経営の視点 人材もシェアしてみたら「知のかけ算」で革新も 編集委員 水野裕司 2017/5/29 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の企業面にある「経営の視点 人材もシェアしてみたら「知のかけ算」で革新も 編集委員 水野裕司」です。





 自動車用などの精密部品を製造する菊地歯車(栃木県足利市)が2015年、航空機部品事業の子会社として設立したエアロエッジ(同)。米ゼネラル・エレクトリック(GE)と仏サフランの連合が開発した新型の航空機エンジン向けに、タービンの羽根を供給する企業に選ばれた。

 足利市に建設した新工場が昨夏、本格稼働を開始。事業の拡大を支えるのが、兼業という働き方だ。

 製造工程の設計や生産管理を担うものづくりのリーダーは、週1回勤務のベテランだ。キヤノンで海外の工場長や現地法人社長を務めた。退職後、今は横浜市のエレクトロニクス企業と兵庫県のかばんメーカーでも生産管理をみている。

 「フルタイムにはこだわらない。パフォーマンス(成果)を上げてくれさえすればいい」と、エアロエッジで経営企画を統括する永井希依彦執行役員は言う。

 人事評価制度づくりもコンサルティング会社出身者が週1回勤務で取り組む。製品の生産履歴を管理する情報システムの構築も、新日鉄情報通信システム(現新日鉄住金ソリューションズ)などを経た専門家が兼業で作業をけん引した。

 掛け持ちでも、高い技能があれば働いてもらった方が得だ。人材もシェアする時代に入った。兼業者の活用が広がっておかしくない理由がいくつかある。

 第1に、グローバル化やデジタル化の進展で、企業が経営のスピード向上を求められていることだ。必要な能力を持った人材が社内で見つかるとは限らない。兼業という、会社に拘束されない働き方を用意することで、ほしい人材を外部から取り込みやすくなる。

 第2に、社外の人材と組んで新しい製品やサービスを生むオープンイノベーションを進めやすくなる点がある。プロジェクトごとに適任の人材と契約すれば人件費も効率的に使える。

 第3として人口減少も挙げられる。優れた人材のパイも縮小するなら獲得競争は激化する。兼業者にも人材を求めるのは合理的だ。

 エアロエッジは役員も、ほかに仕事を持っている例がある。成長戦略の担当役員は自動車メーカーで素材や燃料電池の開発に携わり、現在、人工知能(AI)による自動運転技術の実用化をめざすベンチャー企業の技術部門をみている。

 AIとエアロエッジの技術が結びつき、「思わぬイノベーションが生まれる可能性がある」(永井氏)。シナジー(相乗効果)創出も兼業の利点だ。永井氏自身、帝京大学で講師としてファイナンスを教え、立命館大学では技術を企業の競争力強化に生かす「技術経営」の研究員でもある。

 大手企業の退職者やベンチャー経営者など1万人の登録者を擁し、エアロエッジとキヤノン出身者らの橋渡しをした人材紹介業のサーキュレーション(東京・千代田)によれば、伝統的企業も兼業を活用し始めている。老舗の和菓子メーカーは食品関連企業の役員の力を借り、インターネット販売額を4割伸ばした。

 兼業という働き方を当たり前と考えることで、企業が活用できる人材や「知」が広がる。一つの会社で働き続けるのがまだ一般的な日本社会への問題提起だ。



砂上の安心網 それぞれの責任(1) 高齢者優遇、限界で は? 政治の覚悟足りなかった厚労族の重鎮 尾辻秀久氏 2017/5/2 9 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「砂上の安心網 それぞれの責任(1) 高齢者優遇、限界では? 政治の覚悟足りなかった厚労族の重鎮 尾辻秀久氏」です。





 社会保障制度の改革はなぜ進まないのか。キーパーソンにそれぞれの責任を問う。初回は社会保障費の抑制は困難と主張してきた尾辻秀久元厚生労働相。

 ――日本の社会保障は限界が近づいています。高齢者優遇では持ちません。

 「どこが優遇しているのか。指摘は理解できない」

 ――社会保障費は高齢者に使われるものが多く、他の予算を圧迫しています。

■消費税を20%に

 「最大の問題は消費税率を引き上げないことだ。税率を20%に上げれば済む話だろう。欧州には消費税率が20%を超える国が多い。高齢化が進む日本が8%や10%でやれるはずがない」

 「社会保障の議論をするときには、まず国民負担率を議論すべきだと言ってきた。負担率を高くして、給付を手厚くすべきだ。自助、共助、公助のうち公助を一番大きくすべきだ」

 ――給付減などの取り組みなしに20%は国民的な合意になるのでしょうか。

 「覚悟を決めて言うしかない。戦後の日本政治は生産者米価は上げるが、消費者米価は下げるといってきた。社会保障も同じで、給付を充実させると言ってきた結果が今の財政赤字だ。戦後政治のツケが出ている。政治家の責任でもある」

 ――厚労相を務めた自身の責任も感じますか。

 「私も責任を感じている。今の社会保障は世界に引けを取らない制度になっている。それに見合う負担を求めてこなかったところに責任がある。もっと皆さんに税金を払ってもらわなければいけませんと、はっきり言うべきだった」

 ――なぜ公助を大きくすべきだと考えるのですか。

■助け合いの国

 「日本人は農耕民族で、田植えをするとなると隣近所で助け合ってきた。その文化は今でも生きており、助け合いを基本にすべきだ。農耕民族の文化でいくのが正しい」

 「政治のレベルで一番欠けているのが哲学の議論だ。日本をどういう国にするのか、基本のところを置いてきてしまった。日本を米国型の社会にすべきかということだ。そういう国にするなら、それはそれで一つの考え方だ」

 ――自民党は「子どもは家庭で育てるべきだ」との価値観が強く、子どもへの支援拡充は進みません。

 「自民党にはもともと『家』に対する考え方があったが、もはや時代が変わった。人々の親兄弟への感覚は変化しており、時代の流れに沿っていくべきだ」

 ――2000年代後半に社会保障費の抑制を「乾いたタオル」と例えました。今も同じ考えですか。

 「あのころは経済財政諮問会議が経済活性化のために社会保障費を毎年2200億円削れと言い続けた。それは基本的におかしく、削りようがない。乾いたタオルを絞るようなもので、今でも同じ認識だ」

 ――厚労族と言われています。日本医師会など支持団体への配慮があるのではないですか。

 「全くないとは言わない。私は当選以来ずっと弱い立場の味方をしている。業界の立場が弱いときは業界と同じことを言うことも多いが、医師会と大げんかをしたこともある。官僚制度と対峙するには議員の専門家集団が必要だ。族議員という表現を使うならば、それでよしと思っている」

■診療報酬の抜本見直し必要

 ――今年は診療報酬と介護報酬の同時改定の作業を控えます。

 「診療報酬をつくったとき、医者は薬代でもうけるような仕組みにした。日本人は技術料のような無形のものにお金を払うのは大嫌いで、薬を出すから薬代をもらいますというと文句は言わないからだ」

 「今になって『医者が薬でもうけるとは何だ』と批判がでている。だが、本当は薬代でもうけないと医者の取り分がなくなってしまう。抜本的に見直さないといけない。このままごまかしながらいくのは限界に来ている」

 ――規制改革推進会議が介護保険サービスと保険外とを組み合わせる「混合介護」の導入を打ち出しました。利用者の利便性を高めませんか。

 「混合介護という言葉が何をいっているのかさっぱり分からない。ヘルパーを指名して、指名料をとるなんて議論にも値しない」

 ――混合介護は先送りとなりました。

 「規制改革推進会議も言うことがなくなったのではないか。玉がなくなったので、くだらないことを言う。もうそろそろ店じまいした方がいい」

 ――自民党で「こども保険」の議論が活発になっています。

 「加入者が払った保険料が将来帰ってくるのが保険だ。子どもを産まない人からも保険料をとるのは保険とは言わない。みんなで助け合っていこうという基本理念は賛成するが、もうひと工夫してほしい」

 おつじ・ひでひさ 1971年(昭46年)東大中退。89年参院初当選。日本医師会とのパイプは太く、2004年に厚労相に就任。自民党厚労族の重鎮として国の政策決定に関わってきた。76歳。

<聞き手から> 税と社会保障、理念再構築を

 社会保障費の財源を賄うため将来は消費税率を20%に上げるという尾辻氏の提言は大胆だ。高齢者も含め国民全体で負担する消費税は公平性の観点から重要な財源になることは間違いない。だが2度にわたり増税を延期した安倍晋三首相が受け入れるとは思えない。

 日銀の異次元緩和で覆い隠されているようにみえるが、日本の財政は刻一刻と深刻さを増している。財政支出などを伴う公助に頼り切ることは難しく、自助や共助の領域を広げていかなければならない。

 尾辻氏は膨大な財政赤字を「戦後政治のツケ」と表現し、自身も含めた政治家の責任を率直に認めた。高齢社会を乗り切るために、政府・与党は早急に税と社会保障の理念を再構築し、負担だけでなく給付も同時に見直していく必要がある。強い政権基盤を持つ安倍政権にはその責務があるはずだ。(重田俊介)



経営書を読む 「戦略プロフェッショナル」(4)成功する会社論 理性と熱き心努力惜しまず 2017/5/20 本日の日本経済新聞より

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 戦略プロフェッショナルに描かれる主人公・広川洋一の成功には「運が良かった」という評価もあるでしょう。実際、この会社が立ち直った理由は非常に大きな潜在力を持った新製品があったからです。しかし、よく考えてみると優れた技術、製品を持ちながら没落していく企業は山のようにあります。シャープしかり、東芝しかり、一時期のソニーしかり。一体何が違うのでしょうか?

 例外はあるでしょうが、どの経営者も努力はしているのだと思います。しかし、おそらく2つの問題があります。1つは、「企業の目的」が曖昧になり、かつ戦略立案をアウトソースしていること。シャープが2期連続赤字になってから、5社ものコンサルティング会社を入れていたことは有名です。

 そして、より深刻な問題は「自分は精いっぱいやっているんだ」と低いレベルで満足していることです。結果として、あとは専門家や現場に任せればよいと決めつけ、うまくいかないと他人のせいにする。プロ野球オリックスの宮内義彦オーナーが「キャンプは順調です」と聞いて、「去年最下位だったチームが順調というのは、今年もまた最下位ということだ」と指摘したそうですが、まさにそういうことです。

 「運が良い」と言われる人、企業は、その運を生かす努力をしています。しかし、その努力は多くの場合見えない。成功者は「当たり前のことをやっただけ」というのですが、失敗し続けている経営者はそこで指摘される「当たり前」のレベルが自分と違うことがわからないのです。

 「努力」、あまりにもありきたりでしょうか? 「日本のビジネスマンの多くはいま、熱くなることを忘れている。『論理性』と『熱き心』の結合、それがいま日本のビジネスマンに最も求められていることではないか」というエンディングメッセージは、まさにそうした「青臭い原理原則」の重要性を問うているのではないかと思うのです。

=おわり



元FBI副次官「大統領弾劾難しく」 捜査に3〜6カ月 2017/5/20 本日の日本経済新聞より

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 トランプ米政権とロシアの不透明な関係を巡る疑惑「ロシアゲート」について、米連邦捜査局(FBI)のハリー・ブランドン元副次官に聞いた。

ブランドン氏

 ――司法省が特別検察官を設置しました。

 「的確な判断だ。任命されたモラー元FBI長官は誠実で、関係者の評価も高い。外部からの圧力に屈する人物ではない。捜査は3~6カ月はかかるのではないか」

 ――ニクソン元大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件に似ているといわれます。

 「その比較は時期尚早だ。トランプ大統領が多くの疑問を投げかけたのは確かだ。公正な捜査を続け、国民が納得する結論を示す必要がある」

 ――トランプ氏の弾劾もあり得ますか。

 「情報の多くはメディア報道で、完全なストーリーとは言い難い。捜査次第だが、現時点で弾劾手続きに進める根拠はないようにみえる。トランプ氏の言動が論議を呼ぼうと違法行為を立証できなければ弾劾は難しい」

 ――コミー前FBI長官が更迭されました。

 「コミー氏が忠誠を誓わず、トランプ氏はいら立っていたのだろう。大統領は長官解任の権限があるとはいえ、一線を越えてしまった。新長官に政治的な人物を指名すれば、FBIに心理的な影響を与え、国民にも疑惑の目で見られかねない」

(聞き手はワシントン支局長 小竹洋之)

 Harry Brandon FBIに20年以上在籍、テロ対策担当副次官に。1993年退官、安全保障コンサルティング会社を共同経営。74歳



迫真 文在寅の韓国(4) 「反日大統領」の虚実 2017/5/20 本日の日本経済新聞より

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 「安倍に“直球”!」「出発点から正面衝突」。韓国大統領、文在寅(ムン・ジェイン、64)の日本との「初仕事」を韓国メディアはおおむね評価した。就任の翌11日、首相、安倍晋三(62)との電話協議で、文は従軍慰安婦問題の日韓合意を「韓国国民の大多数が情緒的に受け入れられない」と言い切った。

文氏は昨年7月、島根県の竹島を訪れた=聯合・共同

 日本側に映った姿は「反日大統領」では必ずしもない。関係者によると、冒頭、文は安倍とは小泉純一郎、盧武鉉両政権で官房長官と秘書室長の間柄だったと切りだし「またお話しできてうれしい」と語りかけた。両首脳のシャトル外交の復活を提案する一方、大統領選の公約だった慰安婦合意の再交渉には触れなかった。「政治家だ。日韓どちらにも良い顔ができる」と日本政府高官をうならせた。

 小泉・盧武鉉時代は日韓当局に残る苦い記憶だ。竹島(韓国名・独島)の領有権や小泉の靖国神社参拝をめぐり「外交戦争も辞さない」と盧が過激な表現で日本を非難した当時、参謀だったのが文。シャトル外交が途切れたのもそのときだ。電話で「未来志向」の言葉を何度も使った文に日本側は関係改善の意欲を感じとった。が、文の「信念」への警戒は解いていない。

 2012年の前回大統領選時の「対日『五大懸案』解決に関する構想」がその一つ。慰安婦問題に加え、竹島問題も「日本の挑発に絶対に妥協しない」。日本統治時代の朝鮮半島出身者の徴用工問題では「日本の戦犯企業」への入札規制など次々ぶちあげた。竹島には昨年7月に上陸。「盧DNA」が文に宿る。

 革新系政権が誕生した10日、韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会(挺対協)は「日本軍性奴隷制の基本からもう一度始めよう」と慰安婦合意の破棄を求める声明を出した。前大統領、朴槿恵(パク・クネ、65)の弾劾・罷免要求デモを主導した市民団体や労働組合が文の応援団から圧力団体へと変貌する。

 折しも国連の委員会が「被害者対策が十分とはいえない」と慰安婦合意の見直しを勧告し、日韓新関係はいきなり試験台に立たされた。韓国で「反日」は結束しやすい。安倍にみせた文の配慮がいつまで続くのか。

 「ピープルパワーで生まれた政権だと強調してほしい」。16日、文はこう指示し、日米中ロの「周辺4強」に特使を送りだした。始動した文外交は「民心」の風に漂う。

(敬称略)

 峯岸博、鈴木壮太郎、山田健一が担当しました。



中国締め付け、台湾閉塞 蔡政権発足から1年 2017/5/20 本日の日本経済新聞より

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 【台北=伊原健作】台湾の民主進歩党(民進党)、蔡英文政権が20日で発足から1年を迎える。国民党前政権の8年にわたる対中傾斜から転換する独自路線を探ったが、中国の締め付けで外交活動の道は一段と狭まった。回復傾向の経済も中国依存から抜け出せない。強まる閉塞感に人々の不満がくすぶり、次の一手を打ちあぐねている。

 中国が14~15日に北京で開いた「一帯一路(海と陸の現代版シルクロード)」構想の国際会議。中国がベトナムやカンボジアと結んだ共同文書には、中国大陸と台湾が1つの国に属するという「一つの中国」原則と、「台湾独立に反対する」との文言が盛られた。

 蔡政権は「現状維持」を中台政策の基本に据え、東南アジアとの連携強化で脱・中国依存を探る。だが中国はじわじわと台湾を封じ込め、「核心的利益の台湾問題で中国大陸が妥協することはない」(淡江大学の張五岳・副教授)のが現実だ。

 中国は「一つの中国」原則に基づく「92年コンセンサス」の承認を台湾との対話の条件とし、これを拒む蔡政権への圧力は強まる一方だ。中国側の外交工作で西アフリカのサントメ・プリンシペが台湾と断交し、台湾を国と認めて外交関係を結ぶ国は21カ国に減った。

 22日からの世界保健機関(WHO)総会へのオブザーバー参加も8年ぶりに途切れる公算が大きい。台北で8月に開くユニバーシアード夏季大会の団体競技にも、中国は参加しない見通し。民放TVBSが5月に実施した世論調査によると、内政の拙さもあって蔡氏の施政に対する満足度は28%。不満足との回答はその2倍の56%に達した。

 「台湾を国として正常な状態に近づける取り組みが不十分だ」。独立派の若者が結成した新政党「時代力量」の林昶佐・立法委員(国会議員)は訴える。野党・国民党や産業界が蔡政権を批判するだけでなく、蔡政権と近い独立志向の若者層や足元の民進党内にも「弱腰」との不満がたまる。

 対米接近で中国からの圧力をかわそうとするものの、大国外交のあおりで思惑通りに進まない。

 「すでに武器購入に向けた米国との意思疎通は始まっており、北朝鮮問題発生後も停滞はない」。米台関係筋は明かす。対中強硬論が強い米共和党政権との間では、最新鋭のステルス戦闘機「F35」や潜水艦技術の供与といった踏み込んだ協力が可能ではないかとの期待が台湾側には強い。

 だが当初は親台湾姿勢が目立ったトランプ大統領も、北朝鮮問題での協力を得ようと、対中融和に傾く。トランプ政権が台湾を対中交渉のカードに使うのではないか。そんな疑念も消えない。



このNEWS 中国で「一帯一路」国際会議 習氏の面目潰した 金正恩氏 2017/5/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「このNEWS 中国で「一帯一路」国際会議 習氏の面目潰した金正恩氏 」です。





 新中国の建国以来、最大の国際会議――。14~15日、北京で開いた海と陸の現代版シルクロード「一帯一路」構想を巡る会議の宣伝で中国政府が使った決まり文句だ。開幕式、会議、晩さん会、閉幕式と主役はすべて習近平国家主席だった。

一帯一路を巡る初の国際会議は北朝鮮の挑発に振り回された(15日、習主席(右)とプーチン大統領)=AP

 29カ国首脳が集う国際会議というよりも習氏のワンマンショー。ナンバー2の李克強首相の姿はなく、目立つのは新任の習氏側近らである。「核心」の地位を得た習氏が、カリスマ毛沢東もできなかった国際会議で威信を示す。今年後半、共産党大会での5年に一度の最高指導部人事を控え、重要な政治行事だった。

 ところが重大会議の直前、北京に衝撃が走った。北朝鮮が新型と見られる弾道ミサイルを発射したのだ。

 習氏は北朝鮮の金正恩委員長に最大の配慮を示し、閣僚代表団を北京に招いていた。晴れ舞台を核実験やミサイルで邪魔させない保険でもあったが、金委員長は意に介さなかった。北朝鮮代表団のトップ、金英才対外経済相は開幕前に控室で韓国代表団の朴炳錫議員と懇談した際、「(前日の平壌出発まで)ミサイルの話は知らなかった」と語った。

 会議は冒頭から予定が狂った。午前9時のはずだった開会は15分ほど遅れた。原因はプーチン・ロシア大統領の遅刻だ。専用機は8時ごろ北京に着いたが、ドアは半開きになったままで降りてこない。白シャツ姿のプーチン氏が無表情で大量の資料を受け取り、車で空港を出たのは30分後。開幕が迫っていた。

 北朝鮮はプーチン氏がシベリア上空にいたころにミサイルを撃った。ウラジオストク近くの日本海に落下したのは23分後。着陸したプーチン氏は機内でミサイルの分析報告を受けたとみられる。数時間後には、北朝鮮を巡る習氏との会談が控えていた。

 中国の「一帯一路」構想にはもともと、米主導の国際秩序を崩す思惑があった。だが4月に米フロリダ州で習氏と会談したトランプ米大統領は、中国が北朝鮮に真剣に圧力をかける約束と引き換えに経済面での対中強硬姿勢を緩めた。しかも北京会議への米代表団派遣まで決断した。トップは国家安全保障会議(NSC)のポッティンジャー・アジア上級部長だ。習氏は面目を保った。

 北朝鮮はそんな習氏が米国に歩み寄るのをけん制する意味も込め、あえて北京会議に合わせてミサイルを撃った。核放棄しないという金委員長の意思表示だった。

 中国国内では今回のミサイル発射は一般に報じられなかった。国営新華社が早朝に英文だけで速報し、中国ネット媒体も中国語で転載したものの、ほぼ1時間後には当局指示で全て削除された。習氏が顔に泥を塗られた事実は隠された。

 そんな中、日中関係には変化の兆しが見えた。16日、習氏は会議に参加した日本代表団の二階俊博・自民党幹事長と17分間会談し、自身の訪日を含む「ハイレベルの往来」に触れた。中国国営テレビも二階氏のインタビューを繰り返し放送した。

 訪中の主役は政府・与党ナンバー2の二階氏だが、キーマンがもう一人いた。習氏との会談に同席した安倍晋三首相の政務秘書官、今井尚哉氏だ。今井氏は北京で秘密裏に中国外交トップの楊潔?国務委員と会い、その後、楊氏の早期来日が固まった。7月、ドイツで開く20カ国・地域(G20)首脳会談での日中首脳会談や、李克強首相が来日する日中韓首脳会談の調整が始まった。

 米中関係の緩和を受けた中国の自信が対日関係への突然の前向き姿勢につながっている。だが前回の共産党大会があった2012年、夏から沖縄県の尖閣諸島を巡り日中関係が暗転し、激烈な反日デモが起きた記憶は新しい。油断は禁物である。

(北京にて、編集委員 中沢克二)



サイバー攻防最前線(下)世界60ヵ国に専門部隊「安い兵器」全面禁止難 しく企業は自衛力強化を 2017/5/19 本日の日本経済新聞より

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 12日から世界を襲った大規模サイバー攻撃。自社の基本ソフト(OS)の欠陥を突かれた米マイクロソフト(MS)の幹部は「政府による攻撃を禁じる国際条約が必要だ」と訴える。だが通常兵器と比べてサイバー攻撃のコストは安く、専門部隊を運用する国は北朝鮮を含め60カ国に上る。全面禁止への道は険しい。企業は自衛力の強化が必須になりそうだ。

ディープインスティンクトのカスピCEOは「国家機関のウイルス作製能力は極めて高い」と語る

 米セキュリティー企業ファイア・アイ・アジア太平洋地域担当のブライス・ボーランド最高技術責任者は「サイバー部隊を運用する国家は現在、北朝鮮のみならず、米国、ロシア、中国、イスラエルなど世界60カ国に上る」と指摘する。

 主な活動内容はサイバー防御や諜報(ちょうほう)、インフラの破壊だ。北朝鮮では外貨獲得も重要な使命になる。サイバーディフェンス研究所の名和利男上級分析官は「国家が運用するサイバー部隊の攻撃能力は一般的な犯罪組織などと比べものにならないぐらい高い」と指摘する。

 イスラエル政府のサイバー部隊出身で、現在は情報セキュリティー会社ディープインスティンクト(テルアビブ)の最高経営責任者(CEO)を務めるガイ・カスピ氏は「ゼロから新種のウイルスを作れるのは、豊富な人材と資金を持つ国家機関しかない」と断言する。未知の攻撃ソフトは検知が極めて難しく、感染力が強い。

 「ボールト7」「ダブルパルサー」など国家が開発・使用したとみられる強力な攻撃ソフトはネット上に残り、最終的に犯罪集団などの手に渡る。これまで何度もこれらのソフトが企業への攻撃に使われている。

 今回の大規模サイバー攻撃でも米国家安全保障局(NSA)が開発したとされる攻撃ソフト「エターナルブルー」の技術が使われ、爆発的な感染につながった。ソフトの欠陥を突かれたMSのブラッド・スミス最高法務責任者は各国政府によるサイバー攻撃を禁じる「デジタル版ジュネーブ条約」が必要と訴える。

 しかしサイバー攻撃を手がけるイスラエル軍8200部隊の元大尉で現在、投資会社グリロット(ヘルズリヤ)を経営するコビー・サムボルスキー氏は「国家によるサイバー攻撃は今後もなくならない。兵士を犠牲にすることなく、通常兵器よりもはるかに安上がりというメリットはあまりに大きい」と指摘する。企業や個人は今後も国家が開発した強力な攻撃ソフトの脅威にさらされ続けることになる。

 防御技術も日進月歩だ。人工知能(AI)を使って未知のウイルスを検知する技術や、OSに対する指示を監視し攻撃を察知する技術など、新しい手法の実用化が進んでいる。

 企業は強力な攻撃に対抗するためにも、最新の防御技術に常に目を光らせて、適切に導入できるような体制を整備する必要がある。



宅配クライシス 物流企業の7割「値上げ」 本社調査待遇 改善へヤマトに追随 2017/5/19 本日の日本経済新聞より

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 日本経済新聞は人手不足への対応などを聞くために物流企業と個人向け通信販売を手がける荷主企業にアンケート調査を実施した。回答した物流企業の7割が運賃引き上げの意向を持つことが分かった。値上げで得る資金は主に従業員の待遇改善や採用拡大に充てる。荷主は回答企業の6割が交渉のテーブルに着く考えだ。値上げが浸透すれば一時的に消費者の負担が高まるが、待遇が改善すれば消費も回復し、脱デフレに弾みがつく可能性もある。

 アンケートは4月下旬に調査票を送付して実施。物流企業は52社中、日本郵便や西濃運輸など27社(回答率52%)、荷主は62社中、ニッセンホールディングスやユニクロなど22社(同35%)が回答した。

 物流企業に対し、大口顧客向け運賃について聞いたところ、今年1月以降に値上げを「実施した」との回答は12%。「実施予定」(20%)、「検討中」(36%)を合わせて値上げを目指す物流企業は68%に上った。平均値上げ率は「約1割」が55%と最多で「1割未満」(36%)と合わせると9割を超える。遠州トラックは「ここ数年、運賃を変更してない荷主には5%前後の値上げを9月までに目指す」とする。

 ヤマトホールディングス(HD)傘下のヤマト運輸は消費増税時を除き27年ぶりに10月1日から基本運賃を引き上げるが追随する動きが相次ぐ見通しだ。基本運賃の値上げを今年1月以降に「実施した」という回答は8%だが「実施予定」(15%)と「検討中」(27%)を合わせると50%に達する。平均値上げ率は全社が約1割までだった。

 値上げで得た資金の使い道(複数回答)は「従業員の待遇改善」が最多でフルフィルメント・ホールディングス(東京・千代田)など63%に上った。「人材採用の拡大」(59%)、「コスト増の補填」(41%)が続く。

 ヤマトHDは2017年度中に約160億円を投じ、グループ全体の従業員数を前年度比9200人(5%)増やす方針。正社員と契約社員が4200人に上り、約半数を占める。大和総研の小林俊介エコノミストは「人手不足によるパートタイマーの正社員化と生産性向上が進めば、賃金が増え、消費が活性化し、景気が上向く好循環のシナリオに一歩近づく」と指摘する。

 物流企業との運賃見直し交渉について「交渉を終了した」と答えた荷主企業は5%。「交渉中」(21%)、「今後、交渉する予定」(32%)を合わせると58%に上る。

 交渉を終えていない企業が容認する値上げ率は「1割未満」「約1割」がそれぞれ23%、「約2割」が15%。値上げを「拒否する」とした回答も38%に上り、実際の交渉は曲折もありそうだ。



経営書を読む 「戦略プロフェッショナル」(3)ビッグデータを 役立てる意味見いだし社内に発信 2017/5/13 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の企業面にある「経営書を読む 「戦略プロフェッショナル」(3)ビッグデータを役立てる意味見いだし社内に発信」です。





 三枝氏は「戦略の要諦は絞りと集中である」と指摘しており、そのためのセグメンテーション(ターゲット顧客の選定)が本書の重大なテーマです。当然、顧客データがなくてはならないのですが、実はそうしたデータはあったのです。あっても使われていなかったのです。

 「その気になってみれば、情報は目の前にたくさんあるのさ。それに意味をつけて社内に発信してくれるやつがいるかどうか」が違うのです。

 本書は、そうした情報への感度と目線が内向きか外向きかで「ルート1企業」「ルート3企業」という区分をしています。前者は「競合相手の動向がいつも話題になって、ピリピリしている」。これに対し後者は「社内の人間に向けられた不満でいつもジメジメしている」ので、結果として「磨けば光るダイヤモンドのような情報が社員や経営幹部のファイルに入り込んだまま出てこない」「やたらと情報を集めるのが好きなのに、それを個人的に退蔵して知らん顔をしている変な中堅社員がいる」ような状態です。

 しかし、ルート3企業はそういう状況になっているのもわからない。はた目に泥酔は明らかなのに、ベロベロに酔っている脳が自分は大丈夫だと思っている「酔っ払いのジレンマ」状態です。

 そしてさらに重要なのが「業績の悪い企業は内部が不安定だと思われがちだが、むしろ逆のことが多い。低いレベルで社内が妙に落ち着いてしまう」という指摘です。

 その意味で、「意識を変える」というのは企業変革の中心であると同時に最も難しいポイントです。「企業改革は意識改革から」とおっしゃる方が時々いらっしゃいますが、これはウソです。意識改革ができれば、企業改革はほぼ終わったようなものだからです。そうした一見もっともな言葉を真に受けて失敗する事例は枚挙にいとまがありません。

 ビッグデータは大切です。そして、もっと大切なのはそれを分析・役立てる視点、意識です。