真相深層 アマゾン、新陳代謝促す 高級スーパーのホール フーズ買収 貪欲さ、産業の垣根越える 2017/6/30 本日の日本経 済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 アマゾン、新陳代謝促す 高級スーパーのホールフーズ買収 貪欲さ、産業の垣根越える」です。





 米アマゾン・ドット・コムが高級スーパーのホールフーズ・マーケットを傘下に収める。1.5兆円を投じる買収劇はネット上の仮想店舗でモノを売る小売業が実店舗に進出する象徴的な出来事だ。米国では自動車や医療など各種産業で「ネット」と「リアル」の融合が進む。だが流れはそこで終わらない。起きているのは産業の垣根を越えた企業の新陳代謝だ。

生鮮品に本腰

 「アマゾンエフェクト(効果)もここまで来たか」。買収発表があった16日、シリコンバレーで働くゲーム大手の首脳は部下とそんな会話を交わした。アマゾンがあらゆる企業・産業をのみ込むことを意味する「アマゾン効果」は今や米メディアの流行語。米国でこの話題に関心のない大企業の経営者はまずいない。

 アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)はホールフーズ買収の狙いについて、沈黙を守っている。だが店舗を生かしてアマゾン流のビジネスを拡大するとの予想が主流だ。

 ホールフーズは高額所得者層の住む地域に店舗を構えている。アマゾンはこれを鮮度管理機能のある「倉庫」としても活用し、生鮮品のネット宅配を本格化させるとみられている。センサーやネット上の課金システムを駆使したレジ決済不要の仕組みもホールフーズに導入する可能性がある。

 かつて、アマゾンと同じように周辺経済への甚大な「効果」を指摘されたのが世界最大の小売業、米ウォルマート・ストアーズだ。1962年に1号店を出した同社は、集中購買と効率物流を背景に薄利多売型の大型店舗を郊外に大量に出店し急成長をとげた。個人商店を次々と駆逐し、衣料品や雑貨など安価な製品を中国から大量輸入。米国の消費風景を変えた。

 全米に4600超の店舗を持ち米国最大の民間雇用者にまで成長したウォルマートだが、ネット販売への対応は遅れた。

 米国では現在、モノの1割弱がネットで買われており、特にスマートフォンを使いこなす若者層はネットへの依存度が高い。2016年のウォルマートの北米売上高の伸び率が前年比で2.7%だったのに対してアマゾンの小売部門は24.6%増。同社もまたアマゾン効果の犠牲者だ。

 だが、アマゾン効果を小売業だけの変革だと考えると本質を見誤る。

 変化を読み解く鍵のひとつがネットやクラウド、そして人工知能(AI)の急速な普及だ。企業は大規模なデータセンターや保全要員を自前で持つ必要がなくなり、単純な業務はロボットがこなすようになってきた。アマゾンのクラウドサービス「AWS」は売上高全体の10%程度を占める稼ぎ頭のひとつだ。

70近い新規事業

 データ分析の精度が高まったことも大きい。アマゾンは顧客の購買データを詳細に分析し消費者を囲い込んだ。グーグルも300万マイル(482万キロメートル)を超える車の公道走行データを生かし、既存自動車メーカーの先をいく自動運転ソフトの開発につなげた。

 産業のソフト化だけでは企業は成長しない。ベイン・アンド・カンパニーのパートナー、ダレル・リグビー氏は「アマゾンの強さはネット販売ではなくイノベーションにある」と指摘する。同氏の調べではアマゾンは17年までの22年間に70近い新規事業を始めている。うち18は失敗し撤退しているが、この例にみられる貪欲な開拓欲が結果的にアマゾンを今の地位に押し上げたと見る。

 この姿勢は競争力のあるIT(情報技術)企業に共通している。過去10年の世界の有力企業の研究開発費を比べると06年は上位5社のうち4社が自動車メーカー。一方で16年はアマゾン、グーグルの持ち株会社アルファベット、インテルの3社が上位5社に名を連ねた。3社ともに06年に首位だったフォード・モーターの80億ドルを大きく上回る投資額だ。

 ベゾスCEOは創業精神の衰えを「死を伴う停滞」と表現する。業態論を超えた鬼気迫る成長への覚悟が産業地図を塗り替える。ホールフーズの買収は日本企業にとっても対岸の火事ではないはずだ。

(シリコンバレー=中西豊紀)



ゆがむ地方財政(上) 税収「偏在」自治体の不信配分巡り奪い合 い 2017/6/28 本日の日本経済新聞より

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 地方自治体の財政を巡り、国と地方が相互に不信を募らせている。自治体に税収を配る仕組みが不透明だと地方から不満が出ている上に、国が自治体に対して「お金をため込んでいる」と批判し始めたためだ。返礼品で寄付を集める「ふるさと納税」は、自治体が税収を奪い合うという不毛な現実に直面する。地方財政の望ましい姿を考え直すべき時期にきている。

外国人消費も自治体には悩みの種(高島屋新宿店)

ネット化も一因

 「ネット時代になり、どこで消費しているかが非常にあいまいだ」。総務省の「地方消費税に関する検討会」で、論争が繰り広げられている。

 消費税は国が徴収し、税率8%のうち1.7%分を自治体の財源に回す。「消費地に帰属する」という原則のもと、商業統計や人口などのデータをもとに都道府県ごとの配分額を割り出す。ネット通販の普及が、この方式に疑問を投げかけた。

 統計上の売上高は通販会社の本社がある場所に計上され、統計に基づくとネット通販の有力事業者がいる自治体に税収が集まってしまう。総務省が今年度から配分の判断材料からカタログ通販やネット販売を外す措置をとり、「やはりおかしいのでは」との疑いが解けない。

 急増する訪日外国人も問題を複雑にする。土産物などの免税品は消費税がかからない。だが商業統計上は免税品の売り上げが加味され、販売額が多い都市部に消費税が手厚く回る。

寄付でズレ加速

 「買い物は県内で!」。奈良県のゆるキャラ「せんとくん」は街頭で訴える。奈良県は大阪府や京都府で家電や衣料品を買う「越県消費」で、すべて人口で配分した場合に比べて70億円近い税収が奪われているとする。地方ほど、住民のお金を都市に吸い上げられているかの感覚は強い。

 三重県四日市市は4月、ふるさと納税に関する非常事態宣言を出した。同市は寄付が少なく、他の自治体に寄付した住民の減税で約1億3千万円の「持ち出し」。地元の高校生などが利用する四日市あすなろう鉄道の年間運行費にあたる額を逃した。しかし、対策本部で練る案は「返礼メニューの拡充」。結局は返礼品競争に終始する。

 ふるさと納税には税収の偏在を是正する狙いもある。しかし、過剰な返礼品をもとに寄付金を集めるのは、結局は自治体同士で税収を奪い合っているにすぎない。過剰な是正は大都市の不満も生む。

 政府は消費税の10%への引き上げ時に、法人住民税を再配分して自治体間の格差を是正する制度の導入を決めた。だが、関西学院大学の小西砂千夫教授は「もう一段の偏在是正については十分に議論がされていない」と指摘する。不毛な税収の奪い合いをする前に、奪い合いが正しいかどうかの議論がいる。

(逸見純也)



砂上の安心網 不作為の果てに(2) 年金信頼回復の代償 免除多用で制度空洞化 2017/6/27 本日の日本経済新聞より

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 年金は政治の世界で「鬼門」ともいわれる。過去には年金不信の高まりで体力をすり減らした政権もあった。旧社会保険庁を解体して7年前に発足した日本年金機構。信頼を取り戻す「改革」を進めているというが、果たして本物なのか。

■納付率はアップ

年金機構は信頼回復のため納付率アップを目指すが…(東京都新宿区)

 取材班は機構を所管する厚生労働省を訪ねた。幹部が「信頼回復の証し」と胸を張った数字がある。

 63.4%。これは2015年度の国民年金の納付率だ。過去最低だった11年度の58.6%と比べると数字は「回復」している。しかし、ある政府関係者は気になることを言っていた。「まるで免除推進機構だ」。厚労省や機構がいう信頼回復にはやはり裏があった。

 国民年金の加入者は16年3月末時点で1668万人。このうち低所得を理由に保険料の支払いを免除された人の割合は34.5%を占める。5年間で6ポイント上昇し過去最高だ。納付率は免除者を分母から除くため、未納者が免除者に変われば数値は自然と上がる。

 免除者はたとえ保険料を40年間支払わなくても年39万円の年金がもらえる。機構の水島藤一郎理事長は取材班に対し、「(将来の)生活保護が減額できる」と、免除の意義を語った。

 やむなく保険料を払えない人を救う手段として免除制度が必要なことは理解できる。だが機構という組織を防衛するために使われているとすれば、評価は違ったものになる。

 ある年金事務所の職員が重い口を開いた。「数年前から免除者の獲得が明確な評価基準になっている」。機構は否定するが、必要のない人にも免除を勧めているのではないか。

■統一されぬ基準

 厚労省の02年の調査では所得がなくても42.5%の人が保険料を納めていた。ところが14年の調査ではこの割合が22.7%に低下。所得が少なくても資産を取り崩すなどしてやり繰りしていた人たちが払わない選択をした可能性が浮かぶ。

 免除者を含めた被保険者全体でみると、実際に納付された割合は15年度に40.7%と5年前より1.4ポイント低下。「信頼回復」の裏側で制度の空洞化が進む。機構の改革に企業も戸惑う。

 昨年10月、西日本の流通大手の総務担当者はぼうぜん自失となった。管轄の年金事務所がそれまで認めていた保険料の算出基準を突然変更したのだ。理由は東京の機構本部が拒んだから。過去に納付した分を修正し、約1.4億円の追徴納付を迫られた。

 各種の手当を報酬と賞与のどちらに算定するかで企業が負担する保険料は変わる。算定基準が地域で異なったため、機構は今年から全国統一のマニュアル作りを進めている。だが、いまだに算定基準の明文化された統一ルールが作れず、企業は翻弄される。

 「『生まれ変わった』と胸は張れない」。機構のある職員の言葉は、「100年安心」といわれる年金制度の担い手たちのいまだ安心できない実像を映し出す。



砂上の安心網不作為の果てに(1) 既得権サークルの聖域 カネと票、厚労族走らす 2017/6/26 本日の日本経済新聞より

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 社会保障制度の改革が進まない。社会保障にかける国のお金が膨らむと、新たな票も生み、政治家、官僚、業界の既得権サークルは力を蓄える。ツケを生活者に押しつけてきた改革の不作為を追う。

 7日の参院本会議。遺伝子検査をする病院や検査所に一定数の臨床検査技師の配置を事実上義務づける改正医療法が成立すると、笑みを浮かべる議員がいた。日本臨床衛生検査技師会会長を兼ねる宮島喜文氏だ。

■強固なパイプ

 同法は血液や遺伝子を検査する臨床検査技師の職域を広げるもの。宮島氏が事務局長の自民党議員連盟が成立を主導した。業界の利益拡大が狙いではないか。取材班の問いに「検査の質を高めるためだ」と話した。日本臨床衛生検査技師会は2010年の参院選で自民党から独自候補が初当選。13年は落ちたが、16年に出馬した宮島氏は3年前の7倍の得票で当選した。

 日本医師会など直近2回の参院選比例代表で自民党から出た社保系8団体。参院選で集めた「社会保障票」は01年の約66万票から16年は約92万票に増えた。

 社会保障関係費(当初予算ベース)は01年度の約17兆5千億円から16年度に約31兆9千億円に膨張した。新たな票につながり、厚労族を走らす。

 政府が9日に決めた経済財政運営の基本方針(骨太の方針)。原則自己負担や後発薬価格までの引き下げを含めて検討し、本年末までに結論を得る――。特許切れの新薬と後発薬の価格差を巡り、素案の段階で入っていた記述が抜け落ちた。

 「ここまで踏み込む必要があるのか」。3日前の自民党の政調全体会議。薬剤師出身の渡嘉敷奈緒美・厚生労働部会長が異を唱えると拍手が起こった。

 生活者にとって薬は安い方がよいはず。渡嘉敷氏にぶつけると「業界を発展させ安定した医療を受けられる環境づくりも重要だ」。薬の開発にお金がかかるのは理解できるが、厳しい財政状況の中で、効率よくできる部分はないものか。

 医師会の政治力も健在だ。骨太の素案に盛りこまれた医師の業務を看護師に移す「タスク・シフティング」の推進。地域ごとの医師不足に対応するためだが「十分議論を行った上で」との一文が加わった。

■「安さより命」

 動いたのは元医師会副会長の羽生田俊・参院厚生労働委員長。看護師の力を借りた方が効率的な医療になるとの取材班の疑問に「医療行為は命にかかわる。安く済むという発想はなじまない」との答えが返ってきた。ここでも財政事情より「命」という命題に突き当たるが、看護師ができる部分はないか議論は必要だ。

 菅義偉官房長官は周囲に「社保改革を数年かけて全力でやる」と語るが、既得権サークルの壁は厚い。聖域を崩せるのは、長期政権をうかがえる政治資産を持つ安倍晋三首相しかいない。



富士フイルム・ゼロックス 17年目の親子接近 管理部門統合 日本流グループ統治、岐路 2017/6/25 本日の日本経済新聞より

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 富士フイルムホールディングス(HD)が子会社の富士ゼロックスと年内にも管理部門を統合する。グループの成長を引っ張ってきた富士ゼロックスは独立心が強いことで知られるが、同社の会計不祥事を受け、富士フイルムHDは経営を任せてきた方針を転換する。人事権を含めて経営を掌握して名実ともに傘下に入れる方針。成長を目指してM&A(合併・買収)で手に入れた子会社の統治が、日本企業の盛衰に直結する経営課題に浮上している。

 管理部門の統合は6年間で375億円の損失を出した会計処理を受け、12日に発表したガバナンス(統治)見直しの一環だ。経理や人事、広報などが候補で、年内にも一体的な運営を始める。部門の重複を減らして効率を高め、ガバナンスも強化する。近くプロジェクトチームを設け、具体的な手法を詰める。

 とりわけ人事部門の意味合いは大きい。2001年に連結子会社にして以来、足かけ17年にわたり主要人事の大半を富士ゼロックス側に任せ、親会社として追認するにとどめてきた。今後は富士フイルム側が社長を含む人事や主要な経営方針に強く影響を及ぼす。経理も所管しM&Aを含めたお金の流れを把握する。

収益の多く生む

 新体制では富士ゼロックスの栗原博社長を除く6人の役員が一斉に退任。富士フイルムHDは古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)が富士ゼロックス会長を兼務するなど計7人の役員を派遣した。財務や技術といった主要ポストに富士フイルム側の人材が就き、栗原氏は営業を主に担う体制に改めた。

 12日、富士フイルムHD本社。取締役会を終えた古森氏は富士ゼロックス会長を務めた山本忠人氏に会い、「辞めてもらえないか」と切り出した。栗原氏を除く総退陣という大なたを振るう形で、古森氏は聖域に切り込んだ。

 これまで経営に細かく口を挟まなかったのは、富士ゼロックスが富士フイルムHDの収益の多くを生み出してきたからだ。経営の柱だった写真フィルムは00年代、デジタルカメラの台頭で市場が急速に収縮していた。液晶パネル用部材、医薬品、化粧品――。富士ゼロックスが業績を支える間に富士フイルムは業態転換を進めて安定収益の礎を築いた。今も連結の売上高の半分近く、営業利益の4割を富士ゼロックスが稼ぐ。

 だが、両社の関係はこのころからよそよそしかった。もともとは折半出資だった米ゼロックス側の経営不振に伴い01年に富士フイルム側が25%分の株式を買い取った。富士ゼロックスは米ゼロックスを親会社と思う風潮が強く、富士フイルムによる連結子会社化に戸惑いを隠せなかった。

 両社の関係に緊張が走ったのは00年代半ばだ。古森氏が富士ゼロックスの社外の取締役として率直に意見を言い始めた。市場環境や販売の見通しといった当然の質問だが口調は厳しい。富士ゼロックスの故小林陽太郎氏は「古森さんが遠慮無く、優れた質問をする。いい意味での厳しさが増している」と評していた。

 両社が表立ってトラブルを起こすようなことはない。しかし、下町の印刷所に印刷材料を売り歩いて出世の階段を上った古森氏と、国際派の小林氏らは大きく境遇が異なると周囲に見られた。古森氏はこのころ「両社の関係が前向きでないなら、そうしてみせる」と微妙な間柄を示唆するような発言をしていた。

 富士フイルムHDの助野健児社長が12日の記者会見で言った「遠慮があった」という表現は、両社の積年の関係を映す。打ち解けない親子関係は、富士ゼロックス幹部が会計を操作する遠因にもなった。好業績こそが独立性を保てる最大の理由だということを、富士ゼロックス幹部は分かっていた。

東芝も危機招く

 国内市場の伸び悩みを受け、日本企業はM&Aに活路を見いだしている。米ゼロックスの苦境を救う意味があったとはいえ、富士フイルムも富士ゼロックスの連結子会社化により、成長の足がかりをつかみたかった。

 M&Aで子会社が増えれば、それをどう管理するかという問題に直面する。とりわけ海外は目が行き届きにくい。東芝の経営危機は子会社だった米社のずさんなコスト管理が招いた。ソニーは米映画事業で1千億円以上の損失を出した。富士ゼロックスの不祥事も豪州とニュージーランドの事業で起きている。

 欧米の大手企業はCEOが強い権限を持ち、グループ企業の意思決定もトップに一元化している。日本企業はそれが曖昧だった面は否めない。成長に向けてM&Aが欠かせない手段となった今こそ、グループ統治の基盤強化が求められている。

(山端宏実)



アマゾン、革新の戦略 宅配危機、発明で乗り切る上級副社長 ラッセル・グランディネティ氏 2017/6/24 本日の日本経済新聞より

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 人工知能(AI)の開発からリアル店舗の運営まで米アマゾン・ドット・コムが攻勢を強めている。大企業病に陥らず、革新的な試みを続けられるのか。重要な日本市場での戦略は。アジアや欧州などの小売事業、世界シェア3割強を握るクラウドサービス「AWS」などの技術開発をそれぞれ統括する幹部に聞いた。

 ――顧客密着の経営にこだわっています。

 「顧客は決して満足しない。発明のフロンティアを追求し続ける必要がある。より安く、品ぞろえが豊富で、便利なものへの顧客の要求は不変だ。顧客に密着すれば、長期的な視野をもてる」

 ――理想の社風は。

 「失敗を許容する企業文化なしに、商機は生かせない。いいアイデアなら誰でも発言できる民主的な議論も大切だ。トップダウンだけでは健全さが失われる」

 ――日本では荷物急増と人手不足で宅配サービスに支障が出ています。

 「既存業者でも新規参入者でも、パートナーと協力し、優れたサービスをつくる。方法は見つかる。将来はドローン(小型無人機)や自動運転車が使われるだろうが、配送網や労働力の再配置といった短期の対策でも効率を高められるはずだ」

 ――宅配会社が値上げを求めています。

 「どんなサービスも継続可能な料金設定でないといけない。ただ、輸送は石油のように限りある資源とは違う。顧客ニーズがある限り、競争や発明によって料金やコストの解決策を導き出せる」

 ――通販の契約で納入業者に最安値を保証させる条項を日本で廃止しました。なぜですか。

 「欧州でも電子書籍に関する契約条項を自発的に見直した。規制当局の懸念に応えつついかに事業で勝つか。常に適切なバランスを探っている」

 Russell Grandinetti 証券アナリストなどを経て98年入社。電子書籍の部門などで幹部を歴任した。46歳

大企業病分散・自律で防ぐ最高技術責任者ワーナー・ボーガス氏

 ――AWS事業が堅調な理由は何ですか。

 「昨年、1千超の新機能を追加した。9割は顧客の要望だ。我々はデータセンターを自ら改良し、かつてない大規模なものを築いている。90種類ものサービスがある」

 ――巨大化しても機動力を保てますか。

 「イノベーションが止まればアマゾンもつぶれる。AWSはサービスごと90のベンチャー企業の集まりといえる。それぞれが開発計画を持ち、独立運営する。分散と自律が素早く動く秘訣だ」

 ――音声操作のAI搭載の家電が好調です。

 「端末自体の能力は限定的だが、クラウド上の知能と連携し、さまざまなサービスが成り立つ。自動車メーカーなどが自社製品に組み込むこともできる。音声サービスの事業機会は大きく、クラウドと相乗効果がある」

 ――あらゆる産業でIT(情報技術)戦略が問われています。

 「思いがけない領域からもライバルは現れる。製品・サービス開発のため実験的な試みをしたいという企業は多い。(柔軟にITを調達できる)AWSを通じ、経営のデジタル化を促していく」

 ――日本企業の今後をどう見ますか。

 「製造業の歴史があり、あらゆるモノがネットにつながるIoTが重要な役割を担う。工場の自動化やサプライチェーン管理は、新たなデータの流れを生む。革新的なIoT活用が可能だろう」

Werner Vogels 米コーネル大学の主任研究員を経て入社。専門は企業向けシステム。05年から現職。58歳



台湾行政院長、中国との対話路線維持 2017/6/24 本日の日本経済 新聞より

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 台湾の林全・行政院長(首相)は23日の日本経済新聞とのインタビューで、中国による外交圧力を警戒しつつ、摩擦を避けて対話を探る対中政策は「変わることはない」と、穏健路線の維持を明言した。米を除く11カ国での環太平洋経済連携協定(TPP)発効を日本が主導することを歓迎した。13日のパナマとの断交後、台湾首脳がインタビューに応じるのは初めて。

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 ――台湾を国と認めて外交承認するのは20カ国に減りました。バチカンや中米ニカラグアとの関係にも懸念があります。

 「どの友好国も対岸(中国)の次の目標になる可能性を排除できない。我々は一貫して良好な関係の維持を望んでおり、臆測には答えられない。対岸はパナマと台湾の外交関係に、強大な経済力を背景にした影響力を行使した。同じやり方が続くなら、他の友好国との関係にもリスクはある」

 「もともと正式な外交関係を持つ国は少なく、我々は(非公式な形であっても)実質的な経済、外交関係をより重視している。脅威は認めざるを得ないが、台湾は圧力に屈することはない。屈服しないと(中国が)理解したときに(外交の切り崩しは)終わるだろう」

 ――蔡英文総統はパナマとの断交後の談話で「両岸(中台)情勢を再評価する」と発言。政策変更の可能性を示唆したとの見方があります。

 「我々は対岸との現状維持を望む。現状のあらゆる変化を注視するという意味であり、立場は不変だ。衝突を避ける最も良い方法と考える」

 ――米国がTPPを離脱しました。米を除く11カ国による「TPP11」をどう考えますか。

 「機会があれば参加を強く希望する。貿易は台湾が経済発展するための中核で、開放は必然だ。対岸は政治的な理由で、別の国が我々と自由貿易協定(FTA)を結ぶ際に影響力を及ぼす。日本が主導することを歓迎する。我々は加入に向けた準備を進めている。投資障壁を減らすなどの法整備を始めている」

 ――台湾の安全保障の要である米国は、北朝鮮問題での協力を期待し中国と接近しています。

 「米国との非常に良好な関係は続いており、北朝鮮問題の影響は受けていない。米国が地域の安定と同時に、対岸との関係を維持したいと考えるのは理解できる。現状維持の立場は台湾と一致している。米国は台湾への武器売却を引き続き検討しており、手続きが順調に進むと信頼している」

 ――今年、日本の対台湾窓口機関の「交流協会」が「日本台湾交流協会」に、台湾側の対日窓口機関が「亜東関係協会」から「台湾日本関係協会」に改名しました。

 「非常に意義が大きい。現在の台日関係は非常に良好で、民間交流や経済協力も密接だ。改名は双方が過去の政治的な隔たりなどを直視し、問題を解決しようとする素晴らしい動きだ」



日銀、株買い一辺倒 4社に1社で「超安定株主」に 2017/6/24 本日の日本経済新聞より

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 台湾の林全・行政院長(首相)は23日の日本経済新聞とのインタビューで、中国による外交圧力を警戒しつつ、摩擦を避けて対話を探る対中政策は「変わることはない」と、穏健路線の維持を明言した。米を除く11カ国での環太平洋経済連携協定(TPP)発効を日本が主導することを歓迎した。13日のパナマとの断交後、台湾首脳がインタビューに応じるのは初めて。

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 ――台湾を国と認めて外交承認するのは20カ国に減りました。バチカンや中米ニカラグアとの関係にも懸念があります。

 「どの友好国も対岸(中国)の次の目標になる可能性を排除できない。我々は一貫して良好な関係の維持を望んでおり、臆測には答えられない。対岸はパナマと台湾の外交関係に、強大な経済力を背景にした影響力を行使した。同じやり方が続くなら、他の友好国との関係にもリスクはある」

 「もともと正式な外交関係を持つ国は少なく、我々は(非公式な形であっても)実質的な経済、外交関係をより重視している。脅威は認めざるを得ないが、台湾は圧力に屈することはない。屈服しないと(中国が)理解したときに(外交の切り崩しは)終わるだろう」

 ――蔡英文総統はパナマとの断交後の談話で「両岸(中台)情勢を再評価する」と発言。政策変更の可能性を示唆したとの見方があります。

 「我々は対岸との現状維持を望む。現状のあらゆる変化を注視するという意味であり、立場は不変だ。衝突を避ける最も良い方法と考える」

 ――米国がTPPを離脱しました。米を除く11カ国による「TPP11」をどう考えますか。

 「機会があれば参加を強く希望する。貿易は台湾が経済発展するための中核で、開放は必然だ。対岸は政治的な理由で、別の国が我々と自由貿易協定(FTA)を結ぶ際に影響力を及ぼす。日本が主導することを歓迎する。我々は加入に向けた準備を進めている。投資障壁を減らすなどの法整備を始めている」

 ――台湾の安全保障の要である米国は、北朝鮮問題での協力を期待し中国と接近しています。

 「米国との非常に良好な関係は続いており、北朝鮮問題の影響は受けていない。米国が地域の安定と同時に、対岸との関係を維持したいと考えるのは理解できる。現状維持の立場は台湾と一致している。米国は台湾への武器売却を引き続き検討しており、手続きが順調に進むと信頼している」

 ――今年、日本の対台湾窓口機関の「交流協会」が「日本台湾交流協会」に、台湾側の対日窓口機関が「亜東関係協会」から「台湾日本関係協会」に改名しました。

 「非常に意義が大きい。現在の台日関係は非常に良好で、民間交流や経済協力も密接だ。改名は双方が過去の政治的な隔たりなどを直視し、問題を解決しようとする素晴らしい動きだ」



Disruption 断絶を超えて (下) 10兆円VS10兆円 競い合うIT経済圏 2017/6/23 本日の日本経済新聞より

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 サウジアラビアの首都リヤド。5月20日、ドナルド・トランプ米大統領(71)とサルマン・サウジ国王(81)が座る王宮の大広間に、ソフトバンクグループの孫正義社長(59)が呼び出された。

孫社長(写真右)とスティーブンソンCEO(同左、ロイター)は大型買収に挑み続ける

 サウジと発足させた10兆円ファンド。オイルマネーを介して米国のIT(情報技術)ベンチャーに投資する「政商」として、微妙な関係にある米国とサウジを取り持った。「小さな構えの安全運転じゃ、最前線から取り残される」。孫社長は巨額ファンドをソフトバンクの連結子会社に取り込み、退路を断った。

 前期、ソフトバンクは国内ではトヨタ自動車に次いで純利益で1兆円を稼ぎ出した。しかし、今や世界を支配するのは個人や企業のデータを吸い上げ、情報の流れを支配するプラットフォーマーだ。個人の商取引にとどまらず、車や金融、医療などあらゆる分野に入り込み、各業界をゆさぶる「断絶」。この数年で世界の時価総額は米アップルやグーグル、アマゾン・ドット・コムらが上位を独占した。

 孫氏は通信分野で買収を重ねIT業界の覇者を目指したが、顧客データを一手に握り様々な業界で支配力を高めるプラットフォーマーが形成する「経済圏」の伸長は無視できなくなった。スマートフォン(スマホ)用半導体設計で9割のシェアを握る英アームや米通信衛星のワンウェブ、自動運転車用半導体でトップの米エヌビディア……。相次ぐ出資で狙うのは次世代プラットフォーマーの「先買い」だ。

 サウジとの巨額ファンドには盟友の米オラクル創業者ラリー・エリソン氏(72)や同氏の自宅で知り合ったスティーブ・ジョブズ氏(故人)が創業したアップルも参加するなど、これまで培ってきた人脈も総動員する。相次ぐ巨額投資で借金は14兆円まで膨らんだが、新たな「経済圏」構築で対抗する。

 同じ通信業界に身を置くAT&Tのランドール・スティーブンソン最高経営責任者(CEO、57)は通信と放送の融合で対抗する。米衛星放送大手のディレクTVに次ぎ、10兆円をかけてニュースや映画などを手掛ける米タイムワーナーの買収を進める。

 企業買収を繰り返し米国の地方通信会社を全米トップにした「買収王」エドワード・ウィテカー氏(75)に仕え、「規模は競争力を意味する」という米通信業界の伝統を引き継いだ。タイムワーナーは3回目の大型買収への挑戦だ。

 トランプ大統領はこの買収に反対するが、「このまま死を待つわけにはいかない」と意に介さない。迫り来る第5世代通信(5G)時代のプラットフォーマーの盟主として君臨することを狙う。

 あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や人工知能(AI)の開発、それを後押しする5Gの普及で「世界で飛び交うデータ量は2020年までの10年で40倍になる」(米IDC調べ)。

 スマホ時代の勝者はアップルやグーグル、アマゾンだったが、次の10年も勝者でいられる保証はない。

 藤本秀文、工藤正晃、杉本貴司、佐竹実、川上尚志、諸富聡、稲井創一が担当しました。



私見卓見 東京発展のグランドデザインをライフネット生命保険会 長 出口治明 2017/6/22 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済教室面にある「私見卓見 東京発展のグランドデザインをライフネット生命保険会長 出口治明」です。





 「おもてなし」はいらない――。英国出身のアナリスト、デービッド・アトキンソン氏は自著「新・観光立国論」の中でこんな趣旨のことを書いた。僕はこの主張に同調している。

 インバウンド(訪日客)が盛り上がる日本ではいま、おもてなしをすることこそが日本の、そして首都東京の観光政策につながっていると言い立てられている。でも、ちょっと待ってほしい。そもそも日本には豊かなアセット(資産)がたくさんある。まずは四季。そして、おいしい食事や快適な買い物、温泉や豊かな自然もある。日本にこれ以上どんなアセットが必要だというのだろうか。

 首都がある関東平野には4千万人も集積している。僕はこれまで1200以上の都市を訪ね歩いてきたが、これだけ広大な平野に大都会を築いたケースは海外でもあまりみられない。人が集まればサービス産業もおのずと盛り上がる。東京は地形的にも恵まれている。

 にもかかわらず、東京がアジアでナンバーワンの金融・経済都市ではないということが問題だ。シンガポールは富裕層向けの住居を設けたり優秀な教育機関を誘致したりと、世界中から人を呼び込む知恵を絞り、いまの地位を築き上げた。そうした事実を真摯に受け止める必要がある。

 東京に今後どのようにして人を呼び込めばいいのか。街づくりでグランドデザインを描ける人と、リーダーシップを発揮し、実現しようとする人が必要だ。

 街づくりで優れた都市といえば主要7カ国(G7)ではまずパリだ。19世紀の大改造計画で当時の知事らが描いたグランドデザインが今も生き続けている。ルーブル宮殿からシャンゼリゼ通りにつながる街並みは不変だ。その後に大統領を務めたド・ゴールやポンピドゥー、ミッテランがこのグランドデザインを受け継ぎ、街づくりを進めた。

 こうした強い意志を持つ人物が日本にも必要だ。再開発が盛んないまが好機のはずで、この街をどう発展させたいのかといった視点が求められている。

 アセットが豊かだからこそ「入り口」でつまずいてはならない。空港を24時間利用できるようにしたり他国に比べ割高な特急料金を値下げしたりすることで訪日客はさらに増えるだろう。諸外国の都市の方が利便性で優れているのであれば、それをまねて改善すればいいだけのことだ。

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