やさしい経済学 レベニューマネジメントとは何か(1)価格 設定変え、売上高最大に 専修大学教授青木章通 2018/3/30 本日 の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済教室面にある「やさしい経済学 レベニューマネジメントとは何か(1)価格設定変え、売上高最大に 専修大学教授青木章通」です。





 同じホテルの料金が、宿泊時期や予約のタイミングによって変わっていることに驚いた経験はありませんか。これは航空業界に起源をもつレベニューマネジメントと呼ばれる経営手法(ダイナミックプライシングもその一種)で、売上高の最大化を目的として多くのサービス産業で導入されています。近年の情報通信技術の進歩により、様々な領域の知見を取り込み、高度化が進んでいます。

 レベニューマネジメントは、顧客に提供できる供給量に制約のあるサービス業で採用されています。ホテルを例にして考えてみましょう。例えば4月1日に提供可能な客室数には上限があり、売上高の上限値も決まっています。一方、費用構造をみると、その多くは固定費であり、短期的には宿泊者数の増減にかかわらず費用の総額はそれほど変わりません。この状況で利益を最大化するには、売上高をいかに上限値に近づけるかがカギとなります。

 ある商品に対する需要を操作する最も分かりやすい方法は価格を変動させることです。とりわけ需要の価格弾力性が大きい業界では価格を引き下げると多くの顧客を誘引できます。逆に繁忙期は値引きする必要がなく、定価近くまで価格を上げて売上高の向上を図ります。同時に、顧客層別に異なる商品プランを用意し、早期割引や商品プランの提示で顧客を誘引しながら目標に向けて売り上げを積み上げていきます。

 この際に短期的な売上高の最大化ではなく、長期的な成長に向けて顧客からの評判にも配慮する必要があります。このような体系的な施策をレベニューマネジメントと呼んでいます。

 レベニューマネジメントは航空業界や宿泊業界のほか、ゴルフ場、プロスポーツ界など様々な分野に広がっています。近年急速に広がるシェアリングエコノミーにおいても柔軟な価格設定が重要です。今後は人工知能(AI)の進歩により小規模な事業所などにも普及すると予想されます。この連載では詳しい仕組みやその影響、今後の見通しなどについて解説します。

 あおき・あきみち 慶応義塾大博士課程単位取得満期退学。専門は管理会計



米、不正プログラム警戒中国のIT製品締め出し 2018/3/30 本日 の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の企業面にある「米、不正プログラム警戒中国のIT製品締め出し」です。





 米政府が中国製の一部IT(情報技術)製品を市場から締め出す動きを加速している。米政府はデータを盗み出す「バックドア(裏口)」と呼ばれる不正プログラム技術が組み込まれ、スパイ活動に使われているのではと疑う。一方、米政府も米アップルにバックドアの提供を要請するなど、自国製品にデータの傍受機能を仕掛けているとの噂も絶えない。

 米政府は26日、米国内の通信網から中国の通信機器を事実上締め出す規制を検討していると発表。中国のスパイ活動に使われるという安全保障上の懸念が主な理由だ。

 中国軍との関係が指摘される華為技術(ファーウェイ)など中国勢を締め出す狙いがある。ファーウェイは否定するが、米政府は同社が中国政府の意向を受けて製品にバックドアを仕込んでいると疑っている。

 バックドアを悪用すれば第三者がネットを使い遠隔でデータを盗み見できる。「キルスイッチ」と呼ばれる停止機能を潜ませることも可能だ。

 もっとも米政府にも、かつてバックドアを普及させようとした歴史がある。米政府が開発した初期のバックドアとしては、「クリッパーチップ」と呼ぶ暗号化用の半導体チップが有名だ。

 1993年に電話機やコンピューターに組み込もうとしたが、政府による盗聴が可能な仕組みのため、反対論が高まり計画は頓挫した。それでも米政府が自国製IT機器にバックドアを仕掛けているとの噂は絶えない。

 16年には米政府高官が米アップルや米グーグルなどの幹部にバックドアの提供を要請していた。アップルなどは拒否するが、疑いは晴れない。顧客の疑念を払拭させるために「当社の製品には米政府のバックドアは組み込まれてない」と宣言する企業も存在する。

 日本で使われている機器にも、外国政府の意向を受けて開発されたバックドアが仕込まれている可能性は否定できない。警戒すべきは北朝鮮だ。

 北朝鮮のサイバー部隊の内情に詳しい非営利団体、韓国NK知識人連帯の金興光(キム・フングァン)代表は「隊員は身分を偽って日本メーカーからソフト開発を受注している。その行動原理から必ずバックドアを仕掛けている」と話す。事実なら日本中で家電や産業機器の機能を一斉に停止させ、社会を混乱に陥れることもできるという。

 日本は危機感が薄い。ソフトバンクは「ファーウェイとは次世代通信規格の分野で実証実験に取り組むなどしており、関係を見直す予定はない」(広報担当者)。KDDIも「事実関係を確認中で何かすぐに行動を起こすことはない」という。

(吉野次郎)



Deep Insight インド悩ます中国の弱さ 2018/3/30 本日の日本 経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「Deep Insight インド悩ます中国の弱さ 」です。





 世界は中国にどう向き合っていったらよいのか。答えは今後、さらに複雑になるだろう。中国は巨大になると同時に、一党支配の矛盾も深まり、内部がぜい弱になっていくとみられるからだ。

 そうした大国は末端への統制が効きづらく、ときに冷静さを欠いた行動にも出かねない。私たちがこれから備えなければならないのは、そんな「巨大でもろい」中国である。

 共産党の動きだけながめると、中国国内の統率はむしろ強まっているようにみえる。習近平(シー・ジンピン)国家主席は汚職の摘発を重ねて政敵を追い落とし、自らの任期も取っ払った。党中央の権力闘争はおおむね決着し、もはや習主席の指導力を脅かすライバルは見当たらない。

 しかし、同党の党員数は約9000万人にすぎない。習主席が党内の結束を固めたからといって、14億人の人心を掌握したことにはならない。

 社会全体をながめれば、中国内ではむしろ、求心力を弱めかねない火種が広がっている。とてつもなく広がった経済格差、絶えない汚職、新疆ウイグルやチベット自治区でくすぶる不満……。

 人間にたとえれば、中国は財力や腕力こそ強まっているが、内患も深刻になっているように映る。問題は他国とのつき合いに、それがどう影響するのか、だ。

 この点を気にしている国のひとつが、1962年に戦火を交えた過去を持ち、いまなお国境紛争を抱えるインドだろう。

 2月下旬、ニューデリーで安全保障に関する討論会があり、日印や欧州からの参加者が意見を交わした。そこで感じたのは、中国の台頭をめぐり、インドが募らせている不安の大きさだ。

 中国は軍事、経済力だけではなく、情報戦も駆使し、中国を頂点とする秩序を広げようとしている。中国が主導する広域経済圏構想「一帯一路」を通じて、その流れはさらに加速しかねない――。インドの参加者からはこんな趣旨の声が聞かれた。

 これだけなら、さほど目新しい反応ではない。気になったのは、インドの不安は中国の強さだけでなく、「ぜい弱さ」にも原因があるように感じたからだ。

 別の機会に会ったインドの外交関係者から、興味深い秘話を聞いた。

 2014年9月、習主席が初めてインドを訪れ、友好関係を打ち立てようとした時のことだ。よりによってその数日前、国境が画定していないラダック地方で、中国軍がいきなり実効支配線を越え、インド側に侵入してきた。

 越境した兵士は最大で1000人を超え、習氏のインド滞在中、ずっと居座った。インドをけん制するため、習氏がわざと越境を許したとの説も流れたが、真相はちがった。

 外交関係者によると、到着した習主席を迎えたモディ首相は翌日の公式会談を控え、ひそかにこんな趣旨の会話を交わしたというのである。

 モディ氏 実は、今日は自分の誕生日です。だが、まさかこんな贈り物をもらうとは思わなかった。

 習氏 いったい、何のことでしょう。

 モディ氏 いま、あなたの国の軍が、インド側に越境しているのを知らないのですか。

 モディ氏が状況を説明すると、習主席は見るからに戸惑った表情を浮かべ、「明日までに調べてみる」と応じた。

 そうして迎えた翌日の会談で、彼は「北京に戻ったら事態を収拾する」と約束したという。実際、彼が北京に帰ってから数日後、中国軍は撤収した。

 このやり取りが事実なら、習主席は越境騒ぎが起きていることすらも、知らなかったことになる。越境部隊が所属していた中国軍区には当時、習氏に忠誠を払わない勢力がいて、彼のメンツが丸つぶれになるのを承知で、あえて越境したという噂もある。

 それから3年半。習主席は軍内の掌握を一気に強めた。ただ、その過程で少なからぬ古参幹部を失脚させており、恨みもかなり買っているはずだ。

 昨年6月には中国とブータンの国境で、いきなり中国が道路建設を開始。ブータンの要請を受けたインド軍が出動し、約2カ月半にわたって中印両軍がにらみ合う危機になった。

 最後は習主席とモディ首相の会談で手打ちとなったが、インドは中国側とのやり取りから「きっかけとなった道路建設は最高首脳の命令ではなく、現場の判断による行動だった」という感触を深めたという。

 いくら習主席が党内の指導力を強めたとしても、中国の巨体を隅々まで統制するのは難しい。「内患」が広がれば、脳と末端の神経がうまくつながらず、手足が勝手に動いてしまう状況はさらに増える、とみるべきだろう。

 上の表にもあるように、日本や米国にも、中国軍が予測できない行動に出る事件が起きている。すべてが独断ではないにせよ、日本の安保担当者は「軍首脳の統制が行き渡らず、末端が挑発に動くケースが少なくない」とみる。

 ことは軍事だけにかぎらない。社会が不安定になれば、習指導部は内政上の余裕を失い、その分、外交や経済で他国にかたくなな態度をとる局面も増えるだろう。そんな中国の方が、安定した中国よりもはるかに対応が難しい。



中国化進む世界(下) 「14億プラスα」の圧力人が先兵 、疑心を増幅 2018/3/29 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「中国化進む世界(下) 「14億プラスα」の圧力人が先兵、疑心を増幅」です。





 西太平洋に浮かぶパラオ共和国が中国人客離れに直面している。1月に訪れた中国人観光客数は前年同月比で3割減。地元メディアは「中国当局が団体旅行を禁止した」と報じた。パラオは中国が「国」と認めない台湾と「国交」を保つ数少ない国だ。渡航自粛は「国交断絶を求める圧力」と受け止められている。

パラオの人気ダイビングスポットは中国人観光客の数が減った

深刻な観光客減

 既視感がある。国の名前を「韓国」に変え、理由を「在韓米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)配備」にかえれば、韓国で昨年起きた観光客ボイコット問題と同じ構図だ。

 パラオのレメンゲサウ大統領は日本経済新聞の取材に「過度な中国依存は健全でないと考えていた」と語った。だが総人口2万人強の小国にとって、最盛期に年間9万人訪れた中国人客の急減は痛手だ。14億の人口を「先兵」に使い、自らの主張を手荒く伝える中国の戦略が浮かび上がる。

 中国企業は世界に人材を送り、米シリコンバレーでは多くの中国系技術者が働く。世界経済に欠かせない存在だが、数を力とする14億人を補完して各国の内政に影響力を行使する「プラスα」の役割を果たしているとの疑念も強まる。

 米ワシントンはメディア王ルパート・マードック氏の元妻ウェンディ氏の話題で持ちきりだ。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが「中国政府の意向を受けて米政界に接触した」と報じたためだ。同氏側は否定したが、米連邦捜査局(FBI)は「認識しているがコメントできない」と述べた。

 ウェンディ氏は中国・山東省出身で1990年代に米国の永住権を取得したとされる。一族による中国関連事業が指摘されたトランプ米大統領の娘婿クシュナー氏との近さで知られる。ウェンディ氏の疑惑との因果関係は不明だが、クシュナー氏は2月、ホワイトハウスの最高機密に接触する資格を失った。

ロビー活動拡大

 中国出身で他国の国籍を取得した「華人」や中国籍のまま海外で暮らす「華僑」は世界に6千万人。文化大革命時の混乱を嫌い中国を飛び出した世代は共産党と一線を引く人も多いが、78年の改革開放以降に海外に移った「新移民」は多くが中国政府に協力的だ。

 中国は2014年から約40カ国に「華助センター」を設け、華人らとの結束を固める。共産党地方幹部は「企業と連携したロビー活動などが世界で広がっている」と話す。

 「プラスα」は枝を広げる。オーストラリアで1月、野党のダスティアリ上院議員が辞職した。中国系実業家から献金を受け取り、南シナ海問題を巡って中国寄りの発言が目立ったためだ。豪州は2月、海外からの投資への規制を一部強めた。

 西側諸国はかつて海外で民主主義の価値を学んだ人たちが中国を変えると期待した。だが巨大な人の流れが描く未来図は全く逆に向かっているように映る。

 高橋香織、遠藤淳、石川潤、小滝麻理子、鳳山太成、平野麻理子、佐野彰洋、川上尚志、鈴木淳が担当しました。



SBIの研究(下) 地銀と店舗客層広げる法人分野の開拓課 題に 2018/3/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の金融面にある「SBIの研究(下) 地銀と店舗客層広げる法人分野の開拓課題に」です。





 「30代の方が資産運用の相談に来店された。現役層の新規のお客さんは珍しいので驚きましたよ」。昨年10月、SBI証券と組んで、地銀初となる証券会社との共同店舗の運営に乗り出した清水銀行。浜松市の同店舗で働く営業担当者の阿倍伸彦さんはこう明かす。

 清水銀の行員とSBIの金融アドバイザーの2人1組で顧客をまわる。共同店舗を通じてSBI証券で口座を開設してもらい、得た手数料は折半する仕組みだ。清水銀は運用助言のノウハウを吸収でき、扱う投資信託も100本未満から2500本超に拡大。「顧客の企業経営者らの資産運用ニーズに応えられ、事業領域の拡大につながっている」と岩山靖宏常務は語る。

 一方、SBI証券には地方の富裕層にアプローチできるメリットがあり、「地銀との共同店舗は今後、20程度に増やしたい」(高村正人社長)。投信の供給などで協力する金融仲介業で提携する地域金融機関も増えており、現時点で京葉銀行や愛媛銀行など15行にのぼる。今後30行に拡大する予定だ。

 SBIがこうした新しい試みに経営資源を割けるのは、本業であるインターネット証券が好調さを保っているからだ。

 同社の有価証券報告書によると、SBI証券の総合口座数は17年3月末までの10年間で年平均10%増加。最大手の野村(同3%の伸び)を大きく上回る。口座数は17年末に400万超と大和証券を抜き、今後4~5年で業界首位の野村証券(約530万)を逆転する可能性がある。

 SBIは99年に実施された株式売買委託手数料の自由化を受けてネット取引に参入。それ以来、手数料を業界最安水準に保って若年層を取り込んできた。顧客の年代は30~50代の現役層が7割を占める。一方、対面型の大手証券は60代後半~80代前半の高齢者層が中心で、大きな違いがある。

 18年にスタートした積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)では首位を走る。大手証券や3メガバンクなど11社合計でみた場合、シェアは3割を超え、2位以下を突き放す。税制優遇で資産運用への関心が高まり、「女性を含めた投資初心者の口座の開設が目立つ」(SBIホールディングスの北尾吉孝社長)。

 課題は収益面にある。17年4~12月期は株高が追い風になったほか、ベンチャー投資も収穫期を迎え、連結純利益は364億円と前年同期比で45%増加した。それでも純利益の規模は野村ホールディングスの約5分の1にすぎない。

 高採算の法人事業の差が大きい。時間をかけて企業と関係をつくる必要があり、SBIは新規株式公開(IPO)の幹事獲得では一定の成果が出ているものの、増資や債券の引き受けでは及ばない。次世代送金などフィンテック関連の事業や、地銀との連携をどう実際の収益につなげていくかもまだ見えない。SBIが推し進める「複合経営」の成否がはっきりしてくるのはこれからだ。

 川上穣、野村優子が担当しました。



中朝、急場の結束演出 南北・米朝会談を意識習近平氏、中国外し を警戒/金正恩氏、関係改善を誇示 2018/3/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「中朝、急場の結束演出 南北・米朝会談を意識習近平氏、中国外しを警戒/金正恩氏、関係改善を誇示」です。





 【ソウル=峯岸博、北京=高橋哲史】中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は北京で、金正恩(キム・ジョンウン)委員長とみられる北朝鮮の要人を最大限のもてなしで迎えた。4月末から相次ぐ南北と米朝の両首脳会談を前に、蚊帳の外に置かれたくない習氏。米国との協議が不調に終わった場合の「後ろ盾」が欲しい金正恩氏。双方の思惑が一致した。(1面参照)

27日、北京駅に入る北朝鮮の要人を乗せたとみられる車列=共同

 27日午前、北京の釣魚台迎賓館の周りを走る道路が突然、封鎖された。「写真は絶対に撮るな!」。行く手を阻まれた通行人がスマホで写真を撮ろうとすると、警官が制止した。しばらくして、十数台の白バイに先導された車列が猛スピードで通り過ぎていった。

 車列の長さは昨年11月にトランプ米大統領が訪中したときに匹敵する。車に乗っていたのが国家元首級であり、中国がそれにふさわしい待遇をしたのはまちがいない。

 同じ車列は北京市の北西に位置する中関村地区でも目撃された。IT企業や大学、研究所が集積するエリアで、正恩氏の父である金正日(キム・ジョンイル)氏も過去に訪れた場所だ。

 北朝鮮の最高指導者が中国に足を運んだのは、2011年5月の金正日総書記が最後とされる。同年12月に死去した正日氏の後を継いだ正恩氏は、これまで国外に出た記録は見当たらない。15年10月に中国共産党の劉雲山・政治局常務委員が訪朝して以来、中国要人とは公式に会ってすらいない。

 中朝関係は13年2月、北朝鮮が中国の反対を振りきって3回目の核実験を強行したのをきっかけに悪化した。同年12月に中国との経済的なパイプ役を担っていた金正恩氏の叔父、張成沢氏が「国家転覆陰謀」の容疑で処刑された。最近は北朝鮮メディアが中国を名指しで批判するケースも珍しくない。中国は国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議に賛成し、石油関連製品の供給制限などで圧力を加えている。習氏と正恩氏は互いに不信感を強めていたとされる。

 そんなさなか、中朝の「結束」をアピールするように北朝鮮要人の訪中が実現したのは、中国側の強い働きかけがあったからだとの見方が多い。

 4月末の南北首脳会談に続き、トランプ米大統領は5月に金正恩氏と会談する意向を表明した。中国はこれまで、経済や貿易面で対中圧力を強める米国と取引するカードとして北朝鮮を使ってきた面がある。米朝が中国を挟まずに直接対話を始めれば、このカードは効力を失う。朝鮮半島情勢が急速に動くなかで、積極的にこれからのプロセスにかかわっていく意図が浮かぶ。

 北朝鮮の側も、ここで中国に接近するメリットは大きい。トランプ政権は米朝首脳会談の受け入れを表明したあとも「最大限の圧力」を掲げて軍事・経済の両面で締め付けをやめない。今後、首脳会談に向けて米国と渡り合っていくためにも、中国との関係悪化を決定的にするのは得策でないと判断したようだ。

 北朝鮮にとっては、中国との関係改善で米朝首脳会談が不調に終わった場合の「保険」ができたともいえる。米側が求める完全な核放棄に応じず、トランプ氏が北朝鮮に対して強硬姿勢を強めたとしても、中国を後ろ盾に米国と交渉する余裕ができるからだ。



象徴天皇と沖縄(下)歴史・文化理解深め島の人々に誇りと自信 2018/3/ 27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の社会面にある「象徴天皇と沖縄(下)歴史・文化理解深め島の人々に誇りと自信」です。





 「沖縄に国立劇場をつくってはいかがでしょうか」。1993年4月、全国植樹祭のため沖縄を訪問した天皇陛下は同行した閣僚にこう切り出された。突然の提案に困惑する閣僚に対し、「沖縄の組踊は能、歌舞伎、文楽と同じく古来日本の伝統文化の一つです。それを教えていくのも大事なことだと思います」と説かれたという。

沖縄の古典芸能鑑賞のため、国立能楽堂を訪れた天皇、皇后両陛下(2014年4月、東京都渋谷区)

劇場設立へ機運

 その場に県議会議長として同席した儀間光男さん(74)=現・参院議員=が後日、県関係者の集まりで陛下の言葉を紹介。国立劇場おきなわ(浦添市)設立への機運が高まった。

 天皇、皇后両陛下を迎えてのこけら落とし公演が開かれたのは2004年1月。浦添市長になっていた儀間さんは「陛下の一言が無ければ、実現できなかっただろうという感慨がこみ上げた」と振り返る。

 陛下は劇場訪問を前にした70歳の誕生日記者会見で「(1972年に本土復帰した)沖縄の人々を迎えるに当たって歴史や文化を学び、人々への理解を深めていかなければならないと思っていた」と発言。沖縄に伝統芸能を受け継ぎ、振興する拠点ができたことを喜ばれている。

王朝に深い造詣

 陛下の沖縄文化への造詣は深い。「琉球王朝の2つの歴史書で、王に関する記述量に差があるのはなぜですか」。皇太子時代の75年7月、沖縄を初訪問した陛下はホテルに有識者を招いて懇談された。高良倉吉・琉球大名誉教授(70)は「専門書を読み込まなければできない質問をされた」と述懐する。

 2014年4月に国立能楽堂(東京)で両陛下を招いて開かれた沖縄古典芸能の公演。陛下は組踊の作者の名を挙げながら、案内役を務めた平田大一・元沖縄県文化振興会理事長(49)に次々と質問された。平田さんは「冷や汗をかいたが、感謝の思いで胸がいっぱいになった」。

 平田さんは1982年、本土復帰10周年を記念したレセプションに小浜島(竹富町)から豆記者団の一員として参加。このときにも陛下と対面している。横笛を使って島伝統の子守歌を演奏し「僕の島では笛に適した竹が採れます」と紹介すると、陛下は笑みを浮かべ、島の暮らしに関心を示されたという。

 陛下は過去10回の沖縄訪問で伊江島、宮古島、石垣島、久米島の離島4島にも足を運び、離島の伝統や文化にも触れられてきた。

 退位の意向を示唆したお言葉では「国民に対する理解を深め、常に国民と共にある自覚を自らの内に育てる必要を感じて来ました。こうした意味において、日本の各地、とりわけ遠隔の地や島々への旅も、私は天皇の象徴的行為として、大切なものと感じて来ました」と言及された。

 かつては都会に憧れ、離島育ちに劣等感を抱いていたという平田さん。今は沖縄の子供たちとともに現代風にアレンジした組踊の舞台活動に取り組む。「あの時、陛下に島で生きることの価値を認めてもらえたことが自信となった。沖縄の島々の文化と歴史を子供たちに伝えていきたい」

榎本行浩が担当しました。



一般社団 相続に課税 「税逃れ」を問題視で改正 経営 者に対応せまる 2018/3/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の法務面にある「一般社団 相続に課税 「税逃れ」を問題視で改正 経営者に対応せまる」です。





 業界団体やスポーツ団体、福祉団体などで広く使われている一般社団法人に対し、2018年度の税制改正で課税が強化される。これまで相続税が事実上課せられなかったことから、一般社団法人を活用した「相続税逃れ」も横行。これが問題視されたためだ。どう対応するか、頭を悩ませる企業経営者や資産家も増えそうだ。

(押野真也)

 「どうしたらいいか、正直困っている」。東京都大田区で物流関連企業を営む70代の男性経営者は頭を抱える。既に設立した一般社団法人を活用して、相続税なしで息子2人に自社株式の一部や不動産などの資産を相続させようと考えていた。だが、今回の税制改正でもくろみが外れた。

 一般社団法人を使う節税の仕組みはこうだ。まず法人を設立して自らが理事に就任する。そこに自らが保有する株式や不動産などの資産を移転。理事が資産を管理する形とする。親の死亡などを受けて子などが理事に就けば、実質的に資産も継承できる。これまでは相続税がかからなかったため、相続税を支払うことなく子に資産が移る。

セミナーで紹介

 こうした手法はここ数年で広まり、税理士やファイナンシャル・プランナーが開く「節税セミナー」などで紹介されてきた。この男性も税務相談で面識があった税理士から手法を教わり、有効な節税策と考えて資産を移転した。登記などにかかる費用や税理士に対する手数料などで約150万円を支払ったという。

 相続税がかからなかったのは、社団法人は株式会社と違い、企業の株式に当たる「持ち分」という概念がないためだ。だがこうした手法に対しては、「税逃れ」だとする批判も根強かった。

 今回の税制改革では、一般社団法人の役員に占める同族者の割合が2分の1を超えるなどの「特定一般社団法人」には、相続税を課税できるようになる。個人から法人に資産を移転する際の課税要件も明確になった。関連法案が成立すれば4月1日から適用される。

 ビジネス・ブレイン税理士事務所(東京・港)の畑中孝介所長は「(従来の仕組みは)誰が考えても明らかにおかしな制度だった。課税されるのは当然だ」と話す。

 一般社団法人は法務局に登記するだけで設立でき、監督官庁はない。理事1人と社員2人を確保し、定款をつくるだけで手軽に法人格を取得できる。かつて公益法人に対する監督官庁の関与が強く癒着の温床になったとの反省から、08年施行の法律で生まれた制度だ。

 手軽に設立できることから法人の数は増え続けている。東京商工リサーチによると、16年に5996団体が設立され「17年も増加傾向にあるとみられる」(情報本部の後藤賢治課長)という。この中には節税目的での設立も多いとみられ、課税強化後はこの傾向に変化が出る可能性もある。

企業に影響も

 上場企業の戦略にも影響が及びそうだ。一般社団法人を設立する例は多いが、将来の相続などで課税対象になりそうなところもある。大量保有報告書によると、インテリア大手のオリバーは一般社団法人の「大川」に自社株を14.27%割り当て、接骨院チェーン運営のアトラは「みどり会」に40%以上を割り当てた。いずれも理事に創業者や創業家が就いており、資産を相続する場合は課税対象となりそうだ。

 金型メーカーの不二精機は16年に「千尋会」を設立。自社の「長期の安定株主」とするため、創業家が保有する自社株式8.36%を割り当てた。社団の理事職は創業家が占め、同社は「今後、対応を協議する」という。

 外部から理事を招いて同族者の理事の割合を2分の1以下にすれば相続税の課税対象にはならない。一方、税理士の畑中氏は「外部人材を増やせば支配権を維持できなくなり『乗っ取り』されるリスクもある」とも話す。過去に設立した一般社団法人については3年間の経過措置もあるとはいえ、一般社団は対応策を詰めておく必要がある。



米、技術移転の強制懸念中国の知財侵害「4つの手口」経済損失5兆円規 模か 2018/3/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「米、技術移転の強制懸念中国の知財侵害「4つの手口」経済損失5兆円規模か」です。





 【ワシントン=鳳山太成】トランプ米政権は中国の知的財産の侵害を巡って制裁措置を発動する方針を決めた。背景にあるのは電気自動車など国際競争が激しい分野で中国に先端技術を奪われたとの懸念だ。外資規制に伴う技術移転の強制や技術を盗むためのサイバー攻撃を特に問題視し、年間500億ドル(約5兆2000億円)の損失を被ったと主張する。

米国はEVなどの先端産業での中国の知財侵害を警戒する(中国のEV組み立て工場)=ロイター

 トランプ大統領は22日、米通商代表部(USTR)の報告書に基づき、中国からの輸入品に制裁関税を課すと表明。報告書は主に4つの手口で米国企業の技術が奪われたと主張した。

 4つの手口のうち最も問題視するのは中国の外資規制だ。新たな市場が広がるプラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)などの新エネルギー車を例に挙げた。「中国が自動車を外資に開放したのは、国有企業を近代化するよう米国企業から技術を移転させることが目的だった」と断じた。

 米国が主張する手口は(1)高い関税で輸入品を締め出し、中国市場に入りたい外国企業には国内生産を求める(2)中国企業との合弁会社設立を条件とし、合弁会社はバッテリーなど中核技術の知財を保有しなければ製品を売れない規制を設ける(3)最終的には技術を中国側に渡さなければ事業ができない――の段階を踏む。

 報告書が引用した米中ビジネス評議会の17年調査によると、中国に進出する米国企業のうち19%が中国への技術移転を「直接」求められた経験があると答えた。このうち、技術移転を要求した主体は合弁相手の中国企業が67%と多いが、中央政府や地方政府との回答も多かった。要求を受け入れて技術を渡した企業が3割を占めた。

 中国企業によるM&A(合併・買収)を中国政府が後押ししているとも主張した。中国政府系ファンドが中国の印刷機器大手が米プリンター大手、レックスマーク・インターナショナルを買収できるよう資金支援したことを例に挙げた。買収元の中国企業は米レックス社から特許侵害で訴えられていた。

 米国企業の技術を盗み出すためのサイバー攻撃も指摘した。取り上げたのは2014年の事例だ。米司法省は米国企業のコンピューターに侵入して情報を盗み出したなどとして中国人民解放軍の当局者5人を起訴した。中国国有企業の不当廉売を当時訴えていた鉄鋼大手USスチールは、軽量で強度の高い製品の開発情報が流出した。

 米国企業が中国企業に技術を供与する契約を結ぶ際、差別的な扱いを受けているとも主張した。中国政府に契約内容を通知しなければ、受け取った特許権使用料を本国に送金できないという。こうした主張はあくまで米国の調査によるもので、中国は受け入れられないとして報復措置を検討している。



中国化進む世界(上) ソフトパワー、無言の圧力 ハリウ ッドもう戻れない 2018/3/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「中国化進む世界(上) ソフトパワー、無言の圧力 ハリウッドもう戻れない」です。





 米ハリウッドで大作映画の制作者が必ず参照する文書がある。中国政府が映画の公開を認めるかどうかを定めたガイドラインだ。映画制作に30年間携わるロバート・ケーン氏は「企画段階から中国の検閲を意識する」と打ち明ける。

■最大の市場へ

サーモンの輸入を制限された後、ノルウェーは中国の人権問題に触れなくなった(17年4月、北京で会談するノルウェーのソルベルグ首相(左)と中国の習近平国家主席)=ロイター

 中国共産党に対する批判はもちろんタブー。過剰な暴力や性的シーンも許さない。1980年代に大ヒットした「バック・トゥー・ザ・フューチャー」のような時空旅行を扱った作品も「検閲対象となる」(ハリウッド関係者)。過去に戻って共産党党支配を「変えられる」と連想することを警戒しているとされる。

 中国映画市場の規模は遠からず米国を抜いて世界最大となる。米中合作で2016年に公開した「ザ・グレート・ウォール」は米国での興行収入は約50億円だが、中国では4倍の200億円弱を記録した。17年に中国ファンドの出資を受けた制作会社SKグローバルのジョン・ペノッティ社長は「まず中国戦略だ。3年前とは様変わりだ」と語る。

 中国は強固な共産党支配の下で国民の視線を一方向に向けてきた。厳しい統制を武器に経済成長を遂げたいま、自身への同調を求めて世界へ無言の圧力をかける。

 中国の電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」は昨年9月、ノルウェーに拠点を設けた。中国人観光客の急増に対応するためだ。

 ノルウェーのノーベル賞委員会は10年末、中国の民主化運動の象徴である劉暁波氏に平和賞を授与した。中国は反発し、ノルウェー産サーモンの事実上の輸入制限にまで発展した。

 それから7年弱。「中国の利益を大いに重視する」。中国国営メディアは昨年4月、ノルウェー首相、ソルベルグ氏が習近平(シー・ジンピン)国家主席との会談でこう誓ったと報じた。16年末に関係正常化を果たし、サーモン禁輸も解除された。ソルベルグ氏は劉氏が死去した昨年7月の声明で、中国の人権問題を批判しなかった。

 「中国のソフトパワー(軟実力)の影響力が大幅に高まった」。習氏は昨年10月、3時間超に及ぶ共産党大会の演説で強調した。だが文化などの魅力で信頼を得る力を指すソフトパワーは本来、軍事や経済を背景とする支配力に対抗する概念だ。14億人の市場を武器に異論を封じる習氏の「軟実力」とは重ならない。

■閲覧を遮断も

 それでも世界は中国の顔色をうかがう。各国を代表する出版社などが中国を批判する書籍の出版をためらったり、一部論文の中国からの閲覧を遮断したりしたなどの報道が後を絶たない。

 「事業への影響を恐れ報道機関が中国批判を抑えている。大きな問題だ」。香港の中国返還から10年後の07年、香港紙「蘋果日報(アップルデイリー)」の創業者、黎智英氏は語った。黎氏の懸念をよそに、世界は「中国化(チャイナイゼーション)」の道を自ら選んでいるように映る。