正恩氏、3年越し対米戦略 2018/05/31 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「正恩氏、3年越し対米戦略」です。





北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長が米朝首脳会談への執着をあらわにしている。30日には側近の金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長をニューヨークに派遣した。メンツをかなぐり捨てたなりふり構わぬ姿の背景には、3年越しで追い求めてきた対米戦略がある。

(画像:メンツにこだわらない姿勢をみせる金正恩氏=コリアメディア提供・共同)

金英哲氏はニューヨークでポンペオ米国務長官と会談する。トランプ米大統領による中止通告から約1週間。北朝鮮は約18年ぶりに指導部の幹部を米国に送り込み、6月12日開催で再調整が進む首脳会談に向けて非核化手法などを詰める。

呼びかけも無視

北朝鮮がいかに首脳会談を切望しているか。その源流は2016年5月にさかのぼる。36年ぶりの朝鮮労働党大会で、金正恩氏は「核保有国の地位になったのだからそれに見合った対外関係を発展させる」と表明。主権が侵害されなければ核兵器を先に使用せず、核拡散防止義務も誠実に履行すると主張した。

平和協定交渉を狙った米国へのラブコールだった。このとき韓国にも緊張緩和を呼びかけた。

党大会では、国家経済発展5カ年戦略に数値目標を掲げられず、「経済部門はまだ相応の高さに至っていない」と珍しく弱音を吐いた。国家目標の「経済と核の並進路線」が頓挫しかねないとの焦りがのぞいた。

いまと状況が似ている。だが当時、米韓を率いていたのは、北朝鮮への「戦略的忍耐」政策をとったオバマ大統領と、強硬派の朴槿恵(パク・クネ)大統領。金正恩氏の訴えは無視された。

17年1月、トランプ米大統領が登場した。北朝鮮への先制攻撃や指導部を想定した「斬首作戦」の脅威が金正恩氏を追いつめる。後ろ盾のはずだった中国との挟み撃ちにされかねない。北朝鮮筋によると、金正恩氏は同年10月の内部会議で「公式・非公式、表・裏など手段と方法を選ばずに積極的な外交戦を展開しろ」と指示を飛ばした。

平昌冬季五輪を契機とした韓国との関係改善を国際制裁網の突破口にする戦略もこのとき決まった。「米国と対話局面に入りさえすれば中国との関係は自然と緩和する」とも言及したという。

「攻撃」に危機感

そこまで金正恩氏を慌てさせたのは「5月以降に米軍が攻撃を仕掛けてくるかもしれない」との危機感だった。トランプ氏の出方が読めない。国連制裁の緩和も時間がかかるため、北朝鮮は内部固めにも力を入れた。

17年秋には、緊張局面の長期化をにらみ、地域別の「戦略物資備蓄計画」を18年春までに実行し、民間の人的、物的資産や能力についても国家が総動員できるよう党内で指示が出されたという。

すべては金正恩氏の体制保証のためだ。北朝鮮は9月9日に建国70年を迎える。その節目を金正恩氏による新時代の到来に位置づける構想がある。朴奉珠(パク・ボンジュ)首相は4月11日の最高人民会議で「今年を祖国の歴史に特筆すべき勝利の年に輝かす」と強調した。北朝鮮指導部は国営メディアを通じて科学、国防、農業など各部門に発破をかけている。

北朝鮮関係者の間では、建国70年に金正恩氏が国家主席に就任するとの観測がある。祖父の金日成主席に並ぶ偉大な指導者になったと国内外にアピールするとの解説だ。

金正恩氏にとって米国との関係を改善し、体制保証を得るための舞台となるのが米朝首脳会談だ。中止通告を受けても会談実現に執着したゆえんだ。しかし、最大の焦点の非核化では溝が残る。核・ミサイルを中心とした科学技術は自らの権威の象徴であり、兵器以上の意味を持つからだ。核放棄後に将来、米国から攻め込まれかねないとの不信感も消えない。

そこには体制保証と引き換えに「非核化」を約束しても段階的に核軍縮を進め、最後まで核の開発能力は残そうとする本音がみえる。米国も韓国も北朝鮮の核施設の全容を把握できていない。「『非核化した』と主張して見返りを得たら、膨大な作業の検証で時間稼ぎする」と専門家は警鐘を鳴らす。

3年越しで実現が近づく首脳会談。トランプ氏相手に、結果まで思い通りになるかは金正恩氏にもまだ分からない。

(編集委員 峯岸博)



全国の知恵で地域おこし 山口FG、新興企業取り込み 2018/05/31 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「全国の知恵で地域おこし 山口FG、新興企業取り込み」です。





山口フィナンシャルグループ(FG)が取り組むスタートアップ企業の支援事業が始動した。全国の才能を「山口に呼び込み、山口から世界に発信する」(吉村猛社長)という意気込みだ。地銀が新興企業の活力を取り込もうとアイデアを募る試みは、千葉銀などが始めたばかり。山口FGは官学も巻き込み、地域全体での活性化を目指す。

ヤフー社長も驚き

24日、山口銀行本店で開かれたイベントでヤフーの宮坂学社長は「ベンチャーには慣れているつもりだったが、新しい発見がいくつもあった」と驚きを交えて語った。山口FGが2月に始めた、地域にスタートアップ企業を呼び込もうというアクセラレーション事業「Unicornプログラム」の本選会の席上だ。

全国のスタートアップ企業に呼びかけ、山口FGの営業エリアを舞台に地域活性化のためのプランを募った。約150の応募があり、最終的に12社が選ばれ、プレゼンテーションを行った。FGのスタートアップ支援を担当する投資共創部の山根孝部長は「本当に生きのいい、才能ある企業ばかりが集まった」と興奮気味に語る。

アクセラレーターの代表には宮坂氏が就き、アクセラレーターには村岡嗣政県知事、宇部市長、下関市長など自治体、地元企業のトップらや大学関係者、ベンチャーキャピタルなど約170人が参加。実際の支援や投資を見込んだ鋭い質問が飛んだ。すでに本選会の直後から、12社と投資と検討する企業との話し合いが始まったという。

本選出場企業の所在地は東京が6社、福岡が2社で京都、広島、徳島、宮崎が1社ずつ。内容は多言語化、地図情報、農業、電力、人工知能(AI)、医療など多岐に及ぶ。目標は高く掲げて「3~5年で上場を視野に入れるレベル」(山根部長)とした。

当初はどれだけ集まるか危惧していたが、ふたを開けてみたらベンチャーコンテストの優勝者などがそろった。半年後、どれだけ支援があったか、事業に着手できたかの成果発表会を行う。

投資共創部が発足したのは昨年6月。山根部長は吉村社長から「100億で何ができるか考えろ」と言われた。山口FGは30億円のファンドを立ち上げ、東京に拠点も設けた。10月には今回のスタートアップ呼び込みの枠組みを考え、準備に取りかかった。

起業の基盤作る

行動を急がせたのは取り巻く環境の厳しさだ。山口県でも年に1万人近く人口が減り、働き手の流出が続いている。地銀にとって地元企業の活性化は死活問題。最良の薬は起業の増加だが、すぐに優良企業が生まれるはずもない。まずは山口に新たな産業を興すという狙いでの、Unicornプログラムだった。

今回は山口に本社のある企業はない。「いずれは山口から次々と企業が出てくるような基盤を作りたい」(吉村社長)。年1回選ばれる10社から、山口発の原石が生まれるかどうか。まずは初回の成果が問われる。

(山口支局長 竹田聡)



アセットマネジメント新世紀 独立系の躍進(下) 規模拡大、理想と相反 2018/05/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「アセットマネジメント新世紀 独立系の躍進(下) 規模拡大、理想と相反」です。





「外国株の投資を始めました」――。3月、老舗の独立系運用会社のさわかみ投信に「異変」が生じた。1999年のスタートから日本株に特化してきた運用方針を見直し、株価が一時急落した米オラクル株を組み入れたのだ。

海外に投資対象を広げるのはレオス・キャピタルワークスも同様だ。いまや外国株の組み入れ比率は全体の約9%に達し、組み入れ銘柄上位にアマゾン・ドット・コムやマイクロソフトが並ぶ。藤野英人社長は「今後は米国に拠点を置き、本格的な銘柄調査も検討する」と語る。

独立系の真骨頂は丁寧な企業分析を通じ、国内の中小型株の埋もれた価値を発見することににあった。それが個人の共感を呼んできたはずだが、なぜ今海外市場なのか。

市場には「運用額が膨らみ、中小型株が中心の投資に限界が来ている」(国内運用大手)との指摘がある。一般に投信は投資対象に応じた「適正規模」があるとされる。中小型株投信などで運用残高が1000億円程度になると、いったん募集を停止するのはこのためだ。

さわかみ投信の純資産残高はこの5年ほど3000億円前後で推移してきた。「急落時に安く仕込む」という戦略を貫いてきたが、国内株の底上げで割安株に投資する機会は一段と限られる。この結果、海外に投資対象を広げているとの見方がある。

「逸脱」の感も

米国株相場の上昇で、今のところ運用成績は好調だ。ただ、人材が限られる独立系は、米国企業の調査で世界の運用大手にかなわない。すでに個人投資家には低コストのETF(上場投資信託)で海外に分散投資する方法もある。日本株と思って購入した個人が、独立系投信の海外投資を「逸脱ではないか」と感じる例も少なくはない。

個別にみると、運用成績にもばらつきがある。独立系5社の主力投信について設定来の基準価格の推移を比べると、ひふみ投信は同期間の日経平均の2倍を超える高い伸び率を示した。一方で鎌倉投信の「結い2101」は市場平均より低調だった。

鎌倉投信の鎌田恭幸社長は「社会のためになる会社にだけ投資する。短期的な収益は追求しない」という哲学を貫いてきた。コモンズ投信が厳選した30銘柄で運用する「コモンズ30ファンド」も、銘柄入れ替えをほとんどしないという長期保有を信条に掲げる。

もっとも、理念重視が良好な運用成績を約束するわけではない。独立系投信の主要顧客である現役層は積み立て投資が主流だ。複利効果が重要なこの投資スタイルでは、運用成績によって長期の資産形成に大きな差が出てくる。

独立系投信の躍進はまだ話題先行の域を出ない。長期資金の預け先として個人の信認を得るには、安定した投資収益を上げ続ける「直球」で勝負していくしかない。

嶋田有が担当しました。



都市型ホテル、民泊に対抗 2018/05/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「都市型ホテル、民泊に対抗」です。





宴会場を持たない宿泊主体の都市型ホテルが、客室数の拡大やサービスの充実に動いている。三菱地所は「ロイヤルパークホテルズ」を約1500室増やし、イベントスペース付きのホテルを広げる。6月に新法が施行される民泊も交えた競争が激しくなる中、手ごろなサービス・設備で特色を出し、訪日外国人らを囲い込む。

(画像:三菱地所の新型ホテルはラウンジで料理など多彩なテーマの催しを開催(名古屋市))

都市型ホテルは高級シティーホテルとビジネスホテルの中間の価格とサービスを提供する。三菱地所子会社のロイヤルパークホテルズアンドリゾーツ(東京・千代田)は全国9カ所に約2560室あるホテルを、2022年に17カ所で4100室と部屋を6割増やす。

中心となるのが新ブランド「ザ ロイヤルパーク キャンバス」。交流ラウンジを用意し、音楽や料理、野菜販売などの催しを毎月開く。

特定の場所でスマートフォン(スマホ)をかざすとプレゼントと交換できるコインをもらえたり、観光情報の動画を見たりできるAR(拡張現実)サービスも提供する。東京・銀座や大阪のほか神戸、京都などに開く。

野村不動産は11月に東京・上野に「ノーガホテル」を初めて開く。今後は年2~3件を新設する計画だ。上野では地域の職人やデザイナーと開発した家具や備品、装飾品を配置。銀器製作などものづくりの体験講座も館内で催す。

東急不動産子会社の東急ステイ(東京・渋谷)は20カ所で2900室強を展開するが、来春までに新たに5施設を開く。自動精算機を使う利用者はチェックイン時に好きな階を選べるといった、一部で導入ずみのサービスの拡大も検討する。

「三井ガーデンホテルズ」を展開する三井不動産は、今後、大浴場を可能な限り併設する方針。地元食材を使った朝食も充実させる。

ホテルの競争は激化している。ビジネスホテル大手も攻勢をかけており東横インは18年度に国内20カ所以上で7000室超を新たに供給する。ただ主体は12平方メートルほどのシングルルームだ。

新タイプの都市型ホテルは観光客を取り込むため、家族連れも使いやすい20平方メートル前後を超える部屋が多い。人手がかかる宴会場がないため効率良く運営できる。

CBRE(東京・千代田)によると、東京23区と大阪市、京都市では17~20年にかけて既存の38%相当のホテル客室が新たに供給される。20年に東京は需要に対し3500室が不足する。一方で大阪、京都では供給数が必要数を上回り、過剰供給が懸念される。

民泊との競争も激しくなりつつある。観光庁によると1~3月は訪日客の11.6%が民泊を使った。17年の国内の延べ宿泊者数は4億9819万人と16年を1.2%上回った。政府は訪日客数を20年に4千万人、30年に6千万人に増やす目標。宿泊需要は中長期では伸びるとみられるが、独自性が求められている。



中国、国産空母の死角 2018/05/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「中国、国産空母の死角」です。





中国が初の国産空母「001A型」の航行試験を開始した。同空母は早ければ2019年にも正式に就役し、旧ソ連製を改造した「遼寧」と合わせ2隻体制となる。国家の威信をかけた空母の建設がなおも続くが、そこには「死角」もある。

(画像:大連港から試験航海に出る中国の空母「001A型」=ロイター)

5月13日に大連港を出て黄海で6日間にわたり最初の航行試験をした001A型は、全長315メートル、満載排水量約5万トンで戦闘機は30機程度搭載できるようだ。米海軍が10隻運用する原子力空母ニミッツ級(333メートル、約10万トン、60機程度)に比べやや細身な空母だ。

30年来の悲願

「今世紀半ばまでに中国軍を世界一流の軍隊にするよう努める」――。2017年10月の共産党全国代表大会で習近平(シー・ジンピン)国家主席はこう強調した。政権にとって、空母は「世界一流の軍隊」の象徴であり、保有は30年以上前からの悲願だった。

中国軍がオーストラリア軍の廃棄した空母を鉄くず名目で買って研究に着手したのが1985年。その後、旧ソ連製空母のスクラップを3つ入手し研究を続行。3つ目は改造して「遼寧」と命名し、運用実験に供している。これを複製したのが今回の001A型だ。

空母にはさまざまな用途がある。第一に、本国から離れた海域に空母を派遣し軍事作戦をする「戦力投射」だ。さらに、大規模災害対処など「平時の活用」や、敵対国を威圧する「心理戦の道具」という使い道もある。

ただ戦力投射に限って言えば、中国軍の空母は米空母には遠く及ばない。米空母は巡洋艦や攻撃型原子力潜水艦などと「空母打撃群(CSG)」を組む。打撃群の運用には艦隊の組み方やデータ共有など独特の技が求められ、米海軍関係者は「一つの国がこれを習得するには100年はかかる」と自信ありげに語る。

米海軍は、搭載武器を含めて重さが20トン以上にもなるジェット戦闘機を短い飛行甲板からのべ何千回も打ち出せる「カタパルト」を保有する。未保有の中国軍は、搭載武器を減らしたうえで戦闘機を「スキージャンプ台」と呼ばれる飛行甲板から離陸させている。

時代遅れの懸念

戦闘機自体も現在はステルス性能のない「第4世代」機なので、仮にこの先、米中の空母部隊が激突しても、中国軍機は「第5世代」の米軍機に撃ち落とされてしまう。

それでも中国軍は空母の量産や改良を重ね、今後十数年をかけて原子力型を含め5~6隻を持つ見通しだ。ただ、そこには死角も潜む。中国が米軍に比肩する空母部隊を保有しても、そのころには大型空母そのものが時代遅れになっている可能性が出てきたのだ。

米軍は、短い飛行甲板でも離着陸できるステルス戦闘機F35Bの配備を始めている。同機は、離陸にカタパルトを必要としないことや垂直に着陸できるなどの優位点があり、米国から同機を調達できる同盟国であれば、無理をして大型空母を保有する理由がなくなりつつある。また、大型空母は対艦ミサイルや潜水艦の魚雷攻撃の標的になりやすい。今後は複数の小型空母とF35Bのような戦闘機を組み合わせて運用した方が、リスクも建造費も減らせるのだ。

実際、日本の防衛省・自衛隊はその方向で動いている。海上自衛隊は長年、日米共同訓練などを通して空母部隊の運用ノウハウを学んできた。海自最大の護衛艦いずも級(全長248メートル、満載排水量約2万7000トン)は、F35Bを十数機搭載できる。日本が同機を調達し、いずも級などと組み合わせれば、中国空母部隊に対抗可能な、あるいはそれ以上の実力を備えた「日本版空母部隊」を短期間に実現できる。

肝心の戦闘で負けない実力がいつできるかは別にして、中国の空母が、周辺国を威圧する「心理兵器」なのは確かだ。巨額の軍事費は、戦闘機や潜水艦の急激な増強ももたらしている。米国が環太平洋合同演習(リムパック)への中国招待を取り消したり、南シナ海で「航行の自由」作戦を実施しているのも、中国軍の増強ぶりが無視できないからだ。弱点を抱えながらも膨張を続ける中国軍を、過大評価も過小評価もせずに注視し続ける姿勢が求められる。

(編集委員 高坂哲郎)



RIZAP社長「七顧の礼」 2018/05/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「RIZAP社長「七顧の礼」」です。





RIZAPグループがカルビーの松本晃会長兼最高経営責任者(CEO)を、代表取締役最高執行責任者(COO)に迎え入れる。自らの自由を縛りかねない実力経営者をなぜ招いたのか。

瀬戸健社長にとって松本会長は憧れの経営者だった。最近になって松本会長を紹介された瀬戸社長は直近で7回も面会している。三顧の礼どころではなく、七顧の礼だ。

瀬戸社長は松本会長と会っても「RIZAPはここが足りないんです」「組織の規律が緩くて」など問題点をさらして、ほぼ聞き役に徹した。

3月27日。瀬戸社長は橋渡し役であるグループの役員に松本会長の招請を指示する。これは偶然だが、松本氏がカルビー会長の退任を発表する日と重なっていた。

松本氏は了承してくれたが、問題はポスト。瀬戸社長は「会長かCOO」を持ちかける。会長だと大所高所からの立場で、COOだと一緒に切り盛りする立場になる。すると松本会長はCOOを選ぶ。「どちらでもいいと思っていたけど、まさか現場で汗をかいてくれるとは」(瀬戸社長)

瀬戸社長の経営のべースにあるのは「ヒトは変われる」。偏差値30台から猛勉強して数カ月で明治大学に入学。バイト先で社会常識のなさを指摘されて苦手な読書に挑み、今は猛烈な読書家だ。

「事業の成否を分けるのは顧客が最終的に満足することを企業がコミットしているかどうか」。そう語る瀬戸社長にアパレル、出版、サッカーチームなど様々なM&A(合併・買収)案件が持ち込まれる。これらを次々に買収し、拡大するのがRIZAPグループだ。

多様性というと聞こえはいいが、だぼはぜの投資にも見える。それゆえに松本会長という信用と、膨れあがったグループのグリップが必要になった。

松本会長は70歳、瀬戸社長は40歳。親子ほど年が離れ、経歴や性格も違うツートップが今後仕切るRIZAPグループ。「化学反応が楽しみ」(瀬戸社長)「おもちゃ箱のような楽しいイメージ」(松本会長)と前向きな2人だが、先が見えない時代にふさわしい実験であることは間違いない。

(編集委員 中村直文)



米朝攻防 焦点を聞く(3) 藪中三十二・元外務次官 2018/05/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「米朝攻防 焦点を聞く(3) 藪中三十二・元外務次官」です。





――北朝鮮の非核化はどのような時間軸で進めていくべきでしょうか。

「重要なのは6月12日に予定されている米朝会談ではなく、その後の具体的な手続きを進める協議だ。時間をかけず、半年以内に北朝鮮の核廃棄に向けたプロセスや廃棄した際の経済協力などの大枠を策定する必要がある。それが決まるまでは北朝鮮に対する制裁は緩めるべきではない」

「しばしば非核化のモデルとしてリビアが引き合いに出されるが、ほとんど核開発が進んでいなかったリビアと、すでに核兵器を開発・保有している北朝鮮とでは非核化に向けた難しさは格段に異なる。実際の廃棄に向けた手続きには、国際原子力機関(IAEA)だけでなく、核兵器に知見を持つ核保有国の軍が任務にあたることになる。半年で大枠を定めたとしても、実際の完全廃棄までは時間が必要だ」

――北朝鮮はこれまで合意と反故(ほご)を繰り返して核兵器開発の時間を稼いできました。

「もちろん、何年もかけるわけにはいかない。どの国に北朝鮮の核兵器を搬送するかなど課題は多いが北朝鮮の非核化時期の目安をあえて挙げるとすれば、米大統領選挙が予定される20年ということになるのではないか」

――北朝鮮の金正恩委員長は本当に朝鮮半島の「完全な非核化」という意思を持っているのでしょうか。

「ここが正直、読みにくいところだ。非核化に向けた過程では、北朝鮮が保有する核物質や核兵器について正確に申告させる必要がある。前回の6カ国協議では北朝鮮の申告が限定的で、その後の検証作業で行き詰まった経緯がある。今後の交渉では、いかに申告をさせていくかがまずは課題となる」

「ただ、金委員長は行動に慎重さがみられた故金正日総書記と比べて大胆な行動を取る印象だ。金委員長としても、いたずらに協議を引き延ばすことはできないのではないか。経済制裁がかなり効果を上げており、米国と対立したままでは体制の存続が危ういということは認識している。トランプ米大統領が米朝協議の中止を宣言した際の慌てぶりをみても、早い時期に米国による体制の保証を得る必要があると考えているのが分かる」

――韓国と北朝鮮は北朝鮮の非核化に向け、米朝韓の「3者」協議を提案しています。

「日本が協議から外れることは望ましくない。後で経済的な負担だけを求められる可能性もある。日本と中国、ロシアを加えた6カ国協議の枠組みを活用するのが現実的だ」

「核問題が動かなければ日本にとって重要な課題である拉致問題も進展しない。6カ国協議を通じて段階的に核問題を扱い、同時並行で日朝協議も始めるべきだ。拉致問題が解決しない限り日本が経済協力に加わることはないとの基本方針は維持する必要がある」

(聞き手は押野真也)

 やぶなか・みとじ 1969年大阪大法中退、外務省に入省。73年米コーネル大を卒業後、韓国、アメリカなどの日本大使館で勤務。アジア大洋州局長として北朝鮮を巡る6カ国協議や日朝協議を担当。審議官、事務次官を歴任し、2010年退官。現在は立命館大学客員教授。70歳。

やぶなか・みとじ



あの頃抱いた期待思い出す 2018/05/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「あの頃抱いた期待思い出す」です。





この時期にはいわゆる五月病に関する原稿を依頼されることが多い。五月病は私が若いころに使われるようになった言葉だ。記憶では、大学に新しく入った若者が目標を見失ったときに起きる精神的な不調によく使われていたように思う。

(画像:イラスト・大塚 いちお)

まだ大学進学率が高くなかったころの話だ。憧れの大学に入り専門的な勉強ができると期待に胸を膨らませていた若者が、何百人も入る大教室で行われる一方的な講義に失望してしまう。

このような状態になるのは大学生に限ったことではない。職場などでも私たちは新しい環境になじむためにかなりエネルギーが必要になる。特に他の人の気持ちを大切にする傾向が強い人ほど、新しい環境で疲れを感じやすいので注意が必要だ。

新しい環境の仕組みやしきたり、他の人の考えもよくわからない。スムーズに仕事をしたいし、他の人と摩擦を起こしたくない。そう考えて発言・行動するが、それがその場にあっているかどうかもよくわからない。そのようなときに少しでもうまくいかないことがあると、大きな問題のように思えてくる。

いつの間にか独り相撲を取るようになり、ますます疲弊してしまう。このようなときは目の前の問題から少し距離を置き、自分がもともと期待していたことをもう一度確認してみるとよい。

期待があったからこそ、失望もあるのだ。現実は期待通りに進まないこともあるが、期待を意識し実現するための方策を考えることで、期待に近づくことができるようになるし、こころも元気になってくる。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



米朝攻防 焦点を聞く(1)ヒル元米国務次官補 2018/05/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「米朝攻防 焦点を聞く(1)ヒル元米国務次官補」です。





トランプ米政権は中止を発表した6月12日の米朝首脳会談について、北朝鮮側と再調整の協議を続けている。激しさを増す米朝の外交戦の行方と関係国への影響について各国の識者に聞く。1回目は米国のブッシュ(子)政権で北朝鮮との交渉にあたったクリストファー・ヒル元国務次官補。(1面参照)

1面参照

――トランプ米大統領がいったん自らが中止を決めた米朝首脳会談の開催に再び前向きな姿勢をみせています。

「中止はトランプ氏が北朝鮮は非核化について対話する用意はあるが非核化そのものに取り組むつもりはなく、会談しても結果が出ないと(24日の時点で)認識したためだろう。そうだとしたら中止は正解だ」

――トランプ政権は非核化の進め方について北朝鮮が求める「段階的な措置」には否定的です。

「非核化が完了するまで何も与えず、一瞬のうちに核兵器を取り除くことができるならそれに越したことはない。ブッシュ(子)政権は好んで段階的な措置をやったわけではないが、それが最善の方法だった」

――核放棄につながる確かな措置を第1段階でまずとれば、それに見返りを与えていいと。

「それが現実的で、ベターな方法だ。もしどちらかがその方法を提案したら、それで合意することを期待する」

――どうすれば今後の交渉で段階的な非核化を成功させられますか。

「しっかりした検証ができれば国際原子力機関(IAEA)に核兵器を管理させ、国外に搬出できる。私たちの場合、検証がうまくいかなかった。北朝鮮は自分たちが申告した部分だけの検証を求めたが、私たちはそれ以外にも核計画があると疑った。それ以上は検証(の話し合い)を続けることができなかった」

「私が補佐官なら大統領にこう助言する。『ポンペオ国務長官に代表団を結成させ、まず共同文書の草案をまとめて北朝鮮側に渡しましょう』と。北朝鮮は対案を出したり米国案の修正を試みたりするかもしれない。その過程で少なくとも北朝鮮が真剣な対話の意思があるかどうかは分かる」

――ブッシュ(子)政権幹部だったボルトン大統領補佐官は強硬な姿勢です。

「ボルトン氏が(核放棄モデルとして米国が政権存続を保証しなかった)リビア方式について発言したとき、意図的に騒ぎを起こそうとしたのかと疑った。彼は自分と意見が合わない人間と口をきくのを嫌う。ブッシュ政権当時も大統領やライス大統領補佐官らを批判していた。忠誠心があるタイプでもなく、高潔でもない。トランプ氏もそのうち分かるだろう」

――この問題で協力が必要な中国とは通商摩擦を抱えています。

「このタイミングで貿易戦争をやるのはバカげている。トランプ氏が『もし北朝鮮問題で協力するなら、関税率を下げる』などと交渉するのは良くない。キッシンジャー元国務長官ら中国が信頼する人物を派遣し、いかに米国が北朝鮮問題を持続的な形で解決したいか伝えるのが重要だ」

――緊張を高めて相手に譲歩を迫る北朝鮮の瀬戸際外交にどう対応すべきでしょうか。

「彼らはいったん何かに合意すると、その1時間後に『新しい指示が下りた。もうさっきの件は白紙だ』と言ってくる。だから私はよくこう応じていた。『いいんだ。しかし、私はいったん合意したことをあなた方が受け入れるのを確約するまでもう話をしない』と」

「それで(核問題を巡る)6カ国協議で北朝鮮首席代表の金桂官(キム・ゲグァン)外務次官(当時)と3日間、口をきくのを拒んだ。慌てた中国が平壌と何回もコンタクトをとり、こう私に言った。『きょう北朝鮮と会えばいい。(元の合意を受け入れるとの)新しいメッセージがある』。それで金氏と会うと、その通りになっていた」

(聞き手は ワシントン=永沢毅)

=随時掲載

 ブッシュ(子)政権で東アジア・太平洋担当の国務次官補。6カ国協議の米首席代表として北朝鮮との交渉を進め、2005年9月に北朝鮮の核放棄を盛り込んだ共同声明をとりまとめた。65歳。



中国共産党政権と日本(上)西側の関与政策 限界露呈 2018/05/24 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「中国共産党政権と日本(上)西側の関与政策 限界露呈」です。





今年4月、8年ぶりに閣僚級の「日中ハイレベル経済対話」が再開した。5月には中国の李克強(リー・クォーチャン)首相が来日した。中国首相の来日は7年ぶりだ。日中の対話のチャネルが回復しつつあることは歓迎すべきだが、今回の日中の接近は、米国や欧州連合(EU)が通商問題を巡り中国への懸念と批判を強める中で実施された点に留意する必要がある。

今年3月、EU諸国の駐中国大使28人のうちハンガリー大使を除く27人が連名で、中国が進める広域経済圏構想「一帯一路」政策について「自由貿易の障害」と批判する内容の報告書をまとめた。

4月17日付独経済紙ハンデルスブラットによれば、EUは、一帯一路関連のプロジェクトの大部分を中国企業が受注し、EUの企業が事実上締め出されている現状に不満を募らせている。さらに中国政府が知的財産権保護という世界貿易機関(WTO)のルールを順守せず、中国に進出した外国企業に技術やノウハウの開示を強要することにウンザリしているという。

米トランプ政権は批判にとどまらず対中経済制裁に乗り出した。今年1月に米通商代表部(USTR)が発表した報告書は、中国政府による市場や企業に対する過度の介入・干渉ならびに知的財産権侵害が市場主義経済に対する脅威になっていると批判した。加えて米国が中国のWTO加盟を支持したことは誤りだったとの見解を示した。中国がWTOに加盟した2001年以降の米国の対中通商政策に反省を迫るものといえる。

一方、日本は欧米より前に、中国との経済関係が一筋縄ではいかないという厳しい現実を突き付けられていた。

10年と12年に尖閣諸島を巡る外交問題が深刻化した際、中国政府は日中の経済的相互依存関係を逆手にとり対日経済制裁を断行した。日系企業が中国各地で暴徒の襲撃を受けた際にも積極的に保護しようとしなかった。日本の対中ビジネスを人質にとる形で日本政府に譲歩を強いるという中国の瀬戸際外交は、それまで盤石だと思われていた日中の経済的相互依存関係に少なからぬ衝撃を与えた。

いまようやく中国との経済関係に付随するリスクについて日米欧の政府当局者の間で一定の共通認識が生まれつつある。日米欧が20年以上維持してきた中国に対する「関与(engagement)」政策の妥当性を巡る議論も浮上している。

関与政策とは端的にいえば、米国を中心とする既存の世界経済システムに中国を組み入れ、中国に利益と安心を供与することで、中国との調和を図ることを狙う政策だ。1990年代前半にクリントン政権が打ち出して以降、米国ならびに日欧の対中政策の基本指針となってきた。

関与政策は、中国の経済発展に伴う中間層の拡大で政治の民主化を要求する機運が高まり、経済のグローバル化とともに、中国の政治体制改革を促すという未来予測を根拠としてきた。また同政策の支持者は、中国の政治体制の変化に伴い中国と日米欧の間に残る相互不信や緊張が緩和され、アジア・太平洋地域の安全保障環境が安定化に向かうという期待を持っていた。

そうした予測や見通しに基づき、日米欧は中国に対する経済支援と投資を積極的に進めてきた。日本は昨年まで中国に対する円借款を実施してきた(新規の貸付事業は07年以降なし)。日米の出資額が最も多い世界銀行とアジア開発銀行(ADB)は、いまなお対中融資を続けている。

だが現在、日米欧の眼前には当初の期待とは著しく異なる光景が広がっている。中国では様々な構造改革の試みもむなしく「権力と資本の癒着」に歯止めがかかっていない。すなわち中国共産党の高級幹部および党とコネでつながる集団が経済・産業の主要部分を独占的に支配し、富を特権的に囲い込んでいる。

中国の場合、往々にしてビジネスの成否や経済的地位の向上が党幹部との関係に左右される。よって経済発展に伴い出現した新たな富裕層や中間層は共産党とのつながりが全般的に強く、民主化をけん引する存在になっていない。一方、富の分配の著しい偏りは貧富の格差を拡大させ、数億の民衆からは政権に対する不満がデモや暴動といった形で噴出するようになった。

共産党は本来であれば、構造改革による格差是正に力を入れるべきだったが、そうした改革は特権集団の既得権益に抵触した。このため90年代以降、党内で優位に立った既得権益派は、一連の改革を骨抜きにしつつ排外的なナショナリズムを率先してあおり、それを通じて国内の不満を国外、特に日米に転嫁する政策に力を入れるようになった。

またそれと並行して、共産党直属の軍隊である人民解放軍に大々的に資金を投入するようになった(図参照)。

中国の大規模な軍拡は、中国国内の不満分子が日米欧と連携して共産党を窮地に陥らせるのではないかという根深い危機感と疑念に裏付けられている。それは危機感の起源となった89年の天安門事件以降約30年間維持されてきた。

共産党のプロパガンダにより90年代以降、国内に広く浸透した排外的色合いの濃い世界観は、中国でのネット世論の基調を成し、次第に中国外交を束縛するようになった。それにより中国政府が領土・海洋権益・安全保障などを巡り周辺諸国に譲歩することが困難になると、共産党は増強された解放軍を用いた威嚇や経済制裁を多用するようになった。これがアジア・太平洋地域の緊張増大を招いた。

結果的にいえば、米国主導の対中関与政策に基づく日米欧の巨額の対中支援・投資は中国の経済発展を後押ししたが、それにより中国との関係が安定化する展開にはならなかった。日米に関しては中国との経済的相互依存関係の発展と同時に、中国との軍事的緊張も増大の一途をたどるというジレンマが顕在化した。

昨年10月開催の中国共産党第19回大会で習近平(シー・ジンピン)総書記は、現在の軍拡路線を今世紀半ばまで継続することを高らかに宣言した。従って日米と中国との間の安全保障面での緊張は当分解消されそうにない。

中国の民主化シナリオも一段と想定しにくい状況となってきた。今年3月の全国人民代表大会では、国家主席の任期制限撤廃が決まった。中国が民主化に向かうのでなく、毛沢東時代の個人独裁に逆戻りすることを意味する。強権を掌握した習近平氏は、中国市場のさらなる開放を進めると言うが、同時に企業に対する国家の支配と統制を強化する意図も明白にしている。

3月1日付英誌エコノミストは「中国が早晩民主化・市場経済化するという西側の25年来の賭けは外れた」と評価。現在の関与政策の立ち位置を的確に反映した指摘だろう。

では日本政府は中国にどう向き合うべきか。中国との対話を続けることは当然だが、中国からの経済制裁、日系企業に対する介入や干渉、一方的な対話の拒絶、軍事的威嚇といった問題が再発しないという保障はどこにもない。

日本政府は中国との対話を続けると同時に、米国、EU、環太平洋経済連携協定(TPP)加盟国とともに対中関与の今後のあり方について協議する固定的な枠組みを設け、足並みをそろえる形で経済・安保両面でのリスクヘッジを着実に進めていくことが当面の対策として重要になる。

<ポイント>○米主導の関与政策で対中経済支援を拡大○新富裕層や中間層は共産党との距離近い○対中投資で経済発展しても緊張緩和せず

ポイント

あなみ・ゆうすけ 72年生まれ。慶応義塾大法卒、同大博士(法学)。専門は中国近代政治史

あなみ・ゆうすけ