「日本はグローバル化の中でしか生きられない」と語る。それであれば、並行して進む多角的な貿易交渉を活用して有利な条件に持ち込むすべを磨くしかない。



麻生氏、経済対話「日米で枠作る」 貿易・投資ルール主導 中国念頭に 2017/4/28 本日の日本経済新聞より

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 麻生太郎副総理・財務相は27日、日本経済新聞のインタビューで日米経済対話に関して「日米で枠をつくりアジアの中でうまくあてはめていく」と語り、貿易や投資のルール作りを主導する考えを表明した。米国の環太平洋経済連携協定(TPP)への復帰にも期待感を示した。主なやり取りは次の通り。(1面参照)

麻生氏は「中国人が考えるフリーと世界が考えるフリーは全然違う」と語る

 ――18日の日米経済対話の率直な手応えは。

 「これまで日米間の交渉はすべて日米間の貿易摩擦によって起きた。今回は特にそういう話があるわけではない。日米できちんと手を組んでやっていくことに大きな意義がある。日本という朝鮮半島に最も近い国と良い関係にあるのは米国にも大きな意味がある」

 ――2国間の枠組みはどう進める。

 「(米国は)自由貿易協定(FTA)とTPPを比べると、FTAの方がよりメリットがあるという前提だろう。米国との2国間交渉になったら譲ることはあり得ない。FTAの方が条件はより厳しくなると分かったら後からTPPに入ってくればいい。現実が分かれば、やっぱりTPPの方が良いということは十分にあり得る」

 ――米国抜きの「TPP11」の案は。

 「現実的だ。せっかく3年間かけてつくってきたのだから、発効させればいい。条件の再交渉はない。TPP11の発効は早いかもしれない」

 「(TPP11が進めば日本市場では)オーストラリア産牛肉が増えて、米国産牛肉は減っていく。(米国抜きは)他の国にとっては都合の良い話が多い」

 ――対話で取り上げる「第三国に関する懸念」は中国が念頭にある。

 「3月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でフリー(自由)とフェア(公正)という言葉が一番もめた。中国人が考えるフリーと世界が考えるフリーは全然違う。世界の常識と異なる自分に都合の良いフリーで物を動かされては明らかに公平さを欠く」

 ――北朝鮮情勢は。

 「明らかに常識的でない人が極めて危険な武器を持っている。(朝鮮人民軍創建記念日の)25日が過ぎたら緊張感がなくなるというのはまったく違う。テンション(緊張感)は下がることはない。それを一番止められるのは中国でしょ」

 ――為替問題は対話では取り扱わないことになった。

 「それは俺とムニューシン米財務長官でやる。ムニューシン氏は前任のルー氏のような予算屋と違い、ゴールドマン・サックスで現実の金融や為替をやってきた。この意味はよく分かっている」

 ――消費税率引き上げに向けた環境は整っているか。

 「前に比べれば上げやすい状況になりつつある。予定通りの方向で進んでいる」



真相深層 「ポテチ危機」に2つの影 輸入規制と人手不足 2017/4/28 本日の日本経済新聞より

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 全国的な品薄が続くポテトチップスで一部商品の販売再開のめどが立たない。国内出荷量の約8割を占める北海道産ジャガイモの不作だけが品薄の原因ではない。海外産ジャガイモの輸入が厳しく規制され、不足分を補えずに原料確保ができない状況が続いている。人手不足で道産ジャガイモの作付面積も減少しており、今後の安定調達に影響を与えかねない。

ジャガイモ不作でポテトチップスの販売休止が相次いでいる

 「集客の目玉であるポテトチップスの売り場を縮小するのはつらい」。4月中旬、東京都内にある中小スーパーの経営者はため息をついた。来店客のまとめ買いが相次いで店頭から在庫がなくなる一方で、入荷の予定がないからだ。

 全国でポテトチップスの品薄が起きている。カルビーは22日までに「ピザポテト」など33品目の出荷をとりやめ、湖池屋も16品目の販売を終了または休止した。在庫がなくなる小売店で商品棚の一部が空くほどの規模だが、両社は「販売再開の時期は未定」と説明する。

 カルビーと湖池屋がポテトチップス原料の8割近くを調達する北海道では、毎年秋に収穫期を迎える。2016年は長雨や台風の影響でジャガイモ出荷量が前年比で約1割減る不作となり、十分な量を確保できない事態に陥った。

 道産ジャガイモの不作だけが販売休止の要因ではない。ジャガイモ特有の事情が品薄に影を落としている。

 瀬戸内海に面するカルビーの広島工場(広島県廿日市市)。米国産を使ったポテトチップスの生産がフル稼働で続く。同工場の従業員だけでは作業が追いつかず、全国各地の工場からも応援を呼んで対応している。

 カルビーは例年、原料の約1割に相当する約2万トンのジャガイモを輸入してきたが、道産ジャガイモの不作を受けて海外調達を増やした。それでも「ポテトチップスの品薄解消は難しい」(関係者)。海外産ジャガイモの輸入は国から厳しく規制され、容易に調達量を増やせないからだ。

 生のジャガイモを輸入する場合、付着した土などに生息する外来の病害虫が侵入し、国内の農産物に深刻な被害を与える可能性がある。そのため農林水産省が海外産ジャガイモの輸入を制限しており、メーカーは不足分のジャガイモを海外から調達できない。

 そもそもポテトチップス用のジャガイモ輸入が解禁されたのは06年で、業界関係者は「世界的な産地である米国から強い要請があった」と指摘する。輸入ジャガイモを船から荷揚げしてすぐに加工できるように、工場も港に近い場所に立地することが求められた。臨海部にあるカルビーの広島工場と鹿児島工場(鹿児島市)しか認められず、生産拡大の余地は小さいのが現状だ。

 ジャガイモの国内出荷量の8割を占める北海道では、ジャガイモの作付面積が減り続けるなど、農家の人手不足も安定調達に影響する懸念が強まっている。北海道のジャガイモ作付面積は6年前に比べて約1割減った。同1.5%増えたタマネギとは対照的だ。

 北海道ではジャガイモの作付け作業が始まり、地元では例年並みの収穫量を期待しているが、道内に住む50代のジャガイモ農家の表情は暗い。「菓子メーカーの需要に応えてたくさん収穫したいが、人手がとにかく足りない」。北海道では慢性的な人手不足に悩み、栽培する作物を周期的に変える「輪作」からジャガイモを外す生産者がじわり増えている。

 「ジャガイモの収穫作業は重労働だから」と、この農家はため息をつく。北海道農協畑作・青果対策本部によるとジャガイモ農家の1ヘクタール当たりの労働時間は小麦の約7倍と重労働という。高齢の農家が重労働を敬遠して作付けを減らすほか、新規就農する若者もなかなか増えない。

 防疫対策などで海外産ジャガイモをすぐに増やすのは難しい。作付面積の減少や人手不足といった構造的な問題が、ポテトチップスの安定生産に影響を与え続ける懸念が残る。

 (札幌支社 鷹巣有希、湯前宗太郎、柴田奈々)



緊迫する世界 識者に聞く 米のシリア攻撃「評価」カーネギー中東 センター所長マハ・ヤヒア氏 2017/4/27 本日の日本経済新聞より

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 ――米軍による今月初めのシリア・アサド政権軍へのミサイル攻撃は、米国の軍事・外交政策の転機となりますか。

 「ミサイル攻撃だけで米政権の姿勢が一変したと考えるのは早計だ。中東に限っても、米国が軍事介入に加えてシリアに政治的な要求を強めるのか、ロシアがどこまで強硬に反応するのかなどを見極める必要がある」

 ――米の攻撃は地域情勢にどう影響しますか。

 「米国は必要なら軍事力行使をためらわない。トランプ大統領がミサイル攻撃で発したのはそうしたメッセージだ。長期的な効果は分からないが、少なくとも短期では抑止効果があった」

 ――自身に不利に働くのに、なぜアサド政権は化学兵器を使ったとみられるのでしょうか。

 「過去にも民衆に化学兵器を使ったアサド政権は『何をやっても罰を受けない』とたかをくくっていたフシがある。アサド大統領は今回も国際社会はたいして反応しないと読み、反体制派に『おまえたちは孤立している』とのメッセージを送ろうとしたのだろう。化学兵器を持ち出す軍事的意味はほとんどなかった」

 「米軍のミサイル攻撃は、アサド大統領が勝手に手にしていると考えていた“免責特権”を否定し、国際的な規範を強めた点で評価できる」

 ――シリアをめぐっては国連主導のジュネーブ・プロセスとロシア主導のアスタナ・プロセスの2つが併存しています。

 「アスタナの協議は停戦が目的で、ジュネーブの協議は将来の政治体制を話し合うのが目的だ。ジュネーブの和平プロセスを後押しすべきだ。攻撃に表向き強く反発しているロシアが、水面下で米国とどこまで歩み寄れるかが焦点となる」

 ――長期的な解決では何が重要になりますか。

 「内戦で家を追われた難民をめぐる問題への対応が重要になる。シリアの内戦の複雑さや、過去の紛争国の復興の経験からみて、持続可能な安定には、人々が元の地域に戻るのが不可欠だ。安全の確保だけでなく経済状況への配慮も必要だ」

 「(シリア内戦に介入している)ロシアもイランも、荒廃したシリア国土の復興への十分な資金はない。アラブ諸国も自分たちの直面する経済問題で手いっぱいだ。幅広い国際支援によってシリア難民の帰還を促すと同時に経済・政治の改革を進めなくてはならない」

 ――テロ対策を口実に一部の国は権威主義的な体制を復活させようとしているようです。

 「アラブの春を引き起こしたそもそもの原因が、人々が自由を奪われているアラブの社会構造にあったことを忘れてはならない。アラブの政治や社会の変革に取り組まないと、中東問題は根本的には解決しない」

(聞き手はドバイ=岐部秀光)

=随時掲載

マサチューセッツ工科大学と英国建築協会付属建築学校で博士号。16年から現職。アラブ世界の社会構造などに詳しい。



中外時評 社会保険料という名の税 上級論説委員 実 哲也 2017/4/27 本日の日本経済新聞より

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 米国のレーガン大統領はかつて消費税の導入論にこんな理由で反対したという。

 「人々が知らぬ間に税率が静かに上がってしまう恐れがある」。その裏には、導入が早かった欧州では税率があれよあれよという間に上がり、政府の肥大化を許してしまったという認識があった。

 日本では考えられない話である。消費税率を上げようとすれば世の中をあげて大騒ぎになり、容易に実現しない。

 だが、知らぬ間に静かに、しかも着実に上がり続けている「税」が日本にもある。社会保険料という名の税だ。従業員が払う社会保険料率は今年、給与の15%近くに達し、10年で2割以上増える見通し。

 賃金が原資という点では社会保険料も税も同じだ。米国は高齢者医療や年金の財源を「給与税」と呼ぶ税で賄う。

 もちろん、社会保険は保険料という負担に見合う形で医療や年金給付を受けられる仕組みで、政策目的で徴収される税とは本来別物だ。だが、保険料の性格は次第に税に近づきつつある。

 典型が健康保険料だ。料率が毎年上がっている主因は、健保組合員の医療費とは直接関係ない高齢者医療への支援金が増えていることにある。

 健康保険組合連合会の最近の発表では、今年度に従業員が払う保険料収入の44.5%が高齢者医療への支援金に充てられる。比率が5割を超す組合も約4分の1に達する。

 支援金は高齢化の加速に伴い一段と膨らむ見通しだ。健康管理努力で組合員の医療費と保険料を抑えようとしても焼け石に水。保険料率は限りなく上昇する恐れがある。

 佐藤主光一橋大教授は「このままでは健保組合は持たない」とし、「支援金は高齢者への所得の再配分であり本来は税金で賄うのが筋。組合員のための保険料という看板を掲げて勤労者に負担を押しつけるのは不公平」と語る。

 増税はできないが、保険料の引き上げなら抵抗は少ないからこれを活用すればいい。そんなやりくりは限界にきている。税と社会保険料のあり方をセットで考え、日本の社会保障が直面する課題にこたえる道を探る必要がある。

 課題は2つある。1つは高齢化などに伴う医療費の膨張を抑えつつ、どうその経費を賄うか。2つ目は社会保障の仕組みを「現役層が高齢層を支える」形から、「年齢に関係なく真に困っている人を困っていない人が支える」仕組みに転換していくことだ。

 医療費の抑制には国の努力に加え、国民健康保険の運営主体になる都道府県などが医療効率化へ動くよう促す仕組みをつくることが欠かせない。改革は始まろうとしているが、「責任の所在が曖昧なままで、道は険しい」との声も専門家の間では多い。

 高齢者医療費については、支払い能力がある高齢者にもっと負担してもらう以外は国民全体で広く薄く負担するしかない。増える費用の大きさも考えれば消費増税がやはり第一の選択肢になろう。一方、佐藤教授は「健保の保険料のうち高齢者医療支援に充てている分は、金融所得などに課税ベースを広げた社会連帯税に転換すべきだ」という。

 真に困っている人を支える仕組みはどうつくるか。「保険料頼みのままだと、低所得労働者が豊かな高齢者を支える逆の再配分さえ起きる」と言うのは森信茂樹中央大教授。給付付きの勤労税額控除の導入によって事実上、保険料負担を軽減する仕組みや、豊かな年金受給者の課税強化などが必要と説く。

 日本総研の西沢和彦主席研究員は「誰がどの程度困っているのかを把握する行政インフラが整っていない問題がある」と指摘する。税務当局、市町村、日本年金機構などの間の情報共有化が必須だ。

 いずれにせよ税と社会保険料を同じ土俵に載せた制度設計が欠かせないが、現実には税は税制調査会、保険料は社会保障審議会といった縦割りを超えた議論は進まない。

 このままでは、ほぼ自動的に「賃金税」としての保険料が増えて勤労者の手取り収入が減ったり、借金という形で将来世代につけが回ったりするだけだ。それを見て見ぬふりをするなら政治の責任放棄といわれても仕方あるまい。



真相深層 習主席に水面下の圧力米中会談、凍り付いた笑顔の裏 米、突きつけた制裁リスト 2017/4/27 本日の日本経済新聞より

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 夏のような日差しが降りそそぐ米フロリダ州。6~7日、トランプ米大統領と初めて会談した中国の習近平国家主席は終始、笑顔を振りまき続けた。だが、その笑顔は凍り付いていた。トランプ氏が会談のさなかにシリア攻撃に踏み切り、北朝鮮や通商を巡る問題で優位に立ったことだけが原因ではない。会談前から、米国は水面下で中国を揺さぶり続けた。

中国の習主席を別荘「マール・ア・ラーゴ」で迎えたトランプ米大統領(6日、パームビーチ)=ロイター

中国企業を追加

 首脳会談を2週間後に控えた3月下旬、米国務省は対米取引を禁じる制裁対象リストに、北京市内にある中国企業の名前を加えた。「イランのミサイル開発計画に関与した」との理由だった。

 北朝鮮と違法に取引する中国企業があれば、同様の制裁を加える。核・ミサイル開発をやめない北朝鮮の後ろ盾である中国への明らかなけん制だ。しかも、この中国企業は特殊な背景があった。

 中国のシリコンバレーと呼ばれ、ベンチャー企業が集まる北京の「中関村」。米国の制裁対象となった「北京中科華正電気公司」が公表する住所を訪ねると、警備員が入り口を守る巨大な敷地にたどり着いた。門から見える建物には「中国科学院電工研究所」。中国国務院(政府)に直属する研究機関だった。

 「この会社は敷地内にあるはずだ」。警備員にただすと、記者が見せた資料をまじまじと見つめて「そうだ。この中にある。面会予約はあるのか」。何度電話しても出ないので連絡先を教えてほしいと答えると、「予約のない人は入れられない」。門前払いだった。

 中国政府がイランや北朝鮮のミサイル開発を黙認している証拠をつかんでいるぞ――。制裁対象の名前を並べただけの米国務省資料の裏側には、中国への強烈なメッセージが込められている。

 3月上旬、米国は中国通信機器大手、中興通訊(ZTE)に対し、北朝鮮などに通信機器を違法に輸出したとして約12億ドル(約1300億円)の罰金を科した。同社の2016年12月期の最終損益は赤字に転落した。

 外交筋によると、米国は北朝鮮の核・ミサイル開発に関わる中国企業や金融機関を調べ上げている。首脳会談前に突きつけたのはその一部だ。

 畳みかけるように、トランプ氏は初めて習氏と会った6日、シリア攻撃のゴーサインを出した。北朝鮮問題でも武力に訴える構えをちらつかせ、習氏から北朝鮮の核放棄に向けた「協力強化」という合意をもぎ取った。

 次の一手を迫られた習氏。会談終了後、トランプ氏とともに散歩した。現地では「習氏は笑顔を見せないかもしれない」との見方も浮上していた。散歩はたったの3分間。背広にネクタイという堅苦しい装いながら、習氏は何とかほほ笑んでトランプ氏と握手した。

 会談前から揺さぶりをかけられながらも、なぜ習氏はトランプ氏との早期会談にこだわったのか。国内の政治情勢に背中を押されたからだ。

秋の党大会意識

 中国では秋に5年に1度の共産党大会を控え、最高指導部の人事の入れ替えに向けた権力闘争の季節に入っている。習氏が人事の主導権を握り続け、スキをつくらないようにするためには、外交の安定が絶対条件となる。

 特に、世界の大国の指導者を自負する習氏にとって、米国に自らの立場を理解させたという国内向けの演出が必要だった。中国国営中央テレビは、芝生の上をトランプ氏と肩を並べて歩く習氏の貼り付けたような笑顔を繰り返し放送した。

 トランプ政権は首脳会談直後から韓国への核の再配備をちらつかせ、朝鮮半島周辺に空母を派遣するなど圧力を強めた。早く次の手を打たなければ中国の安全保障環境は悪化するばかりだが、米国に譲歩しすぎれば国内で弱腰の批判を受ける。

 党大会まではまだ半年ある。習氏はトランプ氏との個人的な関係構築を国内に示す当初の目的は達成したが、北朝鮮への対処だけでなく、対米黒字の削減に向けた具体策という宿題を残した。「早すぎる会談はリスクも大きい」。訪米前から中国国内でささやかれていた懸念が再び頭をもたげ始めている。

 

(北京=永井央紀)