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2014/10/06 本日の日本経済新聞より 「エコノフォーカス 専業主婦優遇 真の壁は「130万円」 社会保険料が発生 手取り急減、改革急務」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞14版の3面(総合・経済)にある「エコノフォーカス 専業主婦優遇 真の壁は「130万円」 社会保険料が発生 手取り急減、改革急務」です。

この記事が興味深いのは、女性の雇用を増やすという政府目標の意気込みの裏腹で、主たる生計を担っていない労働者、この記事で言う専業主婦について、引き続き、労働時間の抑止につながる制度がなかなか撤廃されない点である。

 女性が多様な働き方を選択しやすいように、税や社会保障の仕組みはどうあるべきか。夫の税負担が軽くなる配偶者控除の基準となる「年収103万円の壁」が取り沙汰されるが、真の壁は別にある。(山崎純、石川潤)

 配偶者控除が「男性は仕事、女性は家庭」という価値観を生み、女性の社会進出を阻む壁になっていると、しばしば話題になる。

 たしかに、配偶者控除は、専業主婦世帯の所得税を軽くする優遇税制だ。主婦がパートをしている場合でも年収が103万円以下ならば、夫は38万円の所得控除が受けられる。夫の年収が600万円なら税負担が7万円ほど減る。全国で1400万人が適用を受け、減税額の合計は6000億円におよぶという。

 だが、主婦の年収が103万円を超えると、「手取りが減る」というイメージは誤解だ。

 政府は働いた人が不利にならないように何年も前に、税制を変えている。主婦の年収が103万円を超えても、夫の配偶者控除を一気にゼロにするのではなく、妻の収入が110万円なら31万円、120万円なら21万円、130万円なら11万円といったように、妻の収入が141万円に達するまで、緩やかに控除額を減らしていく仕組みだ。

 この結果、稼ぎの多い人の手取り額が稼ぎの低い人を下回る逆転現象は起きないように、少なくとも税制上は手当てされている。

 それでも、年収103万円で就労を抑える人が多いのも確か。厚生労働省の調査では、就業を抑える理由として「103万円の壁」を挙げた人は5割にのぼる。

 その理由は税制ではなく「民間企業の給与体系が問題」(三菱総合研究所の武田洋子チーフエコノミスト)と多くの有識者は指摘する。厚労省によれば、企業の3分の2は結婚している社員に上乗せ手当を支給している。内閣府の調査では8割の企業でこうした手当の支給基準が「妻の年収103万円以下」だ。

 国の制度としての問題は社会保険料を巡る「130万円の壁」にある。専業主婦はパート労働などの収入が130万円未満なら保険料を納めなくても年金や医療給付を受けられる。この金額を超すと、年金や健康保険の保険料が突然発生する。

 第一生命経済研究所の試算では、年収129万円のパート主婦がいる世帯は手取り収入が121万円増える。年収が130万円に増えたとたん、手取り増分は105万円となり16万円減る。元の121万円に戻るには、年154万円稼ぐ必要がある。

 長時間の「ただ働き」を強いられているとの実感を持ちがちだ。同研究所の星野卓也エコノミストは「働き手を増やすために改革すべきなのはむしろ年収130万円の壁」と指摘する。

 社会保障財政の悪化をふまえ、厚労省は専業主婦の保険料免除を廃止する制度改革を検討してきた。だが、年金保険料を納めずにすむ年収130万円未満の主婦は900万人以上。「いきなり大きな負担を負わせることは政治的に難しい」(厚労省幹部)

 政府は手始めとして2016年10月から免除基準を「年収130万」から「大企業に勤める年収106万円」に引き下げる。新たな「壁」ができる形だが、政府はこれを徐々に引き下げ、最終的には年収基準をなくし、全員に保険料を負担してもらいたい考え。税や社会保障制度から年収の壁がなくなり、働き方に中立的な制度になるには10年以上かかりそうだ。

2014/09/29 本日の日本経済新聞より 「エコノ フォーカス 円安でも輸出伸びぬ謎 高級車、値下げ困難/家電、競争力低下 世界需要、盛り上がり欠く」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞13版の3面(総合・経済)にある「エコノ フォーカス 円安でも輸出伸びぬ謎 高級車、値下げ困難/家電、競争力低下 世界需要、盛り上がり欠く」です。





 円相場は1ドル=109円近辺と2008年秋のリーマン・ショック前の円安水準に戻った。円安で企業の輸出競争力は高まるが、1~8月の輸出額は約46.9兆円と、リーマン前(07年1~8月)の9割に届かない。円安の追い風でも、なぜ輸出回復の足取りは鈍いのか。背景を探った。

 リーマン後の円高基調が円安に変わったのは12年秋。それから約2年間で円は対ドルで約3割下がった。05年1月~07年6月の前回の円安局面の下落率(約2割)と比べると今回の方が円安ペースは早い。

 円が下がると企業は輸出先で外貨建て価格を下げることができ、輸出数量を伸ばせる。実際、05年4~6月期から08年1~3月期まで物価変動の影響を除いた実質輸出(季節調整値)は前期比プラスが続いた。ところが今年8月の実質輸出は前月比0.2%下がり、四半期でも4~6月期まで2期連続で低下した。

 低迷の原因は大きく2つある。ひとつは輸出を引っ張ってきた自動車や電機産業の構造変化だ。

 自動車各社はリーマン後の超円高を受け生産拠点を海外に移した。影響はてきめんで、13年の自動車の輸出数量は07年と比べ3割弱も減った。この流れは足元まで続いている。今年1~7月期は円安で自動車輸出額は前年同期比5.1%増えたものの、数量は同1.4%減った。

 海外生産に移ったのは主に大衆車で、輸出の主力が高級車に変わったことも数量が伸びにくい一因だ。トヨタ自動車の海外生産比率は08年の約44%から15年は約65%へ高まる見通し。トヨタへの聞き取りから輸出台数に占める高級車レクサスの比率を推計すると07年の15%から14年1~7月は23%に上がった。

 高級車はブランド価値を保つため円安でも現地で値下げを控えることが多い。円安・現地通貨高で輸出企業の収益は増えるが、輸出数量は伸びにくい。8月の日銀統計で、契約通貨で見た輸送用機器の輸出物価は12年12月と比べ1.7%の下落にとどまった。前回の円安のピーク07年6月の輸送用機器の輸出物価が05年1月と比べ2.7%下がったのと比べ小幅だ。

 テレビや携帯電話など電気機器の輸出額は07年から13年までに3割も減った。自動車と異なり、海外生産比率はほとんど変わっていない。日本総合研究所の山田久氏は「日本企業の競争力低下が主因だ」と指摘する。

 電気機器は部品を輸出し、製品を輸入する傾向が強まっている。テレビや携帯電話、パソコンなど「情報通信機械工業」の国内出荷量に対する輸入品比率は14年4~6月期に約50%に達した。09年の約24%から2倍に膨らんだ。携帯電話は13年の輸入超過額が1.6兆円と07年の8倍強だ。

 輸出回復が鈍いもう一つの理由は、世界の需要の盛り上がりが弱いことだ。国際通貨基金(IMF)によると、世界経済の成長率は07年の5.3%に対し、14年は3.4%にとどまる見通しだ。 米国の輸入額は12年から足元までほぼ横ばいだ。シェールガス産出に伴い製造業が米国内に戻り、輸入が増えにくくなったとの見方も一部にある。日本にとって中国と並ぶ輸出先である米国の輸入が伸びなければ、円安でも日本の輸出は増えにくくなる。

 (森本学、杉本耕太郎)