ヒットのクスリ スノーピーク 共感集め成長 2018/07/06 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「ヒットのクスリ スノーピーク 共感集め成長」です。





キャンプ用品大手で、東証1部に上場しているスノーピーク。新潟県三条市にある本社そのものが広大なキャンプ場で、2月の内定者研修も雪中キャンプとこだわる。キャンプ人口が増えていないのにスノーピークが成長してきたのはなぜか。それは山井太社長が若い頃に経験した孤独と不安に根ざしている。

(画像:サントリー食品インターナショナルはスノーピークの理念に共鳴した(4月の無糖炭酸水の発表会))

山井社長が上京したのは1970年代後半。大学生活、社会人と数年間を東京で過ごしたが「とにかくなじめない。通勤途上の新宿の地下通路が不気味で不気味で。日本が豊かになるには何かが足りない」。新潟の実家に戻り、考えたのが都市生活者の癒やし。「アウトドア市場は国・地域の平均年収が1万5千ドルを超えると生まれ、2万ドルで一気に成長する」と見て今の事業を育てた。

近年はキャンプに行かない人も視野に入れ、「人間性回復」をテーマとしたビジネスを展開する。アウトドアを切り口としたオフィスやマンションづくり、アパレル、街づくりなどだ。サントリー食品インターナショナルは山井社長に共鳴し、共同で炭酸水を4月に売り出した。まさに人間性回復という「コト」が「モノ」を動かす。

仮に山井社長が東京になじんでいたら、こうした発想は浮かばない。多くの人は新しい環境になじめないし、不安だ。だからこそ、スノーピークは共感を集めた。モノと情報があふれる今、日々不安な個々人の心理に踏み込むことでマーケットが創造できる。

「結果にコミットする」で成長を遂げたRIZAPグループもその一つ。「豊かになるほど悩みは深くなる。どう生きるのかという自己実現のマーケットはプライスレスで、市場規模は無限」と瀬戸健社長は言い切る。

実は瀬戸社長自身も「人よりできない」ことがビジネスの起点になっている。勉強と読書が苦手な人は多いが、瀬戸社長の場合、実に極端。本屋に入るのもおっくうで、本を買っても目次で寝てしまう始末。普通にできる人にとってなんてことのない行為だが、だからこそ「できることから始める」を真剣に突き詰めた。これが「人は変われる」を掲げるRIZAPにつながる。

劣等生が大成功すると言いたいわけではない。付加価値や品ぞろえなど上乗せ型の発想だけではヒットは生まれにくい。市場を創る「気づき」をつかむにはできる人ばかりではなく、悩み多き社員の弱さも必要だ。

日本テレビの深夜番組で街行く人々のスマートフォンの検索履歴を見せてもらうというシーンがあった。検索ランキングは調べれば分かるが、検索履歴は聞かないと出てこない。ネタの宝庫の予感がした。

(編集委員 中村直文)



デジタル時代のマーケティング戦略(2) 購買前の消費者行動を理解 2018/07/06 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「デジタル時代のマーケティング戦略(2) 購買前の消費者行動を理解」です。





2018年1月、米シアトルでコンビニエンスストアの「アマゾン・ゴー」がオープンしました。電子商取引(EC)がビジネスの中心だったアマゾンにとっては橋頭堡(きょうとうほ)となる実店舗です。「ノーライン、ノーチェックアウト」(レジがなく、レジ待ちの行列がない)が強調されていますが、本質はそこではなく、ユーザーIDをもとにした消費者の購買前行動の理解にあります。

アマゾン・ゴーの利用客は、専用アプリをダウンロードしたスマートフォンを駅の自動改札のようなゲートにかざして入店。欲しい商品を自分のバッグに入れ、そのままゲートから出れば買い物も決済も完了します。アプリのQRコードや店内の天井に設置された無数のカメラにより、誰が入店して何を買ったかがデータとして蓄積されます。

それだけではなく、店内での購買前行動もデータとして蓄積されます。例えば菓子売り場で煎餅とアメを比較した場合、その客にとって煎餅と競合するのはアメだというデータが得られます。別の客が煎餅とチョコレートを比較すれば、その客にとって煎餅と競合するのはチョコレートだというデータが取得できます。

人によって比較の対象となる商品、競合する商品は違います。それをワン・トゥ・ワン(1対1)でデータを取得できるところにアマゾン・ゴーの本質があります。ECでは閲覧履歴をもとに何と何が比較されたか、購買に至ったか至らなかったか、データを蓄積できました。一方、実店舗では何が購買されたかはPOSデータで得られますが、何と何が比較されたかはわかりませんでした。アマゾン・ゴーはその購買前データを取得できるのです。

さらに将来は、カメラで客の表情認識もできるようになるでしょう。そうすると、ある商品を手にしたとき、プラスの感情を持つかマイナスの感情を持つかもデータとして得られるようになります。これはECではできません。このように将来は、購買前行動データに加え、購買前心理データまで取得できるようになる可能性があります。これまでは得られなかった様々な消費者データを取得できるようになるのです。



親日の街、大連の日本人 2018/07/06 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「親日の街、大連の日本人」です。





中国東北部、遼寧省大連。工場が多く立ち並ぶ地区の一角で、斉藤晃生さん(47)は今春、14年に及ぶ中国生活の再スタートを切った。約7年勤めた中国企業を辞め、自ら物流会社を設立。日本と中国の商流を結ぶ「懸け橋になりたい」と意気込む。

(画像:斉藤さんも大連に残ることを決めた一人だ)

日本の物流会社で10年間働いた後、30歳を過ぎて大連への留学を決意。複数の会社を渡り歩き、起業を決めた。中国人の妻と中学生の息子は日本で生活しており、中国にとどまることに迷いはあった。それでも、大連で多くの中国人に世話になった。留学のきっかけをつくったのも大連出身の留学生。起業は、その恩返しの意味合いも込める。

大連は日本との結びつきが極めて深い。1904年に勃発した日露戦争を経て日本の租借地となり、南満州鉄道が一帯を開発。当時の建物や路面電車は今なお残り、下水道や道路などのインフラ基盤は満鉄時代のままという。日本語教育が盛んで日本に親しみを感じる中国人が多い。

ただ近年はその姿を変えつつある。かつては安い労働力を背景にした「加工貿易型」の日系企業が大連経済を支えた。だが中国の経済成長に伴う人件費高騰などで、撤退・縮小へと転じた。日系企業は2016年時点で約1700社、在留邦人は5千人強。その数は減少の一途をたどる。関係者によると、大連の法人税納付額トップは近年、日本から中国に代わった。日本語を学んでも就職先がない若者が徐々に大連を去る。

日本企業も広東省広州や深?、上海などハイテク産業の隆盛で経済成長が続く地域に目が行く一方、大連は存在すら忘れてしまったように映る。それでも、斉藤さんのように大連でのビジネスに懸ける日本人はいる。

人材コンサルティングサービスを手掛ける阿部篤志さん(40)もそんな一人だ。14年にそれまで勤めていた日系企業が大連のオフィスを閉鎖するのに伴い、職を失った。帰国か、残るか――。悩んだ末、足かけ10年以上住むこの地で、人生の勝負をすることにした。

起業から3年。無収入の時期も乗り越え、事業もようやく軌道に乗ってきた。阿部さんは「大連は人と人とのつながりが密接。(日本や他の地域と異なり)会社の知名度ではなく、人間性で判断してもらえる」と話す。

親日的な街は一朝一夕にできあがるわけではない。日本が世界でも存在感を失うなか、従前通り、誰もが注目する地域に投資をしても、資金力で上回る中国企業を超える存在感は出しにくい。ならば、資金以外で優位性を保てる場所を確保する方が、今後は得策ではないだろうか。

(大連=原島大介)



中ロの枢軸に急所あり 2018/07/06 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「中ロの枢軸に急所あり」です。





戦前、英米が牛耳っていた世界に不満を募らせ、対抗しようとしたのが日本とドイツ、イタリアだった。3カ国は枢軸を組み、当時の秩序を変えようとした。

いま、似たような狙いから枢軸を組んでいるのが、中国とロシアだ。「世界の多極化」をめざし、米国主導の現秩序を力ずくで切り崩そうとしている。

戦前の日独伊はやがて戦争に突き進み、敗れた。では、中ロはどこに向かうのか。その行方は世界の将来にも、少なからぬ影響を及ぼすだろう。

一見すると、中ロは鉄の結束を保ち、目標にまい進しているように映る。米国によるシリア攻撃やイランとの核合意破棄に、そろって反対。北朝鮮問題でも、米国主導の交渉をけん制している。

「最高水準の関係だ」。6月8日、習近平(シー・ジンピン)国家主席と会談したプーチン大統領はこう誇示し、米国けん制の共同声明を交わした。

だが、長い国境を接し、1969年に戦火を交えた両国の蜜月が、不動のものだとは思えない。よく耳を澄ますと、連帯の演出とは裏腹に、中ロからは緊張や対立の旋律が響きはじめている。

ユーラシア大陸の真ん中に位置し、中ロが国境を接する要衝、中央アジア。かつて旧ソ連に属し、いまはカザフスタンやウズベキスタンなど5カ国からなる。この地域の国々や米欧の政治家、有識者らが集まり、協力を話し合う会議が6月22~23日、アゼルバイジャンの首都バクーで開かれた。

そこで感じたのは急激に台頭する中国に、ロシアの生存本能が脅かされている実態だ。会議の合間に、中央アジアの参加者からこんな秘話を聞いた。

ロシア当局は最近、影響下にある中央アジアのロシア語の放送局やネットメディアを使い、中国脅威論をあおる情報工作をひそかに強めている。インフラ投資に乗じ、中国人が押し寄せる。中国が土地を奪いに来る……。こんな情報を拡散しているというのだ。

ロシアからみれば、旧ソ連の一部であり、資源に恵まれた中央アジアは絶対、手放せない縄張りだ。ところが、会議の参加者らによると、この一帯は完全に「中国経済圏」に染まりつつある。

中央アジアとロシアの貿易額は16年、186億ドル(約2兆円)。これに対し、中国は300億ドルにのぼった。「一帯一路」の通り道として、中国はこの地域に高速道路や鉄道を広げる計画で、中ロの差がさらに開くのは確実だ。

プーチン大統領は不安はあるものの、今のところ「一帯一路」への支持を表明している。発展が遅れた中央アジアに莫大な資金を投じ、中国がインフラを整えてくれるなら、ひとまずロシアの利益にもなるという計算がある。

しかし、早晩、そうは言っていられない状況になるだろう。中国が1月、オホーツク海から北極海を抜け、欧州に伸びる「氷上のシルクロード」構想を正式に決めたからだ。

オホーツク海はロシアにとり、安全保障上、決して他国に触られたくない聖域だ。国防の命綱ともいえる戦略核ミサイル搭載の原子力潜水艦が、この海には配備されている。北極海も大切なロシアの軍事拠点になりつつある。

中ロの協調を優先し、プーチン政権は表向き、北極開発でも連携する意向を示してはいる。しかし、内部に通じた外交筋は「氷上シルクロード構想をきっかけに、ロシア軍内で『一帯一路』への脅威感が高まっている」という。

そんな空気を映してのことか、今年に入り、きな臭いできごとも起きている。同筋によると、ロシア軍は今春、通常戦力だけでなく、戦術核の使用も想定した演習を中ロ国境で実施したという。中国へのあからさまな警告だ。

中国側も、ロシアの縄張りを荒らしすぎないよう、最低限の配慮はしている。中央アジアでの活動はあくまでも経済にかぎり、安全保障には介入していない。

とはいえ、中国の国内総生産(GDP)はすでにロシアの約8倍になり、人口は約10倍だ。国力差が広がるにつれ、関係はぎくしゃくせざるを得ないだろう。

日米欧はこうした中ロの急所を突き、枢軸の勢いに歯止めをかけるべきだ。それが、自由で開かれた現秩序を守ることにつながる。では、どうすればよいか。

いちばん単純な策は中ロへの外交圧力を強め、枢軸の機能を弱めるというものだ。だが、両大国を封じ込めるのは事実上、無理であり、逆に結束を強めてしまう危険もある。

だとすれば、もうひとつの選択肢は中ロの亀裂を利用し、いずれかをこちら側に引き寄せるという策だ。現実には、強大な巨象である中国より、その中国に不安を抱くロシアの方が誘導しやすいだろう。

その意味で、安倍晋三首相が21回の会談を重ね、プーチン氏と関係を保とうとしたり、トランプ米大統領が今月16日、プーチン氏と初の本格会談を開いたりするのは、必ずしも誤りではない。

ただ、心配なのはロシアをこちら側に引き込むどころか、こちらがロシア側に歩み寄ってしまう危険だ。クリミア併合や米欧への選挙介入をうやむやにしたままロシアと和解したら、大きな禍根を残してしまう。

そうなれば、世界各地で強権勢力の台頭が加速しかねない。特に、米ロ修復を急ぐトランプ氏には、そんな不安を禁じ得ない。



日欧豪、国際秩序に責任を 2018/07/06 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「日欧豪、国際秩序に責任を」です。





トランプ米大統領は民主的な選挙を経て就任した。自身の正当性を盾に権力を行使し、邪魔な制度や機関を壊そうとしている。世界を覆うポピュリズム(大衆迎合主義)に共通する特徴だ。

トランプ政権は1期4年で終わるのか、それとも2期8年に及ぶのか。前者ならまだ傷が浅くてすみそうだが、後者なら取り返しのつかない事態になる。米国の変質が決定的になりかねない。

トランプ氏は世界中を敵に回し、同時多発的な貿易戦争を仕掛けている。米国の信用を損ない、同盟国や友好国との協調関係にひびを入れる危険な行為だ。1930年に米国で成立したスムート・ホーリー関税法は、保護貿易の拡散と大恐慌の深刻化を招き、第2次世界大戦の遠因にもなった。その二の舞を望む者はいないが、トランプ氏が自制できるかどうかが定かではない。

6月8~9日に開いた主要7カ国(G7)の首脳会議では、過激な保護貿易に走る米国と、異を唱える欧州やカナダとの対立が先鋭化した。英知を結集して国際的な課題に取り組んできたG7の機能不全は深刻だ。トランプ氏は2014年のクリミア併合で排除されたロシアをG7に加えるよう求め、ここでも反発を買った。いまロシアを呼び戻す理由があるとは思えない。プーチン大統領は敵同士の争いを見て、ほくそ笑んでいることだろう。

6月12日の米朝首脳会談も危うい状況を作り出した。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長は「朝鮮半島の完全な非核化」を約束したというが、真意を疑わざるを得ない。トランプ氏は北朝鮮が望んでいた首脳会談にあっさりと応じ、確たる見返りを得ることもなく、大事な切り札を切ってしまった。平和の主導者として振る舞い、支持基盤にアピールするのが、何よりも重要だったのだろう。

「だれもが米国をうまく利用してきた。もう世界の笑い物にはならない」とトランプ氏は言う。あまりにも現実を知らない発言だ。世界が笑い物にしているのは、いまの米国ではないのか。

ティラーソン前国務長官ら伝統的な政策から逸脱しないよう求める高官は、軒並み更迭されてしまった。自らの本能を頼りに動いたほうがうまく行くと、トランプ氏は自信を深めている。最近相次いで発表した中国への制裁関税やイラン核合意の破棄などは、もともとトランプ氏の公約だった。原点にこだわって着実に実行することが、政治的にプラスだと確信しているのだろう。

トランプ氏の支持率は40%台前半の低水準にとどまる。だが一時より改善しているのは見逃せない。共和党員の期待が根強く、景気の着実な回復も追い風になっている。11月の中間選挙は民主党が優勢だと思っていたのに、それほど自信がなくなってきた。

16年の大統領選では、クリントン元国務長官が得票数で上回ったにもかかわらず、トランプ氏が選挙人の過半数を押さえて当選した。20年の次期大統領選で、同じことが起きてもおかしくはない。トランプ氏が再選を果たす可能性は十分にあるとみている。

米国が世界のリーダーとしての役割を放棄する一方で、中国やロシアなどの独裁国家が台頭し、戦後の国際秩序が危機にさらされている。私は民主主義や自由経済の未来をなお信じているが、その後退局面に足を踏み入れてしまったのは否定できない。

カギを握るのは日本や欧州、オーストラリアなどの指導力だ。こうした国・地域が立ち上がり、国際秩序の維持により大きな責任を果たさなければならない。ナショナリズムに屈することなく、世界の繁栄を支える制度や機関を守り抜いてほしい。

日本は価値観を共有する同盟国や友好国との関係を強化しながら、自らの国益を追求すべきだ。防衛費を増やし、自衛力を高める必要もあるのではないか。(談)

 Francis Fukuyama 米ハーバード大博士。米ジョンズ・ホプキンス大教授を経て現職。冷戦終結後、民主主義や自由経済の勝利を宣言した著書「歴史の終わり」が有名。65歳。

Francis Fukuyama

歴史の逆流止めよ

歴史の逆流止めよ

戦後の国際秩序を支えてきた米国の変質。トランプ氏はこれを「偉大な再覚醒」と呼ぶ。おかげで世界は民主主義や自由経済の推進力を失い、独裁国家につけ入る隙を与えてしまった。「歴史」は終わるどころか、遡っているようにみえる。

米国にはトランプ氏に共鳴するかなりの民意がある。元の姿に戻らないことも覚悟した方がいい。ならば日本や欧州、オーストラリアなどが手を取り合い、国際秩序の安定に努めるしかない。「私のメッセージは極めてシンプルだ」とフクヤマ氏はいう。

米国がどれだけ変わろうと、歴史の逆流を放置していいわけではない。トランプ氏の過激な政策から自分の身を守るだけでなく、世界の民主化や自由化に汗をかく国・地域が必要なのは確かだ。

(編集委員 小竹洋之)



企業は「伏業」を直視せよ 2018/07/06 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「企業は「伏業」を直視せよ」です。





ロート製薬が2016年、「社外チャレンジワーク」などの制度で副業を解禁してから約2年がたった。従来は副業といえば一部のベンチャー企業の話だったようだが、先日は国家公務員にも兼業が解禁されるとの報道があり、社会に定着してきた感もある。しかし実態は副業を解禁する企業は少なく、結果として会社が認めない「伏業」にいそしむ従業員が増えているという問題を提起したい。

人事コンサルタントをする私のもとには企業から「副業を認めたい」という相談が多く寄せられる。しかし、そのうち実際に副業を解禁する企業は1割程度というのが実感だ。リクルートキャリアの昨年の調査でも、兼業や副業を容認する企業は約1100社のうち23%にとどまった。

かたや個人の意識はかなり変わった。エン・ジャパンによる正社員約3000人を対象にした今年の調査では「副業に興味がある人」が88%にのぼり、実際の経験者も32%に達した。

企業と個人の意識のギャップが生んでいるのは、副業を禁止する企業で伏業をする社員の増加だ。伏業とは読んで字のごとく、勤務先に黙って本業以外の仕事をしている社員である。

副業は働き方改革の1つとしても脚光をあびている。たとえ勤務先が禁じていても「バレなければいい」と副業をはじめる人は多い。弁護士らも「就業規則が禁じる副業も本来は違法ではない」との見解を公に示しており、よほどの合理的な理由がなければ禁止規定に効力はないという理解も広がっている。

もちろん自社の社員の副業を禁止することは企業の経営判断の自由だ。しかし昔からの就業規則のまま副業禁止にしているが、実は多くの社員が伏業しているという状況は企業にとってリスクが大きい。社員が本業以外の仕事で健康を損ねたり、公序良俗などに反する伏業が明らかになる危険性もあるためだ。

提案したいのは、副業を解禁した上で一定の線引きをする方法だ。業種や就労時間などによって「この条件に当てはまる副業ならOK」というホワイトリストをつくるのがわかりやすい。就業規則に副業をきちんと位置づけて社員に実態を届け出てもらえば、ガバナンス上のリスクは明らかに減る。さらに企業が次の成長分野を定め、社員が副業を通じて新たな技能を習得するというような前向きな人事戦略も可能となるだろう。

 今回の意見は日本経済新聞社が運営する投稿プラットフォーム「COMEMO」(https://comemo.io/)から転載しました。メールでの「私見卓見」の投稿はkaisetsu@nex.nikkei.comまで。住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記。原則1000字程度で添付ファイルはご遠慮下さい。趣旨は変えずに編集する場合があります。電子版にも掲載します。



デジタル時代のマーケティング戦略(1)データに基づき顧客対応 2018/07/05 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「デジタル時代のマーケティング戦略(1)データに基づき顧客対応」です。





衣料品通販サイト「ゾゾタウン」の採寸用ボディースーツ「ゾゾスーツ」が今年4月から本格的に配布され始めました。水玉模様のスーツを見た方もいるでしょう。またローソンは4~5月、来店客がレジを通らずにスマートフォンのアプリで自ら決済する実証実験をしました。流通小売業は近年、飛躍的に進化しています。それを支えるのがデジタル技術を活用したマーケティングの進化です。

この連載では、デジタルマーケティングが従来のマーケティングと何が違うのか、企業と消費者との関係がどう変わるのか、機能させるための組織のあり方などについて解説します。

デジタルマーケティングには様々な定義があり、インターネット広告やビッグデータ分析と定義されることもあります。ただし、これらはデジタルマーケティングの一要素にすぎず、より重要なのは「データドリブン」と「次世代チャネル」です。データドリブンとは、消費者理解を勘や経験でなくデータに基づいて行うことです。次世代チャネルとは、実店舗でも電子商取引(EC)でも同じような購買体験が可能で、消費者の購買データ取得の場になるということです。

例えば、服を買おうとしてスマホでECにログインし、気に入った服のページを見たとします。その履歴はデータとして蓄積されます。結局購買には至らず、実物を見たいと実店舗に行くと、次世代チャネルでは店内のビーコン(電波受発信機)がスマホと通信し、店員はECの履歴をもとに接客できます。これが消費者理解をデータに基づいて行うということです。

マーケティングにはセグメンテーション(市場の細分化)、ターゲティング(標的市場の決定)、ポジショニング(立ち位置の決定)、マーケティングミックス(売れる仕組みの構築)という戦略策定プロセスがあります。デジタルマーケティングは、このうちセグメンテーションとターゲティング、そしてマーケティングミックスの中のチャネルとプロモーションを進化させるものなのです。

まきた・ゆきひろ 京大経済学研究科修了。専門は経営戦略、マーケティング



基本計画の宿題(1)電源構成見直し 素通り 2018/07/05 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「基本計画の宿題(1)電源構成見直し 素通り」です。





政府が新しいエネルギー基本計画を閣議決定した。消費者や企業にとって不可欠なエネルギーの将来像を示すもので、政策の基礎にもなる。原子力発電や再生可能エネルギーを巡る環境の変化で課題も山積しているが、4回目の改定となる今回は大枠で4年前の前回計画を踏襲した。積み残した宿題も目に付く。

まず将来の電源構成の数値を据え置いたことだ。経済産業省は2015年、30年度に見込む電源構成を示した。原子力で全体の20~22%、太陽光や風力といった再生可能エネルギーで22~24%を生み出すとした。

足元では2%

今回はこの内容を見直すかが注目されていた。足元の電源構成は原子力が2%、再生エネが15%。火力で8割をまかなう状態だ。特に再稼働が思うように進まない原発は20~22%との乖離(かいり)が大きい。30年度より先の計画値についても検討は進まなかった。

「本当に達成できるのか」。経産省の審議会では、30年度の数字に委員から疑問が投げかけられた。ただ世論の賛否が割れる原発で、踏み込んだ議論は避けられた。世耕弘成経産相は早々に「基本的に骨格は変えない」と発言。電源構成の数値は「変更しない」という前提ありきだった。

基本計画はエネルギーの環境変化を列記した。まずは世界で進む脱炭素化に向けた競争だ。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が採択され、各国は太陽光や風力といった再生エネの拡大にまい進している。

基本計画では再生エネを50年に向けて「主力電源」とすることを初めて明記した。だが原発の構成比率が定まらないなか、50年に再生エネの比率をどこまで高めるかは未定のままだ。

地政学リスクも問題になる。中国はエネルギー需要の急増で液化天然ガス(LNG)の価格を押し上げ、LNGの主要消費国の日本は燃料費の拡大で影響を受けた。米トランプ政権は中東有数の産油国、イランからの原油輸入の停止を求める。

下がる自給率

日本のエネルギー自給率は原発の稼働が減ったこともあり震災前の20%から8%に低下している。資源に乏しい日本はエネルギー安全保障にどう向き合うべきか、どんな対策を打てば将来のエネルギー供給を安定させられるのか。その解を示す意味で、今回の計画は課題を残した。

据え置いた電源構成の割合について経産省幹部は、「次の3年後の改定では変えざるを得ないだろう」と話す。米国が削減を要求してきた使用済み核燃料の再処理で出るプルトニウムの問題も、基本計画で「削減する」と明記したが実現は不透明だ。エネルギーを巡る情勢の変化が激しくなるなか、議論を急ぐ必要に迫られている。

新しいエネルギー基本計画の論点と、取り組むべき課題を点検する。



「一帯一路」に芽吹く懸念 2018/07/05 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「「一帯一路」に芽吹く懸念」です。





【ネピドー=新田裕一】中国が進める広域経済圏構想「一帯一路」の実現に向けた大型の投資事業がアジア各国に懸念をもたらしている。経済成長に不可欠なインフラ整備を加速させる一方で、債務返済が困難になれば、完成したインフラを中国に譲渡するなどの「代償」を伴いかねない。ただ新興国にとっては中国の豊富な資金力は魅力的に映り「脱中国」は簡単ではない。

(画像:チャオピューの港は中国向け原油・天然ガスのパイプラインの起点だ)

「各国は無償と勘違いしてはいけません」。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は今年4月の講演で「一帯一路」についてこう指摘した。同構想はアジア各地で不足するインフラ整備を加速させているものの、中国の投資が各国の過剰債務になりかねないとの警鐘だった。

現在、各地で整備が進んでいる鉄道や港湾などは、完成後の収益で中国への債務返済の義務を負うケースが大半だ。借金地獄に陥らないためには事業の採算性を冷静に吟味する判断力が必要だが、借り入れる側の新興国にはそのための十分なノウハウがない。

その典型例がスリランカでの港湾開発事業だった。南部ハンバントタ港は建設費の大半を中国からの融資でまかなって完成。しかし、需要の見通しが甘く、赤字が続いたため中国側への返済が進まなかった。17年12月、99年間の港湾運営権を中国企業に譲渡せざるを得なくなった。

運営権の譲渡でも軍事的な用途には使わないとの契約だが、隣国のインドや米国は警戒感を募らせる。インド洋での影響力拡大を図るため、最初からスリランカの港湾権益の取得を狙って中国が仕掛けた「債務のワナ」だったのではないかと指摘も出る。

ミャンマーのチャオピューでの事業もスリランカの二の舞いになりかねない。同事業は中国の地政学上、重要な意味を持つ。他国の干渉を受ける可能性があるマラッカ海峡を通らずに中国内陸からインド洋、さらにその先の中東産油国までをつなぐ迂回路を確保できるためだ。

中国の巨額の資金によってすでに新興国の財政が圧迫されているケースは増えている。米シンクタンクの世界開発センターの分析によると、一帯一路への参加国のうちジブチ、ラオス、モルディブ、モンゴルなど8カ国はすでに中国からの巨額の債務の返済リスクを抱えるという。

リスクを警戒し、声を上げたのはミャンマーだけではない。5月に政権の座に返り咲いたマレーシアのマハティール首相は、前政権が進めたインフラ案件について中止を含め見直すと表明した。特にタイ国境付近から首都クアラルンプール近郊までの総距離約600キロメートルを接続する鉄道事業は中国の銀行から550億リンギ(約1兆5000億円)を調達する計画で、財政負担が重い。

もっともミャンマーやマレーシアのように個別事業の見直しを進める国々でも、潤沢なインフラ開発資金の供給源となる「一帯一路」の構想自体は拒否できない。

しかし同構想はインフラ整備だけでなく、中国による権益拡大の思惑を指摘する声は多い。ミャンマーなどが事業規模の見直しを求めても、中国側との交渉は簡単ではない。



緩和の副作用 日銀内で綱引き 2018/07/05 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「緩和の副作用 日銀内で綱引き」です。





大規模な金融緩和の副作用を巡る日銀内の綱引きが表面化している。早期の利上げについて原田泰審議委員が4日の講演で否定し、同じリフレ派として知られる若田部昌澄副総裁も慎重な姿勢をみせる。一方、黒田東彦総裁らは銀行の収益減少といった副作用を一段と気にかけ始めた。今後の物価動向によっては日銀の政策を決める委員の間で意見が割れそうだ。

原田氏は講演で「市場は金利の引き上げを求めているといわれるが、実際に上げれば金融機関は大きな打撃を受ける」との見解を示した。日銀が利上げすると「債券価格と株価の下落、円高で企業の経営が悪化し、信用コストが増大する」と指摘。物価が目標とする2%上昇を見込めないなかでは金利の引き上げはあり得ない選択肢とした。

2018年3月期決算で上場地銀80行・グループの約6割が最終減益となった。日銀は2年前、政策の誘導目標について短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に抑えることにした。超低金利が長引いて銀行の収益悪化が続くなか、市場では「日銀は早ければ来年1月に長期金利を引き上げる」(大和証券の岩下真理氏)といった声がくすぶる。

仮に利上げする場合、短期金利を上げると為替が円高になる懸念があるため、まずは長期金利から調整するとの見立てが多い。ただ原田氏はこうした見方を一蹴した。

物価が低迷し、5月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は0.7%上昇にとどまり、2%の目標にはほど遠い。若田部氏も6月末の日本経済新聞のインタビューに「物価が上がらない状況で(金利引き上げに)政策を変更することはない」と明言した。

日銀の金融政策を決める9委員のうち、原田氏と若田部氏は大規模な金融緩和を主張するリフレ派として知られる。若田部氏は「デフレに戻る危機があるなら、ちゅうちょなく追加緩和すべきだ」とも語る。日銀が景気見通しを示す「展望リポート」の19年度の物価見通しは4月時点で1.8%上昇だったが、7月末の金融政策決定会合で引き下げる方向。リフレ派の2人にとってまずはデフレ脱却が最優先だ。

もっとも、超低金利の長期化に伴う「副作用への目配り論」を唱えるのは市場だけではない。物価2%がいつ実現できるか見通せないだけに、日銀内でも台頭している。

「物価が上昇しても経済の健全な発展が阻害されるようでは本末転倒だ」。5月24日に講演した桜井真審議委員はこう指摘した。桜井氏の発言には「副作用」を気遣う様子が目立った。黒田氏も6月の記者会見で「低金利環境が長期化すれば、金融システムが不安定化するリスクに注意が必要」と指摘した。

日銀幹部は「緩和が長引き、副作用をより注視する雰囲気が出てきた」という。長引く超低金利環境が銀行など金融機関に強いる負担は大きく、日銀は経済、物価に加えて、金融にも目配りせざるを得ない。日銀内では、物価が2%に届かなくても、1%ほどに上がれば、長期金利を上げて金融機関の負担を和らげたいとの思惑も広がる。

逆に拡大を続けてきた景気が息切れし、物価が下がる事態もあり得る。そうなれば追加緩和が必要となるが、日銀の手段はすでに限られる。「副作用への目配り論」には、政策調整の余地を少しでも確保して備えておきたいとの考えものぞく。

若田部氏は黒田総裁、雨宮正佳副総裁との歩調について「現時点では基本的な考え方は同じだが、今後とも適宜適切に決定会合で判断していく」という。意見が割れる局面も否定できない。