迫真 狙われる金塊(3)「日本は高く売れる」 2017/9/29 本日の日本経済新聞より

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 「外国人でも買い取ってくれますか」。9月上旬、大手貴金属商の徳力本店にメールが届いた。送り主は台湾人。1キログラムの地金を換金したいという。「もちろん。ただし納税証明書が必要です」。返事はなかった。

国の説明会では買い取り額への消費税分上乗せに異論も

 同じような問い合わせは今年に入って3件目だ。取締役の新井昌広(54)は「日本は税をつけて高く買い取ってくれる、という変なイメージが先行している」と戸惑う。

 国外から持ち込む金には消費税がかかる。だが買い取り時に納税証明書の提出を求めるかは業者の判断だ。外国人もパスポートを示せば販売できる。宝飾リサイクル大手、ネットジャパン(東京・台東)会長の吉沢敏行は「金が本物で身元が確認できれば買う。どこから持ってきたとまでは聞けない」と話す。

 密輸された金は法人や個人の手を介し、巧妙に法の網をくぐる。大手の地金商は納税証明書の提示まで求めるが、甘くなりやすい中小の業者は密輸業者には抜け穴に映る。金取引を監督する経済産業省でさえ「正直言って何社あるのか実態がつかめない」とあきらめ顔だ。

 「買い取りは減少傾向。突出して額が多い業者は怪しい」。買い取りサイト「リファウンデーション」運営会社社長の杉兼太朗(39)は言い切る。国は2012年、200万円を超える買い取りは売り主を記した「支払調書」を税務署に出すよう貴金属店に義務づけた。客は高額な売却を避けるようになり、同社の16年の月間買い取り額は11年の5分の1に減った。

 個別に買い取り額を調べれば怪しい業者は分かる。だがそこまでは「緻密にチェックできない」(経産省)。届かぬ監視をあざ笑うように、一部の業者を通じた密輸は止まらない。

 金取引の慣行である現金取引は、密輸業者には足がつきにくい「うまみ」となる。売却益が50万円を超えると確定申告が要るが、大手貴金属商の幹部は「少額でも銀行口座に入金履歴を残したくないと、振り込みを嫌がる人は多い」と明かす。

 9月20日、経産省の講堂に警察庁、財務省、経産省の担当者と約60人の貴金属業者が集まった。密輸摘発への協力を呼びかける会合で、会場の業者が「税金が付加されるシステムが問題では」と、買い取り額に消費税分を上乗せする仕組みに疑問を投げた。財務省関税局の職員は「うちの管轄ではない。我々は水際で(密輸を)止める」とだけ応じた。「踏み込んだ話はゼロ」。業界関係者は言い捨てて会場を後にした。

(敬称略)



転機の消費株(2) アマゾンが呼ぶ株安進む「中抜き」 店舗収益圧迫 2017/9/28 本日の日本経済新聞より

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 「この古着、300円で売ります」。交流サイトのフェイスブックにある国際基督教大学(東京都三鷹市)のグループ。ここでは1800人超の在校生や卒業生が、手数料がいらないフリーマーケット機能を使い、洋服や家電、教科書などを売買している。

 在校生の岩田奈那子さん(21)は「写真を撮って投稿するだけなので簡単」と笑顔で語る。学内などで受け渡しするので業者が入り込む余地は無い。こんな「フリマ経済圏」が今後は全国のキャンパスで広がりそうだ。

 国内ではフリマアプリ最大手のメルカリ(東京・港)が火を付けたフリマ人気。経済産業省によると、フリマアプリを通じた個人取引の国内市場規模は2016年に推定3052億円に達した。単館の百貨店で国内最大の売り上げを誇る、三越伊勢丹ホールディングスの伊勢丹新宿本店(2685億円)をすでに上回る大きさだ。

 こうした電子商取引(EC)は売り手と買い手を直接結びつけるため、実店舗が主体の小売業にとっては「中抜き」につながりやすい。なかでも大きな脅威となっているのが、インターネット通販の米アマゾン・ドット・コムだ。

 「アマゾン恐怖銘柄指数」――。お膝元の米国では、アマゾンの成長で業績が悪化する五十数社の株価を組み入れた指数が登場している。「デス・バイ・アマゾン」という別名もあるほどだ。大手百貨店のメーシーズやオフィス用品販売のオフィス・デポなどの株価下落で、同指数は22日時点で14年末に比べて3割安い水準だ。

 日本も対岸の火事ではない。「日用品やペット用品ではアマゾンが最大の商売敵だ」。ホームセンター最大手、DCMホールディングスの熊谷寿人・取締役執行役員はこう語る。

 アマゾンは20日、日本でオフィス用品などの法人向け通販を始めたと発表した。競合するアスクルの株価は翌21日からの3営業日で8%も下落、MonotaROも14%安となった。

 店舗に足を運ばず、時間と労力を節約したい消費者は増える一方だ。「ここ2年くらいはスーパーに行った記憶がない」。都内に住む会社員の井上真理子さん(26)。日用品はもちろん、ミネラルウオーター、牛乳、納豆などの飲食料品もアマゾンで購入している。

 アマゾンは8月に高級スーパーの米ホールフーズ・マーケットを買収し実店舗にも進出。経営ノウハウを蓄積する一方、生鮮品のネット宅配拠点にも活用するもようだ。「我々もアマゾンに買収され、倉庫になってしまうのでは」。国内の大手食品スーパー幹部は危機感を強める。

 国内上場の小売業、約260社の26日の時価総額の合計は約32兆円。すべて束になっても、アマゾンの時価総額、約51兆円の6割程度と遠く及ばない。

 成長力の差も大きい。国内上場の小売業の時価総額は5年前と比べると2.3倍だが、アマゾンは5.8倍だ。株式市場は、ネット消費時代の本格到来を高らかに告げている。



掃除機の雄ダイソンEV走らす 家電・車、垣根低く 2017/9/28 本日の日本経済新聞より

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 家電大手の英ダイソンは26日、2020年までに電気自動車(EV)に参入すると発表した。主力のコードレス掃除機などで培ったノウハウをEV開発にいかす。世界的なEVシフトが進むなか、異業種も触手を伸ばしてきた。エンジン車に比べ格段に参入障壁が低いEVの隆盛は、自動車業界の勢力図を一変する可能性も秘めている。

 「いつか車を実現する日のために技術開発を絶えず進めてきた」。創業者のジェームズ・ダイソン氏は同日、ロンドンの事務所でEVへの参入を宣言した。

 400人規模の体制で、バッテリーから車体の設計・開発まで基本的に自前で手掛ける。英高級車メーカー、アストンマーティンから技術者をスカウトしている話は以前からあったが、計画公表を機に技術者の陣容を拡大する。開発には20億ポンド(約3千億円)を投じる方針だ。

 関係者を驚かせたのはEVの肝となる電池を自前で開発することだ。しかも、採用するのは現在主流のリチウムイオンより倍以上の容量があり、充電時間を大幅に短縮できる「全固体電池」という。トヨタ自動車なども同電池の開発を急ぐがダイソンがEVを発売する20年には間に合わない。「液体を使わないので安全で過熱しにくく充電も速い」(ダイソン氏)

 すでに2年前に米ミシガン州の新興企業、サクティー3を9千万ドル(約100億円)で買収、EVに搭載できるよう改良してきたという。さらにモーターも掃除機で培った技術を進化させ、EVに搭載する。

 具体的な販売台数や仕様などについては口をつぐむが、「スポーツカーでも格安車でもないものになる。他社の既存EVとは根本的に違ったものになる」(ダイソン氏)

 環境規制の強まりを受け、世界的にEVシフトが進むが、ガソリン車に比べて部品点数が4割少なく、高度な擦り合わせ技術が不要になるEVの参入障壁は低い。新興勢の筆頭格である米テスラは7月28日に初の量販型EV「モデル3」の出荷を始めた。価格を3万5000ドルからに抑え、既に約50万台を受注した。18年までに年50万台の量産体制を整える計画だ。中国勢もバッテリー会社から参入した比亜迪(BYD)などは比較的安いEVを武器に大都市を軸に販売を伸ばす。

 迎え撃つ格好となる日本勢は「急速にEVに取って代わることはない」というのが共通認識だが、カギとなる電池まで次世代のものを最初に搭載しようとするスピード感は脅威だ。

 傘下にエンジンや変速機を手掛ける系列部品メーカーを多く抱えるトヨタ自動車の悩みは深い。EVではこうした部品が不要となる。急速なEVシフトは系列部品メーカーにとって死活問題になりかねないことから、及び腰にならざるを得ない。

 世界初の量産EVを7年前に発売した日産自動車は2代目「リーフ」を来月発売する。航続距離を4割伸ばすなど「EVの先駆者」(西川広人社長)としての意地を見せるが、勢いづくテスラや革新的なイメージが浸透するダイソンに対抗できるか、真価が問われる。

 異業種からの参入に慣れていない自動車各社は家電やIT(情報技術)メーカーの経営のスピードについていけるのか。目測を誤れば、既存の自動車メーカーにとって、大きな致命傷になりかねない。

 (篠崎健太、藤野逸郎)



迫真 狙われる金塊(2)運び役は主婦 2017/9/28 本日の 日本経済新聞より

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 報酬は1人あたりわずか20万円ほどだった。「アルバイト感覚だった」。今年6月、愛知県警に関税法違反(無許可輸入)などの容疑で逮捕された女(66)は動機をこう打ち明けた。

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空港税関では金の密輸の取り締まりを強める(中部国際空港)

 昨年12月、中部国際空港の入国検査で摘発された5人は40~70代の主婦やパート。下着のポケットなどに隠し持っていた金の延べ板は計30キロ(約1億3千万円)。消費税分だけで約1千万円に上った。

 金の密輸では犯罪とは縁がなかった主婦や若者らが運び役を担うケースが多い。「報酬は1キロあたり2万円程度。安易に請け負う人間が多すぎる」。税関関係者はあきれた表情だ。

 「年齢、性別不問。韓国旅行に行きませんか」「簡単な運搬バイトです」。インターネットの掲示板に誘い文句が躍る。飛びついた主婦らを言葉巧みに運び屋に仕立て、少量ずつ分散して空港の検査をくぐり抜ける。「ショットガン方式」と呼ばれる方法は覚醒剤密輸などで使われる常とう手段だ。

 大胆な手口も目立つ。今年7月、台湾から関西国際空港に向かっていた格安航空会社(LCC)バニラ・エア便。乗務員が機内のトイレの壁がずれているのに気づいた。着陸後、巧妙に隠された6つの袋から数十キロの金塊が出てきた。プライベートジェットによる空輸や小型船による洋上取引もある。

 背後には巨額な資金力を持つ密輸組織がちらつく。「売人を確保する必要がある薬物と違い、国内に持ち込めば簡単に売却できる。日本の暴力団や香港、韓国の組織が日本を狙っている」と東京税関調査部次長の後藤政秋(58)。警察幹部も「暴力団が新たな資金源としている」とみる。

 水際対策には限界がある。「とても処理しきれない」。税関関係者が悲鳴をあげる。成田国際空港に降り立つ飛行機は多い日で230便に上り、4万人が入国検査場を通過する。すべてチェックするのは不可能だ。「優先順位が高いのは生命に危害が及ぶ銃器や麻薬」。監視の目は金の密輸が多い韓国などより、アフリカや欧州の便に向く。

 6月の衆院内閣委員会。「税関の体制が弱いのではないか。罰則が軽いのではないか」と詰め寄る民進党の緒方林太郎(44)に当時の財務政務官、三木亨(50)は「取り締まりを強化し、厳罰化を含め、有効な対応策の検討を行っている」と切り返した。“黄金の国”を目指し送り込まれる運び屋対策に、一刻の猶予も許されない。

(敬称略)



観光立国と地域の活性化(5)ハイエンド層の獲得カギ北海道大学観光 学高等研究センター客員教授 山田桂一郎 2017/9/27 本日の日本 経済新聞より

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 今回はどのようにして地域の市場規模を拡大していくかを説明します。まず底辺の長さが数量で、高さが価格の三角形を想像してみましょう。面積が地域全体の消費額となり、面積を増やすことが地域経済の活性化になります。これまで日本では「安い物を大量に売る」、つまり頂点の高さを変えずに底辺を横に広げることばかりに熱心でした。

 しかし、頂点を引き上げられれば、シャワー効果で裾野も広がり、市場が階層化することで事業者のすみ分けも可能になります。高付加価値化によって、その地域で可能な限り客単価を引き上げ、ハイエンド層の顧客を獲得することが市場拡大には有効なのです。

 これは一店舗にもあてはまります。例えばレストランで料理を一品一価格から「松、竹、梅」などと多層化することで客単価を引き上げられれば、収益増の可能性が高まります。食材によりコストをかけられるようになれば料理人の技能を生かせますし、価値がわかる顧客の増加はスタッフ意欲やお店の質的向上につながります。このように事業者単位でも地域全体でも、客単価の上限の引き上げは好循環をもたらします。

 2007年に北海道で筆者も協力して「1万円ランチ」が実現しました。北海道の食の多くが「素材の良さ、量の多さ、安さ」を売り物とする状況を打破するために企画したものです。道内の五つのレストランが毎日数量限定で提供したこともあり、すぐに先々まで予約で埋まっただけでなく、予約できなかった客も既存メニューの高額料理を積極的に選ぶ傾向がありました。「1万円のランチを提供する店なら他の料理もおいしいはず」とシャワー効果が発揮されたのです。

 当時他の店でも、1万円は難しくても、少しでも客単価を引き上げ、商品の多様な階層化による他店とのすみ分けに取り組んでいれば、地域経済への効果はもっと高まったでしょう。

 また観光客向けの商品・サービスだとしても、地元の住民に支持されているかどうかはとても重要です。地元で食べられていないB級グルメのように、地元で人気がなければ、わざわざ外部から食べにきてくれるはずがないからです。



迫真 狙われる金塊(1)密輸、失われた100億円 2017/9 /27 本日の日本経済新聞より

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 昨年11月、福岡空港。韓国・仁川国際空港から日本に帰国した男(55)が入国手続きに向かっていた。

佐賀県唐津市では小型船舶から計206キロの金塊がみつかった(門司税関)

 他の旅行客や出張帰りのビジネスマンと違うのは、足の裏などに金の延べ棒3キロを隠し持っていたこと。過去にも同じ方法で密輸に成功した。今回もうまくいくと考えていた。しかし――。

 10カ月後の9月、男の姿は福岡地裁の法廷にあった。「脱税しようとした税金は計108万円と多額。計画的で悪質性も高い」。関税法違反罪で有罪を言い渡した裁判官の森喜史(43)の声は厳しかった。

 「2回目くらいまで迷いもあった。だが4回目には(税関を)抜けたらええんやという軽い気持ち。(罪悪感は)まひしていた」。男は法廷で、犯行を重ねた心境を淡々と振り返った。

 金の密輸が急増している。福岡空港だけでも4月に18キロ、7月に8キロが見つかっている。税関当局によると、2015年度(15年7月~16年6月)の全国の摘発件数は294件。重さでは約1.7トンに達する。正規の輸入量(2トン)に近い。もっとも「金密輸の成功率は95%」(捜査関係者)ともいわれ、摘発は氷山の一角にすぎない。

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 密輸が横行する背景には日本の税制がある。多くの国では金の取引は無税だが、日本では売買時に消費税が付加される。海外から持ち込まれる場合、入国時に消費税の8%をおさめ、売却時には同額を上乗せした金額が支払われる。金を国外に持ち出す場合は8%分が還付される。

 密輸した金を国内で売り払えば、消費税分が丸々もうけになる。現在、金の価格は1キロあたり470万円程度。スマートフォンほどにすぎない金塊1個を国内に持ち込むごとに、三十数万円を得ることができる。

 犯罪者が不正に得る利益の原資となるのは税金だ。15年度に摘発された300件近い密輸の脱税額は総額6億円に達する。「成功率95%」を前提にすれば、実際には100億円超が国庫から奪われている計算となる。

 それをうかがわせるデータが財務省の貿易統計にある。昨年1年間の金の正規の輸入量2トンに対し、輸出量は161トンだった。国内に滞留していた分が外に出て行った可能性があるとはいえ、80倍にも達する差はあり得るのか。日本金地金流通協会の専務理事、須江米夫(70)は「金の産出がほとんどないのに、これだけ輸出があるのは不可解」と首をかしげる。

 摘発件数は消費税が8%になった14年から急増した。2年後には10%への引き上げが控える。一方で金そのものの価格も上昇が続いている。05年ごろから中国を中心とする新興国で需要が高まり、世界経済や国際情勢の混乱が拍車をかけた。価格は15年前の3.5倍にまで高騰。密輸組織にとってうまみは増している。

 「日本はなめられている」。中部国際空港(愛知県常滑市)を管轄する名古屋税関中部空港税関支署の統括監視官、宮崎尚史(52)は警戒を強める。日本は税関のチェックが他国ほど厳しくなく、罰則も他国より甘いとされる。溶かして新たな金塊に作り直すことも容易で、いったん密輸してしまえば発覚しにくい。

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 大量に日本に持ち込まれる金を狙った荒っぽい犯罪も後を絶たない。

 4月28日午後、大阪・ミナミの路上で、貴金属店から出てきた男性2人が3人組の男に襲われた。2人が手にしていたのは現金7000万円入りの紙袋。顔をなぐられるなどしたものの、強奪は未遂に終わった。

 ところが大阪府警の捜査で別の事実が明らかになった。奪われそうになった現金は、シンガポールから密輸した金塊を売却したものだった。府警は7月、密輸容疑で2人を逮捕した。

 東京や福岡でも4月に立て続けに金塊取引で飛び交う現金が狙われた。銀座では白昼、貴金属店で男性が金塊を換金した直後に高校生を含む3人組に襲撃され、4000万円を強奪された。福岡・天神では金塊を購入するために銀行で引き出した3億8000万円が奪われている。

(敬称略)

 「安全資産」として安定した人気がある金。その背後にある、危うい現場の前線を追った。



観光立国と地域の活性化(4)「地産地消」ではなく「地消地産」北海 道大学観光学高等研究センター客員教授 山田桂一郎 2017/9/26 本日の日 本経済新聞より

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 地域経済を活性化するには、域内調達率を高めて波及効果を生むことが不可欠で、その手段として地元企業の利用や地元食材の購入などがあります。ここでカギとなるのが「地消地産」です。これは「旅行者が切望する高付加価値の商品を地域内で生産・販売する」という考え方です。旅行の目的地として選ばれるためには、当地でなければ入手できない、体験できない商品やサービスが必要です。

 これに対して「地産地消」は基本的に「地元で生産したものを地元で消費する」という考え方です。地域振興としては重要なことですが、最近は「余ったものや外部で売れなかったものを地元で何とか消費してもらう」という傾向が強くなってしまいました。

 売れない地産地消には主に2つの問題があります。余剰品や外部での売れ残り品の提供では、低価格になって肝心の利益が増えないことと、旅行者を引き付ける魅力に乏しいことです。一般的に遠方からの旅行者ほど旅先での消費額は増えますが、地元産であったとしてもどこにでもある商品ならば、旅行者は低価格品の購入に走ります。これでは高い収益は望めません。

 一方、「地消地産」とは地域の良い素材に手間をかけて価値の高い商品に仕上げ、「その地域でなくてはならない価値ある商品」にすることです。高品質を維持するためにも高い単価を設定する必要があります。

 そもそも地元の素材や事業者を利用しないのは、他の地域から仕入れた方が安く、そうしないと利益が確保できないからです。「地消地産」によって単価を上げて利幅が広がれば、地元の事業者や良い素材を利用し、地元の人を雇うことが可能になります。そうした事業者や労働者が地域内で消費すれば、お金の循環が生まれます。その地域ならではの高付加価値化で単価を引き上げ、需要を生み出すことが売上高と利益の増加につながるのです。

 もちろん、ただ高額な商品を作るだけでは売れないでしょう。そこで重要になるのが、「顧客が本当に欲しいコトやモノ」を、「顧客とのコミュニケーションの中で一緒に作り出していく」というマーケティングの実践です。



一目均衡 「ピュアプレー」の時代 証券部 川上穣 2 017/9/25 本日の日本経済新聞より

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 9月12日、ニューヨーク市中心部にある高級ホテル、ピエールで2人のエドが向き合った。

 「2つの偉大な企業が一緒になり、やがて3つの事業に分割される。素晴らしい結果を生むはずだ」

 著名人が集う金融会合で、「物言う株主」といわれるトライアン・パートナーズのエド・ガーデン最高投資責任者が満足げに語った。

 その傍らでダウ・デュポンのエド・ブリーン最高経営責任者(CEO)が応じた。「トライアンの建設的な提案に感謝している」

 9月1日、米ダウ・ケミカルと米デュポンが統合し、世界最大の総合化学グループ「ダウ・デュポン」が生まれた。巨大化が目的ではない。農業・素材・特殊素材に分割し、それぞれが独立企業として上場を目指すことが最大の狙いだ。

 「官僚主義がはびこる持ち株会社を打破し、グローバルな事業部門が権限を握るべきだ」。トライアンは統合交渉で主張し続けた。大胆な3分割は株主の意向を反映したものでもある。

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 「コングロマリット(複合企業)の時代は終わった」。スウェーデンの投資会社セビアン・キャピタルの創業者は最近、英フィナンシャル・タイムズ紙にこう語った。今後5~7年の間にM&A(合併・買収)市場で起きるのは「脱・合併だ」とする。

 相乗効果の薄い事業を抱えていては経営資源が分散され、企業価値が高まらない。株主に突き動かされ、欧米企業は単一事業で勝負する「ピュアプレー」にカジを切ろうとしている。

 欧州ではデンマークの海運複合企業A・P・モラー・マースクが石油部門を仏トタルに売却すると8月に発表した。コンテナなど船舶事業に集中する。医療や産業機械に力を入れてきた独シーメンスですら「最後に明かりを消す複合企業にはならない」(ジョー・ケーザー社長)と、さらなる変革への意志を示す。

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 なぜ今、選択と集中のうねりが起きているのか。

 外資系投資銀行の首脳は「機関投資家が上場投資信託(ETF)という手段を得たのが大きい」と解説する。かつては米ゼネラル・エレクトリック(GE)のような複合企業への投資を通じて、分散投資の効果を得ることが多かった。

 だが、各国の株式や債券を自在に組み入れるETFがあれば、分散投資は容易になる。一方で企業には強みのある単一事業への特化を求め、市場平均を上回る超過収益の源泉にするようになった。

 日本では、東芝が半導体メモリー事業の売却先に日米韓連合を選んだばかり。苦肉の策としての事業切り出しが、アップルなど有力な米IT(情報技術)企業の資金拠出を促した。

 4月には、事業の切り出しを後押しする「スピンオフ税制」が国内で導入された。海外の物言う株主たちが日本企業への関心を高めているとの声も聞かれる。ピュアプレーの時代が日本でも来るのか。



訪日需要眠る「夜遊び経済」 ライブやショー、深夜まで 20年 に4000億円市場 2017/9/25 本日の日本経済新聞より

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 ミュージカルに、音楽ライブやダンス。欧米では大人が深夜まで楽しめるクラブ文化が根付いている。世界でナイトタイムエコノミーと呼ばれる「夜遊び経済」を盛り上げようという機運が、日本でも高まってきた。訪日外国人客の「夜、遊べる場所が少ない」との声をきっかけに、年間4000億円ともいわれる夜遊び市場が日本にも誕生するかもしれない。(馬場燃)

アミューズの体験型ショー「WA!」は夜8時からでも楽しめる(東京・品川)

 「異文化の融合が面白かった」。9月上旬、東京を初めて訪れたスイス出身のバーナード・リクターさん(44)は興奮冷めやらぬ様子で話す。

終電までを意識

 観賞したのは東京・品川のホテルで催された「WA!」。アルゼンチンのパフォーマンス集団「フエルサブルータ」が太鼓などの日本文化を組み入れ、音楽や光、映像、踊りを融合させた70分間のショーだ。チケットは1人7600円から。

 しかけたのはサザンオールスターズなどが所属する音楽事務所アミューズ。「日本には外国人向けのエンターテインメントがない」との問題意識があり、構想を練り始めた。夕食後から終電までを意識し、最も遅い公演開始時間を午後8時とした。アミューズ総合研究所の辰巳清主席研究員は「観光、宿泊、エンタメを一緒に楽しむモデルケースにしたい」と話す。

大手企業が参入

 JTBも9月中旬から品川のホテルで和太鼓のショー「万華響」を始めた。訪日外国人客を意識し、夜の公演の開始は午後8時半。「再来年に常設のショーをめざす」(JTBコミュニケーションデザインの大塚雅樹常務)。松竹も夜遅くから公演する案を温める。

 訪日客は日中は観光に忙しいが夕食後は時間を持て余している。めぼしい夜遊び拠点は海外でも頻繁に紹介される新宿の「ロボットレストラン」と原宿の「カワイイ モンスターカフェ」くらい。空白地帯に大手企業が触手をのばし始めた。

 主な対象は午後8時から午前2~3時。今はこの時間は飲食やクラブ、カラオケなどが主体だが訪日客の消費は少ない。遊べる場を増やして経済を活性化させる狙いだ。

 市場規模は不明だが、A・T・カーニー日本法人の梅沢高明会長は「訪日客が夜に1万円多く使えば2020年に4千億円を見込める」と語る。

 夜遊び経済に詳しい斎藤貴弘弁護士は「風営法改正で、一定のルールのもとにダンス営業などが朝まで認められるようになり、大手資本が参入しやすくなった」という。自民党は4月にナイトタイムエコノミー議連が発足。事務局長の秋元司国土交通副大臣は「日本の夜はハコ不足といわれたが、これからは健全な市場を作れる」とみる。

 政府は年内に夜遊び経済の底上げに向けた検討会を設け、交通インフラや立地・残業規制などの問題の解消を急ぐ。若年層の安全の確保・保護への配慮も課題だ。



サイバー戦争迫る危機 ウクライナに攻撃集中 インフラに 打撃、問われる備え 2017/9/24 本日の日本経済新聞より

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 ネット空間を利用して政府機関やインフラの機能をまひさせる「サイバー戦争」の危機が現実のものになりつつある。ウクライナで頻発するサイバー攻撃による被害は電力供給の停止にまで及び、ロシアによる軍事侵攻と並行して引き起こされている。ミサイル・核実験を繰り返す北朝鮮の脅威に直面する日本にとっても対岸の火事ではない。

 6月27日、ウクライナ大統領府で安全保障を担う副長官ディミトロ・シムキフの元に報告が入った。「国中の公共機関でコンピューターのウイルス感染が広がっている」。直ちに各省庁のIT(情報技術)専門部隊に警戒を発し、感染拡大の阻止に動いた。

 当初は5月に150カ国を混乱に陥れたウイルス「ワナクライ」のような世界規模の攻撃が想起された。欧米やロシアでも被害が報告されたためだ。だが、ふたを開けると被害の大半がウクライナに集中し、同国政府が想像した規模をはるかに超えることが分かってきた。

銀行3000店が閉鎖

 初期の段階で政府・企業のコンピューターの10%が感染し、空港から電力会社、携帯電話会社まで社会インフラが打撃を受けた。一部でクレジットカード決済が不能になり、3千の銀行店舗が閉鎖。1986年に大事故が起きたチェルノブイリ原子力発電所の放射線監視システムの一部も停止する事態に発展した。

 調査で浮かんだのは同国の40万の政府機関・企業と税務当局を結ぶ会計システム「M・E・DOC」を起点としたハッキングだ。4月からネットワークが不正侵入され、データが盗まれたうえでウイルスが仕掛けられた。他国には仮想プライベートネットワーク(VPN)を通じてウイルスが及んだとみられる。

 ウクライナ政府は被害の規模を掌握しきれていない。民間企業ではコンピューター基盤の8割超が失われたところもあり、1カ月以上にわたりペーパーワークを強いられた。政府機関でも復旧に2~3週間を要したという。

 「ウクライナの経済情報の取得やインフラの破壊に関心がある国がどれだけあるだろう」。攻撃の発信元が特定できない中でシムキフは慎重に語る。「敵対的な国はロシアしかない」。ウクライナで親ロ派政権が崩壊した2014年、ロシアはクリミア半島を併合し、東部への軍事介入を続けている。同時並行でサイバー攻撃が活発になった。

 ウクライナの変電所では15年と16年の暮れにシステム障害が発生し、首都キエフなどへの電力供給が停止した。米ファイア・アイは一連の攻撃に使われたサーバーを特定し、ロシア政府傘下とされるハッカー集団「サンドワームチーム」が実行したと指摘する。同社の分析官は「電力会社へのサイバー攻撃は一線を越えるものだ」と話す。

 断続的にサイバー攻撃が続くなか、ウクライナ政府は7月、エネルギーインフラ防衛を担う専門機関の創設を決めた。英米もウクライナ支援に乗り出している。14年まで米国家安全保障局(NSA)長官を務めたキース・アレキサンダーは言う。「ウクライナだけの問題ではない。多くの国で備えができていない」

日本でも現実味

 ドイツの情報機関(BfV)が7月に発表した年次報告はロシア、中国、イランの活動を挙げ、基幹インフラが破壊されかねないと警戒をあらわにした。ロシアを批判する米国もネット空間で同盟国を含む各国の秘密情報を収集していたことが発覚した。そして、北朝鮮。この数年、サイバー攻撃を繰り返し、5月の「ワナクライ」も北朝鮮部隊が仕掛けたとの見方もある。

 サイバー攻撃は犯罪者が個人情報を闇市場で売りさばく金銭目的から、インフラをダウンさせて国家機能をまひさせる軍事攻撃と同じような効果を狙う手段になった。日米韓を威嚇する北朝鮮が仮にミサイルを使うなら、サイバー攻撃を絡めることは想像に難くない。軍事防衛網でミサイルを迎撃できたとしてもサイバー攻撃に対処できるのか。

 北大西洋条約機構(NATO)は16年の首脳会議でサイバー空間を「防衛の領域」と位置づけた。欧州連合(EU)は今月7日、共同のサイバー防衛演習を実施している。暴発しかねない北朝鮮と対峙する日本は、安全保障上の新たな脅威にも備えを固めねばならない。

=敬称略

(キエフで、古川英治、吉野次郎)