モルディブ、迫る中国支配インフラ整備やFTA膨らむ債務 2018/1/16 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「モルディブ、迫る中国支配インフラ整備やFTA膨らむ債務」です。





 【ニューデリー=黒沼勇史】インド洋の島国モルディブが中国への依存を強めている。インフラ整備で「カネ」と「ヒト」を中国に頼り、2017年12月に結んだ「中モルディブ自由貿易協定(FTA)」により「モノ」の流入も一気に増える見通し。“蜜月”の代償は対中債務の膨張だ。借金の返済が滞れば、中国による実質的な「支配力」が高まりかねない。

首都マレと空港島を結ぶ「中国モルディブ友好大橋」などインフラ整備で対中貿易の不均衡が進む

 「少なくとも僕らにとって良い協定だと思う。魚が売れる」。モルディブ最南端のアッドゥ環礁で、カツオ漁師のイアースさん(29)は中国とのFTAを巡ってこう話した。周囲にいる人たちの「政治的な発言を避けた方がよい」との忠告を受け、通り一遍の評価以外は口にしなかった。

 FTAはモルディブのヤミーン大統領が習近平(シー・ジンピン)国家主席と会うため訪中した昨年12月に結んだ。

 だが直前の議会審議は異常だった。1千ページの協定文が議会内にさらされたのは十数分のみ。開会後に招集通知を受け取った野党議員ファーミィ氏は「与党議員が文書も読まず可決した」と憤る。「中国側から習主席との会談日程を急に告げられ慌てて準備した」と現地ジャーナリストは分析する。

 モノの輸出額の97%を魚が占めるモルディブは、対中輸出も魚が99.7%。モハメド・サイード経済開発相は「世界最大の市場に魚を免税で輸出できる」と意義を強調する。

 だがモルディブの中国からの輸入額は対中輸出額の200倍近くに上る。「FTAは我々にメリットがなく、小売業など庶民が打撃を受けるだけ」と野党政治家のナディラ氏は指摘する。低関税の中国製品が大量に流入すれば、対中貿易の不均衡はさらに大きくなる。

 過剰な対中接近の代償はすでに国際収支を揺るがしている。貿易収支は16年に赤字に転落した。リゾート地で稼ぐサービス輸出で黒字を保ってきたが、ヤミーン氏が進めるインフラ整備向けに中国からの機械やセメントの輸入が急増した。

 「建世界一流橋梁工程(世界一流の橋を建てよう)」。首都マレと空港島を結ぶ全長2キロの「中国モルディブ友好大橋」の建設地には、中国語のこんな看板があった。空港北側の人工島でも中国工商銀行が融資し、中国企業が7千戸の住宅地を造成する。アッドゥ環礁では雑木林の中に赤い集合住宅が現れる。「引き渡しを待つばかりだ」。中国人の責任者は短く言うと、同僚と向き合うマージャン卓に視線を戻した。

 各地で進む中国主導のインフラ整備は「詳細を公表しないので誰も全体像を知らない」(在マレの外交官)。ヤミーン大統領が支持を増やそうと躍起になっているとの見方がある。だがインフラ整備は対外債務を膨張させる。16年時点で対外債務は国内総生産(GDP)の35%に上り、国際通貨基金(IMF)は21年には51%に達すると警告した。野党幹部は「対外債務の70%が中国からの借金だ」と分析する。

 政府はIMFに対し「インフラ整備は経済成長をけん引する」と反論するが、在マレの外交官は「セメントも鉄鋼も食料もすべて輸入するため、経済波及効果がない」という。どの建設現場も中国人とバングラデシュ人ばかり。雇用面でも地元への恩恵は少ない。

 「債務返済に窮したら島々を中国に譲り渡すしかない」。隣国スリランカが債務圧縮と引き換えに、南部ハンバントタ港の運営権を中国に与えた昨年の事例を引き合いに、この在マレ外交官はこう指摘する。現地ジャーナリストも見方は同じだ。「今後1世紀、モルディブは主権を失い、中国に逆らえなくなる」

 経済圏や軍事的勢力圏を西方に広げる「一帯一路」構想を進める中国にとって、インド洋の真ん中のモルディブは海路の要衝となる。昨年は中国の原子力潜水艦がモルディブに寄港したとされ、南部の島では中国が海軍基地を設けるのではないかとささやかれる。インフラ整備で「債務のワナ」が深まれば、モルディブが中国軍の出先と化すリスクがますます高まる。



シンゾウとの距離 世界のリーダー(1)ドナルド・トランプ 打算入り交じる蜜月 2018/1/16 本日の日本経済新聞より

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 「我々には様々なシミュレーションがある」。本題を切り出したのは米大統領、ドナルド・トランプ(71)だった。昨年11月5日の埼玉県川越市のゴルフ場「霞ケ関カンツリー倶楽部」。トランプは首相、安倍晋三(63)とのプレーの合間に歩きながら北朝鮮への軍事的な選択肢を含めた行動計画を明かした。

シンゾウ・ドナルド関係はまもなく2年目に入る=ゲッティ共同

 「率直に聞かせてくれてありがとう」と伝えた安倍にトランプは話を続けた。「北朝鮮情勢のこともある。米国からの防衛装備品の購入を増やしてほしい。現状維持ではなく、さらに、だ」。翌6日の首脳会談後の記者会見で「首相はこれから様々な防衛装備品を米国から購入することになる」と明言した。

2人の電話17回

 「ゴルフは休日の趣味と思われがちだが、私たちは、実は仕事の話ばかりしていた」。トランプは同じ日の夕食会で上機嫌にあいさつした。シンゾウ、ドナルドとファーストネームで呼び合う2人は、過去の日米首脳と比較しても、蜜月ぶりが目立つ。

 日米同盟を基軸に外交方針を組み立てる日本にとって米大統領との関係はその核心だ。こちらの意見を通すにはまずは何でも話せる関係を作らないといけない――。安倍が一昨年11月の大統領選直後にほかの首脳に先駆けて就任前のトランプと会ったのも、そんな冷静な計算からだ。

 トランプの対人関係は明快だ。「私に良くしてくれる人にはきちんと対応するが、扱いがひどかったり、私を利用しようとしたりする人間には激しく反撃する」

 昨年10月末のホワイトハウスの大統領執務室。初の日本訪問を控えて安倍と電話していたトランプは「シンゾウが言うなら考えてみる」と応じた。安倍はフィリピンで11月中旬に開く東アジア首脳会議(EAS)の意義を訴えていた。

 日中韓やベトナムを含め12日間の長丁場となるアジア歴訪で、最終日にあるEASへの出席を当初、見送るつもりだったトランプ。出発直前、一転して出席を決めた。当日の会議の開始時間が大幅に遅れたことで結果的には欠席したが、安倍の助言には耳を傾ける。

 トランプのホワイトハウス入りから1年。2人の電話は表になっているだけで17回を数え、安倍にとって前大統領バラク・オバマ(56)との4年間の回数を超えた。トランプと安倍の相性が合うのは間違いない。

 その逆にトランプは自らに寄り添わない首脳には厳しい態度に出る。就任直後、オーストラリア首相のマルコム・ターンブル(63)と難民受け入れ問題を巡って対立。「不愉快だ」と一方的に電話を切った。

政治は貸し借り

 政治が「貸し」「借り」で成り立つ以上、そこには相性や友情だけでなく、打算も混在する。問題は首脳間の相性や友情、打算が政策まで変えるのかどうか。

 1985年8月15日に靖国神社を公式参拝した当時の首相、中曽根康弘(99)は翌年の参拝を見送った。参拝した場合に良好な関係にあった中国共産党総書記、胡耀邦が国内での権力闘争で足を引っ張られかねないと懸念したとみられた。

 今は蜜月のトランプと安倍の関係もこうした局面が訪れる可能性がある。2018年11月の米中間選挙でトランプ率いる共和党が敗北、20年大統領選の再選に黄色信号がともるとき、安倍は試される。

 核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮への対応など日本の安全保障政策は米国に依存する。一方でトランプが求める防衛装備品の買い増しや、米側の一部に根強い日米の自由貿易協定(FTA)の締結は簡単にのめない。

 米中間選挙の情勢や結果次第でトランプが日本側が警戒するFTAを迫る展開もあり得る。友情と打算が入り交じるトランプと安倍の蜜月関係は2年目を迎える。

=敬称略

(ワシントン=永沢毅)

 首脳同士と国家間の関係は連動する。北朝鮮をはじめ激変する国際情勢を見据え、安倍晋三首相と世界のリーダーとの関係を描く。



真相深層 日本、ミャンマーを積極支援中国傾斜引き留め ロヒンギャ巡り批判リスク 2018/1/16 本日の日本経済新聞より

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 日本政府がイスラム系少数民族ロヒンギャに対する迫害問題を抱えるミャンマーを積極的に支援している。同国を経済と安全保障の両面で東南アジアの要衝と位置づける日本にとって、影響力を強める中国への傾斜を食い止めたい思惑がある。一方で迫害問題をめぐり国際社会からの批判が向けられるリスクもある。

河野外相(左)はミャンマーのスー・チー国家顧問兼外相に難民の帰還への支援を表明した(12日、ネピドー)=共同

 河野太郎外相は13日、ロヒンギャが暮らすミャンマー西部ラカイン州を視察した。ミャンマー国軍のヘリコプターなどを使いながら約4時間半をかけて約300キロを移動。記者団に「日本政府はミャンマー政府の努力を支えていく」と難民帰還に向けたミャンマー政府への支援を強調した。

 外国政府の閣僚がラカイン州入りするのは初めてで、ミャンマー側が日本の関与を歓迎する姿勢もにじむ。河野氏は前日の12日には首都ネピドーでアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相と会談。難民の帰還支援などのため新たに総額2300万ドル(約26億円)を拠出すると表明した。

欧米と一線画す

 ミャンマーの軍事政権下で迫害を受けたロヒンギャは「不法移民」として扱われていた。昨年8月にロヒンギャ系武装集団が治安部隊を襲撃して以降、国軍の掃討作戦を逃れてバングラデシュに出たロヒンギャは65万人に達するとされる。

 欧米やイスラム諸国はこれを人道問題だと非難。米政府は昨年11月にミャンマーの治安部隊による組織的な迫害だとして「民族浄化」にあたると断定。スー・チー氏に対する欧米の見方は非難一辺倒だと言っていい。

 一方、日本は欧米の立場とは一線を画す立場だ。「人権状況に懸念を表明する」としつつ、ミャンマー政府の「民主的国造り」を支援する姿勢で一貫。ロヒンギャ問題の解決には「ミャンマー政府自身が取り組む必要がある」とのスタンスだ。

 昨年12月5日、ジュネーブで開かれた国連人権理事会特別会合で、日本は「迫害に関する国際調査を効果的に実施するには、ミャンマー政府との対話が必要だ」と主張し、国連による国際調査団の受け入れを求めた決議案を棄権した。これに先立つ11月にも、国連総会で人権問題を扱う委員会で採択したミャンマー非難決議に棄権している。

 むしろ、日本政府はミャンマーへの経済的支援のテコ入れを加速している。安倍晋三首相は11月に東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議でスー・チー氏と会談、12月にはティン・チョー大統領を日本に招待した。

経済・安保の要衝

 日本がミャンマーを重視する狙いは何か。外務省幹部は「経済的、政治的、地政学的に重要な地域だ」と指摘する。念頭にあるのは広域経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国だ。スー・チー氏は昨年12月、北京で習近平(シー・ジンピン)国家主席と会談。習氏はミャンマーのインフラ事業を積極支援すると表明した。

 ミャンマーは12年以降、年率7%程度の経済成長を遂げ、政府も規制緩和など投資環境の改善をはかっている。日本政府はヤンゴン郊外で先駆的な工業化の試みである「ティラワ工業団地」やインフラへの円借款供与で経済改革を支援してきた。外務省によると、日本企業は昨年11月時点で369社が進出している。

 日本の対ミャンマー戦略は安倍政権がアジア・アフリカ地域の安定と成長に向けて提唱した「自由で開かれたインド太平洋戦略」と連動する。南シナ海とインド洋を結ぶ海路の要衝はマラッカ海峡だが、ミャンマーは海を経ずにインド洋へと抜け出ることができる陸路の要衝となり得る。

 中国は内陸部の雲南省・昆明と、ミャンマーのインド洋沿いの港町であるチャオピューをつなぐ原油パイプラインを稼働させ、港湾整備も手掛けている。一方、日本はミャンマー、タイ両政府とともに南部ダウェーの共同開発構想を持つ。

 「長期的な視座での支援の気持ちに感謝したい」。スー・チー氏は12日の河野氏との会談後、記者会見でこう語った。日本政府も孤立を深めるミャンマーを積極的に支援すれば国際社会から厳しい視線を注がれるリスクは分かっている。日本政府関係者は「中国こそ日本の孤立を願っているのでは」と警戒する。

(恩地洋介、新田裕一)



こころの健康学 適度な緊張感で良い成果 2018/1/15 本日 の日本経済新聞より

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 今年の正月は比較的ゆっくりできた。それはそれでよかったのだが、あまりゆっくりした気持ちになりすぎると思いがけない失敗をすることがあるので、注意しなくてはならない。

イラスト・大塚いちお

 このようなことを書くのは、私自身、正月にのんびりしすぎてこのコラムの原稿を書くのを忘れそうになったからだ。私はできるだけその時期に合うテーマを選びたいと考えて、比較的ギリギリに原稿を書くようにしているのだが、今回は正月にのんびりしすぎて、いつの間にか締め切りがきてしまっていた。

 ストレスを感じなさすぎると仕事のパフォーマンスが上がらないというのは、自ら体験した感じだ。ストレスを感じるからこそパフォーマンスがあがることを示した実験がある。心理学者のヤーキースとドットソンがした実験で、ネズミに白と黒を区別する課題を与え、間違えると電流を流して学習を促した。

 その結果、流す電流の強さによって失敗の頻度が変わることがわかった。電流が全く流れなかったり、軽くしか流れなかったりすると失敗が増える。気が緩み油断するからなのだろう。電気刺激を次第に強くすると失敗は少なくなるが、強くなりすぎるとまた増えてくる。失敗すると大変だと考えて緊張するからなのだろう。

 パフォーマンスが落ちたり失敗が多くなったりするのは、人間も同じだ。パフォーマンスを上げるためには、ほどほどの緊張感が必要なのだ。もっとも、緊張がずっと続くと疲れがたまるので、適度に緊張を解くことも大切だ。適度に緊張し適度に緊張を解く。その加減はいくつになっても難しいと感じている。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



経営の視点 稲盛氏が褒めた「2000円節約」 現場の 共感、不正防ぐ 編集委員 塩田宏之 2018/1/15 本日の日本 経済新聞より

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 経営者はどれだけ社員と意思疎通できているのか。昨年、そんな懸念を抱かせる事例が相次いだ。

 日産自動車では無資格者による検査が社長の是正宣言後も続いた。製品データの改ざん問題で「我々の自助努力では根本的な原因を探し出せないのではないか」と自信喪失気味に語った経営者もいた。

稲盛和夫 京セラ名誉会長(2015年7月17日、京都市)

 「会社は赤の他人の集まり。経営者になれば社員は自然に従う、と思うのは勘違いだ」。大田嘉仁・京セラコミュニケーションシステム顧問はこう話す。大田氏が長年秘書として仕えた稲盛和夫・京セラ名誉会長は「全従業員の物心両面の幸福を追求する」との経営理念を掲げた。さらに信頼関係を築くため細かい努力を積み重ねたという。

 工場など現場に赴く。社員に感謝する。コンパを開いて杯を交わす。再建のために会長を務めた日本航空でも同じだった。

 伊丹空港を視察した時、カウンター勤務の若い女性社員が月2千円のコスト削減成果を発表した。金額の少なさに周囲は困惑したが、稲盛氏は「そういう努力が一番大事なんだ」と大いに褒めた。この話はメールで部署を越えて広まった。

 「安全と健康を何よりも大切にお過ごし下さい」

 クボタの社員、約1万1千人の自宅には毎年、バースデーカードが届く。開くと、上半分に木股昌俊社長の顔写真と手書きメッセージが印刷されている。

 木股氏は工場の課長時代、小さな事故やケガの多さに悩んでいた。そこで誕生日を迎えた社員一人ひとりに「ケガするなよ」などと声をかけるようにしたら、ピタッと止まったという。

 今は役員、部長、関係会社社長など約300人の誕生日に「よく頑張っているな」などと個別にメールを送っている。部課長は社長の代理としてバースデーカードの下半分にメッセージを書き、部下全員に送る。

 現場にも頻繁に出向く。海外の主要6拠点と国内の製造拠点約10カ所を、平均で年2回ずつ回る。現場視察で大切なのは「ゆっくりヒマそうに歩くこと」(木股社長)。社員が話しかけやすいようにするためだ。

 積水ハウスの和田勇会長は月1回、店長など次世代を担う現場のリーダーら約80人を集めて「希望塾」を開く。和田会長が3時間ほど経営ビジョンや体験談を語った後、社員が感想や意見を述べる。

 ビジョンで国際事業などの将来性を聞き「少子化で住宅産業の先行きは暗いというイメージが変わった」と話す社員が多いという。和田会長は「インターネットの時代になっても、顔を付き合わせて心を通わせる人間関係が重要」と話す。

 企業が成長するには、容易には達成できない目標に挑戦することも必要だろう。経営者への共感があれば社員も発奮し、飛躍や革新をもたらすかもしれない。しかし「現場を理解せず、無理な目標を押しつけてくる」と感じたらどうか。

 米系コンサルティング会社、フライシュマン・ヒラード・ジャパンの田中慎一社長は「経営者の指示に現場が反発するのはまだ健全な状態」と言う。面従腹背になったら、飛躍や革新どころか、不正や隠蔽が起きかねない。



風見鶏 インスタ政治どこへ行く メッセージは伝わるか 20 18/1/14 本日の日本経済新聞より

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 日本有数の歓楽街、東京・歌舞伎町にある雑居ビルの5階。8畳ほどのワンルームに専門機材を並べてスタジオにする伊藤弘さんは同地域の飲食店で働く女性の営業写真を撮るベテランカメラマンだ。年間500人以上を撮影する伊藤さんを新年早々、政治家や政治家の卵が訪れる。

統一地方選立候補予定者の写真撮影をする伊藤さん(東京都新宿区)

 お目当てはプロの撮影の技術に加え、撮影した写真をコンピューターを使って一枚一枚修整する技術の高さだ。夜の世界での評判が口コミで広がり、閣僚経験者や地方議員、首長ら50人近くの写真を撮影した。メインは選挙用のポスター写真撮影だが、最近は交流サイト(SNS)にアップする写真の依頼も多い。

 少しでも見栄えが良くなるように政治家が写真を修整するのは今までも珍しくないが、伊藤さんによると、SNSの普及の影響が無視できないという。「スマホ写真に慣れた人にはプロの技術が出過ぎるとウソっぽく見える。ぎりぎりの自然な修整が難しい」

 2017年のユーキャン新語・流行語大賞に選ばれた「インスタ映え」。写真共有アプリ「インスタグラム」に投稿した際に見栄えが良いという意味だが、写真写りを気にするのは政治家も同じだ。政治家の多くがSNSで自分の写真を投稿し、政治活動を報告する時代。安倍晋三首相も昨年12月にインスタの公式アカウントを開設した。

 「顔と名前を覚えてもらうことが選挙の基本。有権者全員に会えない以上、写真は最も有効」。選挙プランナーの三浦博史氏は指摘する。日本の政治家の典型的なポスターは候補者の顔が大きく映る。これにSNSの普及が加わり、これまで以上に政治家が写真写りを気にするようになっているようだ。

米大統領選でヒラリー陣営が使ったポスター

 選挙ポスターもインスタ映えの時代と聞く。永田町で評判の小泉進次郎衆院議員のポスターを見に行ってみた。京急横須賀中央駅から徒歩5分ほどの老舗の喫茶店。所狭しと店内に同氏のポスターが何枚も張ってあった。真っ青な空と海をバックに控えめな大きさの小泉氏が遠くを見つめるデザイン。インテリアなどが並ぶ喫茶店に溶け込む。店主は「政治家っぽくないですよね」と話していた。

 インスタ発祥の地、米国ではどうか。庭先などに設置される「ヤードサイン」と呼ばれる候補者のポスターにはほとんどの場合、文字だけだ。米大統領選のオバマ前大統領やクリントン元国務長官の陣営でボランティア経験がある海野素央明治大学教授(心理学)に聞くと「陣営は写真よりもメッセージやスローガンを重視します。履歴書にも写真を貼らない国ですから」と答えてくれた。

 もちろん米国でもオバマ氏やトランプ大統領の長女、イバンカさんら政界関係者のインスタはフォロワーが多い。しかし日本の人気インスタグラマーの宮田美紅さんによると「米国ではSNSはコミュニケーションの場だが、日本は一方通行」だという。

 歌舞伎町のカメラマンの伊藤さんに話を戻す。すでに19年の統一地方選の候補者から撮影の依頼が相次いでいるが「『どんな政治家になるんですか』と聞いても答えられない人が多くてね。それではどんな写真にしたいかも決められない」。写真写りだけでは政治のメッセージは伝わらない。

 インスタで人気の「ストーリー機能」は写真や動画が投稿後24時間たつと自動的に消去される。17年の衆院選での小池百合子都知事による希望の党騒動が脳裏をよぎる。一瞬一瞬を切り取る写真の一こまのように使い捨ての政治家にはならないでもらいたい。(政治部次長 中山真)



首相、視線の先に対ロ関係 バルト3国訪問「融和的」批判かわす狙 い 2018/1/14 本日の日本経済新聞より

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 【リガ=山崎純】欧州歴訪中の安倍晋三首相は13日、ラトビアのクチンスキス首相とリガの首相府で会談した。その後、リトアニアのスクバルネリス首相とも会談し、エストニアを含めたバルト3国への訪問を終える。3国への訪問は日本の首相で初。視線の先にあるのは、対ロシア関係を踏まえたバランス外交だ。

 「法の支配に基づく国際秩序が挑戦を受けるなか、これを維持・強化すべく緊密に協力する」。安倍首相は12日(日本時間13日未明)、日エストニア首脳会談後の共同記者会見で強調した。エストニアのラタス首相がウクライナに侵攻したロシアへの制裁維持を訴えたのを受けた発言で「名指しはしないがロシアへの厳しい姿勢をアピールした」(政府関係者)。

 今回のバルト3国訪問の背景にはロシア政策をめぐる狙いがある。「日本がロシアに甘いという誤解を解きたい」。外務省関係者はこう語る。

 バルト3国は小国だが、国境を接するロシアを巡る問題では一定の発言力はある。北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)の一員であり、ロシアによるウクライナ南部クリミアの併合後にはNATOが部隊を展開し、欧米の対ロ抑止の最前線となった。第2次世界大戦ではソ連に強制的に併合された歴史もあり、ロシアへの反感は根強い。

 それだけに、日本の対ロ政策が「融和的」と反感をもたれる恐れはある。日本は北方領土交渉でロシアから前向きな態度を引き出したい思惑から、共同経済活動や極東での経済協力の検討を進めている。対ロ制裁に動く欧米各国で批判が広がれば日本が国際社会で孤立するリスクもはらむ。

 「首脳会談で安倍首相は日本の最近の対ロ政策を丁寧に説明していた」。会談の出席者は語る。安倍首相が会う機会が多い主要国首脳だけでなく、ロシア問題に深く関わる3国のトップにも日本の思いを直接語りかけ、国際社会での理解の輪を広げていく狙いだ。

 バルト3国はもともと日本への感情は悪くなく日本語教育が比較的盛んな地もあるという。首相はリトアニアでは第2次世界大戦時にユダヤ人へのビザを発給し続けた外交官、杉原千畝氏の記念館を訪問する。こうした交流を通じ日本との関係の深さを訴える考えだ。

 今回の訪問では北朝鮮問題での連携も確認した。「北朝鮮はタリンも射程に収める弾道ミサイルを発射した」。安倍首相は共同記者発表でわざわざエストニアの首都の名前を挙げ危機感を訴えた。ラタス首相も「我々は傍観者であってはいけない」と応じ北朝鮮の核武装は認めず圧力を最大限高めることで一致した。

 安倍首相はバルト3国への訪問後、ブルガリア、セルビア、ルーマニアの各国で首脳会談を行い17日に帰国する。



不動産投信、拡大に陰り物件高騰/毎月分配型の人気低下 昨年の 取得額25%減 2018/1/14 本日の日本経済新聞より

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 成長を続けてきた不動産投資信託(REIT)市場に、減速の兆しが強まってきた。2017年の物件取得額は約1兆8000億円で前年に比べ25%減ったもよう。大幅な不動産価格上昇で物件を取得しにくくなったことが主因だ。投資家の間で高値警戒感が強まってきた。

 みずほ信託銀行系の都市未来総合研究所の調べでは、17年は上場分のREITだけで物件取得額が約1.4兆円と、前年から2割減った。日銀の異次元緩和が導入された13年にREITの取得額は一気に増え、それ以降も高水準を続けてきたが、17年は5年ぶりに1.5兆円を下回った。

 不動産サービスのCBRE(東京・千代田)によると、オフィスビルなどの賃料収入を取得価格で割った投資利回りは最近、東京・大手町のオフィスビルで3.55%。03年の調査開始以来、最低の水準に下がった。

 景気回復で賃料そのものは上昇しているものの、同時に物件価格も大量の緩和マネーで大きく押し上げられている。この結果、高い利回りの取れる物件が少なくなっており、REITの魅力が低下している。利回りが低迷すると、投資家に還元する分配金の伸びが鈍くなるためだ。

 個人マネーの流出も痛手だ。上場REITは通常、増資によって多くの投資家に出資の持ち分(投資口)を割り当て、物件の購入資金を確保する。企業でいえば株式にあたるものだ。

 上場REITではこうした持ち分の2割ほどは毎月分配型の投信が持っている。超低金利下では高齢者を中心とする個人マネーを引き寄せてきたが、投資で増えた利子を元本に入れて運用を続ける「複利効果」の得られない毎月分配型の人気は低下に歯止めがかからなくなっている。

 そのあおりを受け、上場REITの総合的な値動きを示す東証REIT指数も17年は1年で1割ほど下がった。

 上場しているREITは59銘柄ある。ところがこのところの価格を見ると、REITの価値(純資産)を下回って推移しているものが半数近い。

 これまでREITは増資でお金を集めていい利回りの物件を集めることで、先々の成長のストーリーを描いてきた。ところが毎月分配型投信によるREITの売りを嫌って新たな投資家の買いが集まりにくくなっている。

 地方銀行や信用金庫などが積極投資してきた「私募」と呼ばれる非上場のREITも、17年の取得額が前年を初めて下回った。三井住友トラスト基礎研究所によると、17年の物件取得額は4000億円弱で、前年から4割近く減ったようだ。

 私募REITは賃料収入などから分配金を支払う。オフィスビルが資産の4割を占め最も多い。利回りは平均4%程度だ。三井住友トラスト基礎研の清原龍彦主任研究員は「投資口数当たりの分配金を固定していることが多く、資産規模が膨らみ利回りは低下傾向にある」という。

 REITとは Real Estate Investment Trust(不動産投資信託)の略称。オフィスビルや賃貸マンションなど複数の不動産に投資し、物件から得る賃料収入や売却益を投資家に分配金として支払う。上場REITの時価総額は11兆円強。国内では2001年に第1号が上場し、10年に私募型が登場した。



データ資源米中攻防 買収阻止や情報統制、経済覇権狙い囲い込み 2018/1/14 本日の日本経済新聞より

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 インターネット上の閲覧や買い物の履歴など「データ資源」をめぐる米中の攻防が激しい。経済のデジタル化が進むなかで、データは消費者の嗜好分析やマクロ予測まで経済活動の基礎となる宝の山。その質と量が競争力を左右する。大きな消費市場と巨大なネット企業を抱える米中は、データ資源で優位を築く覇権争いを繰り広げる。政権の安定へネット統制を正当化する中国にデータの門戸を開くのか主要国は難しい選択も迫られている。

 中国のネット通販最大手、アリババ集団傘下のアント・フィナンシャルは2日、米マネーグラムの買収を断念すると発表した。電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」との相乗効果を狙い、世界200カ国超で送金サービスを提供する国際送金大手のマネー社を約12億ドル(約1330億円)で買収する計画だった。

 ところが、外資による企業買収を安全保障上の観点から審査する対米外国投資委員会(CFIUS)が待ったをかけた。米国人の資産や送金情報など「マネー社の個人データ流出を懸念した」(米国法弁護士)とみられる。

 米国では「個人情報の扱いに信頼性がない」として中国企業による買収阻止は当然との見方が多い。中国国営の新華社通信は「CFIUSの審査はブラックボックスだ」と批判。「(中国企業を過度に警戒する)『過敏症』を改めるべきだ」とけん制した。

 その直後、中国でアントのずさんな個人情報管理が露見。アリペイの利用者が2017年の利用履歴を閲覧すると、ほぼ自動的に「個人情報を第三者に提供する」との条項に同意したことになる仕組みが発覚した。謝罪しシステムを変えたが、中国の情報管理への懸念が米国の過敏症でないことを浮き彫りにした。

AIの性能左右

 一連の動きは、データ資源をめぐる米中の攻防を象徴する。米国はグーグルなどネットの巨人5社が世界中で日々、膨大なデータを蓄積する。一方、14億人の巨大市場を抱える中国では、5億人が使うスマートフォン(スマホ)決済のアリペイは毎秒2千件もの決済情報をサーバーに蓄積する。世界のデータ生成量は25年に163兆ギガ(ギガは10億)バイトとなり、16年の10倍に膨らむとされる。データを集めれば、それだけ人工知能(AI)の性能を高められる。「膨大なデータは現代の石油になる」(アリババの馬雲会長)。こんな認識が米中を突き動かす。

 米国がデータ資源で中国を仮想敵とする大きな理由は、ネットに対する管理・統制を「国家主権の問題」として正当化していることだ。チャットの会話内容や移動の履歴も含めた個人のデータを国民監視や治安維持の道具にも使っていると指摘される。

 中国は17年6月に「インターネット安全法」を施行。外資による中国内のデータの持ち出しを厳しく制限した。各国に批判されても、国家の安全を優先する姿勢を崩さない。米アップルが中国のクラウド事業を地元企業に移管すると発表するなど海外勢は対応に苦慮している。中国の広域経済圏構想「一帯一路」で経済支援する東南アジアやアフリカ諸国を中心に、中国発のネット統制が世界に拡散する恐れも強まっている。

 米国市民の機微情報を渡さない――。米議会の超党派議員は17年11月、CFIUSの機能を強化する改正案を議会に提出した。肝は個人情報や遺伝子情報など米国市民に関する「機微情報」が、外国政府や外国企業に渡らないよう厳格に審査するルールだ。

 CFIUSの従来の審査対象は、軍事や半導体など安全保障に直結する案件が中心。法案が原案通り成立すれば、米国民の個人データを持つ企業の買収は厳しく審査される可能性が高い。米下院公聴会では、CFIUSに関わった元政府高官が証言。中国政府の経営関与を疑われる中国企業が、AIやビッグデータなど先端分野の技術や情報を持つ米企業を続々と買収していることに危機感を示した。法案は事実上、中国企業の買収阻止を狙っているといえる。

日欧は流通探る

 個人情報保護に厳しい欧州連合(EU)も18年5月に、EU域外へのデータ移転を厳しく制限する「一般データ保護規則(GDPR)」を全面的に施行する予定だ。欧州の制度は情報の流通をただ制限するだけではない。「十分な保護水準がある」とした国や地域は、個別に許可をとらなくても個人情報の域外移転ができる仕組みも併せて備える。データという資源を保護する一方で、ビジネスへの活用との両立を図る狙いだ。

 データの非資源国である日本は、自由な流通を掲げる。18年春にEUとの間で、EU並みの保護水準を確保して日欧間でデータを移転しやすくする新たな枠組みで合意する見通し。日本はアジア太平洋経済協力会議(APEC)が定めた個人情報の越境移転ルールに米国、カナダ、メキシコ、韓国とともに加わり中国にも採用を求めている。

 データは21世紀の経済に不可欠な資源になった。世界経済の発展には、安全保障や人権を大義名分に自国で囲い込むのではなく、各国・地域で共有することが欠かせない。データを求めて動き始めた中国。ネット上の言論統制や国民監視など、民主主義とは相いれにくい動きを強める中国にデータの取得を許すのか。主要国には難しい判断が待ち構えている。

(上海=小高航、ワシントン=鳳山太成、八十島綾平)



日本の職場、外国人労働者頼み 製造業は3%超え 2018/1/13 本 日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「日本の職場、外国人労働者頼み 製造業は3%超え」です。





 人手不足が強まるなかで外国人労働者への依存度が高まっている。この4年で外国人の雇用者は大きく増え、日本人がやや集まりにくい建設や警備などで就労する動きが活発だ。急激に伸びている女性や高齢者の就労者数もいずれ壁にあたりそうで、労働現場の外国人頼みが強まる見通しだ。

 「現場の人手不足はかなり厳しく、外国人労働力の受け入れが喫緊の課題だ」。ユニー・ファミリーマートホールディングスの高柳浩二社長は訴える。

 厚生労働省によると、外国人労働者は2016年10月時点で108万3769人で今の景気回復が始まる直前の12年10月から40万人増えた。3割超にあたる36万人が従業員30人未満の中小零細企業に集中している。

 あらゆる分野で外国人の割合が上がっており、日本の全就業者数に占める外国人の依存度は12年秋の1.1%から1.7%に上昇した。過酷な労働条件から敬遠されることもある職業でとくに目立っており、廃棄物処理や警備などのサービス業は1.8%から2倍の3.7%に跳ね上がった。宿泊・飲食や製造業も3%を超えた。

 実際の人数をみてみると、製造業の場合は4年間で全体で9万人増えたが、この9割弱の7.7万人は外国人だ。卸売・小売業でも増えた分の67%にあたる7万人弱が外国人で、いずれも新しい働き手のほとんどを外国人が占めるという異例の状況だ。

 建設業は4年で外国人が2.8万人増えた。それでも労働力不足を補えず、全体の就業者は17万人も減った。リネンサプライなど生活関連サービス・娯楽業も外国人を入れても全体で就業者が減少。インターネット通販拡大で倉庫で仕分けなどをする人が足りない運輸・郵便も外国人の伸びが際立っている。

 経済に及ぼす影響は様々だ。BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は不法滞在者ら統計に載らない人も最大21万人いると想定。労働単価が低い外国人も多く入ってきたことで同じ仕事の日本人の賃金上昇を抑えている可能性があるという。それでも経済全体でみれば大きな利点も浮かぶ。

 河野氏によると、現在の年10万人ペースで外国人労働者が増えれば経済のパイが次第に膨らみ、国内総生産(GDP)を年0.07%押し上げる。30年まで続けば効果は1%になる。

 労働市場の変化からも、外国人依存が進むのは確実だ。2000年から16年までに日本の労働力人口がどう変化したかをみると、15~64歳の男性が397万人も急減した。その一方で高齢者が293万人、15~64歳の女性も10万人ずつ増え、労働人口の減少分の8割弱を補ってきた。

 だが、国立社会保障・人口問題研究所によると15歳以上人口は25年までにさらに270万人も減る。20年代になると高齢者、女性の労働参加にもおのずと限界が訪れ、不足する労働力の多くを外国人に頼らざるを得なくなるとの声が多い。

 第一生命経済研究所の星野卓也氏は医療・介護分野の担い手だけで150万人以上不足し、経済的な損失が6兆円に上るとはじく。

 外国人の就労には規制の壁もある。外国人には技能実習生や留学生も含まれ、実習生は16年秋時点で約21万人と4年で6割も増えた。ただ、実習生は常勤職員が300人超いる企業の初年度の受け入れ枠は原則、職員の5%までで、むやみに増やせるわけではない。

 技能を身につける名目で働くという曖昧な位置づけを悪用する企業も多い。低賃金、長時間労働といった劣悪な待遇で働かせる問題への対処が必要だ。

 留学生は週28時間以内ならアルバイトができ、コンビニエンスストアなどで働く例が多い。そのまま日本企業に就職する学生もいるが、専門性の高い職種や日本企業の海外展開業務に限られる。比較的単純な労働で働ける期間は限られ、ノウハウ蓄積にも限界がある。経済界の中では、中程度のスキルを持つ外国人に対し、国がもっと労働参加の門戸を広げてほしいとの声もある。

 政府の外国人労働者の受け入れは、経営者・研究者らの高度人材を除けば特定分野に絞ってきた。人手不足の深刻な農業などに広げているが、企業活動の実態を見ながら受け入れ議論を加速する必要がある。

(川手伊織)