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こころの健康学 レッテルに縛られないで 2018/4/23 本日 の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のこころ面にある「こころの健康学 レッテルに縛られないで」です。





 先日インターネットを見ていたら、最近の新入社員の驚いた行動という特集が載っていた。どれも「ある、ある」で興味深く読んだが、新年度が始まると、会社でも学校でも新人の言動に関心が向く。

イラスト・大塚 いちお

 だいたいは「昔と違って今の若者は……」という論調になりがちだが、意外と同じようなことが言われ続けているように思う。私たちが若いときは大人になりきれない若者が増えた「モラトリアム人間の時代」などの表現が流行した。

 その後も「シラケ」や「オタク」などの言葉が使われたが、全体の流れとしては、若者が組織や社会に積極的に参加しなくなっていると考える年配の人が多いと思う。そういわれた若者が年を取ると、また同じような感想を若者に持つようになる。

 これが時代によって変化している若者像なのか、年齢によって変わる若者への見方なのか、私にはよくわからない。ただ、私たちはレッテルを貼ることが好きなようだ。私たち精神科医の世界でも「新型うつ病」という言葉が一時よく使われた。「うつ病」という診断名を盾にして仕事を休んで旅行に行くなど、自分勝手な生き方をしている人を指す表現で、そうした若者が増えているといわれた。

 もっとも職場のメンタルヘルスに長く携わる私には、そうした人は昔からいて、うつ病の治療は治療としてきちんと行い、労務管理は労務管理としてきちんと行えばよいことのように思えた。人にはそれぞれ個性がある。レッテルにあまり縛られないで、一人ひとりの個性を理解して接することが大事だ。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



こころの健康学 新年度 不安でも一歩前へ 2018/4/2 本日 の日本経済新聞より

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 3月に終わった五輪・パラリンピックを見て、たとえ限界を感じても思い切って一歩を踏み出し、自分の力を生かすことの大切さを学んだ。私にとっては本欄の執筆もその一つだった。

イラスト・大塚 いちお

 2001年。こころの健康をテーマにコラムを書いてほしいという依頼を受け、果たして務まるかどうかと不安になった。私は精神科医で、うつ病や不安症など、こころの不調については一応専門家だが、こころの健康についてそんなにきちんと考えたことはなかった。

 こころの健康というテーマをあえて引き受けることにしたのは、私自身もこころの健康について考えることの大切さをどこかで感じていたからだと思う。おっかなびっくりで原稿を書き連ねていったが、今になって考えると、この新しいテーマに向き合ったのがよかったのだろう。読者の方々に支えられながら、現在まで続けることができた。不安を感じながらも一歩を踏み出す貴重な体験となった。

 こうした体験を書きたいと考えたのは、新年度を迎えて新しい職場、学校やクラス、新しい土地で生活を始め、不安を感じている人が少なくないだろうと考えたからだ。慣れない環境で、不安や緊張を感じるのは自然なこころの反応だ。それも健康な反応で、そうした気持ちを感じるからこそ、丁寧に仕事や勉強に取り組んだり、人と交流したりできるようになる。

 一見ネガティブに思える気持ちにも、それを感じる意味がある。そうしたときに大切なのは、不安になったからといっておびえるのではなく、一歩足を踏み出す勇気だ。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



こころの健康学 安心できる環境作りを 2018/3/19 本日の 日本経済新聞より

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 3月は月別自殺者数が最も多く、厚生労働省は自殺対策強化月間と定めて様々な啓発活動をしている。とくに最近は、若い人たちが自ら命を絶つことが多い。そこで、行政や関係団体は中学や高校でSOSを出す力を伸ばす支援に力を入れている。

 学校に限らず、企業でも、人生経験の乏しい若者は、1人で自分の世界に閉じこもって思い悩み、場合によっては自分を傷つけることになる可能性が高い。人に相談することを恥ずかしいと考えたり、敗北感を抱いたりして、相談できなくなることが少なくない。この現状を考えると、相談する力を育てる活動には大切な意味がある。

 その意義は認めたうえで、あまりSOSを出すことを強調しすぎることには、若干の違和感を覚える。SOSを出せないのは若者の責任だという間違った印象を与えかねないからだ。

 私自身も思春期のころ、思い悩むことが多く、社会を批判的にみるような態度を取り、成績も極端に悪かった。それでも学校を休まなかったのは、一人でいるときよりも、学校にいるときの方が楽しかったからだ。自分の存在を受け入れてくれるという安心感が学校にはあった。悪ふざけをしても受け入れてくれる仲間がいたし、温かく見守ってくれる教師がいた。

 SOSを出す力が極端に不足していても、自分が受け入れてもらえていると感じられれば、もう少し自分なりに頑張ってみようと考えられるようになる。そうした体験から、SOSを出す力を育てることはもちろんだが、SOSを出せなくても安心できる環境を作ることもまた大事だと考えている。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



こころの健康学 問題縦に並べ 一番前に集中 2017/9/4 本日の日本経済新聞より

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 来週は自殺予防週間だが、自殺対策の講演会で何度かご一緒した気象キャスターでエッセイストの倉嶋厚さんが8月に亡くなった。93歳だった。倉嶋さんは妻を亡くした後に深刻なうつ病になり、自ら命を絶とうとしたこともあったという。そのときの苦しい体験をもとに書いた著書『やまない雨はない』がベストセラーになり、精力的に講演もこなしていた。

イラスト・大塚いちお

 倉嶋さんの著作や講演は、体験の裏づけがあるのでとても説得力があり、聴衆に力を与えるものだった。なかでも、悩んでいるときには問題を縦に並べるという助言はわかりやすく、すぐにでも実践できるので、私の講演でも紹介することが多い。

 倉嶋さんは子どもの頃、あれこれ考えて悩むことが多かったらしい。それを見ていた父親が、問題を縦に並べて取り組むとよいとアドバイスしたという。

 悩んでいるときは一般に、複数の困りごとを抱えていることが多い。その複数の問題を横に並べてあれこれ考えている。しかし、それではひとつの問題に集中できない。こころの力が分散して効率的に問題に取り組むことができなくなるからだ。そうすると焦る気持ちが強くなって集中力が落ち、ますます問題に取り組む力が失われていく。

 そのようなときには、問題を縦に並べて、一番前の問題から取り組むとよいという。そうすればそのひとつの問題に力を集中できて、問題を解決できる可能性が高くなる。それが自信を生み、次の問題に取り組むことができるようになる。じつに実践的な教えで、私自身も生活のなかで悩んだときに使わせてもらっている。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



こころの健康学 怒り 瞬間的な反応抑えて 2017/7/10 本日の日本経済新聞より

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 ここのところ何回か、乗客同士のトラブルで電車が遅れる体験をした。満員電車の中で皆、気が立っているのかもしれない。何かのきっかけで怒りに火がつき、それが相手に怒りの反応を引き起こし、いわゆる乗客トラブルに発展したのだろう。

イラスト・大塚いちお

 じつは私も、電車の中のちょっとした出来事で腹立たしく感じることが少なくない。隣に立つ人のバッグが体に触れたり、駅で扉が開いたときに急いで出ようとする人にぶつかられたり、ほんのささいなことでもイラッとする。

 混雑ストレスという言葉があるが、私たちには安心できる個人的な空間があり、その中に侵入されるとストレスを感じやすくなる。ささいなことでも大きな問題のように感じ、強く反応してしまうことになりやすい。

 しかし、そこで相手に怒りをぶつけても良いことはない。相手の怒りを引き出すことになるだけだ。一般に人間関係では気持ちが伝染しやすく、怒りのようなネガティブ感情は相手に同じ反応を引き起こしやすいことがわかっている。情緒的な態度は相手に同じ反応を引き出す傾向があるのだ。

 だから、怒った表情になったり、きつい態度を取ったりすると、相手も同じように怒った表情になり態度がきつくなる。お互いの怒りの感情が高まり、衝突につながる。

 そうしたときには、自分の反応を少し遅らせるように工夫してはどうだろうか。瞬間的な反応は感情に流されていることが多い。だから、サーフィンのようにその感情の波をやり過ごして、その上で次の行動を考えるようにすることが役に立つ。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



こころの健康学 目を閉じ10分、疲れ癒やす 2017/4/3 本日 の日本経済新聞より

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 日本の高校生は、他の国の高校生と比べて、授業中居眠りをすることが多いという調査結果が話題になった。しかし、振り返ってみると、私も高校生時代に居眠りをよくしていたので、この問題は今に始まったことではないのかもしれない。

 調査を報告した記事のなかには、居眠り対策として、講義中心の座学による授業ではなく、参加型の授業に変えていってはどうかと提案しているものもあった。たしかに生徒たちも、自分が授業に積極的に参加できれば眠気がとれるだろう。

 もうひとつ役に立つのが昼寝だ。昼食後に短時間の昼寝をすると眠気がとれて、午後の作業がはかどることがわかっている。私たちの眠気は12時間周期で強くなるとされている。そのピークが午前2時と午後2時だ。そのため午後2時の前に昼寝をすれば眠気がとれる。

 ただ、眠りが深くなると、起きた後にだるさが残ってしまう。そうならないようにするには、眠る時間を短くするのがよい。眠りが深くなる前に起きるのだ。昼寝の時間は10分から15分、長くても30分以内にしなくてはならないとされている。それも座ったまま眠った方がよい。これも、深い眠りに入らないようにするためだ。

 さて、このように昼寝が良いと言われても、そう簡単に昼食後に眠ることができない人もいる。その場合は、静かに目を閉じて椅子に座っているだけでも疲れがとれる。私たちは多くの情報を目を通して受け取っている。目を閉じることでそうした情報から距離を置くことができ、疲れがとれてくる。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



英語と向き合う 鳥飼玖美子さんに聞く 自分の言葉で思い伝える 学びたい時が好機 2016/06/11 本日の日本経済新聞より

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 いまの英語教育は方向が間違っている

 英語教育研究者の鳥飼玖美子さんが今年2月に出した「本物の英語力」(講談社)が版を重ねている。英語を話せる人たちが社会的に優位に立つ「英語格差」の広がりを指摘し、新たな発想に基づいた英語学習法を提唱する。

 「『英語格差』。嫌な言葉ですが、残念ながらこれは現実です。背景にはグローバル化を受けた学校の英語教育の混乱があります。かつての英語教育は、読み書きはできても、話せない、聞き取りができないのが欠点とされていました。『使える英語』をと、学習指導要領が改訂され、1993年から学校英語教育は、話す、聞くに重点を置いたオーラルコミュニケーションに力を入れることになりました。ところが、発音や聞き取りは多少良くなったものの、読み書きの能力は落ちています」

 「帰国子女やバイリンガルがもてはやされますが、幼いときに米国で生活して身に付けた英語がそのままビジネスなど社会の場で通用するかと言えば違います。いまは生活でも仕事でもメールでのやり取りが多くなってきましたから、話し言葉だけでなく、読み書きがより重要になっています」

 「英語は『国際共通語』なのだと言い続けています。英語は母語ではなく、第2言語という人たちとコミュニケーションに使うための言語なのです。英語とは聞こえないような発音や、間違いだらけの文法ではコミュニケーションは成立しませんが、英語が母語のネイティブスピーカーのように話す必要はまったくありません」

 国を挙げて取り組んでいる「グローバル人材の育成」に疑問を呈する。

 「外交交渉や海外商談で負けないよう、英語でのコミュニケーション能力を高めようということなのでしょう。英語力が付けば国際競争力が高まると思っている。しかし、これは大きな勘違いです。言い負かされてしまうのは、なにも日本人の英語力が不足しているからではありません。姿勢の問題なんです」

 「相手と粘り強く意見を戦わせていく。日本人はこれが苦手です。あきらめが早い。徹底的にやりあうことはしない。あきらめの早さは私が同時通訳をしていたときに常に感じました」

 「奥ゆかしさは日本の文化なのかもしれません。すばらしいと思います。しかし、自己主張を良しとする文化で育った人たちとやりとりをする場合には、弱みになります。日本の教育では、説き伏せる、反論するといったことを学んでいません。英語力が高まっても、こうした姿勢が身に付いていなければ勝てません。英語が流ちょうに話せるからといって、それがそのまま世界に通用する人材とはならないのです」

 英語を「草の根交流」の道具にし、思いを伝える

 「外国語は生涯学習であり、私はいまだに学んでいます」と鳥飼さんは言う。習得は容易ではない。自分の学習歴を振り返り、「挫折」の2文字が浮かんでくる人もいるだろう。

 「学生ならばともかく中高年以上では、英語で苦労するのはもうたくさんという方もいるかもしれません。仕事で必要ならばともかく、普通に生活していれば、英語はいらないと。でも、これからの人生で英語との思わぬ出合いがあるかもしれない。いまや海外から年間2000万人を超える人たちが日本を訪れる。2020年には東京オリンピック・パラリンピックがあり、異文化・異言語との接触は避けられない。英語と無縁の生活を送ろうとしても難しいのではないでしょうか」

 「先だって米国のオバマ大統領が広島を訪問しました。米国では原爆投下が戦争終結を早めたと教えられそう信じ込んでいる人が多い。しかし、日本人としてはとても納得はできないでしょう。日本人の考えは違う。米国人と話す機会があったら、そう英語で伝えたいと思いませんか。日本人が英語を学ぶのは、外国人に自分の意見や考えを伝える、日本について理解してもらうところに意味があるのではないでしょうか。草の根交流ですね」

 英語と無理なく付き合っていくにはどうすればいいのか。

 「まず発想を変えましょう。ネイティブスピーカーを目指すのではなく、自分が主体的に使える英語を身に付けることを目指すのです。文法の基本を守り、わかりやすく、ゆっくり、はっきり話す。相手の英語が分からなくても、自分が悪いと思わない。『早すぎてわからない』などと正直に伝えればいい。逆に話していて単語が出て来ないときは『ちょっと待って』と言えばいい」

 「世界中の人がお国なまりの英語を使っています。国際共通語はそれでいいんです。コミュニケーションは双方が努力して成立するもの。完璧主義は捨てましょう」

 「年齢も関係ない。『いまさら』ということはありません。特にいまの50代以上の方々は既に学校できちんと文法を学んでいる。自身が思っている以上に英語の基礎能力は高い。インターネットの時代、多様な学び方ができます。『やりたい』と思ったときが、始めるときです」

(シニア・エディター 大橋正也)

 とりかい・くみこ 東京生まれ。上智大学外国語学部卒業。英サウサンプトン大学大学院博士課程修了。立教大学教授などを経て中央教育研究所理事。NHK Eテレ「ニュースで英会話」の監修・講師を務める。著書に「英語教育論争から考える」「戦後史の中の英語と私」「国際共通語としての英語」など。



こころの健康学 思い込みの怖さ 物差しの違い気づけず 2016/05/29 本日の日本経済新聞より

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 最近、働く人のパフォーマンスの向上やメンタル不調の予防を目的に活動しているビジネストレーナーの人たちが講話のなかで、マルハナバチを引き合いに出しながら「思い込み」の力について話をすることが多いと聞いた。

 その話を聞いて知ったのだが、マルハナバチは、航空力学の理論では飛べるはずがないと考えられていたという。もしマルハナバチが、自分は空を飛べないと考えていたとすれば、とうてい飛ぶことはできなかっただろう。いや、空を飛ぼうという発想さえ出てこなかったかもしれない。

 逆にいえば、自分は空を飛ぶことができないはずだという航空力学の理論を知らなかったからこそ、マルハナバチは空を飛ぼうとしたし、実際に飛ぶことができたのだ。

 私たちは、思い込みによって、本来ならできることをできないと考え、せっかくの可能性をつぶしてしまっていることがよくある。

 同じ「飛ぶ」という現象でも、飛行機のように羽が固定されている物体が揚力を使って飛ぶ場合と、マルハナバチのような昆虫が羽を自在に動かして空中を飛ぶ場合とでは、飛ぶメカニズムが違っているという。そもそも飛行機とマルハナバチとでは大きさが全然違う。そこにも、メカニズムの違いが隠れている。

 思い込みの怖さは、すぐにわかる幾つもの違いに気がつかないままに全く違う物差しで判断して、結論を決めつけてしまっているところにある。一方的な思い込みから解放されれば、私たちは、自分本来の力を発揮できるようになる。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



こころの健康学 若者による自殺対策 無理に話さなくていい 2016/04/24 本日の日本経済新聞より

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 私が協力している新宿区の自殺対策の担当者が交代になると連絡を受けた。熱心な担当者だっただけに残念な思いがしたが、この時期、人事異動はやむを得ないことなのだろう。

 その担当者らと昨年取り組んだテーマのひとつに若者対策がある。都市部では若い人が自ら命を絶つことが増え、死因のトップにもなっている。対策を考えようと、若者を中心にした検討チームが発足した。

 この検討会での体験は新鮮だった。いま考えれば当たり前のことだが、私や自治体の職員が考える対応策と、若者が考える対応策がかなり違っていた。私たちが提案するアイデアでは若者の心はつかめないと、何度もだめ出しを受けた。そうした議論を通してできあがったのが、「一人で悩んでいるあなたへ」という二つ折りのリーフレットだ。

 表紙には「何を話しても大丈夫」とか「話すだけで、少し楽になれた」といったメッセージが書かれている。一人で閉じこもって悩んでいる若者へのメッセージだ。一方で「無理に話さなくてもよい雰囲気に救われた」という言葉も載っている。私たちは若者に、相談をするように無理強いしがちだ。何でも口にして相談しなければならないというプレッシャーを感じさせすぎるのも問題なのだ。

 リーフレットには、自ら命を絶ちたいと考えるほど悩み、それを乗り越えた若者の体験が載っている。悩みを乗り越えた同世代の若者の存在や工夫を知ることが先に進むエネルギーになればと考えてのことだ。若者が中心になって作っただけに、とても良いものができたと私は考えている。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



こころの健康学 将来の自分を見つめる 失敗を糧に 2015/12/13 本日の日本経済新聞より

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 日本ポジティブサイコロジー医学会の学術集会が先日、都内で開かれた。心理的要因が遺伝子の働きに与える影響や大規模な疫学調査など学術的な講演が多かったが、生活の中で生かせる話も聴くことができた。

 印象的だったのが、北京五輪の陸上男子400メートルリレーで銅メダルに輝いた朝原宣治氏の講演だ。自分の体験をもとにメダルを取るまでになった経緯を紹介したが、その道は決して平たんではなかったという。

 とくに実力トップに近づいたときの疲労骨折は精神的にもショックだったそうだ。足に痛みを感じていたが、そのまま練習を続けて骨折してしまった。もっと早く変調に気づくべきだったと自分を責めたこともあったと思うが、朝原氏はその「失敗」を糧に、さらに成長していった。

 それは、自分は一流選手になりたいというしっかりとしたイメージができていたからだという。何か問題が起きたとき、私たちはつい目の前の問題に目を奪われがちになる。そのとき、同時に将来の自分に目を向けることが、先に進んでいくために大事なのだ。

 朝原氏は一般社団法人アスリートネットワーク(大阪市)という組織で、若い人たちの指導に当たっている。朝原氏のこころに触れることも、若い人たちの財産になることだろう。

 じつは、講演の途中で流すはずだった五輪の映像が、機械の不調でうまく流れなかった。担当者が頑張ってようやく最後に映像が流れたが、話を聴いた後だけにさらに感動的だった。失敗は失敗に終わらないということを学会会場で経験できた。

(認知行動療法研修開発センター

大野裕)