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飲食店や観光地 SNS映えよりまずはマナー 撮影時に一 声 他の客に配慮 2017/8/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のくらし面にある「飲食店や観光地 SNS映えよりまずはマナー 撮影時に一声 他の客に配慮」です。





 スマートフォン(スマホ)の進化と交流サイト(SNS)の普及で、個人が気軽に飲食店の料理や観光スポットの写真を撮りネットに投稿することが広がっている。撮影に熱中するあまり、マナー違反も目立つようになってきた。一方、店側もセンスの良い映像が広がればPRにつながるだけに、撮影禁止に踏み切りにくい。撮ってもいいのか基準が曖昧になるなか、どんな配慮が求められるのか。

渋谷ヒカリエでは「インスタグラム」に食事の写真を投稿すると特典が得られるキャンペーンを実施(東京都渋谷区)

「渋谷 水刺斎(スランジェ)」の「インスタ映え」を意識した限定メニューの冷やし麺

 東京・四谷の日本酒専門の飲食店「鎮守の森」。酒の銘柄や料理名が並ぶメニューの中には「撮影時には一声掛ける」「他の来店客を映さない」など注意喚起の一文がついている。酒や料理を撮影する客が増えるに従い「実際に他のお客さんが映ってしまってインターネットに載せられて困ったという事例もあった」と代表の竹口敏樹さん。

 動画を撮りながら来店したり、三脚を設置して撮影したりといった行為もあるという。テーブルの上に置かれた一眼レフカメラに万が一お酒がこぼれたら、場合によっては店側が弁償しなければならないなど、心配の種は尽きない。撮影している間に料理が冷めることもあり「お酒との相性を考えた温度で料理を出しているので、温かいうちに食べてほしい」のが本音だ。

 札幌市のジンギスカンの有名店「だるま」は店内に撮影禁止のマークを張りだしている。「自身の注文したものを撮るのはいいが、他のお客の顔が入ってしまうのはNG」と基準を設けている。クレームが来たわけではないが、プライバシーへの配慮から禁止にした。

 今ではもう「ほとんどの人が写真を撮っている」状況が続くという。背景にあるのが、写真共有アプリ「インスタグラム」の浸透。個人が写真をネットに投稿し、魅力的な写真は「インスタ映え」と言われ注目を集めるようになった。サンドイッチの断面が美しい「萌え断」など様々な流行を生んでいる。

 飲食店側も、料理をうまく撮ってもらいネットで広がれば、有力なPRにつながる。撮影禁止にしている「だるま」でも、「おいしそうに撮っていただいてネットに出るのはありがたい」と思っている。日本フードアナリスト協会食空間マナー研究会顧問の蔦洋子さんは「撮影を禁止にしていたレストランでも認めるところが出てきた」と指摘する。

 実際、飲食などサービス産業では店内で「インスタ映え」する写真を撮ってもらい話題になることが、消費者向けの戦略の重要なテーマになり始めている。東京・渋谷の商業施設、渋谷ヒカリエでは31日まで「夏のヒカリエごはん」と銘打ったキャンペーンを実施中。27店舗の飲食店がSNSに映えるよう、盛りつけや色使いを工夫した限定メニューを作成。注文して写真をインスタグラムに「#ヒカリエごはん」と投稿すると飲み物1杯無料などのサービスが受けられる。

 入居する韓国料理店「渋谷 水刺斎(スランジェ)」は小玉スイカをくりぬいた冷やし麺を用意。スイカをそのまま使ったインパクトとピンク色のスープが目を引く。「写真映えに特化してメニューを開発したのは初めて。まず料理や味というのから全く逆の発想で、見た目と色彩から考えた」と統括マネージャーの南原儀一さんは語る。

 撮影前提の飲食店が登場するに従い「当たり前の行為」と捉える個人も増えているが、本来、店舗内での撮影は周囲に迷惑をかけかねない行為だ。撮影の是非の基準が曖昧になるなか、どんなことに注意すればいいのか。

 日本フードアナリスト協会の蔦さんは「撮って良いかどうか、断りを入れる」という基本の徹底を指摘する。少しでも嫌な顔をされたり、言いよどんだりされるようなら撮影を控えるべきだという。「撮影禁止」としている店内では、撮らないことが大前提だ。

 さらに「他のお客さんを映さない」「料理が冷めないうちに食べる」などを挙げる。撮影に夢中になるあまり器を割りかねない。

 またすし店や日本料理店などではカウンターに高価な木材を使っていることがある。スマホやカメラを置くと傷がつく恐れもある。「サービスを受ける立場であっても、店や他のお客さんが気持ちよく過ごせるようにする配慮が必要」(蔦さん)ということを、改めて肝に銘じておきたい。

(関優子)



宿泊施設和の装い ホテル開業・改装ラッシュ ヒノキ風呂 設置も 2017/8/10 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のくらし面にある「宿泊施設和の装い ホテル開業・改装ラッシュ ヒノキ風呂設置も 」です。





 2020年の東京五輪まで3年をきった。折からの訪日外国人客の増加を受けて、ホテルや民泊施設では受け入れ体制の整備を急ぐ。ハードだけでなく、日本流の「おもてなし」といったソフト・サービス面も磨きをかけ、大会の演出に花を添える。

ヒノキ風呂を備えた新しい客室のバスルーム(東京都千代田区のホテルニューオータニ)

東京タワーを間近に見られるテラス(東京プリンスホテル)

 老舗ホテルにとって2020年は2度目の東京五輪だ。訪日外国人(インバウンド)の観光需要は当時と比べて大幅に高まり、ビジネスでの利用も増えている。ホテル大手は改装やサービス強化で魅力を高め、需要の変化に対応している。

 「普通のレストランやカフェよりも開放感があるよ」。セ氏30度を超える7月の真夏日、日光が照りつけるテラスでベルギー出身の会社員、フィリップ・カプランさん(50)がモヒートを片手にくつろいでいた。フィリップさんは家族3人で東京プリンスホテル(東京・港)に2日間泊まり、都内を観光した。

 東京プリンスホテルは前回の五輪が開かれた1964年に開業。2度目の五輪への期待を込め、約50億円を投じて客室やロビーなど施設を全面改装した。フロアごとの客層を明確に位置づけ、家族の旅行客からビジネス利用まで幅広い需要を取り込む。昼はカフェ、夜はバーとして楽しめるテラスも新設した。

 前回の五輪で生まれたのが「ユニットバス」だ。ホテルニューオータニ(東京・千代田)は大会に間に合わせるため、浴室を限られた期間で大量に設置する必要に迫られた。あらかじめ工場で生産した材料を現場で組み立てるユニットバスを導入、大会を乗り切った。

 20年の五輪に向けては約30室の客室にヒノキ風呂を設置する。出張で日本を訪れ、週末には観光も楽しむ海外企業の社員などを想定。都心にいながら日本を体験できる。室内にはタブレット端末も設置し、天気や観光情報を案内したり、スマートフォン(スマホ)で撮った写真をテレビに映したりできる。

 体験型のサービスも重視している。フロントオフィス課コンシェルジュの山中真美氏は「海外の方は漠然と特別な体験をしたいと相談に来る」と話す。最近は習字や茶道、生け花体験の問い合わせが多いという。今年から1人1万5千円でホテル館内で浴衣の着付けをするサービスを始めた。

 不動産サービス大手のCBRE(東京・千代田)によると、17年から20年ごろまでに主要8都市で既存ホテルの26%に当たる約6万5千室分のホテルが開業する。東京は25.6%増の約2万5千室が新たに生まれ、都心の客室不足は解消する見通しだ。新ホテルの顔ぶれもビジネスホテルからシティーホテルに移ってきている。五輪に向けて需要拡大が期待される一方、安易に集客できる状況は潮目を迎えている。

(清水孝輔)



いつ何食べよう? 体内時計と相談だ! 朝食べて体にリズ ム 3食の比率「3・3・4」 2017/5/11 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のくらし面にある「いつ何食べよう? 体内時計と相談だ! 朝食べて体にリズム 3食の比率「3・3・4」」です。





 年齢や運動量にあったカロリーと、バランスのよい栄養の摂取を心がける人は増えてきた。さらに最近、いつ何をどのように食べるのがより健康によいのかを調べる研究が活発になっている。生体のリズムを調整する体内時計の働きに着目した「時間栄養学」の考え方が広まってきたからだ。最新の成果から、どんな食べ方が体によいと分かってきたのだろうか。

神奈川県厚木保健福祉事務所が作ったパンフレット

 女子栄養大学の香川靖雄副学長は、生体のリズムを生む時計遺伝子の研究をもとに時間栄養学を早くから唱えてきた。「健康に一番よい食べ方は何か」と聞かれると、必ず「毎日朝食をとること」と答えている。

 理由は明確だ。体内時計の周期は約25時間で24時間より少し長く、朝の日光を浴びてリセットしている。目覚める前に覚醒を促すホルモンが出て体温が上昇し、カロリーと栄養をとろうと内臓などの働きが徐々に活発になる。朝食は日光とともに一連の活動を支えリズムを整える。香川副学長は「朝食をとらない人はとった人に比べ、勉強や運動の効率が悪くなりがち」と強調する。

 朝食を抜いても違いは無い――。そう考えている人に対し、香川副学長は「食べる習慣を身につけると、本人が違いに気付く」と説得する。

 朝食をとらない生活を続けると、生活習慣病にかかりやすくなることも分かってきた。米国の追跡調査では、毎日朝食をとる人は朝食を週に3回までしかとらない人に比べ、糖尿病を発症するリスクが2割ほど低い結果が出た。朝食を抜くと1日の血糖値の上下動が激しくなり、調節機能が徐々に低下する原因が考えられている。

 神奈川県厚木保健福祉事務所は新入社員や大学生に向け「朝食を必ずとろう」と呼びかける。分かりやすいパンフレットをホームページで紹介する。保健福祉課の栗原幸子主査は「まず1品から。食べるきっかけを作りたい」と話す。

 これまで生活習慣病の予防に力を入れてきたが「若い時から心がけていればよかった」との意見が多く届き、朝食の重要性に目をつけた。文部科学省が2006年度に「早寝早起き朝ごはん」運動を始め、小中学校で朝食をとる生徒の割合が増えた。継続して訴えていくという。

 次に、3食の比率はどうすればよいだろうか。時間栄養学的にはカロリー比で朝昼晩を3・3・4にするのが適切なようだ。昼食は短時間で軽く済ませてしまいがち。それでも構わないが、早稲田大学の柴田重信教授は「晩の高カロリーな食事はできるだけ避けよう」と説いている。

 体は夜間の方が栄養をよく蓄積する。昔から「夜食は肥満のもと」といわれる原因だ。朝食に比重を置くためにも遅い時間帯の食事は禁物で、朝食と晩ご飯は12時間以内に収めるのが目安だ。晩の比率を高くしないよう早めの時間帯に分けて食べる方法もある。

 接待や会食などがあると毎日規則正しい生活をおくれるとは限らない。しかし柴田教授は「1~2日ならあまり心配しなくてもいい」と話す。

 海外旅行で時差が気にならなくなるように体内時計は1週間程度の時間をかければ調整可能だ。逆にいえば1~2日のリズムの乱れは、もとの生活に戻せば解消できる。運動も生体リズムの調整に役立つ。うまく組み合わせるとよいだろう。

 夜間の警備など時間帯がずれた人も、そのリズムに合わせた食事をすればよい。問題は断続的に時間帯が移動するシフト勤務だ。柴田教授は「なくす社会にしていくべきだ」と訴えている。

(編集委員 永田好生)



俺たち「仕事かけ持ち達人」 報酬・スキル・達成感 アプリ開 発、町家改修し宿… 2016/11/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のくらし面にある「俺たち「仕事かけ持ち達人」 報酬・スキル・達成感 アプリ開発、町家改修し宿…」です。





 若い世代を中心に、いくつもの仕事をかけ持ちする「多刀流」の働き方が生まれている。生計を立てるための仕事のほかに社会貢献のための仕事、仲間と楽しむ仕事など、様々な仕事を組み合わせてキャリアの幅を広げている。柔軟な働き方の実現に向けて政府が副業を促進する姿勢を打ち出すなか、そうした二刀流のさらに先をいく「達人」を追った。

 京都市の二条城からほど近い場所に5月、築100年以上の町家(延べ床面積約80平方メートル)を改修して、小さな宿泊施設がオープンした。

 旅館業法上の許可を受けており、1日1組が泊まれる。それだけではない。京都のアーティストらが作った雑貨類が飾られていて購入できる。階段などには折々のテーマに合わせた本が置かれている。今は1960年代から時代ごとの話題本が出迎える。

 「宿泊者の部屋以外は誰でも入れる。いろんなテーマで並ぶ本などを楽しんでもらえれば」と話すのはこの施設「MAGASINN KYOTO(マガザンキョウト)」を運営する岩崎達也さん(31)だ。

 副業を認めているIT(情報技術)系企業で働きながら、朝晩や週末を利用してこの施設の実現に奔走してきた。さらにデザイン関係の別のプロジェクトを仲間と手がけており、そちらの仕事にも余念がない。

 ◇   ◇

 副業といえば、ささやかな小遣い稼ぎのイメージが強いが、多刀流の達人たちは大胆に、いくつもの本格的なプロジェクトに挑んでいる。元テレビ局社員でスマートフォン(スマホ)向け人気画像アプリ「bokete(ボケて)」の生みの親でもあるイセオサムさん(33)は現在、「4足のわらじ」をはく。

 「ボケて」を運営するローディー(東京・港)、ウェブサイト運営のオモロキ(静岡県熱海市)、バイク用品のフリマアプリを手がける狩猟社(東京・豊島)の役員を務め、このほかに個人事務所のプレイ(東京・世田谷)を営む。「今はどの仕事をしているんだっけ、と分からなくなることもある」と笑う。

 二刀流で名をはせるプロ野球の大谷翔平選手や、二刀流の名手、宮本武蔵も驚きそうな多彩な攻め口。性格の異なる仕事を組み合わせ、したたかに立ち回る様子が浮かぶ。剣術に例えるなら、3種類の「剣」を繰り出している。

 【稼ぐための剣】 まず経済基盤を築くため、会社勤めや利益の見込める企業運営を軸に据えていることが多い。冒頭の岩崎さんは、会社勤めで生計の基盤を固めながらマガザンキョウトの開設準備に着手。「マガザンでやっていける感触をつかんだ」ため8月に退職し、今度はマガザンキョウトを基盤に、仕事の幅を広げようとしている。

 ITエンジニアで、一般社団法人コード・フォー・ジャパン(東京・台東)の代表理事を務める関治之さん(41)は、現在、IT関連のベンチャー企業を2社運営。そこで生計の基盤を固めながらコード・フォー・ジャパンを通じた社会貢献活動に打ち込む。

 【社会貢献の剣】 関さんは東日本大震災が起きた2011年3月には検索大手のヤフーに勤めていた。震災発生から4時間後、被害や避難所の状況などの情報を共有するサイト「sinsai.info」を独自に開設。ほぼ1カ月間、会社を休んでサイト運営に集中した。

 当時の経験を生かし、コード・フォー・ジャパンでは政府や自治体の公的情報を市民サービス向上に役立てる仕組みづくりを探っている。運行情報を生かしてバスの現在位置を示すアプリを開発するなどの工夫を提唱する。

 【仲間と楽しむ剣】 多刀流を選ぶ人の多くは、意気投合した仲間との仕事に生きがいを見いだしている。「ボケて」などのアプリを手がけるイセさんは「好きな仲間たちと一緒に、いろんなやりたいプロジェクトを楽しむ。それが私の働き方」と言う。もちろん楽しみながら大きな収益をあげる例も少なくない。

 ◇   ◇

 多刀流の弱点を挙げるなら、仕事時間が長くなることだ。コード・フォー・ジャパンの関さんは6歳の娘と過ごす時間が少なくなりがちだと話す。「実際の仕事は仲間に頼み、自分は運営の要所に関わることで何とかできている。だがもし自分も従業員として仕事に張りつくなら多くはできないだろう」と言う。

 それでも多刀流に興味を抱く人はじわじわ増えている。IT業界で働く人向けの情報サイト「キャリアハック」を運営するエン・ジャパンの白石勝也チーフエディターは、「若いエンジニアたちは複数の仕事に関わることに違和感がない。お金のため、スキルを磨くため、会社組織では得られにくい達成感を味わうため、優秀な人ほど挑戦している」と語る。

 厚生労働省が8月にまとめた報告書「働き方の未来2035 一人ひとりが輝くために」は今後、働き手が一つの会社の枠にとどまらず、プロジェクトごとに集まり働くことが増えると予測する。そうなれば幅広い業種で多刀流の働き方が生まれる可能性はある。

(平田浩司、田村匠)



腸の善玉菌増やそう 食物繊維多めに・発酵食品をとる・腸腰筋を鍛える 便、黄色でバナナ形理想 2016/09/01 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のくらし面にある「腸の善玉菌増やそう 食物繊維多めに・発酵食品をとる・腸腰筋を鍛える 便、黄色でバナナ形理想」です。





 私たちの腸内には600兆~1000兆個もの細菌がすみついている。この腸内細菌の集まり(腸内細菌叢=そう)が健康や病気と深く関わっていることが分かってきた。日ごろから良好な状態を保つにはどうすればよいのか。専門家の話をもとにまとめた。

個人の腸内細菌の構成比などをDNA解析によって調べる(川崎市のサイキンソー)

「強いにおい」注意

 東京都内に住む会社員のAさん(女性、45歳)の最近の習慣は毎朝トイレでの大便を観察することだ。量は十分か、色が黒ずんだりしていることはないか、においはきつくないか……。

 「腸内細菌の状態を簡単にチェックする方法は大便の観察。黄色ないし黄褐色で太い、バナナのような便が理想的です」。理化学研究所の特別招聘(しょうへい)研究員で腸内細菌を長年研究してきた辨野(べんの)義己さんは説明する。

 形や色だけでなく量が十分かも重要だ。目安は1日あたり約300グラム。バナナ形の便なら2~3本分。最初のうちは排便前後の体重を比べ、見た目と重さの関係を自分なりにつかんでおくといいという。水分を除いた固形成分のうち、食物のカスとはがれた腸の粘膜が3分の1ずつ。残り3分の1は腸内にいた細菌だ。

 便の色が黄色っぽいのは、ビフィズス菌など「善玉菌」の多さを物語る。においも強くない。逆に色が黒っぽかったりにおいが強かったりする場合は、肉や脂肪分の多い食事や運動不足で排便がスムーズでなく、腸内に「悪玉菌」が増えていると見なせるという。

 腸内フローラとも呼ばれる腸内細菌叢の構成・状態は個人の食事や生活習慣によって変わる。年齢とともに腸の働きは鈍くなり腸内細菌の状態も悪化していく。「腸年齢の老化」といわれているが、辨野さんによれば、食生活をはじめとする生活習慣を工夫すると、腸年齢は若返るという。

 自分の腸年齢を知るためのチェックリストで、自分の腸の状態や生活習慣の問題点が分かる。腸年齢を若く保つため辨野さんが勧めるのが「3つの力」の実践だ。まず「作る力」。良い便のもとになる野菜など食物繊維の豊富な食事をする。次に「育てる力」。発酵食品をとって健全な腸内細菌を増やす。そして「出す力」。運動によって腸腰筋を鍛える。

 良い腸内細菌を育てるのに有効なのは、ヨーグルトや乳酸菌飲料、納豆などの発酵食品だ。食物繊維の多いサツマイモにヨーグルトをトッピングして食べるなど工夫をするとよいという。発酵食品には様々な製品があるが「基本はどんな種類の製品でも有効。有用性が確認されている特定保健用食品(トクホ)の認定品が安心して利用できる」(辨野さん)という。

 腸内細菌の善玉菌としては従来、ビフィズス菌や乳酸菌が代表格だった。これに加えて辨野さんが注目しているのが「大便菌」と呼ぶ仲間だ。有用物質である酪酸を作る働きがある。「80歳以上の腸内細菌にはビフィズス菌と並び大便菌が多いことが分かってきた。これらを長寿菌と呼びたい」(辨野さん)という。

分析サービス登場

 腸内細菌への関心の高まりとともに、遺伝子検査のような感覚で個人の腸内細菌を調べてくれるサービスも登場している。理研が認定しているベンチャー企業のサイキンソー(川崎市)は、昨年11月から自宅でできる腸内細菌叢検査サービス「マイキンソー」を始めた。便のサンプルを郵送すると、細菌のDNAを手がかりに、数週間後に腸内細菌のデータをインターネットで閲覧できる。

 ビフィズス菌や、酪酸など有用物質を作る菌の存在比、太りやすさと関係があるとされる腸内細菌の比率などが分かる。検査費用は1万8000円。同社代表取締役の沢井悠さんは「腸内環境を変えたいと思っている人のニーズにこたえたい」と話している。

(編集委員 吉川和輝)



「顧問」でスキル生かし働く 中小企業にシニアが知恵 数値化営業伝える/研修の意義提案 2016/04/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のくらし面にある「」です。





 「積み重ねたスキルを自分でも思ってみなかった企業で活用できる」「会社に雇われない働き方がいい」。現役時代に身に付けた能力を生かし、複数の中小企業のプロジェクトの「顧問」として働くシニアが目立つ。営業、生産の管理、企業風土の改革など、半年から2年ほどの単位で課題解決に知恵を出し、成果が出たら契約は終わり。新たな働き方として人材サービス会社が後押しに乗り出している。

打ち合わせに熱が入る宮崎博さん(左)

 宮崎博さん(60)は昨年から「顧問」という働き方をしている。「大手が出てくる前に、短期で新事業を始めたい。どうすればいいかアドバイスをしてほしい」「製品はいいと信じているのだが、売り上げが伸びない」。そんな悩みを抱える中小企業の相談を受けている。

 まずは営業の会議に立ち会い、何を話し合っているか確かめる。営業マンに「売り上げ目標は達成できそうか」と聞いて「まずまずです」などとあいまいな答えが返ってきたら、「まったく営業体制が整備されていない」と判断する。なぜか。

 目標達成が「まずまず」では現状把握が甘いからだ。現役時代は外資系パソコンメーカーのゼネラルマネジャーを務めた。たたき込まれたのは「営業を数値化、見える化して分析する手法」だ。取引先に何回電話し、中心人物にどれくらい接触したのか。日報を部内のメールで共有、ライバル企業になぜ勝てたか、なぜ負けたかを明らかにする。「この手法がどんな分野でも通用すると気づいたから自信を持って勧められる」

 宮崎さんが登録するのはリクルートキャリア(東京・千代田)のサービスだ。現在契約先は3社で、1社を訪ねるのは週に1回、2~4時間ほど。スキル、取り組む仕事の内容次第で、紹介企業から1日数万円の報酬が出る。宮崎さんの今の報酬は年収換算で約900万円。定年後同じ会社に再雇用されても転職を選んでも、収入は半分以下に減ることが多いだけに、破格といえる条件だ。

 外部人材の提案がすんなり受け入れられることはまれだ。「そんな提案は実現できない」という抵抗勢力は多い。しかし社員として転職するのでなく、独立した立場で意見を言う顧問だから、正しいと思ったことは主張できる。「業務が改善するまでしっかりお世話し、結果、すべての会社で売り上げの成果が上がっている。うれしい」

 ◇  ◇

 平林明夫さん(66)はプラスチック加工企業の工場で生産技術を高め、生産管理を効率化する仕事を長年してきた。顧問という働き方により自分の専門技術を他の会社でどれだけ生かせるのか。当初は疑問に思っていた。ところが実際に契約先に行くと、異業種でも自分の様々な経験を活用できることを知った。

 ある中小企業の場合、社員の多くが創業社長からの指示待ちに慣れ、二代目に代わっても命令がないと動かないのが悩みになっていた。「まず幹部が積極的に意見を出すための勉強会を開こう」「社員研修で前向きな姿勢を引き出しては」と提案した。工場の技術力向上、効率化で慣れ親しんだ手法だ。じわじわと成果が出始めている。

 平林さんは退職後に一度、転職活動をしたが、返ってきたのは「化学系は就職先がほとんどありません」との言葉ばかり。しかし顧問サービスに出合った。サーキュレーション(東京・千代田)など4社と契約している。面談では生産管理でどんなことをしたのか、見かけの職歴だけでなく詳細に質問を受けた。潜在的なスキルに着目したのだろう、想定外の業種の企業を紹介されることが多く、面白いという。

 ◇  ◇

 柴田実さん(61)は転職を重ね、業種の違う4社の社員として働いてきた。人事、総務畑が長い。そこで人材大手、インテリジェンスの顧問サービスを知った。「幅広い人脈を利用して、各企業の新製品を売り込むきっかけとなるよう、知り合いに連絡をとる営業の発掘役になってはどうか」。思ってもみない提案だった。「今は夜が完全に自由なのがうれしい。勉強会や飲み会に現役時代よりもよく出られ、さらに人脈が広がっている」と柴田さんは話す。

 シニア人材には経験やスキルがある。だが、転職では収入や働く時間の長さ、新たな企業文化に溶け込めるかなどに悩む人は多い。自分のスキルを意外な形で生かす「顧問」が、シニアの無理のない働き方として広がりそうだ。

(相川浩之)



ドイツ、労働生産性は日本の1.5倍 「残業口座」ためて休める 女性キャリア形成の切り札に 2015/12/07 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のくらし面にある「ドイツ、労働生産性は日本の1.5倍 「残業口座」ためて休める 女性キャリア形成の切り札に」です。





 ドイツの1人当たりの平均年間労働時間は日本より350時間ほど短い。それなのに1時間当たりの労働生産性は日本のほぼ1.5倍という。いったいドイツの人たちはどんな働き方をしているのか。ここ一番という勝負どころではとことん働き成果をあげながら、休息をしっかり取る。そんな働き方が定着しているドイツの先進職場を訪れた。

 「残業で働いた時間は口座に貯蓄しておき、後で休暇として使います」。ドイツ南部のシュツットガルト中心部から車で北西に15分ほどにある独ボッシュのフォイヤバッハ工場。自動車部品などの顧客営業部門でプロジェクト・マネジャーとして働くダビット・バイヤーさん(38)は自らの働き方をこう説明する。

 口座とは「労働時間貯蓄口座(ワーキング・タイム・アカウント)」を指す。残業や休日出勤など所定外の労働時間を従業員が社内口座に積み立て、後で有給休暇などに振り替えられる仕組み。残業代でもらう代わりに有給休暇に振り替え、繁忙期を避けて休む人が多い。ドイツでは従業員250人以上の事業所の約8割に普及し、デンマークなどにも広がっているという。

 バイヤーさんは今は繁忙期で、普通に働いていても口座に労働時間がたまる。余裕のある時期になったら「娘たちと過ごしたり、長期休暇に充てたりする」という。休んでも「給料が減らないから安心して休める」。

 口座に積み立てられる時間数や休暇に振り替えられる清算期間などは勤務先や雇用契約の内容によって違う。ボッシュのフォイヤバッハ工場では通常180時間まで貯蓄でき、「育児や介護のほか、資格を取る勉強や旅行などに充てる人がいる」とローランド・ビューラー人事担当副部門長は説明する。

 とはいえ有給で休む権利をもらっても、実際に休めなければ働き損になってしまう。そうならないためにどんな工夫をしているのか。同社のIT(情報技術)システムを統括する女性シニア・マネジャー、シューレ・ドアンさん(36)は「フレックスタイムや在宅勤務などを皆が利用することが前提。時間や場所に縛られた従来の業務の進め方を見直すことが重要だ」と強調する。

 管理職自らが率先して柔軟な働き方をする職場では「互いに気兼ねなく休めるし、多様な働き方が当たり前になる」と販売担当のボス・ミヒャリーナさん(38)は話す。

 ◇  ◇

 独ダイムラー本社では経営幹部を除き、ドイツ国内で働く約17万人の従業員が労働時間貯蓄口座を持つ。中でも、育児などで時間に制約のある働き方しかできない女性社員には、労働時間貯蓄制度はキャリアを諦めず幹部を目指す切り札になっている。

 シュツットガルトの本社で海外向けバンを商品化するプロジェクトのマネジャーとして働くウスレム・ヤーウスさん(34)は総合職だが「毎週金曜は休み」という。2012年に転職してきた当初はフルタイムで働いていたが、第2子を産み1年間の育児休業を経て3月に復職してからはフレックスと短時間勤務を組み合わせて週4日働く。残業することがあったとしても、フルタイムで働く人のように口座に労働時間がたまる。

 ダイムラーでは「仕事で成果を上げたいし、育児もちゃんとやりたい」とヤーウスさんのように短時間勤務で働く女性社員は3割を超える。同社のチーフ・ダイバーシティー・オフィサー、ウルズラ・シュワルツェンバルトさんは「若い世代ではワークライフバランスを重視する男性が最近増えている」と柔軟な働き方を人材獲得策としてもさらに浸透させる方針だ。

 ◇  ◇

 経済協力開発機構(OECD)によると、ドイツの1人当たりの平均年間総実労働時間は1371時間と日本(1729時間)より350時間ほど短い。労働時間1時間当たりの生産性は60.2ドルと日本(41.3ドル)のほぼ1.5倍に相当する。米オンライン旅行会社の調査では、有給休暇の平均付与日数はドイツが30日、日本が20日。しかもドイツが全部取るのに対し、日本は12日の消化にとどまる。

 日本では週40時間、1日に8時間を超えてはならないという労働時間の制限がある。労使合意に基づく届け出があれば残業を認められ、雇用主は割増賃金を支払う。今の制度でも残業時間を有給休暇に振り替えられる仕組みはあるが、月60時間を超えた場合に限られる。

 慶応義塾大学の鶴光太郎教授は「より一般的な制度にすべきだ。労働時間貯蓄制度は働き方の柔軟性を高め、働く人たちが気兼ねせず自発的に有給休暇を取ることにつながる」と指摘している。

(編集委員 阿部奈美)



いじめ 親はどうする? 我が子守る姿勢 示して 証拠は保存/学校以外の居場所を 2015/11/25 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のくらし面にある「いじめ 親はどうする? 我が子守る姿勢 示して 証拠は保存/学校以外の居場所を」です。





 子どものいじめがとまらない。全国の小学校が2014年度に把握したいじめは過去最多を更新した。我が子がいじめを受けたとき親は何ができるのか。解決のために親が取るべき具体的な行動は何か。日経BP社の共働き世帯向け情報サイト「日経DUAL」から、専門家の意見を紹介する。

小谷川元一さん。子育て・教育支援スペース「こたにがわ学園」理事長。公立小や教育委員会で25年勤務。いじめ解決に力を注ぐ。

武田さち子さん。教育評論家。いじめ問題に取り組む。NPO法人「ジェントルハートプロジェクト(GHP)」の理事を務める。

 我が子がいじめを受けていると知ったとき、まず取るべき行動は何か。「いじめた相手やその親に直接言うことではない。まずは学校に相談して」。こう話すのは、教員としての長年のキャリアを生かしながら、児童自立援助ホーム「こたにがわ学園」を運営する小谷川元一さんだ。

 相談するタイミングは、子の年齢やいじめのレベルによっても異なる。「子どもが幼く、誰かにいじめられたと泣いて帰ってきたときは、一日でも早く担任に連絡してほしい」と小谷川さんは言う。

◇ ◇

 子どもがもう少し大きければ、意思も尊重したい。いじめ問題に取り組むNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」理事の武田さち子さんはこう話す。「親にようやく打ち明けられたという子もいる。そこで結論を急ぐと、打ち明けたことを後悔し、二度と言わなくなる可能性もある。本人がどうしたいのかじっくり聞いてから、一緒に考えて行動することも大切だ」

 ただ、けがをして帰ってくるなど深刻な状況なら、即刻、学校に相談しよう。「こういうときは、まず子どもの安全を確保すべきだ。学校を休ませてから担任に相談するのがよい」(武田さん)

 次に取る行動は、いじめの証拠を記録しておくことだ。

 担任と面談する際には、事前の地固めも必要になる。「いじめの深刻さを理解してもらい、相手の言い逃れを回避するためにも、いじめの証拠はあったほうがよい」と武田さん。いつ、どこで誰に何をされたのかを記録し、嫌がらせメールや落書きされたノートなども残しておこう。

 そして、担任と面談することになったときには、夫婦そろって出向こう。「親がどれだけ真剣にわが子を守りたいと思っているのかを示すことができる」(小谷川さん)

 担任にいじめの深刻さと親の本気度を伝えたら、次は「学校側に解決までの具体策を提案してもらうとよい」と武田さん。「こちらから『こうしてほしい』と頼むと『できる、できない』と押し問答になる。でも学校側から提案させる形にすれば、解決策を実行する義務が発生するし、その成果も問える」からだ。

 迅速な対応を促すため「『1週間後に状況を聞かせてください』などと約束を取り付けるとよい。やり取りは記録として残すために、ノートに取ることを勧める」(武田さん)。

 親としては、相談相手が担任だけなのは心もとない。担任が頼りにならないと言っているようで申し訳ない、と思う必要はない。「学年主任や他の先生にも同席いただきたい」と伝えよう。

 担任が具体策を挙げず、何の手立ても講じないときは、いじめ防止対策推進法で設置が義務付けられる学校のいじめ対応チームに直接訴えよう。それでも学校側に対応してもらえないときは、弁護士会など外部にアドバイスを求めたい。「ここに言えば確実に解決するという場所はない。真剣に取り組んでくれる協力者を見つけることが解決のカギになる」(武田さん)

 解決できないときは、不登校や転校で「いじめから逃げる」のも選択肢の一つだ。

 小谷川さんは言う。「子が自殺という最悪の手段を選択したとき、多くの親が『なぜ無理やり学校に行かせたのか』と後悔しているのも事実。親は我が子がどれほど過酷ないじめにあっているか、想像力を働かせてほしい」

 小谷川さんは「子どもにとって、学校だけが心のよりどころになると、いじめにあったときにつらい。普段から習い事でも趣味でもいいから、学校以外の世界をつくってあげてほしい」と助言する。

◇ ◇

 一方、転校する際には配慮も必要だ。「近隣の学校への転校は『いじめられて転校した』と噂になりやすい。祖父母や親戚のところへ住所を移すなどの工夫をし、離れた学校に転校させることも考えてほしい」(小谷川さん)

 ただ、結局のところ「いじめる者がいる」限り、いじめはなくならない。我が子をいじめる側に回さないのも大事だ。実は文部科学省の調査でも興味深い結果が出ている。最近のいじめは、被害者と加害者が入れ替わるように進行しており、小学4~6年生では約4割が被害、加害ともに経験しているのだ。

 「いじめられたときに親がきちんと子どもの気持ちに寄り添ってあげないと、結局、やられるよりやる側に回ったほうがいいと思い、いずれやる側についてしまう。そういうことも、親は心得ておきたい」(武田さん)

 「子育て観」を今一度見直し、いじめの加害者をつくらない。わが子をいじめから守るために親ができることを突き詰めれば、そこに行き着くのではないだろうか。



子どもと意見対立、どう解決 図解子育てで円滑対話 どんな気持ち? 想像/行動前向きに 2015/10/21 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のくらし面にある「子どもと意見対立、どう解決 図解子育てで円滑対話 どんな気持ち? 想像/行動前向きに」です。





 「嫌がっている子どもの習い事、やるかどうか冷静に話し合いたい」。子育てをしていると、子どもと意見がぶつかることがある。1枚の紙と鉛筆を使って互いの気持ちを整理する「図解子育て法」について、考案者の根本千里さんの活用法を日経BP社の共働き世帯向け情報サイト「日経DUAL」から紹介する。

おけいこの空手をやるかどうか。小3の子と図解しながら話し合ってみる

根本千里さん

 「お母さんはこうしてほしい」「ボク/ワタシはこうしたい」。こういった対立は、親子といえども違う個人同士ですから起きますよね。ましてや親の立場での子どもへの思いも子どもにとったらありがた迷惑だったり、むしろお母さんはイヤなことを押し付ける相手だなんて勘違いが起きたりすることもあります。

 そんなとき図解子育てを使ってみると、勘違いや誤解を避けて2人で生産的なアイデアを出せるようになります。

 図の例をみてみましょう。子どもの「空手はやりたくない」とお母さんの「空手をやってほしい」という対立が出発点です。「痛そうだからイヤ」「心身共に成長できるはず」。理由をツリーに書き込みながら、互いに話をします。理由を述べ合ったら、次はどうするかの提案です。

 第1案は「空手をやってみる」。その結果を自分の気持ちを想像して表情マークにして書き込みます。子どもは「つまらない」と無表情のマークです。第2案の「何もしない」を選ぶとお母さんは子どもの体力が心配で「泣き顔」マークとなります。それでは2人ともニコニコになるには。新しいアイデアを出すのが円満解決の秘訣です。

 このお母さんは「体力向上のために空手をやってほしい」という思いが一緒に話していくうちに、「体力向上=空手」という思い込みを持っていたことに気づいて柔軟になれた話をしていました。お子さんも「ママは自分の体のことを考えてくれているんだ」ということが伝わったことで安心感を取り戻し、前向きに新しいチャレンジについて考えられたようです。

  ◇  ◇

 口だけで言い合っていると、自分の意見を通したいという気持ちが強くなります。ですが図解を使って話し合っていると、新しいアイデアを出すことをゲーム感覚のように楽しめます。自然と「では今回はこちらが折れてみましょうかね」なんていうことが起きたり、親の思いを一方的に押し付けることで子どもの個性が発揮されにくくなることも避けられたりします。

 人の考え方や行動はほとんどパターン化されていて、そのパターンは幼少期に形成されると言われています。

 例えば、誰かに何か否定的なことを言われたとき、それがショックになって次のアクションに移れなくなる人もいれば、反対に妙にやる気になる人もいますね。

 このパターンは幼少期に出来上がり、そして大人になっても影響している場合もあります。何を感じて何を選択したかによって次の結果が変わるわけですから、出来事そのものが問題ではないのですね。図解子育ては、何か子どもにとってネガティブだと感じるような出来事があっても、子どもが何を感じているのかを把握し、次の選択肢を前向きなものにサポートしていくことができます。

 今回の例でいけば、子どもには空手は嫌だという思いや、痛そうで怖いとか、不安などの感情があり、親には体のために運動してほしいという思いや、心配するという感情があります。

 しかし、この「心」というのは個々人の価値観が影響します。だから対立が起きるわけですね。そのときに心を図解することで自然と相手の心を感じることができるし、親はその子どもの怖さや不安さを分かったうえで、成長につながるように子どもの心を育てていく役割を担っていくことになります。

 この子どもの心を感じて育てる力は共感力そのものです。共感は相手の立場や状況を理解しないと生まれませんし、共感力があるとコミュニケーションがスムーズになります。図解子育てを取り入れていくことで、自然と心を感じて育てる力(共感力)が親自身にも、子ども自身にも定着していきます。

  ◇  ◇

 心を感じて育てる力は、自分がこれまで当たり前に持っていたパターン化された考え方や行動を見直して、新しい自分に出会う可能性を広げてくれます。子どものアイデアはとても柔軟です。図解を挟んで心を感じながらも感情的にならず冷静にやり取りしていると、子どものアイデアに「へーその発想は新しいね」と驚かされることがたくさん増えていくことと思います。

 子どもとのコミュニケーションは新しい発見の連続。子どもの気持ちの発見、親としての思い込みの発見、新しいアイデアの発見……。たくさんの「へー」「ほー」という発見があると、コミュニケーションはもっと楽しくなります。

 忙しい中の子育てを楽しむためにも、子どもにとって「お母さんと話をするのって楽しいな」という記憶になる習慣の一つとしても、親としては「あら、こういう考え方ややり方って前向きでいいわね」と思えるキッカケの一つとしても、5分でできる図解子育てを使ってみませんか?

 =詳細は日経DUAL(http://dual.nikkei.co.jp)9月25日付で

 ねもと・ちさと 図解子育て考案者。1児の母。2011年コンサルタントとして独立。ワーキングマザースタイル研究所(東京・港)理事。



裏からアイロン、パリッと クリーニング、仕上げ指南 沼能和男さん 2015/09/02 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のくらし面にある「裏からアイロン、パリッと クリーニング、仕上げ指南 沼能和男さん」です。





 パリッとアイロンがけしたワイシャツは、着ても見ても気持ちがいい。だが自分でかけるとなると、思わぬアイロン線がつくなどなかなか難しく、おっくうになりがちだ。横浜市から優れた職人「横浜マイスター」の認定を受けているクリーニング師の沼能和男さんは、裏からかけるのがコツだという。表に比べて凹凸が少なく、アイロンを滑らせやすいからだ。

 ――アイロンのかけ方は知っていても、きれいに仕上げるのは難しいという人は少なくないのでは。

 「アイロンを持たない方の手でシャツをピンと張りながらかけるのがコツです。家庭では普段、綿素材は高温設定が多いですが、プロほど速くかけられないので、熱を持ちすぎて生地を傷めやすい。中温、つまり170~180度くらいが適温でしょう」

端から中央へ

 「前身ごろや背中は、まず裏側をかけます。表側にはボタンやポケットがありますが裏にはないのでかけやすいのです。裏だけでも十分きれいになります」

 「アイロンをかける順序は『面積の小さい部分から』とよくいわれます。襟、袖口、袖と進み、肩、背中、前身ごろというのが定番パターンですが、私は前ボタンの裏側から始めます。最後に前身ごろをかけるとき、ボタン裏をかけておくとボタン周りの仕上げが楽だからです。肩の部分も初めにかけておきます」

 「それから袖口に移ります。袖口は裏側をかけてから表側をかけます。アイロンは端から中央に向かって走らせます。襟も同じです。袖口や襟は生地が二重になっているので、中央からだと、端の方で生地がよれてしまうからです」

 「袖全体をかけるときのポイントは、袖下の縫い目を合わせること。空いた方の手で縫い目を押さえ、袖口から脇に向かってアイロンをかけます。それから袖全体を平らにならして縫い目から上に向かってアイロンをかけると、肩に滑らかな線がつきます」

 「カフスタイプの袖の場合は、袖口を合わせて、アイロンの重さを利用してプレスします。このとき縫い目と違う線ができますが、それで構いません」

 ――背中や前身ごろはきれいに広げないと、アイロンで思わぬ線をつけてしまうことがあります。

 「シャツを広げ、背中の部分がしわにならないように手のひらで伸ばします。アイロンは内側をかけます。襟を引っ張って裾の方から真ん中に向かってかけます。このときタックがあれば、きれいに折ってアイロンを軽く押し当てます」

 「最後は前身ごろです。背中の上に重ねてシャツの真ん中、第4ボタンを留めます。アイロンを動かすとき前身ごろが動かないようにするためです。背中にしわが寄っていないことを確かめながら、ボタンがついている方からかけます」

 「シャツの一番目立つところは襟から胸元にかけて。この部分がきれいに仕上がっているかどうかで印象が違ってきます。襟をつまんで立たせながら、襟周りをアイロンで押すと、きれいに襟が立ちます」

 ――スタンド式のアイロン台では、前身ごろの片側を台に引っ掛ける方法がよく紹介されています。

 「スタンド式はそれで構いません。スタンド式でない平台を使う人は、シャツが全部乗るような縦横の長さが共に70~80センチぐらいある広い台を選びましょう。台が狭いと、アイロンをかけるときにシャツをずらさなければならず、しわがつくことが多いからです」

モノへの愛着生む

 ――市民講座や小中学校でアイロンがけのコツを指導しています。

 「高校を卒業して、そのまま家業のクリーニング店で仕事を始めました。父の隣で見よう見まねで覚えました。最初は簡単な袖しかかけさせてもらえなかった。一通りできるようになったかなと思ったのは22~23歳のころです」

 「最近は形状安定シャツの普及などで、家庭でアイロンがけをする人は少なくなりました。面倒くさいと感じる人もいるでしょう。でもアイロンをかけていると、小さなしみを見つけたり、糸のほつれ、傷み具合などに気づいたりします。そんな小さな発見をきっかけに、モノを大切にしよう、愛着を持って使っていこうという気持ちになってほしい。そうすれば、おのずと日々の暮らしや人と人とのつながりを大事にする心も育っていくのではないでしょうか」

 ぬまのう・かずお 神奈川県出身、68歳。高校卒業後、家業のクリーニング店で仕事を始める。2005年、横浜市が優れた技能職者を認定する「横浜マイスター」に。公民館や小中学校などでアイロンがけやしみ抜きの講習、指導にもあたっている。