観光地経営のイノベーション(2)従来の振興体制に限界 高橋一夫 近畿大学教授 2018/1/31 本日の日本経済新聞より

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 なぜ今、日本でDMO(観光地経営組織)が求められているのでしょうか。それは(1)従来の観光振興のあり方が限界にきている(2)観光振興組織のマネジメントに欧米とは大きな違いがある――の2点が明らかになったからだと考えられます。今回は前者の「従来の観光振興の限界」について確認していきます。

 地域の観光振興はこれまで日本人を主な対象として方針を立ててきました。しかし、日本人の国内旅行市場は成長に陰りが見えており、いずれは人口減少に伴って減少していくと考えられます。国内向け中心の観光振興を見直し、訪日外国人客を対象にしたマーケティング・受け入れ体制を強化する必要があります。

 外国人客の誘致や受け入れにあたっては、言葉や習慣のほか、流行している嗜好も理解しておくことが大切です。旅行行動は国籍や民族で異なり、市場ごとに個別対応が必要になるのです。近年の外国人客増加に伴い、各地の現場で経験・スキルを蓄積している人が増えているとはいえ、2020年の受け入れ目標4000万人を考えれば一層の人材充実が欠かせません。

 外国人客へのアプローチが課題だとすれば、従来のようにパンフレットやマップを作ることが解決策ではありません。地域の観光コンテンツはどの国をあるいはどの民族をターゲットとし、彼らが求める価値をどのように提供するのかを明確にしてマーケティング戦略を練り上げる必要があります。しかし、従来の観光協会は集客や宣伝を旅行会社など外部に丸投げすることが多く、自らマーケティングを手掛けた経験が乏しいのが実情です。

 観光振興事業は他の国や地域との比較の中で、消費者に選ばれ続けなければいけません。頑張る事業者、魅力ある事業者とともに地域を売り出すマーケティング活動を行い、旅行客の満足を得ることで、口コミによってその地域の魅力が拡散していきます。一方、行政には公平性が求められるため、従来のような地域の行政が主導する観光振興では特定の事業者と協力することが難しく、必要なマーケティング活動が十分できないというジレンマを抱えているのです。



迫真 がん治療新たな地平(2)顔認証で見分ける 2018/1/31 本日の日本経済新聞より

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 「顔認証で世界一をとっているなら、がんも見分けられるのではないか」。2014年末、国立がん研究センター中央病院(東京・中央)で内視鏡科科長の斎藤豊(51)と医員の山田真善(39)から投げかけられた一言が発端だった。NEC医療ソリューション事業部シニアマネージャーの上條憲一(55)は自社の技術陣に掛け合うことにした。それから2年余り、共同研究で大腸がんやがんの一歩手前の病変をリアルタイムで見つける内視鏡診断支援システムを開発できた。19年度にも実用化を目指す。

AIでがんを見分けるシステムを開発するNECの今岡さん(左)と上條さん(川崎市)

 NECは人工知能(AI)を活用し、特定の人の顔を見分ける顔認証技術で精度99%超を誇る。上條が頼ったのは、かつて職場が同じだった顔認証の第一人者、データサイエンス研究所主席研究員の今岡仁(47)だ。

 顔は目や鼻、口などの位置が決まっている。だが、がんは特徴をとらえにくい。今岡は「だめだったらすっぱり断ろう」と思いつつ、典型的な病変の画像を使って組織の模様からがんを見分ける計算手法を試した。

 すると「がんが浮き上がるように見えた」(山田)。一方、今岡は顔認証のノウハウを生かせば性能がさらに高まると考え、5000例の内視鏡画像をAIに学習させ、何度も実験した。

 だが「熟練医並みの性能」を求める山田からはダメ出しの連続だった。今岡は「試験の添削を受けている気分」になったが、引き下がるわけにはいかない。早期がんと前がん病変の発見率を98%まで高めた。「がんの顔つき」も分かるようになった。

 AIと画像認識の組み合わせは同じだが「逆転の発想がうまくいった」のは産業技術総合研究所(茨城県つくば市)の人工知能研究センター主任研究員、野里博和(42)だ。胃がんの診断支援システムは異常を見つけ出すのではなく、正常組織を見つけ、それ以外を異常とみなす。

 野里を力づけたのは、がんの有無を見分ける病理医の「僕らは正常も診断している」という言葉。野里はもともと臨床検査技師を目指していた。その時の人脈を生かし、東邦大学医療センター佐倉病院(千葉県佐倉市)に通い、開発のヒントを得た。

 正常組織の画像でも色むらなどがあり、一様ではない。計算手法を改良し、病理医に成果を見せては新たな画像をもらうなど、開発に約7年をかけた。企業と協力して実用化を目指す。検査技師にはならなかった野里だが「医療に貢献する」初志を貫こうとしている。

(敬称略)



真相深層 原潜が示す中国の深謀 対日関係改善しつつ海洋 進出 2018/1/31 本日の日本経済新聞より

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 中国軍の潜水艦が11日、沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域を航行したことが初めて確認された。対日関係が改善に向かい始めたなかで突然浴びせられた冷や水。中国軍の動きからは、関係改善の流れを止めないギリギリの範囲で、海洋進出を巧みに続ける狙いがのぞく。

中国国旗を掲揚して航行する潜水艦(12日、尖閣諸島北西の東シナ海)=防衛省提供

 「潜航したまま北西に進む潜水艦を探知。追尾する」。10日午後、沖縄県・宮古島周辺の接続水域。海上自衛隊のP3C哨戒機が水中音波探知機(ソノブイ)を投下すると潜水艦のスクリューやエンジン音(音紋)を捉えた。中国海軍とみられる潜水艦を護衛艦「おおなみ」が追尾した。

 潜水艦が取った北西針路の先には日中がつばぜり合いする尖閣諸島がある。近くにいた護衛艦「おおよど」も加わり、2隻態勢で警戒を強めた。翌11日午前、潜水艦は潜航したまま尖閣諸島の接続水域に入域。「日本の接続水域です。応答してください」。海自の警告に反応はない。護衛艦が追尾して接続水域に入ると、近くにいた中国軍の水上艦も後に続いた。

 潜水艦と水上艦が接続水域を出たのは数時間後。潜水艦は12日に東シナ海の公海上で浮上し、中国国旗を掲げた。形状から中国の「シャン(商)級攻撃型原子力潜水艦」と断定された。

 接続水域は領海の外側に隣接する海域で国際海洋法条約に基づき、引き潮時の海岸線から24カイリ(約44キロ)の範囲に設定できる。公海と同様、外国船舶にも「航行の自由」が認められるが、尖閣をめぐり日中はこの海域で神経戦を展開する。

 中国国防省は自衛艦が先に接続水域に入ったため追尾したと説明、自らの行動を正当化した。先に仕掛けたのは日本側という理屈だ。2016年にロシア軍艦を追って自衛艦が接続水域に入った際も、中国軍艦は後に続いて同水域を航行した。自衛艦が尖閣周辺の敏感な海域に入った場合、中国軍艦も入域で対抗してけん制する狙いがある。

 ただ、今回の事案の引き金となった潜水艦の動きについては中国側は説明を避けている。日本経済新聞の取材に対し、通常は文書で回答する中国国防省は電話で即答した。「すでに中国の立場を発表した。立場は同じだ」。水上艦の動向は発表されたが、潜水艦への言及はなかった。中国外務省は「潜水艦については把握していない」と繰り返すだけだ。

 防衛省関係者は、潜水艦の航路は「水深を測りながら航行する訓練の典型的な動き」と指摘し、意図的に接続水域に入ったとみる。一方で中国軍に近い関係筋は「定例訓練の際に不注意にかするように入っただけなのに、中日双方が不信感から意地を張った」と主張する。浮上して国旗を掲げた理由も、示威行為との指摘や水深の浅い海域に着いたためなどの見方もあり割れている。

 北京の複数の軍事筋は「習近平(シー・ジンピン)氏の方針に反しないギリギリの範囲内で軍が独自に動いた」とみる。習氏は昨秋の党大会で、中国の発展のために国際環境の安定を目指すが、領土や主権は断固守ると打ち出した。対日政策に当てはめれば関係改善を目指しつつ海洋進出の手は緩めないとのことになる。軍は国際法が認める接続水域内の潜没航行という手法なら関係改善の流れを止めるには至らず習氏の方針にも反さないと判断したとの見方だ。

 習氏は軍権掌握を進めており、3日にも「全軍は一糸乱れず行動しなければならない」と訓示したばかり。反すれば処分対象となるだけに、習氏の方針から完全な逸脱は考えにくい。尖閣問題で軍が国際法を犯すレベルの挑発行為に出る可能性は低いものの、一方で法に抵触しない範囲での挑発行為はいつでも起こりうるといえる。

 「大国」から「強国」へ向かう中国は今後も海洋進出を続け、まるでサラミを1枚ずつ切るように既成事実を重ねて日本の実効支配を揺るがす。日本と握手する中国の衣の下には鎧(よろい)が見える。日中平和友好条約締結40年という関係改善を目指す節目の一年は、不穏な幕開けとなった。(北京=永井央紀、田島如生)



観光地経営のイノベーション(1)政府が日本版戦略組織を推進 高 橋一夫近畿大学教授 2018/1/30 本日の日本経済新聞より

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 政府は2014年12月に閣議決定した「まち・ひと・しごと創生総合戦略」でDMO(観光地経営組織、Destination Management/Marketing Organization)を地方創生の柱の一つに取り上げました。観光庁は17年の観光立国推進基本計画で、地域の観光振興のかじ取り役として「世界水準のDMO」を20年までに100組織形成するとしており、日本各地でDMOを設立する動きが活発になっています。

 世界水準のDMOの形成に向け、観光庁は日本版DMOとその候補となる法人の登録を進めており、今後は登録された法人の活動を関係省庁が連携して支援していくとしています。

 そもそもDMOは欧米の概念で、日本では各地の観光協会に相当します。国連世界観光機関(UNWTO)の07年の報告書では、DMOの主な機能としてマーケティングによる訪問客の獲得と受け入れ体制の充実を挙げており、日本の観光協会と大差ありません。では政府はなぜ日本版DMOを育成しようとしているのでしょうか。それは実績に大きな差があるからです。

 筆者は過去3回、欧米を回って現地のDMOにヒアリングしてきました。欧米のDMOは本格的なマーケティングを実施し、数値目標を達成することで地域の事業者と信頼関係を築き、行政に観光政策を提言するなど、観光地経営を担う中核組織でした。

 20年に東京五輪を控え、訪日外国人客4000万人を目標とする今こそ地域の観光事業においても改革が必要です。外国人観光客の急増、デジタル化の進展、シェアリングエコノミーの普及といった大波が観光分野にも押し寄せ、従来の常識や手法の見直しが求められています。

 DMOは観光振興組織のマネジメントのあり方を従来の観光協会から抜本的に変えるという意味で、観光地経営のビジネスモデルにおけるイノベーションになります。この連載では地域の成長戦略を担うDMOに求められるマネジメントのあり方と運営上の課題を中心に考えていきます。

 たかはし・かずお 大阪府立大修士。専門は観光マーケティング



外国人材と拓く 共生への鍵(1)いずれ誰も来ない国に 2018 /1/30 本日の日本経済新聞より

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 人口減で日本の働き手が減る構図が続く限り、年々増える外国人労働者は存在感を高める。国際的な人材獲得競争を見据えてどのように受け入れていくべきか。共生の輪を紡ぐ方策を探る。

日本の実習生受け入れ機関の職員と、打ち合わせをするベトナムの送り出し機関の代表(北海道旭川市)

 中国・上海市内には多くのフィリピン人女性が家政婦として働く。マリア・トマスさん(仮名、38)は「子供たちと離れるのはつらいが、家族を支えなくてはいけない」。月収は約8千元(約14万円)。日本で働いた経験があるが「日本よりも2割多い。中国の方が条件がずっと良い」。

 中国の平均年収(2015年)は6万2千元と20年前の12倍。就労を認めない中国に旅行ビザで入国する不法滞在の状態だ。地元メディアによると中国本土のフィリピン人家政婦は約20万人。あっせん業の男性は「ビザなど規制が緩和されれば殺到するだろう」と話す。

 中国93%増、韓国444%増――。国連統計によると00年から15年間で外国出身者の人口は日本で21%増だが近隣国も軒並み増えた。経済成長によりアジアで働く労働者の賃金もうなぎ登りだ。

 日本貿易振興機構の16~17年の調査を10年前と単純比較すると、一般工職の月給はインドネシア・ジャカルタが2倍近く増え、ベトナム・ハノイも3割上昇。日本の半分に満たない都市も多いが、格差は徐々に縮まる。いわゆる単純労働でも受け入れに制約ばかりが目立てば、いずれ選ばれない国になりかねない。

 日本に技能実習生を最も多く送り出すベトナム。ルオン・バン・ベトさん(27)は実習生として日本に行くのをやめ、台湾を出稼ぎ先に選んだ。技能取得が名目の実習制度では滞在が原則3年間で、台湾の方が長く滞在できると考えた。

 実習生を日本に派遣する機関の代表、レ・チューン・ソンさん(32)は「今後5年は日本に行きたがる若者が伸びるだろうが、その先はどうなるか」。こんな思いを日本側に伝えている。

 日本は15年から25年までの10年間で15~64歳の男性人口が270万人減る。これを補う高齢者や女性の就労も限界が近い。25年には団塊の世代が全て75歳以上になる。各年齢層の労働参加率の上昇ペースが2倍に速まり、女性の参加率が男性並みになっても、就業者数は25年をピークに減少に転じるとの試算もある。

 外国人材に三顧の礼で来てもらわなければいけない時代が現実味を帯びる。待っていても経済力が引き寄せるというのはもはや幻想だ。官民ともに外国人の立場になって魅力を売り込む知恵を練り上げる必要がある。

 起業をめざす人材にビザを認める特区となった福岡市では、手厚い支援体制で20人超が会社を起こした。「起業の準備期間が半年というのは短い。1年にしてくれれば」。フランス人のトマ・ポプランさん(29)の注文にも国が対応を検討中だ。

 受け入れ分野を一気に広げるのが難しくても、こうした取り組みは日本の競争力を引き上げる。意欲と質の高い外国人材を得るために、残された時間は少ない。



中小ホテルAIで応援 民泊に対抗スタートアップに商機 空、料金設定短時間で ビースポーク、多言語案内ツール 2018/1/29 本日の日本経済新聞より

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 スタートアップ企業が中小ホテルや旅館の業務見直しを支援する。人工知能(AI)やクラウドソーシングで業務の時間短縮や人手不足に対応する。民泊解禁で中小宿泊施設は苦戦が予想されるが、スタートアップ各社は商機と捉え、外国語対応を省力化したりすることで訪日客などの取り込みを促す。

空の「ホテル番付」は料金設定など運営の効率化につながる

 ホテル建設が相次ぐ大阪・梅田。高級プチホテル「アルモニーアンブラッセ大阪」の加藤正明副総支配人は「毎日90分ほどかかる料金設定の業務時間が10分の1以下に減った」と喜ぶ。経営診断ツール「ホテル番付」を3カ月前から利用する。

 ホテル経営分析ツールを手掛ける空(東京・渋谷)が開発した。ネットで公開されている全国1万軒以上のホテルや旅館の宿泊料金や予約状況などを自動収集できる。ホテル側は価格や稼働率を手軽に比較できる。

 ホテル番付は昨年8月のサービス開始以降、導入するホテルや旅館が1000を超えた。空は日本全体で約5万軒あるホテル・旅館の1割にあたる5000施設との契約を目指す。

 松村大貴社長は「IT(情報技術)で経験や勘に頼っていたホテル業界を支援できる」と力を込める。

 人手不足が深刻なホテルや観光業界で訪日観光客への対応として利用が広がっているのがチャットボット(自動対話システム)だ。英語圏や中国圏からの観光客がスマートフォン(スマホ)から母国語で問い合わせができる「コンシェルジュ」の役割を果たす。

 ビースポーク(東京・渋谷)の「Bebot(ビーボット)」はAIも使ってホテルや空港の案内ができる。宿泊客はホテルにチェックインするとアクセスコードをもらい、スマホで施設のサービスや周辺のお薦めレストランを質問できる。

 国内で約6000部屋相当のホテルで導入されており、18年後半には3倍にする計画だ。社員18人のうち15人が外国籍と多様な人材が集まる。「社員が訪日客の目線で作り込み、口コミでも利用が広がった」(綱川明美社長)。今年から海外での展開も始める。

 宿泊施設の管理を支援するのは、SQUEEZE(スクイーズ、東京・港)だ。クラウドソーシングサービス「ミスタースイート」は、宿泊客のメールや電話の問い合わせに多言語で24時間対応。清掃員の手配もできる。14年の開始以降、累計で1000超の施設を支援してきた。人手不足に悩む地方からの引き合いが強い。

 スクイーズはサイトを通じて旅館の集客や運営も遠隔支援する。これまでのノウハウを使い昨年9月には大阪で自社運営のホテル「Minn(ミン)」を開業。現場に必要な人員はフロント1人。支払いは事前決済で、チェックインも自動化するなど効率的な運営を実現した。館林真一社長は「宿泊業界のスマート化を目指す」と意気込む。



NEXTユニコーン Sansan、クラウドで名刺管理6000社 が導入、人脈を共有 2018/1/29 本日の日本経済新聞より

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 ビジネスでは日々多くの人が出会い名刺交換するが、その後大半が事務所の机の引き出しに眠ったまま。「人と人の出会いを資産に変え、効果的に人が出会う仕組みをつくりたい」。三井物産出身の寺田親弘社長らが2007年に起業したのはこのような思いからだ。

個人向けの名刺管理サービス「エイト」で海外展開も始めた(画面は日本語版)

 Sansan(サンサン)はクラウド型の名刺管理システムを提供している。スマートフォン(スマホ)のカメラやスキャナーで名刺を読み込み連絡先などの情報をクラウド上で管理する。名刺が手元になくても連絡先などを確認できるほか、異動や転職で名刺が代わると情報が更新される。約6000社が導入する法人向けサービスでは、社員が持つ人脈を社内で共有できる。

 海外展開にも力を入れている。シンガポールに拠点を持ち利用企業を開拓している。国内で約180万人以上が使う個人向けのスマホアプリ「Eight(エイト)」についても、17年11月にインドで始めた。ニューデリーのシェアオフィスなどに名刺のスキャナーを置き利用者を開拓する。

 今後は名刺の管理だけでなく、ビジネス向けのSNS(交流サイト)として用途を広げる。企業や利用者が情報発信できる機能を加えたほか、人工知能(AI)を活用して社内の名刺データから次に会うべき人を推薦する機能を実験している。

 企業価値は505億円(日本経済新聞社が登記簿情報などを踏まえ、17年7月の増資を基に推計)。同11月には米ゴールドマン・サックスらが資本参加した。日本経済新聞社も出資している。

(随時掲載)



がんVS免疫療法 攻防100年高コストや副作用課題 2018/01/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「がんVS免疫療法 攻防100年高コストや副作用課題」です。





ウイルスや細菌などの病原体から身を守る免疫の仕組みを利用する「がん免疫療法」が注目されている。免疫をがん治療に生かす研究は100年を超す歴史があるが、科学的に治療効果を認められたものはほとんどなく、これまでは異端視されていた。状況を変えたのは2つの新しい技術の登場で、手術、放射線、抗がん剤などの薬物治療に次ぐ「第4の治療法」として定着しつつある。

19世紀末、米ニューヨークの病院で、がん患者が溶血性連鎖球菌(溶連菌)に感染し高熱を出した。熱が下がって一命をとりとめると、不思議なことが起きていた。がんが縮小していたのだ。外科医ウィリアム・コーリーは急性症状を伴う感染症にかかったがん患者で似た症例があると気づき、殺した細菌を感染させてみたところ、がんが消える患者もいた。

毒性の強い細菌に感染することで免疫が刺激され、がん細胞も攻撃したとみられる。コーリーの手法はがん免疫療法の先がけといわれる。だが副作用で命を落とす患者も多く、定着しなかった。

免疫が再び注目されるのは1950年代後半だ。ノーベル生理学・医学賞を受賞したフランク・バーネット氏が「免疫が日々発生するがん細胞を殺し、がんを未然に防いでいる」という説を提唱。60年代以降、結核予防ワクチンのBCGを使う治療法や丸山ワクチンが登場した。

その後、免疫細胞にがんを攻撃するよう伝えて活性化するサイトカインという物質や免疫の司令塔となる樹状細胞を利用する方法、ペプチドと呼ぶたんぱく質断片を使うワクチンなども試みられた。

効果があると科学的に認められるには、いずれも数多くの患者を対象にした臨床試験(治験)が必要だ。しかも、抗がん剤など従来の治療を受けた患者らと比べて、治療成績がよくなることを示さなければならない。免疫療法でそうした効果を証明できたものはほとんどなかった。

「がん細胞は免疫を巧妙にかいくぐっているからだ」と長崎大学の池田裕明教授は説明する。「免疫を活性化する手法ばかり研究していた」ことが失敗の原因とみる。

20世紀末、がんが免疫の攻撃を逃れる仕組みの研究が進んだ。その中で見つかったのが「免疫チェックポイント分子」と呼ぶたんぱく質だ。

免疫は暴走すると自身の正常な細胞も攻撃してしまうため、普段はアクセルとブレーキで制御されている。がん細胞はこの仕組みを悪用し、免疫にブレーキをかけて攻撃を中止させる。

チェックポイント分子の「CTLA―4」や「PD―1」の働きが解明され、2010年代前半にその働きを阻害する薬が開発された。免疫細胞は攻撃力を取り戻してがん細胞を殺す。皮膚のがんの一種の悪性黒色腫で高い治療成績を上げ、肺がんや腎臓がんなどでも国内承認された。

CTLA―4の機能を解明した米テキサス州立大学のジェームズ・アリソン教授、PD―1を突き止めた京都大学の本庶佑特別教授はノーベル賞の有力候補といわれる。

注目を集める新しい治療法はもうひとつある。「遺伝子改変T細胞療法」だ。患者から免疫細胞のT細胞を取り出し、がん細胞を見つけると活性化して増殖する機能を遺伝子操作で組み込む。増やしたうえで患者の体内に戻すと、免疫細胞はがんが消えるまで増殖する。大阪大学の保仙直毅准教授は「免疫のアクセルを踏みっぱなしにする治療法だ」と説明する。

がんを見つけるセンサーに「キメラ抗原受容体(CAR)」を使うタイプはT細胞と組み合わせて「CAR―T細胞療法」とも呼ばれる。新潟大学の今井千速准教授らが米国留学中の04年に論文発表し、スイスの製薬大手ノバルティスが実用化。17年8月、一部の白血病を対象に米国で承認された。

治療効果は抜群で、1回の点滴で7~9割の患者でがん細胞が消え、専門家らを驚かせた。日本でも近く実用化される見通しだ。

2つのがん免疫療法にも課題はある。免疫チェックポイント阻害剤が効くのは承認されたがんのうちの2~3割の患者で、数百万円という高い投薬費も問題になった。CAR―T療法は塊を作る「固形がん」には効果が薄いとされる。過剰な免疫反応による発熱や呼吸不全などの副作用もある。遺伝子操作や細胞の培養にコストがかかり、治療費は5000万円を超す。

課題の克服を目指す研究も国内外で進んでいる。がん免疫療法はこれからが本番だ。(岩井淳哉)

キーワード 免疫機構 ウイルスや細菌といった体の中にある病原体を攻撃して排除する仕組み。初めて出合った病原体にいち早く対応する「自然免疫」のほか、一度かかった病原体をたたく「獲得免疫」がある。獲得免疫は司令塔役の樹状細胞から伝えられた病原体の目印の情報を記憶し、目印を見つけると素早く攻撃を始める。 がんの免疫療法には、がん細胞への攻撃力を強める方法とがん細胞が免疫にかけているブレーキを解除して攻撃力を取り戻すものがある。CAR―T細胞療法などは前者で、免疫チェックポイント阻害剤は後者に当たる。免疫療法といっても治療効果が科学的に証明されたものは限られ、怪しげな治療もはびこっている。

キーワード 免疫機構



経営の視点 企業を蝕む「熱意なき職場」 社員の強み重視 の文化を 編集委員 西條都夫 2018/1/28 本日の日本経済新 聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の企業面にある「経営の視点 企業を蝕む「熱意なき職場」 社員の強み重視の文化を 編集委員 西條都夫」です。





 次の質問に「はい」「いいえ」で答えてほしい。

・私は仕事をする上で、自分の最も得意なことを行う機会が毎日ある。

・職場で自分の意見が考慮されていると感じる。

・最近1週間で自分の仕事が褒められたり、認められたりしたことがある。

・職場に親友がいる。

・過去1年の間に仕事を通じて学び、成長する機会を持った。

 これらの質問は米調査会社のギャラップが仕事への熱意(エンゲージメント)を調べるために実施しているアンケートの一部だ。「はい」が多い人や職場ほどモチベーションが高く、主体的に仕事に取り組んでいる。逆に5つ全て「いいえ」の人は、転職を考えたほうがいいかもしれない。

日本では社員の離職率は高くないが…(都内のオフィスビル)

 こうした働く人のエンゲージメント調査は米欧で盛んだ。結果をみると、実は日本人の仕事に対する熱意はほぼすべての調査で最下位クラス。ギャラップ調査では「仕事に主体的に取り組む人」は全体の6%にとどまり、世界139カ国のなかで132位だった。米IBMが昨年発表した同種の調査でも、43カ国中42位で、日本より劣るのはハンガリーだけだった。

 かと思えば、こんなデータもある。近畿大学の松山一紀教授の最近の調査では、会社員1千人のうち「この会社でずっと働き続けたい」という積極的終身雇用派が25%だったのに対し、「変わりたいと思うことはあるが、このまま続けることになるだろう」という消極派(イヤイヤ派)が40%とそれを上回った。

 松山教授によると、消極派が多いのは今に始まった話ではなく、「高度成長時代にもイヤイヤ派が2割を超えていた」という。会社に不満はあるが、かといって転職するまでの踏ん切りはなく、そこに滞留する。低エンゲージメント・ワーカーの典型といえる。

 こうした調査結果は企業経営にとっても重大な警鐘といえるだろう。米国企業は一般に社員の意識調査に熱心だ。社員の不満が高まれば、優秀な人から順に会社を辞めて、大きな損失につながるからだ。

 一方、日本は労働市場の流動性が低く、社員の離職率は高くない。だから経営者は働き手の心のありように鈍感だが、社員が会社を辞めないことと、彼らが生き生きと仕事をしているかはまた別の話だ。むしろ一連の調査が示すように、日本人は受動的なまじめさはあっても、自ら積極的に仕事に向きあう姿勢に欠け、それが労働生産性の低さやイノベーション不足に帰結しているのではないか。

 処方箋はある。社員の意欲を最も左右するのは直属の上司との関係だ。部下とよく話し、彼らの「弱み」ではなく、「強み」に着目する上司がいれば、職場の意欲は目に見えて上がる。マネジャーに適切な人を選び、彼らの技量を高める工夫が企業には欠かせない。

 こうした取り組みは地味で、すぐに効果が上がるというものではない。だが、さぼれば(または経営者が無関心のままでは)確実に組織の活力は減退し、業績にも悪影響が及ぶだろう。不摂生や運動不足を続ければ、いつかは重篤な生活習慣病に蝕(むしば)まれる。それに少し似ている。



先進国経済、10年ぶり需要不足解消へ 浮揚力は弱く 2018/01/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「先進国経済、10年ぶり需要不足解消へ 浮揚力は弱く」です。





2008年のリーマン・ショック以降、先進国を苦しめてきた「需要不足」と呼ばれる状態が今年、約10年ぶりに解消される見通しとなった。米国の景気回復を追い風に貿易や投資が刺激され、需要が増えている。だがデジタル経済化に伴う経済の変質などの構造問題で物価の伸びも鈍い。金融緩和に頼らず、浮揚力を高めていけるか。主要国の経済運営は、なお難しいかじ取りを迫られている。

国際通貨基金(IMF)の推計によると、日米欧などの先進39カ国はリーマン危機直後の09年、国内総生産(GDP)の3.9%にあたる1.5兆ドル(約163兆円)の需要不足に陥った。急激な需要減は大量の失業を招き、企業の設備投資も急減。だが、先進各国の経済対策で需要不足は徐々に解消に向かい、18年には0.1%と小幅ながらプラスに転じる見通しだ。

経済は何年もかけて大きな波を打つように変動しており、この「景気循環」と呼ぶ流れを判断する目安が「需給ギャップ」だ。需要が不足すると経済活動が停滞して物価を下押しするデフレ圧力が強まるため、各国は金融緩和や財政出動で需要を喚起する。

リーマン・ショック後の危機対応に伴う相次ぐ追加財政支出で、17年の先進国の政府債務残高は50兆ドル(約5500兆円)強と10年間でおよそ7割も増えた。13年には主要7カ国(G7)の全てが需要不足だったが、18年にはドイツが1.0%、米国が0.7%の需要超過になる見込み。専門家の間では超過の幅も順調に広がるとの分析が多い。日本は09年に7.3%だった需要不足が0.7%まで縮小しており、日銀の試算ではすでにプラスに転じている。

背景には世界経済の同時成長がある。米国は3次にわたる大規模な量的金融緩和や減税で回復の足取りを強め、景気拡大は9年に及ぶ。数年前まで停滞感のあった欧州や中国も持ち直し、建設機械や電子部品の貿易も急回復中だ。17年の世界の貿易量は4.7%増と16年(2.5%増)から勢いを増し、危機から10年を経て世界経済の現状は「大いなる安定」ともいわれる。経済の活動水準が上がって雇用が逼迫し、先進国の失業率も5%台半ばと00年以降の最低レベルだ。IMFは22日、18年と19年の世界成長率見通しをともに3.7%から3.9%へと上方修正した。

過去5年、先進国の物価上昇率の平均は中央銀行が目標とする2%を下回ってきた。経済学のセオリー通りなら、需要超過の下で物価や賃金にも上昇圧力がかかってきてもおかしくない。実際、欧米では物価が少しずつ上向く兆しが出ており、IMFは19年に2%を上回るとの見通しを立てるなど強気だ。

米連邦準備理事会(FRB)は18年のシナリオとして3回の利上げを見込む。欧州中央銀行(ECB)も今月から資産購入を減らし、正常化を探り始めた中銀の一挙一動に市場は敏感に反応している。

米長期金利は年明け以降、米税制改革や原油高に伴うインフレ期待を先取りするように上昇傾向をたどった。もし物価が予想以上のペースで上がり始めれば、利上げのテンポも速めざるを得なくなる。

問題は、経済がそうした引き締めに耐えられるほど強固になったのかどうかだ。世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツ創業者のレイ・ダリオ氏は「FRBが1~1.25%の(追加)利上げをすれば資産価格は下落する」と話す。米国の株価や不動産には過熱感もみえ、調整が始まれば世界に波及する恐れがある。低金利で均衡を保っているグローバル経済が、一瞬にして変調を来すリスクと背中合わせだ。

物価上昇には懐疑的な見方も多い。世界的なデジタル経済の拡大と人口の高齢化、政府債務の増大――。「循環的な面では危機の後遺症がほぼなくなるものの、構造的な成長力の弱さは払拭されていない」。みずほ総合研究所の門間一夫氏はこう語る。

失業率が下がるほど物価が上がるという負の相関関係は、右肩下がりの「フィリップス曲線」に示される。危機後はこの連動性が薄れ、日本や米国は失業率が完全雇用と考えられている水準を下回っている割に物価の反応が鈍い。

オンラインショッピングの普及や機械化で賃金が抑えられるといった歴史的な構造変化が進んでいるためで、2000年に3%弱だった先進国の潜在成長率は金融危機後に1%強に低下し、いまも1%台半ばだ。経済の実力が弱いままだと、次の景気後退期が来るのが早まる恐れがある。

需給ギャップが10年ぶりプラスとはいえ、中国や新興国との競争激化などで先進国がかつてのような成長トレンドを描くのは難しい。サマーズ元米財務長官が唱えた「長期停滞論」に重なるもので、各国当局者の戸惑いは消えない。この先、需要超過の勢いや物価、利上げテンポなど様々な景気の変数がどう推移するのか。世界経済が安泰といえる状況にはまだ遠い。(後藤達也)