個を活かす組織をつくる(10)「行動」ではなく「機能」統合同志社大 学教授 太田肇 2017/7/31 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済教室面にある「個を活かす組織をつくる(10)「行動」ではなく「機能」統合同志社大学教授 太田肇」です。





 本連載を締めくくるに当たり、組織と個人の関係性について説明しましょう。組織論では「分化」と「統合」を広い意味での対立概念としてとらえる伝統があります。こうした考え方をする以上、分化を進めるには限界があります。実際、経営者は社員の自律が大切だと理解していても、組織がバラバラになるのを恐れて尻込みしがちです。

 このジレンマから抜け出すカギは、機能と行動を切り離すことです。組織と個人の統合が必要なのは機能の面であり、個人の行動ではありません。一人ひとりが組織内で役割を果たし、組織に貢献している限り、行動はバラバラでもかまわないのです。そして通信技術の発達や経済のソフト化により、比較的容易に機能と行動を切り離せるようになりました。

 たとえば上司や同僚、取引先と電話やメールで連絡がとれれば自宅や外出先で仕事をしてもよいし、地球の裏側に住んでいてもよいのです。この連載で取り上げた多様な働き方、オフィス環境の見直しなども機能と行動の切り離しによって実現できるのです。経済活性化の目的から政府が推進しようとしている副業・兼業についても同じです。

 20年あまり前に筆者は全国の主要企業を対象に、統合の方法と生産性や満足度との関係を分析しました。その結果、行動を分化しながら機能として統合している「間接統合」企業の方が、分化せずに統合している「直接統合」企業より、業績も社員の満足度も高いことが判明しました(表)。当時に比べると情報通信技術は格段に進歩しており、行動と機能の切り離しははるかに容易になっています。個人を活(い)かすことが組織の利益にもつながる時代になったといえるでしょう。

(次回から「シニア雇用の人事管理」を連載します)



個を活かす組織をつくる(10)「行動」ではなく「機能」統合同志社大 学教授 太田肇 2017/7/31 本日の日本経済新聞より

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 本連載を締めくくるに当たり、組織と個人の関係性について説明しましょう。組織論では「分化」と「統合」を広い意味での対立概念としてとらえる伝統があります。こうした考え方をする以上、分化を進めるには限界があります。実際、経営者は社員の自律が大切だと理解していても、組織がバラバラになるのを恐れて尻込みしがちです。

 このジレンマから抜け出すカギは、機能と行動を切り離すことです。組織と個人の統合が必要なのは機能の面であり、個人の行動ではありません。一人ひとりが組織内で役割を果たし、組織に貢献している限り、行動はバラバラでもかまわないのです。そして通信技術の発達や経済のソフト化により、比較的容易に機能と行動を切り離せるようになりました。

 たとえば上司や同僚、取引先と電話やメールで連絡がとれれば自宅や外出先で仕事をしてもよいし、地球の裏側に住んでいてもよいのです。この連載で取り上げた多様な働き方、オフィス環境の見直しなども機能と行動の切り離しによって実現できるのです。経済活性化の目的から政府が推進しようとしている副業・兼業についても同じです。

 20年あまり前に筆者は全国の主要企業を対象に、統合の方法と生産性や満足度との関係を分析しました。その結果、行動を分化しながら機能として統合している「間接統合」企業の方が、分化せずに統合している「直接統合」企業より、業績も社員の満足度も高いことが判明しました(表)。当時に比べると情報通信技術は格段に進歩しており、行動と機能の切り離しははるかに容易になっています。個人を活(い)かすことが組織の利益にもつながる時代になったといえるでしょう。

(次回から「シニア雇用の人事管理」を連載します)



核心 若返るサウジはどこへナショナリズムにも変化本社コラムニ スト脇祐三 2017/7/31 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「核心 若返るサウジはどこへナショナリズムにも変化本社コラムニスト脇祐三」です。





 サウジアラビアでサルマン国王(81)の子息、ムハンマド・ビン・サルマン副皇太子(31)が皇太子に昇格し、指導層の世代交代が進む。新皇太子への権力集中で石油の王国はどう変わるのか。アラブ民族主義や資源ナショナリズムの時代の後に生まれた世代の台頭は、中東をめぐる国際関係の変化にもつながる。サウジの行方は、中東の地政学の新たな焦点になっている。

 6月21日に発表されたサウジの皇太子交代は唐突だった。国王の甥(おい)に当たるムハンマド・ビン・ナエフ皇太子(57)の任を解く勅令には、サウジの更迭人事によくある「本人の要望により」という一節がなかった。その日のうちに、更迭された前皇太子が軟禁状態に置かれたという情報も広がった。

 英国のロイター通信、米国のニューヨーク・タイムズなどは、以下のような「政変」の内幕を伝えている。

 イスラム教のラマダン(断食月)と重なった6月、多くの王族は聖地メッカなど紅海側地域に滞在していた。サルマン国王は6月20日夜、ムハンマド前皇太子をメッカの宮殿に呼び出し、皇太子の地位を副皇太子に譲り内相の職も辞すよう迫った。携帯電話を取り上げられ、外部と連絡できなくなった前皇太子は、抵抗をあきらめ、翌日の明け方に退任に同意した。

 前皇太子はカタールとの断交など新皇太子が主導する性急な政策に反対していたようだ。国王は更迭の理由として鎮痛剤の乱用で判断力が落ちていると語ったという。前皇太子は2009年、過激派アルカイダの自爆テロで重傷を負い、その後遺症を指摘されてはいた。サウジ政府高官は「皇太子の交代は国益に沿った正当なもの」と説明するが、一種の「宮廷クーデター」という見方は根強い。

 サウジでは、36人いた初代国王の息子(第2世代)のうち有力者が兄から弟へと王位を継いできた。初代国王の孫に当たる第3世代の重鎮、ハリド・メッカ州知事も77歳になり、指導層全体の高齢化が構造的な問題だった。

 一昨年1月に即位したサルマン国王は、即位後まもなく異母弟のムクリン皇太子を更迭して50代の甥を皇太子としたが、今回はさらに若い息子に王位を直系で継承する道筋を整えた。指導層の若返りを一気に進め、新皇太子が旗振り役になっている経済改革に弾みを付ける狙いだろう。国王が生前退位し、新皇太子が王位につくシナリオまで取り沙汰されるようになった。

 サウジは伝統的に巨大な王家の中で権力を分散し、コンセンサスを保って王制を維持してきた国だ。すでに国防相で王宮の長官であり、経済政策の責任者も兼ねている若い新皇太子が、さらに大きな権力を握ることや、父子の王位継承への反発もある。

 6月21日の別の勅令は統治基本法を改正し、第3世代の国王が直系の皇太子を立てられない趣旨の原則を加えた。現国王から新皇太子、その子へと、サルマン系が王位を独占し続ける可能性への警戒感を和らげる狙いとみられる。

 その一方で、権力の集中は加速している。前皇太子の更迭後、後任の内相には同じナエフ系のアブドルアジズ王子(33)が就任した。だが、最近、治安関連の政府機関が再編され、内務省の下にあった検察や治安部隊を指揮する権限は事実上、王宮に移った。新皇太子が一段と反対勢力ににらみを利かせる形になる。

 外交では4月、新皇太子の弟であるハリド王子が駐米大使に任命された。サウジの国民の6割は30歳未満だ。若いプリンスを相次いで要職に起用するのは時の流れに沿った動きだが、若い世代の発想はシニア世代と大きく異なる。

 新皇太子が推し進める国営石油会社サウジアラムコの株式公開について、「金の卵を産む鶏を、なぜ外国の投資家に売るのか」といった異論が同社OBなどから噴き出した。米石油メジャーとの長い交渉を経て、アラムコが完全国有化されたのは1980年代だった。85年生まれの新皇太子は、資源ナショナリズムが高揚した時代を知らない。

 新皇太子は昇格前、5月のテレビ番組で、「何でも国有というのは、社会主義者か共産主義者の発想だ」と反対論を切って捨てた。

 第3次中東戦争から50年、第4次中東戦争と第1次石油危機から44年たった。アラブ民族主義の高揚も、新皇太子らが生まれる前の出来事だ。

 90年のイラクによるクウェート侵攻で「アラブの大義」は決定的に風化した。90年代以降、アラブ諸国同士が外国企業の投資誘致を競う時代も続いた。今のアラブで支配的なのは、自国の利益をまず追求するナショナリズムだ。

 米国のトランプ政権は中東和平の仲介に意欲を見せる。だが、イスラエルとパレスチナの最終合意の展望は開けない。大統領の娘婿で新皇太子と親密なクシュナー上級顧問らを中心に、米政権はイランを共通の脅威と見なすイスラエルとサウジなどの関係正常化を模索している。だから、駐イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移転するという、アラブ諸国が反対せざるを得ない公約の実行を先送りした。

 イスラエルとサウジなどが関係を正常化するうえで、障害はなお多い。とはいえ、サウジでも「アラブ・ナショナリズム後」の世代に権力が移行しつつあり、中東はパラダイムの転換期に入った。昔と同じ鋳型を当てはめても、今の動きはわからない。



風見鶏 日中それぞれのカレンダー 2017/7/30 本日の日本 経済新聞より

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 中国共産党が第1回党大会を開いたれんが造りの建物は、上海のかつてフランス租界だった地域の一角に立つ。1921年7月、ここに毛沢東ら13人の代表がひそかに集まり、党の綱領を起草した。

 官憲の影におびえながら、激しい議論をたたかわせたに違いない。いまは記念館になったその場所を訪れると、テーブルを囲んで口角泡を飛ばす彼らのブロンズ像が飾られていた。

 意外だったのは、うち4人が日本への留学を経験していたことだ。共産党という党名自体、元をたどれば日本語である。のちに中国の運命を変える政党は、日本との深いかかわりのなかで産声を上げた。

 それから96年。共産党は今秋、19回目の党大会を開く。発足時に50人ほどだった党員は、9千万人近くに膨らんだ。党大会で習近平総書記(国家主席)は、華々しく2期目のスタートを宣言するはずだ。

 党大会の前には必ず不気味な政治事件が起こる。

 5年前には、重慶市トップだった薄熙来氏が失脚した。今回も同じく重慶市のトップを務めた孫政才氏が24日に摘発され、当局の取り調べを受けている。

 習氏は激しい権力闘争をへて、1強体制を固めつつある。「彼の視線はすでに党大会より先の2021年を向いている」。多くの党関係者はこう指摘する。

 21年とは、党の創立100周年を指す。

 1840年のアヘン戦争に始まった屈辱の歴史に終止符を打ち、そこそこゆとりのある「小康社会」を実現する。その偉業をなし遂げた共産党の最高指導者として、習氏は歴史に自らの名を刻むつもりだろう。

 歴史に名を残したいという欲求は、政治家の本能かもしれない。安倍晋三首相が5月に「2020年の新憲法施行」を明言したとき、改めてそう思った。

 首相の発言を受け、永田町にはすぐに「安倍カレンダー」なるものが広まった。この秋に自民党が憲法改正案を国会に提出し、来年の通常国会で改憲を発議する。その後に改憲を問う国民投票を実施する、というスケジュールだ。

 2日の東京都議選で自民党が惨敗し、状況は一変した。不祥事が続き、内閣の支持率は急落している。

 首相はこれまで「いつでも解散するぞ」と思わせて求心力を高めてきた。衆院議員はいつクビになるかわからない。だから、常に首相の顔色をうかがわなければならなかった。

 しかし、その手はもう使えない。解散すると、改憲の発議に必要な3分の2の議席を保てなくなるからだ。改憲日程を明示したため、首相は自分で自分の首を絞めてしまった。

 習氏のカレンダーはどうか。共産党の創立100周年を迎える21年の次に来るのは、まちがいなく翌22年の第20回党大会だ。

 本来なら習氏はここで2期10年の任期を終える。しかし後継候補だった孫氏のクビをさっさと切り、毛沢東と同じ「党主席」への就任をちらつかせて長期政権への意欲を隠さない。習政権がいつまで続くかわからないから、党内の不満分子は声を上げられない。

 選挙のない中国だからこそ組めるカレンダーだが、死角はないのか。北京の外交官は「あるとすれば経済の異変だ」と話す。

 習氏が描くスケジュールは、たしかに経済の安定成長を前提にしている。仮に経済が大混乱に陥れば、党内の不満分子はたちまちうごめき出す。党大会に向けて景気をふかしてきた反動もあり、そのリスクは高まっているようにみえる。

 習氏のカレンダーも、やはり万能ではない。

(中国総局長 高橋哲史)



ビジネスTODAY 孫氏「死ぬまで事業家」10兆円ファンドで「 次の本業」探し 2017/7/29 本日の日本経済新聞より

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 ソフトバンクグループがサウジアラビアと共同で発足させた10兆円規模の投資ファンドが、世界のIT(情報技術)ベンチャーを揺さぶっている。発足から2カ月余り。ファンドは沈黙を通しているが、投資先だと判明した企業は無名の米ベンチャーばかり。つぶさに見れば孫正義会長兼社長の狙いが透けてくる。

孫氏はベンチャー投資でIoTを強化(28日、都内で開いた人材イベント)

 28日、都内で開いた「孫正義育英財団」の式典。孫氏は支援する45人の若者を励まし終始、上機嫌だった。ただ報道陣から10兆円ファンドについて問われると鋭い目つきで答えた。「僕は死ぬまで事業家だ」

 世界中のベンチャーキャピタルの年間運用額をしのぐ巨大ファンドを手にしたが、それでも事業家にこだわる。米著名投資家ウォーレン・バフェット氏と比較されることもある。だが、孫氏は28日も「バフェット氏は尊敬するが、僕は僕の努力をやっていく」と語った。

 その真意はファンド発足から2カ月余りの動きを追えば浮かぶ。10兆円の投資先について、ファンド側からの情報発信はない。投資を受けた米2社が開示しただけで、他はソフトバンクへの取材で明らかになった。

 「最近は目覚めた時、自分が世界のどこにいるのかを思わず確認してしまう」。孫氏は投資先を求めて世界中をプライベートジェットで飛び回る。滞在先として圧倒的に多いのはシリコンバレーなど米西海岸だ。

 がん検査のガーダント・ヘルス、農業のプレンティ、ロボット関連のブレイン・コープ――。孫氏が10兆円の使い道に選んだ企業の多くが、米西海岸の無名のベンチャーだ。ソフトバンクの本業である携帯や通信とはほど遠い事業を手掛ける。

 そもそも孫氏は「ソフトバンクは通信会社ではなく情報革命屋さん」と話す。時代とともに移ろう情報産業の主役に本業を乗り換え続けて来た。1981年にソフトウエアの流通から始め90年代にインターネットに参入。2001年にブロードバンドで通信に参入した。06年に携帯に進出し、これまでに少なくとも3度、本業を変えてきた。

 そこで欠かせない手段が投資だった。95年に無名だった米ヤフーに出資し、06年には英ボーダフォン日本法人を買収して携帯を始めた。

 孫氏はあらゆるモノがネットとつながるIoTが次の主役だと考える。その原動力となるのがAIの進化。IoT時代に人類と共存するのが、AIを備えたスマートロボットだ――。こんな未来図を描く。

 投資先の事業はバラバラに見えるが、孫氏の頭の中では3つの単語でつながる。その対象領域はかつてなく広い。そこで巨大ファンドを手に新たな事業のタネを探ろうというのが孫氏の考えだ。

 10兆円ファンドを連結対象に組み入れる背水の陣を敷いた。「僕にとって大きな挑戦」と言う4度目の本業換えに乗りだした。

(杉本貴司、大西綾)



AIと世界 見えてきた現実(4) 消費電力1万2000 人分 弱点克服できるか 2017/7/27 本日の日本経済新聞より

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 「完璧すぎた」。5月27日、米グーグルの人工知能(AI)「アルファ碁」に3連敗した中国の棋士、柯潔(か・けつ)九段はこう漏らした。圧倒的な力を見せつけたAIにも弱点があった。膨大な消費エネルギーだ。

医師はAIの判断をもとに、患者(右)に治療法を説明する(仁川市の嘉泉大学ギル病院)

 人間の脳の消費エネルギーは思考時で21ワット。一方のアルファ碁の消費電力は25万ワットとされてきた。約1万2千人分だ。

 「消費電力の少ない半導体が必要になる」。トヨタ自動車のAI研究子会社、トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)のギル・プラット最高経営責任者(CEO)は指摘する。

 従来型の半導体で高度な自動運転を実現するには、住宅を上回りかねないほどの電力が必要になる。従来の延長線上にない技術革新が不可欠だ。

大量の計算必要

 AIが高度化し、普及すればするほど大量の計算が必要になり消費電力も膨らむ。電力問題が永遠に手が届かない逃げ水となる可能性もある。

 AIの研究が始まって60年余り。「これからリアルでシリアスな領域にAIが使われる」(経営共創基盤の冨山和彦CEO)。その分、消費電力のような現実的な課題が浮かび上がる。

 韓国の仁川市にある嘉泉大学ギル病院は昨年秋、肺がんなどの診断にAIを導入した。米IBMの「ワトソン」を使い論文や診療データから最適な治療法を導き出す試みだ。

 医師不足が深刻な韓国では特に地方でワトソン待望論が広がるが、費用の高さが立ちはだかる。 ワトソンを導入した病院は最低でも年間10億ウォン(約1億円)をクラウド利用料などとしてIBMに支払っているといわれる。韓国では医師の平均年収は1億6500万ウォン。医師約6人分の人件費に当たる。世界で最も導入が進むワトソンですら韓国の大手病院から「費用ほどの利点はない」との声が出る。

データに不純物

 AIを賢く育てるはずのビッグデータにも「現実の壁」がある。

 「オオカミ人間の遺伝子情報を基に診断しそうになった」。経済産業省で遺伝子検査ビジネスの研究会を開いていた商務・サービス政策統括調整官の江崎禎英氏は事業者の発言に耳を疑った。人間の遺伝病リスクの分析事業者に愛犬の細胞を送る顧客が相次いだためだ。現在は顧客に「ペット禁止」を念押しするが、データに「不純物」が混入しAIの予測精度が落ちる危険はつきまとう。

 時に虚偽が真実を超えて支持される「ポスト・トゥルース(真実)」の時代。昨年の米大統領選ではドナルド・トランプ氏に有利となる虚偽のニュースが拡散した。ビッグデータの中に故意に不純物を混ぜるサイバー攻撃があれば、AIは路頭に迷うことになる。

 AIは放っておけばバラ色の未来をもたらすわけではない。課題を乗り越えAIを社会に根付かせられるかどうか。成否は人間にかかっている。

(この項おわり)

佐藤昌和、熊野信一郎、進藤英樹、松田省吾、瀬川奈都子、小山隆史、多部田俊輔、森園泰寛、小沢一郎、戸田健太郎、岩崎貴行、林英樹、生川暁、八十島綾平、深尾幸生、佐藤浩実、川上梓、花田幸典、斉藤美保、花田亮輔、矢野摂士が担当しました。



FT中国、狙うは西側の覇権 一帯一路、米国孤立は好機 2017/7/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「[FT]中国、狙うは西側の覇権 一帯一路、米国孤立は好機」です。





 今年もっと大きく報じられてよかったはずのニュースの一つが、中国と英国を結ぶ鉄道貨物輸送の新ルートの開通だ。

 1月1日に、1両の機関車がけん引する貨物列車が、中国製の工業製品を満載して浙江省義烏を出発した。列車はそれから18日かけて7カ国を通過し、約1万2000キロ離れたロンドン東端の貨物駅に到着した。

 昔のシルクロードをよみがえらせたようなこの最新ルートが経済的に成功するかどうかはまだ分からない。だが、肝心なのは経済的側面ではない。一番列車が何にも増して告げたのは、中国政府がこの鉄道に込めた地政学的狙いだ。

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イラスト Ingram Pinn/Financial Times

 最終地点にたどり着くまでには何回も列車を乗り換える必要があった。国によって線路の幅が異なるため、様々な箇所で貨物を入れたコンテナを積み替える必要が生じるからだ。最後の英仏海峡トンネルを通過する路線でもそうだった。

■特別な意味持つロンドンルート

 この列車がどんな頻度で運行されるかは不明だが、運行を手がける当局によると、海上輸送よりかなり速く、空輸より格段に低料金で貨物を運べるという。当面は月1便が目標のようだ。

 独ハンブルクやスペインのマドリードなど、欧州大陸のいくつかの都市を終着点とする中国からの同様のルートは少し前から開通していた。しかし、ロンドンは特別な意味を持つ。

 かつてのシルクロードにならい、アジアからロシア、ベラルーシ、ポーランドと抜けて西欧に至るこのルートが、今日の貿易パターンに決定的な影響を及ぼすとは考えにくい。重要なのは心理面に与える影響だ。鉄道によるネットワークが構築されたことで、アジアと欧州の心理的な距離感が縮まるからだ。

 そこには中国の習近平国家主席が描く壮大な計画がある。欧州大陸とアジア大陸の境界を取り除き、豊かな欧州各国と中国の距離感を縮めたい考えだ。

■「太平洋の世紀」、中国の台頭象徴

 外交政策の世界では、20世紀を端的に「大西洋の世紀」と呼ぶ。そう考えると、21世紀は「太平洋の世紀」と呼ぶことになる。20世紀は、大西洋の両沿岸部に位置する欧州と米国に富と権力が集中した。だが繁栄と権力は東へ、南へと次第に移動していった。「太平洋の世紀」という言葉は、中国の台頭を象徴するが、中国の興隆は太平洋の世紀という言葉だけでは説明しきれない。

 確かに中国は南シナ海の島々を自国領だと主張し、そこに人民解放軍の基地を建設して、西太平洋へと海上の覇権を拡大しようとしている。その結果、この海域で米国と衝突する可能性は十分ある。しかし、こうした緊張の高まりだけをみても、中国政府の野望を十分に理解することはできない。中国は東方に関心を向けているというより、西への関心を深めている。

 習氏の壮大な計画は「一帯一路」構想に集約できる。昔のグローバル化時代を支えた陸路、海路を復活させるという構想だ。中国は、世界の覇権を握るには巨大なユーラシア大陸を押さえることが重要だと考えている。そうした中、ユーラシア大陸でどの国が中心的な役割を果たすだろうかと言えば、言うまでもないだろう。

■世界の陸地の3分の1、人口の7割

 米カーター政権で国家安全保障問題担当の大統領補佐官を務め、今年5月に死去したズビグニュー・ブレジンスキー氏は、ワシントンで最も頭の切れる戦略家だった。彼は1997年時点で既にユーラシア大陸の重要性を理解し、「(世界の)軸となる超大陸」と呼んでいた。「ユーラシアを支配する強国は、世界で最も経済生産性の高い3つの地域のうち2つ(西欧と東アジア)に対し、決定的な影響力を握ることになる。ユーラシア大陸で勢力図に大きな変化が生じたら、それは世界における米国の優位性と今後、世界に及ぼす米国の影響力に大きな打撃をもたらすことになるだろう」と指摘した。



個を活かす組織をつくる(7)職場レイアウトの見直し必要同志社大学 教授 太田肇 2017/7/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済教室面にある「個を活かす組織をつくる(7)職場レイアウトの見直し必要同志社大学教授 太田肇」です。





 働きやすい職場にして個人の意欲と能力を最大限に発揮させるには、職場の物理的環境、とりわけオフィスのレイアウトを見直すことも重要です。

 日本企業のオフィスはたいてい大部屋で上司と部下が机を並べ、顔を突き合わせて仕事をするスタイルになっています。このようなオフィスは日本特有です。海外の企業では、管理職は個室に入り、一般の社員も図書館のように一人ひとりの空間が仕切られた机で仕事をするのが普通です。

 大部屋で仕切りのないオフィスは、周囲の人の仕事ぶりが一目でわかり、気軽に声をかけてコミュニケーションを取ることができます。したがって、単純な事務作業や集団作業をこなすのには適しています。また不慣れな人に仕事を教えたり、互いに手助けしたりするのにも便利です。

 しかし、創造的な仕事や難度の高い仕事をするのには不向きです。周囲から話しかけられたり、手元をのぞかれたりすると、集中力がそがれます。じっくり考え事や調べものをしていると、サボっているようにも見られます。

 すでに述べたようにIT化やソフト化によって単純な事務作業が減少し、創造的な仕事や高度な仕事が増えています。また人材が多様化し、女性や外国人などが一緒に働くのが普通になりつつありますが、彼らはとくにプライベートな空間が確保された職場を求めます。したがってオフィスのレイアウト見直しは喫緊の課題でしょう。

 欧米企業のように個室やパーティションで区切るとか、一人で集中して仕事ができる場所を設けるのがオーソドックスですが、別の方法もあります。たとえば机の向きを反対にして、窓や壁に向かって座るようにすればよいのです。部屋の真ん中にテーブルを置いておけば、必要なときにはミーティングもできます。実際にこのようなレイアウトに変えたところ、仕事がしやすくなり社員に好評だという声も聞かれます。

 ただ、いくらオフィスの環境を変えても仕事の分担や役割が不明確なままではさまざまな支障がでてきます。仕事の改革とオフィスの改革は並行して行うのが理想です。



個を活かす組織をつくる(7)職場レイアウトの見直し必要同志社大学 教授 太田肇 2017/7/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「月曜経済観測 エネルギー市場の行方は 再生エネ 流れ止まらずイベルドローラCEO イグナシオ・S・ガラン氏」です。





 エネルギーを巡る国際政治のせめぎ合いが激しくなっている。米国は温暖化の枠組み「パリ協定」を脱退する方針。中東では産油国のカタールやイランから目が離せない。世界のエネルギー市場はどこへ向かうのか。欧州、北米、南米などに展開する多国籍電力大手イベルドローラのイグナシオ・S・ガラン最高経営責任者(CEO)に聞いた。

公共交通が先行

 ――トランプ米大統領はエネルギー政策を転換しました。世界は化石燃料を重んじる時代に逆戻りするのでしょうか。

 「米国以外は引き続きパリ協定に残り、温暖化対策に取り組む。例えば自動車産業は電気自動車やハイブリッド車に置き換えようとしている。先取りしているのは公共交通機関だ。大都市のバスがディーゼルから電気に切り替わるのは遠い将来のことではない」

 「米国のエネルギー政策で大きな役割を担う州政府は、再生可能エネルギーを増やそうとしている。米国の大手企業も温暖化対策に貢献するため、クリーンなエネルギーを使おうとしている。再生エネの市場はまだまだ拡大する」

 ――欧州や中東に点在する政治リスクは多国籍企業にとって不安材料では。

 「台頭する保護主義は確かにリスクだし、高失業率に悩む国もある。だが様々な危機が終わり、景気は上向いている。世界経済は新興国にけん引されて年3%を超える成長を維持するだろう。(債務危機で苦しんだ)スペインでも雇用が生まれ、財政赤字が減った。ユーロ圏では欧州中央銀行(ECB)が緩和の出口を探るところまできた」

 ――英国の欧州連合(EU)からの離脱は打撃ではありませんか。傘下に英電力大手があります。

 「英ポンドが下落し、ユーロ建てに計算し直せば会計上は影響が出る。ただ約120年前の創業以来、スペインでは内戦や(フランコ支配の)独裁政権を経験した。それでも民間企業として消費者に電力を供給するという姿勢を変えなかった。英国でも同じ。今後は再生エネに注力したい」

 ――再生エネは不安定だとの指摘があります。

 「原子力や火力発電所は24時間連続で運転できるが、メンテナンスなどで休止する。原子力は年7千時間、ガスや石炭は5千~6千時間稼働する。洋上風力発電はガスなどと遜色ない水準だ」

脱原発の実現を

 ――高コストでは。

 「発電所の新設で石炭か再生エネか迷うことはない。間違いなく後者。石炭は設備に加え、維持費用がかさむ。原子力は過渡期のエネルギー源だが安いというのは誤りだ。むしろ高くつく。スペインで7基の原発運営にかかわるが、燃料のウランだけでなく放射性廃棄物の管理・処分にコストがかかる。規制もどんどん厳しくなり、安全を守るため多額の投資が必要だ」

 ――脱原発になれば高度な専門技術が失われます。

 「確かにだれもが原発を持てるわけではない。(従業員の)訓練に膨大な資金を投じている。問題は利益が出ないこと。原発の段階的な廃止をスペイン政府に提案した。即実現は難しいが、ゆっくり(脱原発を)実現させるべきだ」

(聞き手は 欧州総局編集委員 赤川省吾)

 Ignacio S. Galan スペイン企業を世界有数の電力会社に育てた。66歳。



大機小機 出光興産の新株発行を巡って 2017/7/26 本日の 日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合面にある「大機小機 出光興産の新株発行を巡って」です。





 出光興産は20日付で、既存の1億6000万株の30%に当たる4800万株の新株発行を完了した。昭和シェル石油との経営統合について、経営陣と対立していた創業家側の持ち株比率は、33%台から26%台に低下したとされる。創業家側は新株発行の差し止めを求めたが、裁判所は認めなかった。この結果は驚くに値しない。

 会社法は、定款で定める株数の上限(出光の場合は4億3600万株)までは、取締役会決議での新株発行を認めている。取締役会の判断で株主の持ち株比率が低下することは、法が予定するところであり、手続きや価格が正当であれば、株主が新株発行を差し止められるのは、著しく不公正な方法による発行の場合に限定されるからだ。

 その判断に当たり、判例は「主要目的ルール」と呼ばれる基準を採用する。会社に資金需要がある場合は、副次的に他の目的があっても差し止めを認めないことを原則としている。

 もちろん、資金需要があっても、金融緩和局面では銀行借り入れの方が合理的だという考えもある。しかし、裁判所は、資金需要をどう満たすかの判断には、安易に介入すべきではないと考えているようだ。

 本件では資金需要の存在に加え、創業家側の影響力低下が限定的であることも、差し止めを認めなかった裁判所の判断の背景にありそうだ。棄権者が一定数存在する上場会社の株主総会で、経営統合のための特別決議を否決するために33.4%の議決権が必要なわけではない。創業家側の26%超の持ち株比率は、市場からの株式買い増しによっても、数%の株主を味方につけることによっても、経営統合議案を否決することができる数字だ。

 また、創業家側の反対が功を奏しなかった場合には、創業家側による株式買い取り請求権の行使もあり得る。裁判所は、差し止めを認めなかったからといって、「著しく不公正」と評価できるほど、経営陣の立場が強くなるわけではないと考えたのだろう。

 新株発行は、創業家のみならず、全ての既存株主の持ち株割合を低下させた。経営陣は近い将来、自社の企業価値が新株相当分の30%以上増加することを株主に約束したとも言え、重い責任を負ったことを忘れてはならない。

(腹鼓)