国内生産回帰 円高で変調? 2018/04/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「国内生産回帰 円高で変調?」です。





家電や日用品の生産を国内に戻す動きに変調が見え始めた。アジア各国とのコストの差が縮まってこれまで国内回帰が広がりつつあったが、円高で再び国内で生産することの割高感が強まっているからだ。ただ海外の消費者の間では「日本製」への評価が高い。現地生産か国内生産か。判断はさらに難しくなってきた。

(川手伊織)

「国内の生産比率を増やす考えはない」。大半の製品を中国で生産する生活用品大手の担当者は言い切る。こうした判断が出るのは、日本と海外の製造コストの差が再び広がっているためだ。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券はアジア・オセアニアの20カ国の製造原価を調べた。2012年は平均で日本の74%だったが、15年には80.6%まで上昇した。ところが17年は78.6%と再び差が拡大に転じた。

金融緩和で一変

背景にあるのは為替だ。12年に1ドル=80円を上回ることもあった円相場は、13年に始まった日銀の異次元金融緩和で状況が一変。15年6月には125円台まで円安になった。日本からの輸出競争力が高まる一方、海外子会社が日本向けに出荷する「逆輸入」は円建てコストがかさんだ。

アジアの人件費の上昇も重なり生産を国内に戻す企業が増えた。JVCケンウッドは15年末に国内向けのカーナビの一部をインドネシアや中国から長野県伊那市の工場に移した。こうした動きは17年度に製造業の雇用者数が1千万人の大台を回復する一因になった。

16年ごろからは環境が変わり始めた。中国経済の減速や英国の欧州連合(EU)離脱決定を受け、円相場は段階的に水準を切り上げてきた。18年は112円台で始まったが、3月には104円台まで円高が進んだ。

人件費も経営者の判断に影響を及ぼす。人手不足などを背景に18年の賃上げ率は20年ぶりの伸びを記録した。賃金の引き上げは景気回復に欠かせないが、収益力に勢いがないと継続は難しい。

時を同じくして、企業は海外生産に再び目を向け始めた。経済産業省によると日系の海外法人による逆輸入の売上高は17年10~12月で270億ドル。東日本大震災による国内の供給網寸断や円高で過去最高となった11年7~9月(282億ドル)以来の水準だ。15年以降、ほぼ250億ドルを下回ってきたが、再び増え始めた。

内閣府が1月に上場企業に実施したアンケート調査によると、5年後の海外生産比率の見込みは25.0%。15年1月の調査(26.2%)をピークに下がっていたが、3年ぶりに上昇に転じた。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の宮崎浩氏は「円高が進めばアジアとのコスト格差が今後、一段と広がっていく」と指摘。「国内の設備の稼働率が下がり、企業が増産に向けた投資を抑える可能性が高まる」と景気への影響を懸念する。

日本製人気高く

国内回帰の動きは途絶えるのか。先行きを占う手がかりはまず生産現場の改革にある。人工知能(AI)などを駆使した生産ラインの自動化だ。

カシオ計算機は世界で販売する低価格帯の腕時計の国内生産比率を高める。20ドル前後と安い製品を国内で作っても競争力を出せるようにするため山形県の工場で自動化投資を進める。製造コストを日本の4分の1のタイと同等にできるという。

もう一つの要因は、海外の消費者だ。資生堂は国内で36年ぶりとなる新工場の建設を決めた。17年度には訪日客数が3千万人近くまで増加するなど、改めて日本製の品質への関心が高まっている。海外からの人気にこたえるためにも国内で生産を増強することが有効だと判断したという。

最近は円高に一服感も出ている。日本経済研究センターの佐々木仁氏は「アジアでも人件費が上がっている。今の為替水準なら海外移転をさらに加速させるほどではない」とし、「生産ラインを刷新していけば、国内でも労働生産性はもっと高められる」と指摘する。

為替や人件費から、製造技術の進化や消費者の嗜好まで。複雑な方程式の解を見つけて適切な経営判断をできるかが、成長力の明暗を分けることになる。



環境になじめぬ人へ配慮 2018/04/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「環境になじめぬ人へ配慮」です。





新年度が始まって1カ月近くたって、新しい環境になじんできた人も多いだろう。しかし、人によってはなかなかなじめない人もいる。とくに新しく会社や学校に入った人はなじむのに時間がかかるので、周囲の人たちの配慮が必要になる。

(画像:イラスト・大塚 いちお)

環境になじむスピードは人によって違いがある。そのために、それまでそこにいた人たちが自分を基準に仕事や勉強を進めてしまうと、新しく入った人との間にギャップが起きやすいので注意しなくてはならない。

そうした感覚の違いは個人の特性だけでなく、その場所にどのくらい慣れているかで違ってくる。個人的な話になるが、こうした慣れの影響を私が身をもって体験したのは、病院に知人を訪問した後にひどい疲れを感じたときだ。自分が働く病院ではいくら長く滞在しても、そんなに疲れない。もちろん仕事の疲れはあるが、疲れを感じてグッタリとすることはない。

ところが、まったく知らない病院に見舞いに行くと、あまり長く滞在しなくても、後に強い疲れが残ることが多い。慣れない場所にいると気がつかないうちに緊張して、疲れがたまるのだと改めて感じる。そのことに気づいてから、私は、外来の診察室で患者さんができるだけリラックスして話せる雰囲気をつくることを意識するようにした。精神的な悩みを持った人は、とくに緊張しやすいからだ。

こうした配慮が必要になるのは病院だけではない。特に新年度が始まり間もない時期、会社や学校でも同じように環境になかなかなじめない人の緊張感に配慮することが大切だ。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



地域経済を「見える化」する(3)データ分析のモデル必要 2018/04/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「地域経済を「見える化」する(3)データ分析のモデル必要」です。





国の地域経済分析システム(RESAS)は2015年の運用開始以降、データベースが次々と充実してきました。しかし、データがあっても、それを分析する理論(モデル)がなければ、有効な施策にまで到達できません。良好な漁場があって漁獲量は多くても、上手にさばくことができなければおいしく食べられないのと同じことです。

そこでデータをどのように読み解いていくかが課題になります。それには規範的モデルと問題解決のストーリーが必要となります。「ここがこうだから、ここはこうなっている(はず)」、そして「ここをこうすれば、ここがこうなる(はず)」といった因果関係の明確化、その関係についての仮説の確認や検証です。

データの見方としては、他の市町村との比較のように横断面で見ることが1つ考えられます。もう1つは全国の変化の状況との比較のように時系列で見る方法です。その時に必ず意識しておく必要があるのが、因果関係を念頭においてデータを見るということです。

因果関係は、例えば「まちの所得が大きいと、そのまちの小売販売額は高くなる(はず)」といったことです。また、「資本労働比率が高いと労働生産性は高くなる(はず)」というモデルもあります。対個人サービス業の場合、人口集積が高いとサービス効率は高まるので、「1人当たり収入額は人口集積とともに高まる(はず)」という考え方もあります。

所得と小売販売額の関係を例に挙げてみましょう。横軸に市町村の所得額、縦軸に小売売上高をとり、県内市町村をプロットして、回帰線を表示します。これは縦方向のバラツキを最も説明できるように導かれた所得と売上高の関係を示す基準線です。各市町村は回帰線を挟んで、その上下に位置しますが、なぜ乖離(かいり)しているのかを考えることが大切です。

例えば、所得の割に売上高が多い地域は、他から消費が流入していると考えられます。逆に回帰線より下の市町村は、所得が地域の売上高に十分結びついていないことがわかります。その理由を考えることが、施策を考えるための次のステップになるのです。



インド進出、層薄い日本企業 2018/04/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「インド進出、層薄い日本企業」です。





インドが世界最大の人口大国になる日が近づいている。国連の推計では今年半ばの人口が約13億5400万人。14億1500万人強の中国をまだ下回るが、6年後の2024年半ばには14億3000万人台で中国を逆転する見込みだ。

17年の国内総生産(GDP)はフランスを上回る世界6位。近年定着した7%台の成長が続けば6年後には英国を抜きドイツと4位を競っている。米アップルのティム・クック最高経営責任者は「何年か前の中国に(消費市場の)傾向がよく似てきた」と表現する。

それだけに有力グローバル企業の勢力争いは激しい。特に欧米ウェブサイトへのアクセス制限がない民主主義国だけあって米ネット企業の存在が目立つ。米有力ネット企業が不在の中国とは対照的に、インドは米中の巨大企業と地元勢が入り乱れ、さながらオールスター戦の様相だ。

たとえば主要空港では配車世界最大手の米ウーバーテクノロジーズと配車国内企業最大手のオラが共通の乗り場で競う。動画配信ではネットフリックスとアマゾン・ドット・コムの米2社の直営サービスを21世紀フォックス傘下の地元企業ホットスターが迎え撃つ。

インド最大の電子商取引(EC)企業であるフリップカートの支配権獲得に世界最大の実店舗型小売企業のウォルマートとECの巨人アマゾンが競っている。フリップカートとオラの株主には中国のネットの巨人、騰訊控股(テンセント)が陣取る。モバイル決済最大手の地元スタートアップPaytmの運営会社には中国のもう一つの巨人アリババ集団が出資する。

日本企業はどうだろう。

同国自動車首位はマルチ・スズキ、エアコン首位はダイキン工業。液晶テレビではソニーが首位を争う。インド消費者の日本ブランドへの信頼も厚い。フリップカートの最大外部株主はソフトバンクグループ。同社がウォルマートとアマゾンに買収条件を競わせている。ソフトバンクはオラやPaytmの運営会社、国内EC企業2位のスナップディールにも出資する。

外務省によると日本企業のインド拠点数は16年秋、10年前の10倍、米国の半分強の4590カ所で世界3位の進出先になった。企業単位でみると日本からの進出は急拡大中だ。

しかしヒトに着目すると話は別だ。

インドの商都ムンバイは中央銀行のインド準備銀行が本店を置き、米国でいえばニューヨーク、中国なら上海の位置づけだ。ところが永住者を除く在留邦人数は近年、500人超千人未満で推移している。

在留邦人の多い都市ランキングでは、小国カンボジアの首都プノンペンが2271人で50位にランクインしたのに遠く及ばない。国・地域別でもインド全体では8899人で17位。企業に比べ人間の進出が遅れている。

つい最近でも大型スーツケースに飲料水を詰め込んできた日本からの出張者がいたと現地日本人社会で話題になった。こんな誤認識がまだはびこる背景には、日本企業によるインド進出の層の薄さがある。放置する企業は世界オールスター戦の圏外にとどまる。



アジア経済の見通し インドがけん引役に 2018/04/30 本日の日本経済新聞より

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世界経済の拡大が続く。引っ張っているのは米国に加え、中国やインドをはじめとするアジア諸国だ。今後の世界経済のけん引役はどこの国や地域か。アジア業務に力を入れる米大手金融機関の一つ、モルガン・スタンレーのアジア太平洋地区共同最高経営責任者(CEO)、ゴクール・ラロイア氏に聞いた。

――国際通貨基金(IMF)などの予測では、2018年の世界の成長率は17年より一段と上向くと見込まれています。

「われわれも世界経済の見通しは非常に良好とみている。特に、米国など先進国と新興国の成長が共鳴するように加速する傾向が、過去1年間で強まったのではないか。世界経済は18年に3.9%拡大し、19年も3.7~3.8%成長するとみている」

「ただ、成長の中身は徐々に変わっていくだろう。すでに米国は景気循環の後期にあり、先進国全体でも成長が鈍り始める。今後の世界経済は新興国主導の様相が強まる」

――しかし、中国経済の先行きについて不透明感の強さを指摘する向きも増えています。リスクはありませんか。

「中国経済は移行期にさしかかっている。これまで投資の伸びが成長を支えたが、並行して債務も増えすぎて国際社会が大きく懸念するようになった。このため、中国政府の経済運営の比重は、これまでの成長一辺倒から、国内総生産(GDP)に対する債務の比率を一定に保ちながら成長していくことへと移っている。(政府、企業ともに)債務の増加を伴う投資を抑えるため、経済成長はある程度鈍る」

――世界経済に悪い影響が出ませんか。

「中国と入れ替わるように、アジアのもう一つの経済大国であるインドの成長が加速するとみる。中国とは対照的に、インドでは公共投資が伸びている。道路などのインフラ整備が進み始め、もともと好調な消費とあわせてインド経済を引っ張っている」

「モディ首相が実施した高額紙幣の廃止や物品サービス税(GST)の導入は社会を混乱させ、経済活動を停滞させた面もあった。混乱がようやく落ちついたことも成長率を押し上げる要因となる」

――米国の長期金利が上昇しています。東南アジア諸国連合(ASEAN)の中から、資本流出に見舞われる国が出てくる懸念はありませんか。

「(タイ・バーツなどが急落した)1997年型の経済危機がくり返されることはないだろう。ASEAN諸国は危機から学び、自国経済の構造改革を進めてきた」

「介入によって自国通貨を不自然に高い値段で支えようとすることもなくなった。通貨水準が市場原理に基づき調整されるのは悪いことではない。むしろ市場の信認は高まるだろうから、投資資金の流出なども生じにくくなる」

「もちろん、外国人が国債を多く保有しているインドネシアのような国には、脆弱性が残っている。しかし、全般的にアジア諸国は外的な経済ショックへの耐久力を高めている。その点も新興国が世界経済の拡大に持続的に貢献すると考える理由の一つだ」

(聞き手はアジア総局 

編集委員 小平龍四郎)



がん免疫薬 病巣に照準 2018/04/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「がん免疫薬 病巣に照準」です。





体内の免疫の攻撃力を高めるがん免疫薬を病巣だけで働かせる研究が進んでいる。名古屋大学と米国立衛生研究所(NIH)などは体外から近赤外光をあてて、免疫の働きを促す薬の効果を高めることに動物実験で成功した。国立がん研究センターはがん免疫薬と抗体を併用して効果を高めた。実用化すれば、副作用を抑えて高額薬の使用量が減る治療法になる可能性がある。

(画像:近赤外光と抗体でがん治療するマウス実験(米国立衛生研究所提供))

がん免疫療法は手術と抗がん剤、放射線治療に続く治療法として期待を集める。代表的な

小野薬品工業のオプジーボなどの「免疫チェックポイント阻害剤」は、免疫のブレーキを外してがん細胞を攻撃し続けるようにする。従来の抗がん剤が効かない重症患者を治療できることで注目を集めたが、効果のでるのは患者の2~3割に限られる。

製薬会社は効果を高めるため、複数の免疫チェックポイント阻害剤を併用する治療法などの開発に力を入れる。ただ高額薬のため医療費がさらに膨らむのは大きな課題。より安価で効果的な治療法が求められている。

名大の佐藤和秀特任助教と米NIHの小林久隆主任研究員などは、免疫細胞の働きを抑える「制御性T細胞」に付く抗体と近赤外光で狙い撃ちにする手法を開発した。色素を付けた抗体が近赤外光を受けると、この細胞を壊す働きが高まる。肺がんや大腸がんのマウスの実験で効果を確かめた。目立つ副作用もなかったという。2年後にも臨床試験(治験)を始める。

国立がん研究センターの工藤千恵ユニット長らは、がんの増殖を促すたんぱく質の働きを抑える抗体を、免疫チェックポイント阻害剤と併用した。阻害剤だけでは治療できない悪性黒色腫のマウスの約40%でがんが消えた。3年後の治験を目指す。

米シカゴ大学の石原純博士研究員らは、がん細胞周辺のたんぱく質に結合するペプチド(たんぱく質断片)を阻害剤に付けてがんにとどまりやすくする研究に取り組む。乳がんのマウスでは約7割でがんが無くなった。5年後にも治験をする。

免疫チェックポイント阻害剤を使う患者の約4割は、肝機能障害や糖尿病などの強い副作用のために治療を断念しているという調査結果もある。近赤外光や抗体でがん組織だけを攻撃するようにできれば、副作用を抑えた低コストの治療が様々ながんの種類で使える可能性がある。



風見鶏 小泉氏は農林族なのか 2018/4/29 本日の日本経済 新聞より

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 「族議員」という言葉がある。批判的な人は政治の利益誘導を連想し、専門家を自負する当人は言葉の響きに反発する。実態はどうなっているのか。

 4月13日朝、東京・永田町にある自民党本部で、農産物輸出に取り組む生産者や事業者を集めて会合が開かれた。「事業で日々感じていることをぜひ率直に話してほしい」。正面の「ひな壇」中央でそう話したのは小泉進次郎氏だ。

攻めの農家を応援する(福島県の内堀知事とともに福島産の桃をPRする小泉氏(右))=共同

 小泉氏が党農林部会長を退いて8カ月。引き続き農政の核にいるのは確認できたが、気がかりなこともあった。議員席に空きが目立ったのだ。2015年に部会長に就いたころは違った。環太平洋経済連携協定(TPP)対策の会合は大勢の出席者で室内は汗ばむほどで、小泉氏が促すと競い合うように発言した。

 輸出のような「攻め」に関心のある議員は少なく、市場開放におびえる農家を「守る」ことばかり考えているのか。それを小泉氏に聞くと、答えは「アンフェアだ」。「TPPのような国論を二分する問題」と輸出を同列に並べるべきではないというのがその理由。さらに農業と政治のリアルな関係を語った。

 「輸出するような農家は独立独歩で数が少なく、政治の関与はまずない。一方で多くの農家はもうかっていなくて、輸出もしていない。政治がそちらをメインにするのは当然だ」

 ここで昔の農林議員の声を紹介しよう。谷津義男元農相は1986年に初当選したとき、竹下登幹事長に「食べ物のことをT字型で勉強してほしい」と言われたという。他分野は浅くていいが、農業は深く掘り下げろという意味だ。

 谷津氏は「昔は大議論があった」と懐かしむ。党の会議で意見が対立すると、ときに灰皿が飛んだ。思わず相手の胸ぐらをつかみ、逆に背負い投げでたたきつけられた議員もいた。今はTPP関連の会合でさえ、言うだけ言うと部屋を出る議員が少なくない。

 何が変わったのか。谷津氏は「(96年の衆院選で始まった)小選挙区制で専門家が育ちにくくなった」と話す。一般論としては正しいかもしれないが、制度だけが原因だろうか。

 票を投じる側と政治との関係に目を転じてみよう。全国農業協同組合中央会(JA全中)によると、かつては議員への「突き上げ」が中心だった。市場開放への反対集会で煮え切らない態度の議員がいると、激しいヤジが飛んだ。

 今そうした迫力は影を潜めた。農家の数が大幅に減ったうえ、「いくら自由化に反対しても無駄」という諦めムードが広がっているからだ。以前は農林部会に出ない議員に対して農協の幹部たちは「出席してこう発言してほしい」と迫ったが、今は「農業に関心を持ってください」と懇願することが多くなった。

 選挙制度が変わって議員が1分野に特化するのが難しくなり、農家は政治を動かすことが難しくなるほど数が減った。小泉氏が応援する攻めの経営者もまだまだ少数派だ。だが農家が減って生産基盤が弱体化したことで、食料問題はむしろ切実になっている。

 福島大の生源寺真一教授は「国民全体が農業の生産する食と田園風景の受益者であることを、政治は訴えるべきだ」と指摘する。これに関連し小泉氏は「都会のコンクリートジャングルの真ん中で農業を語っても心に響く」と話す。

 正論だろう。だがそう言える人がもっと増えなければ、ものごとは動かない。農業が国民全体に関わるテーマであるのなら、すべての議員が「農林族」であるべきなのだ。

(編集委員 吉田忠則)



北朝鮮制裁の緩み懸念 ラッセル元米国務次官補に聞く南北首脳、 意図的に親密さ示す 2018/4/29 本日の日本経済新聞より

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 朝鮮半島の「完全な非核化」を実現することなどで合意した27日の南北首脳会談について、米国の元国務次官補(東アジア・太平洋担当)のダニエル・ラッセル氏に聞いた。

ラッセル元米国務次官補

 ――南北首脳が「完全な非核化」をめざす板門店宣言に署名しました。

 「非核化については明確ではない。北朝鮮は過去にはもっと明快に核放棄を約束していた。例えば(核兵器の生産、使用などの禁止を盛った)1992年の南北非核化共同宣言がそうだ。(すべての核兵器と既存の核計画の放棄をうたった)2005年9月の6カ国協議の共同宣言もある。今回の宣言はそれほどの内容ではない」

 「確かに首脳会談が開かれたことは良いステップだ。しかし、だからといってこれまで金正恩(キム・ジョンウン)委員長が国際法や国連安全保障理事会決議に違反する脅威を高めてきたことに責任がある事実を変えることはできない」

 ――会談で両首脳の親密ぶりが印象的でした。

 「両首脳とも意図的に演出しようとしていた。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の場合、任期の早いうちの南北会談によって進歩的な政策の実現に弾みをつける。さらに米国に軍事行動をとらせない狙いがあったとみる」

 「金委員長は自らのイメージを変えようと試みた。兄を殺害し、米国人を拘束している専制主義的な独裁者像から転じ、洗練され、平和を語る分別のある首脳として印象づけようとした。両首脳にとって壮大な見せ物だった」

 ――米朝首脳会談に向けて何が課題ですか。

 「全ての核施設や核計画、核兵器の放棄を宣言するのか。それは信頼できるのか。国際原子力機関(IAEA)の査察など完全な検証を認めるのか。これらが満たされて初めて良い方向に向かっていると言える」

 ――核放棄の完了期限を示すべきでは。

 「仮に合意したとしよう。彼らの戦術は課題を細分化し、一つ一つについて交渉し、激しくやり合って時間を稼ぎ、見返りを引きだそうとするだろう。期限を設定するのはいいが、それは信頼に足るものにしないといけない」

 ――トランプ政権は完全な非核化まで圧力を維持するとしています。

 「言うのは簡単だ。ただ、米朝首脳会談でトランプ大統領が金委員長と握手している場面を世界の国々がみれば、事態が好転しているとの印象を受け、もう心配いらないとなるだろう」

 「この意味で、中朝、南北両首脳会談によって北朝鮮は大きな利益を得たといえる。『最大限の圧力』は『最低限の圧力』になった。制裁の枠組みは残ったが、その履行レベルは落ち続ける。制裁は事実上緩んだ。いったんそうなると再び締めるのは極めて難しい」

 「また、各国の首脳はもろ手を挙げて金委員長と会談したがっている。それは北朝鮮に正当性を与え、実質的に核保有国としての北朝鮮と関係を正常化することになると理解されるだろう」

(聞き手はワシントン=永沢毅)



限界都市 コンパクト化の虚実(下)和歌山市、規制強化の衝撃中 心部高騰開発難しく 2018/4/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の風見鶏面にある「限界都市 コンパクト化の虚実(下)和歌山市、規制強化の衝撃中心部高騰開発難しく」です。





 和歌山市郊外の岡崎地区。昨年11月に訪ねると、田畑が広がる中で新しい一戸建てが連なる風景に出くわした。「のどかな環境がいいなと思い、1年前に和歌山駅近くから引っ越してきた」。約10棟が立つ区画で子ども連れの主婦に聞くと「周りはみんな若い世代」という。すぐ隣でも分譲用宅地が造成中だった。

和歌山市の岡崎地区では農地転用が進んだ

 同地区の大半は本来、住宅建設が厳しく制限される市街化調整区域だが、農地から宅地への転換が急速に進んだ。決め手は2005年に市条例で導入した「50戸連たん制度」。隣接市への住民流出を食い止めるため、50戸以上が連なる地区に隣接すれば分譲住宅を建設できるようにした。

坪単価1割上昇

 だが、裏目にでて「数珠つなぎのように住宅が際限なく広がってしまった」(都市計画課)。郊外に集落が散らばるとゴミ収集や道路・水道整備、福祉サービスの効率が悪化し、財政負担が増す。副作用に気付いた市は17年4月に50戸連たんの原則廃止を柱とする規制再強化に踏みきった。

 これに慌てたのが地元業者だ。規制強化前の17年1~3月は調整区域の開発申請が27件と前年同期より約4割も増加。その後は開発できる土地は大幅に減った。くだんの岡崎地区で造成が続いていたのは、駆け込み申請案件の消化だ。

 「種地が取り合いになり、仕入れにくくなった」。不動産取引を営む際(和歌山市)の中林英樹専務はこう嘆き「この1年間で坪単価が1割も上がった地区もある」と明かす。

 中心市街地では値上がりを狙う地主が土地を手放さなくなる一方、所有者不明の空き地や空き家が増えている。都市の活性化にはほど遠く、別の不動産会社の会長は「これからどうやって食っていけばいいのか」と頭を抱える。

農地の荒廃懸念

 農家も複雑だ。和歌山市農業委員会の谷河績会長は「いい農地がある調整区域は開発を規制したらいい。だが後継者がいない農家が土地を売るのもやむを得ない。そこが難しい」と語る。売り先がない農地が荒れれば、環境は悪化する。

 和歌山市はコンパクトシティー形成に向けた立地適正化計画を作り、都市機能を誘導する区域を設定済み。今年10月から居住誘導区域も運用する。この実効性を高めるために、郊外開発の規制を強める決断は理にかなったものといえる。

 だが単純に規制を強化するのではなく、その副作用を緩和する手立てが必要だ。地元の不動産業者からは「中心部の空き家を更地にすれば我々が干上がることもなく、中心市街地にもっと住民や店舗を呼び込める」との声があがる。

 多くの自治体は和歌山市のような規制強化に及び腰だ。郊外の集落から反発が起きるのを恐れている側面が強いが、意欲だけでは乗り越えられない。空き家対策や就農支援などを含めて横断的に課題を解決する必要がある。「和歌山市の衝撃」を後ろ向きに捉えるのではなく、コンパクトシティー実現に向けた糧とすべきだ。

(鷺森弘)



地域経済を「見える化」する(2)データに基づく施策可能に 中村 良平岡山大学特任教授 2018/4/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済教室面にある「地域経済を「見える化」する(2)データに基づく施策可能に 中村良平岡山大学特任教授」です。





 情報通信技術の発達で、以前には考えられなかった様々なビッグデータの利用が可能になっています。社会科学分野では個人や事業所単位のデータであり、それらの活動に関わる、移動といった空間的側面も数値情報として利用できるようになっています。それによって当然、まちづくりや地域振興のあり方も変わってきます。

 兵庫県豊岡市はビッグデータを活用し、ターゲットを絞った観光客の誘致に取り組んでいます。インバウンドブームで同市の城崎温泉には多くの外国人観光客が訪れます。2014年に1万3877人だった外国人宿泊者数は、15年に3万1442人、そして17年には4万5107人に急増しました。

 同市がWi―Fiやスマートフォンを利用する外国人客の行動を解析した結果、京都や大阪方面から列車で訪れるだけでなく、姫路城を観光してからバスでやってくる外国人客が意外に多いことが判明しました。利便性を高めようと発車時間の見直しをバス会社に働きかけたり、国籍による宿泊日数の違いを分析してニーズに合った宿泊対策を打ち出したりするなど、従来の経験や思い込みによる施策ではなく、客観的データに基づいた施策を実施できるようになりました。

 こうした観光客の動線に関するビッグデータの一部は、国が運用している地域経済分析システム(RESAS)でも利用できるようになっています。

 ただ、ビッグデータを使って見える化しても、そこで「何をすれば、何がどうなる」という考え方(理論モデル)に基づいた分析がなければ、目標が達成できなかった場合に、その原因にまでたどり着くことができません。

 希望的な目標値を掲げれば良い、というのは大きな誤りです。定量的な分析をする際、利用できるのは個別のデータではなく、市町村単位に集計されたデータという場合も多いでしょう。それでも、データに基づく分析をベースにした政策や個別の施策であれば、必ずその結果について検証から施策の見直しというフィードバックをすることができ、次の施策へとつなげられるはずです。