Financial Times AI 中国決断と米の油断 ワシントン・ コメンテーターエドワード・ルース 2017/11/30 本日の日本経済新聞より

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 60年前、ソ連が世界初の人工衛星「スプートニク」を打ち上げて世界を驚かせた。この時、トランプ米大統領は11歳の少年だった。ソ連の優位性を見せつけられた米国は衝撃を受け、科学技術開発にソ連を上回る予算を注ぎ込んだ。そのことがやがて、インターネットや全地球測位システム(GPS)を生み出すことにつながった。

 中国が7月、2030年までに世界の人工知能(AI)産業でトップに立つという計画を明らかにしたことは、今日のいわば「スプートニク・ショック」といえる。だがあの時とは全く異なり、この中国の発表は71歳になったトランプ米大統領の耳をあっさり素通りしたようだ。恐らくツイッターの投稿に忙しすぎて気づかなかったのだろう。

 だが、AIに懸ける中国の野望は、長期的には米国の安全保障にとって北朝鮮の核兵器が米国本土を射程に収める以上に重大な脅威となる。北朝鮮政府は、核を使えば自国が確実に壊滅することになると明言すれば恐らく抑え込める。だが、「米国をりょうがする」という中国の目標には、特に目立つ障害は存在しない。

 ロシアのプーチン大統領は9月に、「誰であれ(AIの分野で)リーダーになった者が世界の支配者になる」と発言した。これは、中国政府が7月にAIの分野で20年までに米国と肩を並べ、25年までに追い越し、その5年後には世界のAI産業を支配するとの長期計画を発表したことを受けた発言だった。

 

6月、中国の全国統一大学試験「高考」の数学の問題に中国のAI「AI‐MATHS」が挑戦したところ、22分で終え150点中105点を記録した=ロイター

 米国の先端をいく技術者たちは、中国は野望を恐らく実現するとみている。米グーグルの親会社である米アルファベットのエリック・シュミット会長は11月1日、「ちょっと立ち止まって考えてほしい。中国政府がそう言った以上、彼らはやるということだ」と述べた。

 スプートニク打ち上げの時と異なり、中国が特定の何か一つをなし遂げたら米国を抜いたことになるわけではない。だが両国の動向を注意深く追っている者には、中国と米国の動きは極めて好対照だ。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は、テレビで中国がAIで優位に立つことは戦略的目標だと語ったが、トランプ氏が米国の大志について語ったことはない。だが彼の予算案を見れば何を考えているかは分かる。米国の情報システムに投じる公的資金を11%減らし、連邦政府全体の研究開発費を20%削減したいと考えている。米航空宇宙局(NASA)の予算も縮小される。

 同様にトランプ氏は合法的に流入する移民数も半減させたいと考えている。これは世界最高峰の研究者を集めてきた米国の力に大打撃を与えるだろう。有能な研究者には永住権を与える方が、はるかに理にかなっている。グーグルが主催するプログラミングのコンテストでも中国人学生が優勝することが多い。

 「中国の教育システムでは、私が今話しているような革新的発想ができる学生は生まれない、という偏見をもっているとしたらそれは間違っている」とシュミット氏は指摘した。

 

 米国は、トランプ氏の近視眼的な思考を乗り越えて優位を維持できるだろうか。十分にあり得ることではある。米国のIT(情報技術)大手は今なお世界をリードしている。しかし中国との差は縮まりつつある。

 中国には強みが2つある。まず、オンライン決済されている経済の規模が米国より大きい。世界の電子商取引の40%が中国国内でなされており、その大半はアリババ集団、騰訊控股(テンセント)、百度(バイドゥ)という中国IT大手3社経由の取引だ。これら大手は、取引を通じて入手した膨大なデータを、法的な制限をほぼ受けずに好きなように扱える。

 中国のIT大手は規模も圧倒的に大きい。騰訊の時価総額は20日に5000億ドル(約56兆円)を突破し、その後米フェイスブック(FB)をも抜いた。オンライン決済や画像認識、音声ソフトウエアなど一部の分野では、中国のIT各社は既に米シリコンバレーのライバル企業を抜いている。自動運転技術でも猛スピードで米国に追いつきつつある。こうした技術は、ほぼすべて軍事目的に転用可能だ。AIを使い大量のドローン編隊を組めば兵器にもなる。

 中国の第2の強みは、官民が一体化している点だ。徹底した自由主義経済を求める者には、欠点に映るかもしれないが、思い出してほしい。シリコンバレーの興隆は、アイゼンハワー大統領(当時)が莫大な資金を投じたことが大きい。中国政府も同様に今、ディープラーニング(深層学習)技術で卓越した立場を確保しようと助成金を投入している。

 しかも、中国のデジタル分野はますます自己完結しつつある。マイクロプロセッサーだけは今なお米国がリードしているものの、ほとんどの電子機器は中国内で生産しているため、世界のサプライチェーンに何か問題が起きても影響を受けにくくなっている。仮に世界で貿易戦争が発生しても、中国はさほど影響を受けずに着々とAI開発を推進できるだろう。つまり、中国がグーグルやFB、ツイッターなどを国内から締め出していることには理由がある、ということだ。

 

 航空宇宙技術の開発についても同じことがいえる。米国の核兵器の責任者、ハイテン戦略軍司令官は18日、大統領からの「違法な命令」は拒否すると発言し、物議をかもした。だがこれは、規則に定められていることを述べたにすぎない。同氏の発言でより衝撃的だったのは、21世紀に入って以降、中国の軍事技術が飛躍的な進歩を遂げているというコメントだ。

 中国の航空宇宙技術開発力については、かつてのソ連のミサイル装備と同様に「実は大したことはない」ということではないかと問われた際、ハイテン氏はこう答えた。「私の見る限り(中国とロシアは)、宇宙においては米国が全く太刀打ちできなくなりそうなほど積極的に軍事力を高めている」

 各国の政策の優先順位を知りたければ、その国の予算を見ればいい。トランプ氏が何より熱望しているのは、米国の法人税率を20%に下げることだ。アイゼンハワー時代の所得税の限界税率は90%に達していた。それでも、米国は官民とも創意の足を止めることなく、ソ連との主導権争いを続けた。

 今日、米国は世界の技術を主導する立場にある。だが、トランプ氏が操縦席に座っている限り、将来はかなり異なった風景になる可能性がある。(23日付)

 英フィナンシャル・タイムズのコラムや記事を翻訳し、月曜、木曜付で掲載します。電子版▼国際・アジア→FT



楽天、「民泊」丸抱え 先行エアビー追い上げ 2017/11/29 本日の日本経済新聞より

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 楽天が一般住宅に旅行者らを有料で泊める民泊事業に本腰を入れ始めた。29日、民泊物件の所有者の業務を代行するサービスを始めると発表した。民泊では「宿泊」、予約などの「仲介」、そして運営などの「管理」があるが、楽天は仲介だけでなく管理などまで一貫して担う。民泊サービスでは異例だ。国内でも大きく先行する仲介世界大手の米エアビーアンドビーを追撃する。

 「ブランドに基づいた高品質なサービスを提供したい」。楽天LIFULLSTAY(東京・千代田)の太田宗克社長は29日に開いた会見で意気込みを語った。新サービスでは一軒家や古民家、アパートの改修のコンサルティングから料金設定まで一貫して担う。「RakutenSTAY」の統一したブランドで売り出す。楽天は仲介業者がこれまで手を出さなかった領域に踏み出した。

 2018年6月に予定される住宅宿泊事業法(民泊法)の施行により、大田区などの特区に限られていた民泊は全国で解禁される。楽天はこれに合わせて民泊の仲介サービスを開始する予定だ。太田社長は「合法で安心な民泊が普及するきっかけにしたい」と話す。

 だが、最大手のエアビーは国内ですでに約5万6000室の物件を登録するなど実績を積み上げている。現在合法的に民泊を営むためには、特区で認定を受けるか旅館業法の簡易宿所の許可を得る必要がある。エアビーはこうした許可を得ていないという批判をいとわずに増やしてきた。

記者会見で事業概要を説明する楽天LIFULLSTAYの太田社長(29日、都内)

 一方でコンプライアンスを重視する日本企業は手を出せずにいた。民泊法の施行に合わせて許可を得ていない物件の取り締まりも厳しくなる見通し。日本企業にとっては公平な競争条件が整う。だが、エアビーにつけられた差をどう埋めるかは楽天を含む日本企業にとって大きな課題だ。

 楽天はまずは海外大手との連携でエアビーに対抗する。楽天の訪日客に対する知名度はエアビーなどの海外勢に比べて劣る。そのため中国大手の途家(トゥージア)や米エクスペディア子会社のホームアウェイとも連携し、訪日外国人客(インバウンド)を誘客する。

 加えて、切り札と考えたのが業務代行だ。楽天としてはできるだけ優良な宿泊施設を多く登録したいが、清掃や料金設定、本人確認など空き部屋を持つ個人にとって民泊を始めるハードルは高い。こうした負担を楽天が代行することで、民泊の在庫を増やしたい考えだ。太田社長は「民泊事業の収益の中心は仲介になる」と話す。

 ただ、楽天の負担は重い。民泊物件の運用や管理といっても予約を受け付けるところから、退室後の部屋の清掃まで。需要や相場を読んで料金設定するのも容易ではない。それぞれの業務を代行する業者がいるぐらい。仲介サイトの運営者が手掛けると手間がかかるうえ、人件費も高くつく。

 エアビーの推計では16年の同社の経済効果は約9200億円と15年比で8割増えた。民泊利用者が増えれば既存事業への恩恵は大きい。楽天の場合、旅行予約サービスや小規模店舗で使える決済など多様なサービスを持っている。広大な市場を取りこぼさないため、民泊解禁前に追撃態勢を整えに動く。民泊法の足音が近づくなか、前哨戦はすでに始まっている。(清水孝輔、諸富聡)



真相深層 ロシア、米の「裏庭」に接近南米ベネズエラ再建、火種 に 軍事協力条件に債務猶予 2017/11/29 本日の日本経済新聞より

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 世界最大規模の石油埋蔵国、南米ベネズエラは1300億ドル(14兆円強)もの債務の自力返済が難しくなった。1999年に誕生した反米左派政権の同国に対し、米国は黙認策をやめ、敵視政策にカジを切った。ベネズエラは債権国ロシアの支援を受け、経済・軍事で結び付きを強める。最大債権国の中国カードもちらつかせる。米国の「裏庭」南米でロシアや中国の存在感が増す。

地政学上の魅力

 「我々は他の国と同じように、ベネズエラ政府と互恵的な関係を発展させている」。ロシアのラブロフ外相は15日、モスクワでの記者会見でベネズエラ支援についてこう語った。支援を続けるかとの質問に「意味が分からない」とけむに巻いたが、額面通りに受け止める向きは少ない。

 ロシア政府は15日、ベネズエラへの融資(約30億ドル)の返済期間を10年間に延長し、当初6年の支払いを最少にする支援策を発表した。13日に米格付け大手のS&Pグローバルと英フィッチ・レーティングスがベネズエラ債券を「部分的な債務不履行」と認定したのを受け、救済に動いた。

 シリアや北朝鮮の問題で米政府を揺さぶるプーチン大統領には、ベネズエラの地政学上の価値が魅力的に映るようだ。

 プーチン氏は返済猶予と引き換えに、ロシア軍艦をベネズエラに停泊させることを要求しているとされる。実現すれば、ロシアは米国の目と鼻の先の南米大陸に軍事拠点を持てる。「ベネズエラは自治権を守るため、ロシアとともに進む」。ベネズエラのマドゥロ大統領は8月、両国の軍事協力を発表。米国に対抗するうえでロシアを戦略的なパートナーとして迎える方針を固めたようだ。

 石油の利権も大きい。ロシア国営石油ロスネフチは、ベネズエラ国営石油会社PDVSAに融資。PDVSAが持つ米製油所に担保を設定したとされる。ロシアはベネズエラの債務問題を通じ、米国の石油産業にも影響力を及ぼせる。プーチン政権で実質ナンバー2とされるロスネフチのセチン社長が、ベネズエラ支援を主導しているとの指摘もある。

 最大の債権国、中国はどうか。中国は過去10年間でベネズエラのインフラ整備などに650億ドルを融資してきた。今もロシアの7倍近い約200億ドルの融資残高を抱えているとされる。近年は返済が滞り、2016年の投資はピーク時の3分の1に減った。石油や鉱山の分野で細々と投融資を続けている。

 「中国は長期展望で投資した。手は引かない」。米インターアメリカン・ダイアログのマーガレット・マイヤーズ氏はこうみる。ベネズエラは中国が精製する重質油を産出する。豊富な資源を見返りに経済支援を期待できる中国は、対米戦略上の切り札になり得る。ただ、中国は16日に「ベネズエラ政府は債務問題を適切に扱う能力があると信じている」(外務省の耿爽副報道局長)としただけで、沈黙を守る。

 ベネズエラは99年に左派政権が誕生し、米国を目の敵としてきた。実は経済面では米国に依存する。資金調達をウォール街に頼り、同国の輸出の95%を占める原油の最大の輸出先は米国だ。米国の金融機関や石油産業抜きに経済は成り立たないのが現実だった。

独裁政権と距離

 ベネズエラの反米政策は歴代の米政権にとって目障りだった。だが、ベネズエラ産原油の輸入はカナダやサウジアラビアに次いで全体の10%弱を占める規模だけに実質的に黙認してきた。

 その米国が敵視政策を始めた。民主的な選挙で選ばれた国会を無効とし、独裁を進めるマドゥロ政権に対し、米財務省は8月に新規の融資や債券発行を禁じる経済制裁に踏み切った。債務再編でも、交渉への参加は米国の経済制裁に抵触すると警告。結局、欧米の機関投資家は大半が参加せず、交渉を破談に追い込んだ。融資や起債で債務を返済する自転車操業に陥ったベネズエラに兵糧攻めを加えた。

 米国の敵視政策でベネズエラは、ロシアや中国への依存を強めざるを得ない。米国はベネズエラを締め付けすぎれば、石油というアキレスけんを中ロに握られかねない。

(サンパウロ=外山尚之)



生産性孝 危機を好機に(3) 新入社員はロボ 大転換、逃げず に対峙 2017/11/29 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「生産性孝 危機を好機に(3) 新入社員はロボ 大転換、逃げずに対峙」です。





 「日生ロボ美 趣味…みなさんのお手伝い 特技…タイピング・入力作業」。日本生命保険の職員紹介冊子には一風変わった同僚が載っている。ロボ美はロボットのようにデータ入力などを自動処理するソフト。能力は25人分だ。「私たちの仕事はどうなるんだろう」。日生の事務センターで働く西村あずささんは2014年にロボ美を初めて導入した日を今でも鮮明に思い出す。

日本生命保険の職員紹介冊子には、オフィス業務の自動処理ソフトのキャラクターを掲載している(東京都文京区)

 同社はロボ美を冊子に載せる理由を「一人の仲間として迎え入れるため」と説明するが社員の不安を殊更にあおらないための配慮にも映る。米マッキンゼーは25年までに世界で1億人以上のホワイトカラーの仕事を自動化ソフトが代替すると予測する。

 今後、多くの仕事で人から人工知能(AI)やロボットへの代替が加速する。米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は「人と同じ量の仕事をするロボットには、人と同じレベルで課税すべきだ」と語る。ロボット税を失業者の支援に回すという発想だ。生産性革命は社会のありようそのものを変えていく。

 金融とIT(情報技術)を融合したフィンテック。米大手銀シティグループは「25年までの10年間で欧米の銀行員の3割が職を奪われる」と予測する。店舗の閉鎖などで雇用減につながるフィンテックに慎重だった国内銀行もようやく重い腰を上げ始めた。

 「1万9000人を実数で減らす」。今月13日のみずほフィナンシャルグループ(FG)の決算記者会見で、佐藤康博社長は打ち出した。他のメガバンクは「業務量」の削減にとどめていたのに対し、みずほは実数に踏み込んだ。「そこまでうちは厳しいのか」。社内に動揺が走った。

 佐藤社長は「決済や送金など伝統的銀行業務が新しい参加者によって侵食されていく」と危機感を隠さない。新たな競合相手に対抗すべくAIなどの活用を加速する。

 ひるんでも技術の進歩に企業は対峙せざるを得ない。例えば、NTTの場合、社員が最も多かったのは1979年(昭和54年)の32万8700人。大半が固定電話事業に携わっていた。

 固定電話の契約者数は97年をピークに減少に転じたが、その前からNTTは自然減で徐々に社員を減らしていく。今では固定電話事業を担うNTT東日本・西日本の社員数は合計約6万人にすぎない。

 一方、2000年以降に情報システムが主力のNTTデータの社員は13倍、携帯電話のNTTドコモは2.4倍に増えた。NTTの連結ベースの社員数は27万5000人(3月末)。単純計算で新事業が20万人規模の雇用を生み出した。

 変化の激しい時代。NTTの時のように自然減でゆっくりと人を減らしていけるとは限らない。それでも技術の進歩は待ってくれない。必要なのは変わる覚悟だ。



モネータ 女神の警告 キーパーソンは語る物価観、家計と日銀 ズレ 慶大教授 白井さゆり氏 2017/11/28 本日の日本経済新 聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「モネータ 女神の警告 キーパーソンは語る物価観、家計と日銀ズレ 慶大教授 白井さゆり氏」です。





 ――日銀が異次元緩和に踏み込んだ際に審議委員を務めていました。これまでの金融緩和をどう見ますか。

 「金融緩和が需要を拡大し、それによってインフレを押し上げていくという効果は、かなり限定的だった。株や為替への影響はあったが、そこから実体経済に強い波及は起きていない。結局、家計の消費がそれほど強くなかったということ」

 「日銀はデフレマインドが根強いと主張する。しかしそもそも日本は物価が下がり続けるデフレスパイラルではなかった。調査をみると、家計は物価が上がっていくと答えている。物価が上がって支出が増え、可処分所得が落ちたと感じている。政策金利の水準を取り戻すために2%のインフレを望む日銀とは分断が広がっている」

 ――日銀は具体的にどうするべきでしょうか。

 「2%の物価安定目標に上下1%を許容範囲とすればよいのではないか。物価が1%でも信認を失わずに出口戦略に迎えられるし、2%目標をあきらめていないことを周知できる。なにより家計や企業も日銀がなにがなんでも毎年2%達成を目指していると誤解するのを回避できる」

 ――大規模緩和と弱いインフレという状況はほかの先進国も同じです。

 「みんな不思議に思っている。なぜ高い成長率でも物価が上がらないのか。グローバル化が進み、自国の環境だけで賃金を上げられなくなったことや、技術を持つ人とそうでない人で二極化が起きた点も影響している」

 「ただそれだけではない。たとえば不動産価格の上昇はバブル期と違い、都市部など局所的にしか起きていない。金融機関に聞くと、世界的に株式投資は配当狙いが増えており、値上がり期待が薄い。経済成長が今後も続いていくという期待感が低いのではないか」

 「欧州も資産買い入れの縮小を始めるが、金融正常化へのペースは非常にゆっくりだ。高齢者の年金資産は利回りが低く、受給者はむりやりリスクの高い投資に乗り出している。『もう超金融緩和はやめてほしい』という声は欧州でも多い」

 ――マネーの動きがグローバル化した影響もあるのでしょうか。

 「金融緩和の効果はその国だけでなく、世界全体に波及して低金利が広がっている。実体経済が成長しているのは新興国なのに、金融政策は先進国が主導している。そこにも無理がある。新興国からすると、資本の流出入が先進国の政策に左右されてしまう」

 「金融緩和は為替が目的のようになってきた面もある。通貨安を誘導しようと政策金利を引き下げる動きにつながる。G7は為替介入しか言及しないが、自国のことだけを考えると全体の利益を損なう。まるで『囚人のジレンマ』だ」

(聞き手は高見浩輔)

=随時掲載

 しらい・さゆり 2011年から16年まで日銀審議委員。マイナス金利政策を導入の際は反対票を投じた。国際通貨基金(IMF)エコノミストなどを歴任。54歳



時論 人類史から見通す近未来 ジャレド・ダイアモンド氏 作家・地理学者 2017/11/28 本日の日本経済新聞より

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 アジア、とりわけ中国が存在感を増す中で、世界の経済や政治、社会はどう変わっていくのか。日本に求められる役割はどう変化するか。文明や民族の攻防、勢力の逆転現象などを数百万年の時間軸で俯瞰(ふかん)した「銃・病原菌・鉄」「昨日までの世界」の著者で地理学者のジャレド・ダイアモンド氏に、人類史から見た西洋と東洋の「近未来」について聞いた。

■独裁中国 米に追いつけず

 ――数百万年という時間の流れの中から人類史を見つめた著作が多いです。その前提で言えば「現在」とはどんな時代でしょう。

 「語りだしたら、7時間は要するテーマだ。1つだけ言うなら、技術の進歩が急速で、それが国家の発展をも速めている特徴がある。一方で、政治や経済、環境面で問題が急速に増えたり、広がったりしていて、人間社会にとっては致命的な結果をもたらす懸念も膨らんでいる。このペースで問題が拡大していったとしたら、今後30年以内に我々の未来が生きる価値があるものかどうかの決着がつくだろう」

 「重要なのは、過去の社会から学ぶことが多いということだ。人類は600万年の歴史を持ち、金属、文字などの現代的特徴を持ち得たのはわずか1万1千年前のことだ。経験や英知は『昨日までの世界』の方が豊富な蓄積がある。高度な技術を使わなくても問題が解決できた時代の方が圧倒的に長かったわけだ」

 ――アジア、とりわけ中国の存在感が急激に強まっています。人類史的にはどんなことが言えますか。

 「最近の中国は強力で、中央集権的で、意思決定能力が高く見える。これに対し、米国は意思決定に際して裁判や議会というプロセスも入るため、迅速さに欠ける場面が増えてきた。だから我々米国人は偏執狂的というか、中国を過剰に恐れる傾向を強めている」

 「中国の経済が急激に拡大しているのは事実だ。だが理由の多くは少し前までの中国が貧しい国であり、豊かな国より速いスピードで経済力を拡大できる点だ。インドも似ている。もしかしたらインドは中国よりも貧しいところから発展が始まった」

 ――15、16世紀ごろは経済的な豊かさという点で中国と欧州が同水準にあったとの指摘もあります。欧米と中国は再び肩を並べる、ということでしょうか。

 「豊かさの尺度によるが中国と欧州は1400年代の方が経済的に同等に近かったのは事実だ。その後、欧州は中国の先を行った。その理由を私は自著『銃・病原菌・鉄』のエピローグで考察している。歴史家の間ではまだ未解明の問題で、今も異なる解釈がある。だが、私は地理学者だ。地図で中国を見ていたらわかる。中国の沿岸部は滑らかな線になっているが、欧州の地形は半島が多い。だから、イタリア、スペイン、ギリシャの各半島は、異なる言語を持つ、異なる国家になった。異なる『実験』が進んだのだ」

 「また欧州には大きな河川が多い。それらはアルプス山脈から流れ、ライン川やローヌ川、ポー川、ドナウ川が異なる社会を持つ国家を生んだ。一方、中国には主要な河川が(長江と黄河の)2つしかなく、2千年以上前に運河でつながった。結果として、欧州は政治的に断片化していき、中国は紀元前221年に政治的に統合された」

 「統一は強みだ、と考える人が多いだろう。しかし弱みにもなった。強みは1人の指導者の下で大きな事業が実現し、経済が飛躍することだが、一方で指導者に問題があった場合には、国全体が危機にさらされやすかった」

 「中国について言えば、15世紀には技術的にも欧州と同水準にあり、1430年代には世界最大の艦隊と大きな船舶を持っていた。中国の船舶は東南アジアや中東を超え、アフリカに到達した。アフリカの後は欧州を征服しようとするかに見えたが、結局、そうはならなかった」

 「理由は中国で『統一の弱み』が表れたからだった。最高位に就いた皇帝が、艦隊は金の無駄遣いだとの決定をした。実際、艦隊は莫大な出費を伴う。欧州でも金の無駄だと言い切った国王がいたが、有用な出費だと考えた国王もいた。コロンブスは後者だったスペイン国王の支援を得て大西洋を渡った。彼の3隻の船は中国の船舶に比べると半分くらいの小さなものだったが、新世界を発見したのは欧州だった」

 ――中国は「一帯一路」政策を進めて、欧州に延びる一大経済圏を創る構えです。中国と米欧、あるいは東洋と西洋の力関係の今後をどう見ますか。

 「中国はさらに強大になるだろう。だが、米国のような軍事的、経済的、政治的権力を獲得する見込みがあるかというと、そうは思わない。基本的な問題が立ちはだかるからだ。彼らは歴史上、一度も民主主義を経験していない。それは中国にとって致命的だ。一党独裁による政治は意思決定のスピードが速い。だが、多数の意見を戦わせる機会が少なく、民主主義国家のように新しいことを試すことが難しい。総合力で米国に追いつく可能性は、私にはあるとは思えない」

■日本、危機克服に多様性

 ――日本の今後の役割とは何でしょう。

 「とても興味がある問題だ。私が今、執筆中の本は過去に起こった、あるいは今起きている、国家の政治危機に関するものだ。日本は過去に危機を迎えた。例えば1853年のペリー来航以降、日本は中国のように西洋に圧倒される危険性があったが、迅速かつ選択的な変革をして、経済的、政治的、軍事的に国家を強固にした顕著な例になった。1800年代の危機を乗り越えたのだ」

 「だが現在の日本は問題を抱える。第1に政府債務の問題だ。日本の国内総生産(GDP)と比べた国債発行規模の大きさは際立っている。2つ目は出生率の低下だ。日本は世界で最も高齢化が進み、若年労働人口に対する高齢者人口の比率が最も高い。一方で、日本の女性の役割は非常に限定的だ。今回日本に来て企業の会合に出たが、出会った人の95%は男性だった。これは米国では考えられない。女性の活用が進んでいない懸念がある。移民を受け入れない姿勢を打ち出している以上、それ以外のところでダイバーシティー(多様性)のモデルとなるケースを示す必要が日本にはある。私は日本の危機克服に、非常に興味がある」

 「もう1つ感じるのは国際的資源の持続可能な使用に関する問題で、指導力を発揮していない点だ。日本は資源輸入に依存しており、漁業や林業などの分野の外国資源の持続可能な管理体制づくりに強い関心を示すことを期待されている。ところが現実的には期待に応えられていない。例えば寿司だ。日本人はマグロが大好きだが、最も上質なマグロは地中海産のクロマグロだ。日本は地中海産クロマグロの保存に高い関心を払うべき国だと期待されるはずだが、実際は保存に対する大きな『障害』になっている懸念がある」

 「最後に、中国、韓国との関係だ。3カ国は今も良好な関係にあるとは言えない。解決策が真剣に議論されているわけでもない。こうした問題はどこか他の国が解決してくれるものではない。日本が自らの手で解決する機会を常に見つけていかなければならない」

 ――インターネットなどテクノロジーの発達をどうみていますか。

 「私に答える資格があるかどうかは疑問だが、強いて言えば、技術には大きな利益をもたらすものもあるということだ。例えば、太陽光発電だ。より効率的にエネルギーを生産できるのなら、原子力や化石燃料に頼らなくてよくなる」

 「技術も問題解決の一助にすぎないと思う。問題は我々の振る舞いだ。私たちがエネルギー消費削減の努力をすれば、直ちに多くの問題を解決することができる。日本というより、エネルギーの無駄遣いが多い米国の同胞に向かってよく言っていることなのだが」

「欧州人の優位性」に反論 Jared Diamond 「銃・病原菌・鉄」「文明崩壊」など日本語に訳された著作は数多い。生物学や生理学の学位を取る一方で、進化論や地理学の研究も進め、ニューギニアなどでフィールドワークを始めた。ピュリツァー賞受賞の『銃・病原菌・鉄』はその成果。ニューギニア人との対話で得た「なぜ欧州人がニューギニア人を征服し、逆はなかったか」という疑問から書かれた代表作は「単なる地理的要因」という仮説を提示した。欧州人の優位性という人種差別的な偏見に反論を投げ掛け、世界的に反響を呼んだ。現在、米カリフォルニア大ロサンゼルス校教授。ボストン出身。80歳。今回は日立製作所のイベントに合わせて来日した。

◇  ◇

〈聞き手から〉「一帯一路」歴史的大転換に

 ジャレド・ダイアモンド氏が指摘する15世紀の中国の遠征中止とは、海禁政策や朝貢貿易にカジを切った明の洪武帝以降の時代を指しているようだ。明代には鄭和という宦官(かんがん)出身の武将が艦隊を率い、東南アジアやアフリカまで遠征した時期もあった。ところが1434年に鄭和が死去すると、その後は遠征が止まってしまう。

 歴史家の間では、当時の王朝の決断が欧州との明暗を分ける節目になったとの指摘が多い。大航海時代を経た欧州は新世界から大量の銀などを獲得し、商業や金融業を発展させていく。一方の中国は自国の貿易船ネットワークを実質的に放棄し、朝貢貿易の相手国の船にヒト、モノ、カネの移動を依存していった。物流の大動脈をあっさりと明け渡してしまったのだ。

 理由は「当時の中国が欧州と比べても豊かで、わざわざ外に出かけていく必要がなかったからだ」と物流の歴史に詳しい京都産業大の玉木俊明教授は話す。一方、欧州は地理的、気候的な問題などから、中国よりも食料や資源が少なく、「必然的に大西洋を渡って、新世界の発見に向かわざるを得ない状況にあった」という。

 現代中国の新経済圏構想「一帯一路」はそうした意味で歴史的大転換と言える一大イベントだろう。今後の経済成長の根幹が物流ネットワークにあると考え、ユーラシア大陸全体のヒト、モノ、カネの中心に座ろうとの国家プロジェクトだ。日本の経済界にとっても見逃せない節目が迫っている可能性がある。

(本社コメンテーター 中山淳史)



副業しやすく ルール修正厚労省、本業との労働時間合算など検討 「働き方」整合性も課題 2017/11/28 本日の日本経済新聞より

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 複数の職場で働く人をめぐる就労管理のルールが変わる可能性が出てきた。厚生労働省は複数の勤務先での労働時間を合算する仕組みの見直しを考える。組織をまたぐ就労管理は実態に合わないだけでなく、従業員の副業を阻む要因になっているためだ。厚労省は心身に悪影響を及ぼす長時間労働を避けることにも配慮しながら、慎重に見直しを探っていく。

 厚労省は労働関係法制に詳しい学者らでつくる会議で2018年に検討を始める予定。労働基準法を改める可能性を考えながら、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の場で労使を交えて議論をする。早ければ20年の国会に法案を出し、21年に仕組みを変える。

 いまの労基法は労働時間の管理について、労働者がいくつかの企業で働く場合にはすべて合計するのが前提だ。ある人がいくつかの企業で1日8時間といった法定時間を超えて働くと、法律の上では残業代がもらえることになっている。

 例えば昼間に「本業」のA社で8時間、夕方以降に「副業」のB社で2時間働いている場合、法律の原則ではB社が残業代を支給する。わずか2時間しか働いていないB社が残業代を支給する義務を負い、B社のコストがかさんでしまう。こうしたルールの存在が日本で副業が広がらない一因とされている。

 実際には「本業」と「副業」の企業がそれぞれの労働時間を互いに把握するのは難しい。そのため「ルールが有効に機能していない」(労働法に詳しい小西康之・明治大教授)という面もある。産業医の面談など従業員の健康管理にまつわる義務を、どちらの企業が果たすのかもあいまいになっている。

 厚労省はこうした実態を踏まえルールの見直しが必要だと見ている。海外には労働者が自らを労働時間規制の対象外とすることを選べる制度などがある。同省は海外の事例も参考にしながら、いまの規定をどう改めるか議論していく。

 長時間労働を無くそうと政府が旗を振る「働き方改革」とどう整合させるかも課題になる。政府は早ければ19年度にも残業時間に年720時間といった上限規制をつくる。仮に勤務先ごとに完全に別々の就労管理になれば、ある労働者がいくつかの職場をまたいで異常な長時間労働を続けても、外部から見つけにくくなってしまう。

 離職せず別の仕事に挑める「副業」はキャリアや技能の向上につながる利点がある。半面、「本業」がおろそかになるなどの懸念が経営側に強い。

 中小企業庁の14年度の調査では企業の85.3%が副業を認めていない。政府は人々が副業にも取り組みやすい環境づくりを目指している。



生産性考 危機を好機に(2) 週3日休む旅館 非製 造業こそチャンス 2017/11/28 本日の日本経済新聞より

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 神奈川県に無休から「定休3日」に切り替えながら、社員の平均年収を4割増やした老舗旅館がある。鶴巻温泉の「陣屋」だ。

 「悪循環だった」。オーナーの宮崎富夫氏が経営を引き継いだ2009年、部屋は20室のみだが稼働率は40%台だった。団体客向けに宿泊料を9800円からに設定したが利益は出なかった。「平均単価を上げるしかない」。宮崎氏は14年2月から毎週火・水曜日を休館とし、16年1月からは月曜日も加えた。

神奈川・鶴巻温泉の老舗旅館「陣屋」は無休から定休3日に切り替えたが、社員の年収は4割伸びた

 一方で正社員を20人から25人に増やし、休館日の半日を研修や会議に充て、接客力向上に努めるとともに食事も改めた。その結果、平均客単価は4万5000円にまで上昇。稼働率も80%に高まり、社員の平均年収は288万円から398万円と4割増えた。

 製造業に比べ非製造業の生産性は伸び悩む。日本生産性本部によると1995~2015年の実質労働生産性(就業者1時間当たり)は製造業で74%増えた一方、非製造業では運輸・郵便業が9%減、宿泊・飲食サービス業が5%減、建設業が2%減とそれぞれ落ち込んだ。

 製造業は14業種中10業種で労働生産性が伸びたが、非製造業で改善したのは15業種中8業種のみ。非製造業は国内総生産(GDP)の約8割を占めるだけに影響は大きい。経済産業研究所の森川正之副所長は「個々の企業の努力に加え、非効率な企業の縮小・退出といった新陳代謝が欠かせない」と指摘する。

 09年に発足したみちのりホールディングス(東京・千代田)はこれまでに経営環境が厳しい地方のバス会社6社を次々と傘下に収めながら、経営を立て直し、今では6社とも黒字だ。その中の一社である茨城交通(茨城県水戸市)ではICカードの導入や柔軟な価格戦略による増収効果で、10年度に在籍していた社員の平均年収は16年度までに24%増えた。

 みちのりHDの親会社である経営共創基盤の冨山和彦最高経営責任者(CEO)は「労働集約的な産業こそ、生産性を劇的に向上できる」と断言する。

 従来の常識を打破する動きも出てきた。大成建設が7月に実施したベースアップの対象は若手のみ。30歳代前半までの限定だ。年功序列の賃金体系が続くゼネコン業界では異例。賃上げ幅は平均2万3300円で20~30歳代社員の平均基準内賃金の6.7%にあたる。村田誉之社長は「若手社員を確保するためには賃上げが不可欠」と語る。都内の建築現場で働く末田優子さんは「モチベーションアップにつながる」と笑顔を見せる。

 年功序列も崩しかねないが、仕事量が増える一方の若手にきちんと報いて、生産性を高める狙いだ。日本経済のカギを握る非製造業の生産性。痛みも伴うが常識を一歩踏み出す勇気が必要だ。



譲歩するぐらいなら…「対中関係改善急がず」53%対北朝鮮「制裁 強化を」5割超す 2017/11/27 本日の日本経済新聞より

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 日本経済新聞社の世論調査で、中国との関係について安倍晋三首相がどのような姿勢で臨むべきかを聞いたところ「日本が譲歩するぐらいなら関係改善を急ぐ必要はない」が53%に上った。「関係改善のためには日本が譲歩することもやむを得ない」は32%だった。

 首相は11月の東南アジア訪問における一連の首脳会議で、中国の南シナ海への進出問題を巡る発言を抑制した。日中韓首脳会談の早期開催や、2018年に日中首脳の相互訪問を目指している。内閣支持層、不支持層ともに「日本が譲歩するぐらいなら関係改善を急ぐ必要はない」が5割台だった。

 公明支持層は「関係改善のためには日本が譲歩することもやむを得ない」の方が上回った。

 ミサイル発射や核開発を続ける北朝鮮に国際社会が取るべき対応を聞いたところ「経済制裁を強めるべきだ」が53%に達した。同じ質問をした8月下旬の調査と比べ9ポイント上昇した。

 「あくまで話し合いで解決すべきだ」は31%で、6ポイント下落した。「軍事行動を考えるべきだ」は5ポイント下落の9%にとどまった。



クラウドもアマゾン 三菱UFJやソニー導入、国内の十数万社が 利用 2017/11/26 本日の日本経済新聞より

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 米アマゾン・ドット・コム子会社でクラウド最大手のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が日本でも存在感を高めている。2013年に約2万社だった国内利用企業は現在十数万社。4年で5倍以上になった。クラウド利用に消極的だった金融機関も取り込み始めている。産業構造の変革を迫る「アマゾン・エフェクト」が話題になるが、クラウド事業での安定収益があってこそ今のアマゾン躍進がある。

 データセンターの設備や機能をネットを通じて、企業や開発者に貸し出すビジネスをAWSは世界で手掛けている。16年の世界売上高は約122億ドル(約1兆4000億円)と14年の2.6倍に達した。17年は第3四半期までで、既に前年実績を超えている。「2位以下の大手14社を足してもAWSに及ばない」とされる圧倒的首位だ。

 AWSの日本進出は11年。AWSジャパン(東京・目黒)を設立し、関東にデータセンターを開設したことで利用が増えた。18年春には関西にもバックアップ用センターを稼働させる。

 「17年は金融機関からの引き合いが急増している」。AWSジャパンの岡崎禎技術本部長は日本での手応えを語る。きっかけは三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が大手行で初めて社内システムをクラウドに移行すると決めたこと。その委託先がAWSジャパンだ。

「安全対策詳しい」

 住信SBIネット銀行は基幹系システム以外の全てのシステムをクラウド移行する方針を決めた。個人情報を扱うローン申請システムもAWS上で動かす。基幹系についても「今後の検討課題」(同行)としている。

 金融機関は従来、システムを社外に置くことに抵抗があった。しかし、「どんな銀行のシステム担当よりAWSのほうがセキュリティーに詳しい」(同行の木村紀義最高技術責任者)ことが認知され、続々と委託検討が始まっている。

 新サービスの開発基盤として活用するSOMPOホールディングスの楢崎浩一グループ最高デジタル責任者(CDO)は「自前のデータセンターが安全でクラウドが危険というのは迷信」と言い切る。

 ソニーはゲーム機のほか、18年1月発売の犬型ロボット「aibo(アイボ)」で最大の特徴である「個性」づくりにAWSを活用する。川西泉執行役員は「AWSは90種類以上のサービスラインアップとサポート体制が魅力」とし、「一度使い始めて慣れると他のクラウドサービスに移りにくい。先行者の強みだ」と解説する。

 利用分野も広がる。プラントライフシステムズ(横浜市)はトマト栽培の効率化システムに活用するが、進出を目指す中国でもサービス利用できる点を考慮しAWSを選んだ。地域FM放送のエフエム和歌山(和歌山市)ではアマゾンの人工知能(AI)がAWSのクラウド経由でニュースを読み上げる。

値下げ、既に62回

 AWSの武器は利用料金の安さだ。これまで実施した値下げは62回。例えば主力サービスのひとつ「S3」は日本への進出当時に1ギガ(ギガは10億)バイト0.14ドル程度だったが、現在は0.023ドルと8割以上安い。AWSジャパンの長崎忠雄社長は「多くの企業で『クラウドシフト』が起きている」と語る。

 他社も静観していない。「AWSの見積もりを見せてほしい。その半額にする」。システム開発のフューチャー・ワン(東京・品川)にクラウド大手の営業担当が詰めかける。フューチャー・ワンの桜田浩社長は「日本マイクロソフト(MS)や日本オラクルの営業攻勢がすごい」と話す。

 日本MSの連結売上高に占めるクラウド事業は15年度に7%だったが、17年度は47%。けん引役は大手企業の導入拡大。浅野智業務執行役員は「基本ソフト(OS)や業務ソフトを普段から使う企業にとって安心感がある」とアピールする。他社は価格を突破口とみており、当面、激しい競争が続きそうだ。

 今後、あらゆるものがネットにつながる「IoT」時代が本格到来することで、さらにクラウドの重要性が高まる。センサーから集めた膨大なデータを保存しAIで分析する際の土壌として欠かせないからだ。日本MSの浅野氏は「現在、AIの95%がクラウド上で稼働していない」と語り、拡大余地は大きい。既存のクラウド事業者だけでなく、グーグルなども強力なライバルとなる。

 調査会社IDCジャパン(東京・千代田)によると、日本のクラウド市場は3762億円。21年には3倍の1兆538億円に拡大する見込みだ。

(宮住達朗、薬文江)