nikkeimaster のすべての投稿

相手の気持ち思う余裕を 2018/06/18 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「相手の気持ち思う余裕を」です。





精神的な不調のために仕事から離れていた人たちの就労を支援する活動をしている人たちの集まりに参加する機会があった。現場で活動する人の声を聞ける貴重な機会だが、なかでも「感謝の言葉を口にできない人たち」の話は特に印象的だった。

(画像:イラスト・大塚いちお)

ある人が、足が不自由で車椅子に乗る人を手助けした際、車椅子の人が感謝の言葉を口にせず急いでその場を離れたときの複雑な気持ちについて話した。感謝してほしいと考えて手助けしたわけではないが、まったく感謝の言葉がないというのも釈然としないという。私は自分もその立場になれば同じような気持ちになるだろうと思った。

そのとき、精神的な不調のため仕事を辞めざるをえなくなった経験のある人が、感謝の言葉を口にしたいと考えてもできないことがあると発言した。口にするこころの余裕がなくなるからで、場合によっては感謝の言葉を口にしたいと考える余裕さえなくなることがあるという。感謝の言葉を「口にしない」のではなく「口にできない」のだ。

これは私にとっては思いがけない発言だった。私たちは、自分に対する思いやりに接したときには感謝の気持ちを口にするように教えられているし、当然そうするものだと考えている。だからこそ、私たちは、こころのどこかで感謝の気持ちを口にしてもらって当然と考えるが、それができない人がいる。

こうした齟齬(そご)が生まれるのは、障害を持つ人を手助けするときだけではない。人間関係で、自分の考えに縛られずに相手の気持ちを思うこころの余裕が必要なのは、そのためだ。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



エネルギー日本の選択(1) 思考停止が招く危機 2018/06/18 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「エネルギー日本の選択(1) 思考停止が招く危機」です。





日本のエネルギー政策が滞っている。原子力、再生可能エネルギー、火力とそれぞれが大きな課題に直面しているが、政府は近く閣議決定するエネルギー基本計画(総合・経済面きょうのことば)でも十分な具体案を打ち出せない。迫る電力危機を回避するため、いま日本がとるべき選択肢を探る。

エネルギー基本計画(総合・経済面きょうのことば

(画像:原発の新設が途絶えている(工事が中断しているJパワーの大間原発))

「もっと議論しないとまずい」「核心に触れてないじゃないか」――。

70年までにゼロ

5月16日、経済産業省の審議会。日本のエネルギーの将来像を決める場のはずなのに、事務方は「日本にとって重要な電源」と公言してきた原子力で踏み込んだ議論を避けた。

コマツの坂根正弘相談役や福井県の西川一誠知事など委員から相次ぎ批判の声が上がったが、結局、経産省が基本計画案に盛り込んだ「最適な電源構成」の原発比率は2030年に20~22%。2015年に決めた前回の数値のままだった。

この「20~22%」はこの3年間、「どう実現するのか」と批判され続けてきた数字だ。現時点では絵空事に近い。

達成には計算上、少なくとも30年に30基を動かす必要がある。だが11年の東京電力・福島第1原発事故の後、再稼働にこぎ着けた原発は9基だけ。今後も大幅に増える見通しは立たない。

しかも原発には寿命がある。運転期間は原則40年で、最長でも60年で廃炉にする必要がある。仮に今あるすべてが60年を認められたとしても、50年末には18基、70年までにゼロになる見通しだ。

官邸への配慮

「原発を活用し続けるなら新設や建て替えが欠かせない」(東京理科大の橘川武郎教授)のは明らかだが経産省は新増設に関する言及を避けた。

同省は基本計画の策定に向け首相官邸と擦り合わせた。「安倍政権はエネルギー問題でリスクをとるつもりはない」(政府関係者)。官邸の意向をくみ取り、原発を争点にするのは避ける方が賢明という過度な配慮が働いたとの見方もある。

エネルギーミックスでは再生可能エネルギーを全体の22~24%、石炭や天然ガスなどによる火力は56%とする目標値も据え置いた。原発で20~22%を達成できなければエネルギー供給が不安定になるが、そうしたリスクへの言及もない。

原発の本格的な再稼働が困難な状況に加え、地球温暖化対策で日本が責任を果たすためにも、もっと再エネを伸ばし火力を縮小すべきだとの指摘がある。経産省も再エネを「主力電源化する」としたが、その覚悟を示すほどの具体案は乏しい。

国が議論を避けている問題がもう一つある。原発のコストだ。

火力は石炭や天然ガスといった燃料が必要で、再エネの技術は発展途上といった理由から、国は「原発がもっとも安い」と言い続けてきた。従来の国内設備の試算では原発の発電コストは1キロワット時あたり約10円、火力は12~13円、太陽光や風力発電は20円以上だった。

だが常識は変わりつつある。ある米投資銀行の試算によると、安全対策費用がかさむ原発は約15セント(約16円)に上昇しているが、急速な普及と技術革新が進む風力や太陽光は世界で5セント程度。すでに原発を逆転した。

経産省は計画策定の過程でこうした外部の試算を使わなかった。原発への逆風がさらに高まることを避けているようだ。

資源に乏しい日本が安全確保を大前提として原発を活用できれば、エネルギー安全保障の上で期待できる役割は大きい。問題は、その意義や課題、実現への工程表を説明できていないことだ。

再エネが急速に普及する欧州も電源構成は火力の48%、再エネの26%に対し、原発も26%を占める。原発を多く抱えるフランスが他国で電気が足りなくなった際に供給するなど欧州全体の安定に一役買っている。

島国の日本が隣国から電力をもらうのは現時点では難しく、いかに自国内で安定電源を確保するかが課題だ。原発にその役割の一端を担わせるとしても、計画から完成までには20~30年という長い時間がかかる。早く具体的な実行計画を決めないと間に合わない。

国策の具体化を民間に委ねる「国策民営」は限界にきている。原発には1兆円単位の巨額の投資がかかるだけでなく、地元の地方自治体から同意を得ることも不可欠だ。

さらに使用済み核燃料の処理の問題は、もはや民間企業が個別に対応できる範囲を超えている。もっと国が前面に立つ必要がある。

原発の活用策を示せないなら、再エネの拡大へ大きくかじを切らないと電力供給に支障が出る。天候によって発電量が変動する再エネを使いこなすには、電気をためておく蓄電池の普及や、電力を融通し合う送電網の整備が欠かせない。

大きな投資を伴う作業の実行には、明確な針路と相当な努力が求められる。早急に思考停止から脱しないと、次世代に大きなツケを残すことになる。



外食「大量出店」に限界 2018/06/16 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「外食「大量出店」に限界」です。





半世紀近くにわたって日本の外食チェーンを育んできた「大量出店」という黄金レシピに、限界が見えてきた。看板ブランドを津々浦々に出店し、なじみ感や安心感で集客やコスト削減につなげ、デフレ下で威力を発揮してきた。だが「ガスト」「すき家」といった1000店を超えるチェーンでも、今や出店は年10店程度。市場の飽和や人手不足が、方針転換を迫っている。

(画像:リンガーハットはサラダ中心の新業態を試す)

おしゃれ志向へ

「見た目もおしゃれでおいしそう」。高級住宅街の東京・広尾のサラダ専門店「エブリボウル」が今春の開店から、若い女性客中心ににぎわっている。客が「五穀」「国産小麦」といった麺、ソース、野菜などを自由に組み合わせて1皿をつくる店で、1000円程度。健康志向の需要をとらえて、リピーターも多い。来店だけではなく、持ち帰りも4割にのぼる。

実はこの店、外食大手リンガーハットの新業態だが、看板や店内に表示はない。「できるだけリンガーハットの店だと思われないようにした」(川内辰雄執行役員)だけあって、客のほとんどは気がつかないだろう。

2019年2月期に10年前の約20倍、33億円の営業利益を見込むリンガーハットは外食の「勝ち組」とされる。それでも秋本英樹社長は「1つのブランドだけで生き残っていけるか」と危機感を抱く。長崎ちゃんぽん店「リンガーハット」は全国に約660店あり、この5年で130店あまりを積み増したが、人口減を背景に郊外店の集客は厳しさを増し、閉店も相次いだ。都市部は不動産賃料の上昇などで、採算確保のハードルが上がっている。

打開策を探るべく始める3つの新業態の1つがエブリボウルだ。新ブランドならちゃんぽん店が飽和状態の好立地の都市部でも、出店ができる。

半世紀にわたって看板店を大量に出す戦略を推し進めてきた外食チェーンが、岐路に立っている。すかいらーくの主力業態、ファミレスの「ガスト」は業界最多の1400店舗を誇るが、最近の出店ペースは年10店舗程度。ゼンショーホールディングス(HD)が運営し、牛丼最多の「すき家」も国内の2千店弱に対して新店は年10店ほど。

大量出店で規模を拡大して仕入れコストを抑え、さらに値下げの原資に使う。この循環は1990年代以後のデフレ時代で威力を発揮した。日本マクドナルドは90年代後半に年400店舗ペースで出店し、02年には59円バーガーで旋風を巻き起こした。ゼンショーHDは牛丼業界の値下げ競争をリードしながら、12年3月期に過去最多の200店以上を出店した。

多くの外食チェーンにとって「主力業態の大量出店こそ成長の原動力」(国内証券)だった。外食業のフランチャイズチェーン店の数は過去30年、多少の増減はしつつ連続での減少は06~08年度が目立つ程度だった。

営業短縮で増収

市場の飽和に加えて、ここに来て外食各社の出店にブレーキをかけたのは、人手不足だ。飲食物調理の有効求人倍率(含むパート)は約3.2倍と、95年の統計開始以来の高水準。大量出店に必要な人の確保がもはや難しくなっており、ビジネスモデルを抜本的に変える必要に迫られている。

「人がやる必要がない仕事はロボットで置き換える」。吉野家ホールディングスの河村泰貴社長はこう言い切る。同社やゼンショーHDでは、理系人材の採用に力を入れ、省力化にかじを切っている。吉野家HDは17年春、自動で食器を洗い、種類ごとに積み重ねるロボットをメーカーと共同開発して導入した。

業態転換や自動化のほかに、あえて身を縮めることに解決の糸口を見いだした例もある。ロイヤルホールディングスはファミレス「ロイヤルホスト」で17年、営業時間を平均80分短縮したが、浮いた人手を稼ぎ時の昼食や夕食の時間帯に手厚く配置。既存店が6億円の増収となった。当初は7億円の減収を予想していた。菊地唯夫会長は「外食業界は運営の改善の余地は大きい」と語る。

外食が戦う相手は人口減や人手不足だけではない。スーパーやコンビニエンスストアが力を入れる「中食」とも、胃袋を奪い合う。賞味期限が切れる前に新しいビジネスモデルを見いだすことができるか。

(栗本優、平嶋健人)



(識者はこう見る)運用面に改善の余地 2018/06/16 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「(識者はこう見る)運用面に改善の余地」です。





三菱UFJリサーチ&コンサルティング 竹内公文主任研究員 民泊新法はこれまで野放しだった安全面や衛生面の懸念を正常化する意義のある法律だ。180日の営業日数の制限も海外の事例に比べて特段厳しいわけではなく、全般的に評価している。ただ1年前に法案が決まったにもかかわらず、米エアビーアンドビーの大量キャンセルなど直前になってバタバタした。運用面でもう少しうまいやり方があったのではないか。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 竹内公文主任研究員

法律は民泊の推進法案の位置付けだが、手続きが複雑で個人の事業主にはハードルが高い部分がある。市場に参入している大手の仲介会社に複雑な手続きを代行させるなどの取り組みが広がってもいい。



民泊新時代 競争多様に 2018/06/16 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「民泊新時代 競争多様に」です。





民泊を本格解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法)が15日施行され、届け出が受理された施設の営業が始まった。ただ年180日の上限などの規制や手続きの煩雑さから届け出が低迷。日数制限のない運営方法での申請も増える。シェア経済の代表格として訪日客の受け皿や空き家活用の役割が期待される民泊は課題を抱えたまま始動した。

(画像:タブレットで顔を映し、パスポートの情報と照合(15日、福岡市))

福岡市中心部の賃貸マンションの1室。新法の届け出が受理されたばかりの民泊施設に、友人と来日した韓国人のパク・リュンさん(24)が15日夕、チェックインした。

スマートフォンに届いた番号で電子錠を開けて入室した。室内のタブレットでオペレーターとビデオ通話をしながら顔を映し、パスポートの情報と照合。本人確認を済ませた。新法は対面かIT(情報技術)での本人確認と、宿泊者名簿の管理を義務づけている。

民泊市場に参入した企業のサービスも始動した。参入組は国内ほぼ全ての民泊をサイトで仲介してきた米エアビーアンドビーとは異なる新サービスを用意する。KDDI子会社のロコパートナーズ(東京・港)はサイト「バケーションホーム」で民泊選びを助けるサービスを開始。電話やネットで条件を伝えるとコンシェルジュが紹介。予約もする。

農家民泊が多い百戦錬磨(仙台市)のサイトの掲載施設は約2千ある。家主に電子錠やネット接続サービスも提供する。

楽天の民泊事業子会社の楽天ライフルステイ(東京・千代田)は民泊仲介サイト「バケーションステイ」を稼働した。予約可能施設は現時点で724室。届け出の受理を待つ施設も含めれば約1600室が登録済みだ。

だが自治体による新法への上乗せ規制の影響もあり届け出は8日時点で2707件と少ない。受理も1134件と遅れており、15日に客を迎えた施設はごく一部だ。

政府は民泊新法で新たな宿泊形態を整え、2020年東京五輪・パラリンピックの開催時に予想される宿泊施設の不足解消や、地方での訪日客の受け入れ増を見込んでいた。だが民泊新法を避ける動きが出てきた。

足元で増えているのが旅館業法の「簡易宿所」の許可や、国家戦略特区の認定を持つ民泊だ。いずれも住居専用地域では基本的に営めないが、営業日数の上限がない。収益性を重視する企業が選ぶ傾向が強まっている。

京都市の簡易宿所の許可施設は3月末に2291件と2年前の3.3倍だ。3~5月にかけても100件以上増えた。簡易宿所はカプセルホテルなども含むが、民泊も目立つという。

国家戦略特区の大阪市の認定施設は3月に1683室と1年前の18倍に急増している。

一方、民泊新法は住居専用地域でも営業できるが、自治体が条例で禁じる例が多い。180日を超えた分は賃貸する方法もあるが、手続きの煩雑さもあり伸び悩む。無許可民泊の淘汰などの課題も多い。

民泊新法は日本におけるシェア経済の推進役とされるが、背を向ける家主が増えれば市場の広がりに水を差しかねない。届け出を支援をする企業もあるが、複数の運営法が並立するわかりにくさを解消し、窓口を一本化しなければ限界がある。

過度な上乗せ規制の緩和を求めて家主が結束する動きもある。民泊利用者の視点に立った制度やサービスを官民でつくることが不可欠だ。



中国、アフリカ「制覇」へ攻勢 2018/06/16 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「中国、アフリカ「制覇」へ攻勢」です。





【北京=高橋哲史、台北=伊原健作】中国がアフリカで影響力の拡大に動いている。9月に北京で開く「中国アフリカ協力フォーラム」の首脳会合をにらみ、この地域と台湾の関係を完全に断ち切ろうと外交攻勢をかける。経済を武器にアフリカを自陣に組み込み、貿易や安全保障で対中圧力を強める米国との競争を有利に進める思惑がにじむ。

(画像:中国はブルキナファソと国交を結んだ(署名式で握手するバリー外相(左)と王毅氏)=共同)

6月4日、南アフリカを訪問した中国の王毅国務委員兼外相は「北京サミットの準備を全力で進めている。アフリカ各国の指導者が北京に集まり、全面的な戦略協力パートナーシップを新たな水準に高めることを期待している」と語った。

9月に首脳会合

「北京サミット」とは、中国の主導で2000年に閣僚級で始まった中国アフリカ協力フォーラムの首脳会合を指す。3年に1度のこのフォーラムを足がかりに、中国はアフリカとの関係をじわじわと深めてきた。

北京で開く今年の首脳会合は中国にとって特別な意味を持つ。

5月に西アフリカのブルキナファソが台湾と断交し、中国と国交を結んだ。アフリカで台湾と外交関係を保つのはスワジランドだけで、世界全体でも18カ国となった。同国と国交を樹立すれば、中国はアフリカを「制覇」したかたちで9月の首脳会合を迎えられる。

中国共産党の最高指導部メンバーは入れ代わり立ち代わりアフリカに足を運ぶ。習近平(シー・ジンピン)国家主席の腹心で、党序列3位の栗戦書(リー・ジャンシュー)全国人民代表大会委員長は、5月にエチオピアなど3カ国を訪れた。同4位の汪洋(ワン・ヤン)全国政治協商会議主席は11日から20日までの日程で、コンゴ共和国など3カ国を歴訪中だ。

中国は圧倒的な経済力を武器に、台湾とアフリカを引き離す。

西アフリカの島国サントメ・プリンシペは16年末、2億1千万ドル(約230億円)の支援要請を台湾が断るやいなや中国と19年ぶりに国交を回復した。

ブルキナファソに対しても同様だ。台湾主要紙の自由時報によると、中国は昨年からブルキナファソに対し、少なくとも15億ドルの経済支援を提示。また隣国ガーナとの首都間を結ぶ鉄道建設の支援も提案し、台湾と断交するよう迫っていたとしている。

「中国がアフリカ各国の重要な貿易パートナーになっている現状を考慮するなら、人民元を準備通貨に組み入れることはわれわれにとって有利だ」。中国国営の新華社によると、5月末にジンバブエの首都ハラレで開かれたアフリカ各国の中央銀行幹部らの会議では、外貨準備の構成通貨に元を加えるべきだとの声が相次いだ。

17年の中国とアフリカの貿易額は1700億ドルに達し、10年前に比べて2.3倍に膨らんだ。貿易の拡大に伴い、ドルに代わって元を使う取引は増えている。中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」に絡むインフラ投資も拡大しており、この地域で中国の存在感は高まる一方だ。

強権手法に共鳴

アフリカを中国に引き寄せるのは経済だけではない。民主主義を押しつける米欧と一線を画し、強権的な手法で経済発展を実現した中国のモデルはアフリカ諸国の目に魅力的に映る。

中国政府系の英字紙チャイナ・デーリーは、4月初めに訪中したジンバブエのムナンガグワ大統領が中国共産党の指導指針である「習近平思想」を高く評価したうえで、次のように表明したと伝えた。「わが国でもジンバブエの特色ある社会主義を発展させたい」

ジンバブエでは17年11月、37年間にわたって大統領を務め、独裁政治で国民の支持を失ったムガベ氏が政権の座を下りたばかりだ。民主化への期待を寄せられたムナンガグワ氏だったが、早くも親中国の姿勢を鮮明にし、強権的な体制を敷こうとしている。

中国にとってアフリカでの影響力拡大は、米国へのけん制に通じる。

トランプ米政権は中国に貿易戦争を仕掛けるだけでなく、台湾や南シナ海など安全保障にかかわる分野でも中国に圧力をかける。とりわけ台湾問題への介入は、中国が絶対に譲れない一線だ。

にもかかわらず、マティス米国防長官は今月初めにシンガポールで開かれた安全保障会議で「(台湾への)必要な武器の供与を断固として続ける」と中国の神経を逆なでする発言を繰り返した。

中国がアフリカで台湾を孤立に追い込もうとあの手この手を尽くすのは、背後にいる米国に対抗する味方づくりという側面も大きい。



(識者はこう見る)ヤミ民泊の摘発重要に 2018/06/16 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「(識者はこう見る)ヤミ民泊の摘発重要に」です。





ニッセイ基礎研究所 佐久間誠研究員  民泊新法はこれまでグレーだった部分を整理し、旅館やホテルなど既存の宿泊業との公平性をもたらした。今後は合法民泊とヤミ民泊との間で不公平が生まれるため、ヤミ民泊を着実に摘発し、公平性を保つことが重要だ。生まれたばかりの民泊はこれからもビジネスモデルが変化していくため、それに合わせた規制の見直しも必要になる。

ニッセイ基礎研究所 佐久間誠研究員

自治体の上乗せ規制については、地域住民の感情などを考慮すると仕方がない面がある。米エアビーアンドビーなどが「あくまで民泊事業者と宿泊者をつないでいるだけ」という姿勢で様々な責任を回避してきたことに対して、住民の不信感が募った面もある。



ゆるみとゆがみ 日本経済の明と暗(4) 低金利競争 悩む地銀 2018/06/15 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「ゆるみとゆがみ 日本経済の明と暗(4) 低金利競争 悩む地銀」です。





「今年度の設備投資額は前年度の2倍」(前橋の生産用機械)、「新規店舗開設や既存店の改装を積極化している」(沖縄の小売り)――。日銀が全国の各支店で集めた地域経済報告には、前向きな情報が目立つ。

(画像:広島市中心部には、地元金融機関と並びメガバンクや近隣県の地銀が店舗を置く)

2017年度の日本の設備投資額は87兆円弱と、バブル期に迫る25年ぶりの高水準になった。日銀幹部は「金融緩和によって、設備投資には大きな効果が表れた」とみる。

「最近は支払利息が気にならない」と信越地方のある運輸会社社長はいう。メガバンクも含む計7行と取引している。各行が競って金利を下げるため、かつて1%台だった借入金利は今では0.5%前後まで下がっているという。

対照的に銀行の表情はさえない。ある地方の金融機関の融資担当者は最近、取引先の企業から同社の新規融資の借入先を決める入札に参加するよう一方的に言い渡された。「10年以上メインバンクとして付き合ってきたのに」と肩を落とす。

金融緩和により金利は下がり、企業は資金を調達しやすくなる一方、金融機関は収益を圧迫されている。国内銀行による新規貸し出しの平均利回りは異次元緩和前の12年末の1.1%に対し、直近は0.6%にまで落ち込んでいる。

貸出金利の引き下げ競争が特に激しさを増しているのが、人口や企業が集積する地方の中核都市だ。

「『ヒロシマ金利』ですよ」。ある地銀関係者はこう話す。他県の地銀を含む競合行が、企業や個人に今の借り入れよりも低い貸出金利を示し、借り換えさせるケースが増えている。広島には資金需要の強さを映し、広島銀行やもみじ銀行など地元に本店を置く銀行に加え、島根や岡山、愛媛といった周辺地域の地銀も支店を構え、融資の争奪戦を繰り広げる。

全国平均を下回る低金利地域といえば、地元の金融機関数が多く、競争の激しい「ナゴヤ金利」が有名だ。今や名古屋特有の現象ではなく、競争が激しくなった地方中核都市では地元のトップ行でさえ貸出金利を決める主導権を握れない。

低金利競争から抜け出したい地銀の多くは、財務体質がやや脆弱な企業への融資に向かう。リスクを取る分、健全な企業よりも高めの金利で融資できるからだ。だが日銀はそれがリスクに見合わない低採算融資になっていないかと警鐘を鳴らす。

低採算先が中小企業向け貸し出しに占める割合は16年時点で25%と、金融危機後の不良債権処理問題に直面していた00年代初めと同水準まで上昇した。

日銀で審議委員を10年つとめた須田美矢子氏は「長引く金融緩和で世の中はお金にコストがかかることを意識しなくなった」と話す。超低金利でお金を調達できるために、本来なら市場から退去を迫られるような企業も生きながらえてしまう。緩和のゆるみが企業の新陳代謝を阻み、生産性を悪化させ、超低金利のゆがみが地銀を圧迫する。

金融緩和が金融不安を招きかねないという皮肉な日本の姿がそこにある。

後藤達也、福岡幸太郎、浜美佐、今堀祥和、馬場燃が担当しました。



民泊市場、低調の船出 2018/06/15 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「民泊市場、低調の船出」です。





民泊を本格解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法)が15日に施行され、営業が始まる。国内ほぼ全ての民泊をサイトで仲介してきた米エアビーアンドビーの掲載数は最盛期に比べ6割少ない約2万5千件。新法での営業届け出も約2700件と低調で、2020年に4千万人をめざす訪日誘客には一時逆風となる。近隣住民の不安払拭を狙う新ルールのもと、民泊は出直しの船出となる。

「民泊市場が立ち上がる転機だ。2020年東京五輪の宿泊者受け入れも手伝う」。共同創業者のネイサン・ブレチャージク最高戦略責任者は14日、都内で開いた記者会見で語った。

エアビーは今春には無許可を含め6万2千件を掲載。だが観光庁の求めで無許可物件の掲載をやめ、調査会社はりうす(神奈川県藤沢市)によれば、直近の件数は6割減の2万5千件とみられる。無許可が減った一方で、届け出を済ませた家主、掲載を認めたホテル・旅館の登録が増えた。

観光庁によると、訪日客の約1割が民泊を利用。「日本の家主と交流できたのが何よりの思い出」(フランス人のエリーゼ・メッツさん)などと好評だ。

今後は民泊への理解を広げることも課題となる。マクロミルの印象調査では「利用者のマナーが悪い」が48%。新法は営業日数を年180日までに制限し、届け出と宿泊者の本人確認を義務化。不安に配慮し規制を強める自治体も相次ぐ。

英ロンドンは年90日を超えると許可が要るなど規制は海外にもある。規制や手続きの煩雑さから届け出数は8日時点で2707件にとどまる。受理件数も1134件だ。もともと6万件超の民泊があったことを考えると低調だ。シェア経済の代表格で、訪日客の受け入れ拡大や空き家活用に果たす役割が期待される民泊。規制が強すぎれば定着の芽を摘んでしまう。



ゆるみとゆがみ 日本経済の明と暗(3)単身世帯 貯蓄ゼロ4割 2018/06/14 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「ゆるみとゆがみ 日本経済の明と暗(3)単身世帯 貯蓄ゼロ4割」です。





「いつでも現金が引き出せるという安心感があるのはありがたい」。警備大手のきたむら(東京・杉並)で働く警備員の中村紀久さん(仮名、42)には、給与随時払いサービス「キュリカ」が欠かせない。給料日前でも、働いた分の最大7割をコンビニエンスストアのATMなどで引き出せる。「親族の葬儀で新幹線代が必要になったときは、本当に助かった」

(画像:遺品整理で思わぬ所から現金が見つかることは多い=ワンズライフ提供)

キュリカを運営するヒューマントラスト(東京・千代田)は2017年に現在のサービスを始めた。現在の導入企業は100社、利用者は11万人に達したという。阪本昌之社長はこのサービスの引き合いが増えている一因として「貯蓄のない非正規雇用者が増えていることがあるのではないか」と推察する。

日銀の異次元緩和が始まり、6年めに入った。株価や不動産価格の上昇に比べて、賃金は伸び悩んでいる。この間に企業は景気の波に応じて雇用の調整をしやすい非正規社員を増やした。非正規社員と正社員の賃金格差は依然として大きい。資産を持たない層は緩和の恩恵にあずかりにくい。

金融広報中央委員会の調査によると、17年の単身世帯の平均貯蓄額は942万円だった。異次元緩和前の12年に比べて242万円増えて一見、豊かになっているように映る。だが単身世帯全体を貯蓄の残高順に並べたとき、中央に位置する中央値世帯の貯蓄額は32万円で、5年前の100万円から大幅に減った。金融資産ゼロ世帯が4割超と増えているためだ。

1万円札を1万3000円で出品――。フリマアプリの「メルカリ」で額面を超える額で現金を販売したとして17年11月、男女4人が逮捕された。実質的に超高金利での貸し出しだったとの疑いだ。

運営するメルカリ(東京・港)は4月、現金出品を原則禁止したが、その後も紙幣を加工した「オブジェ」などの出品が後を絶たなかった。多重債務者などお金に困った人々が買ったとの見方がもっぱらだ。

一方で2月に兵庫県で合計1000万円が見つかるなど多額の現金がゴミ処理場から発見されている。警察庁によると拾得物として届けられた現金は16年に全国で177億円とこの10年間で3割ほど増えた。

「タンス預金」が誤って捨てられてしまうケースも少なくない。遺品整理のワンズライフ(東京・世田谷)の上野貴子社長は「靴箱や冷蔵庫など思わぬ場所から現金がでてくる」と話す。「高齢者は銀行に行くのも大変だし、金融機関が破綻した記憶が強く、手元に現金を置きたがる」と上野社長はいう。

日銀はお金を市中に潤沢に流して景気をよくしようとしてきた。しかし家庭にためこまれ、物価に影響しないまま、捨てられるケースもでてきている。第一生命経済研究所の熊野英生氏は、タンス預金の額を47兆円と試算する。行き場をなくしたマネーの膨張は、金融緩和が物価上昇に直結しない現実の一面を映している。