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スクランブル 荒れる株価は宿命か マイナス金利下の「新常態」 2016/02/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合1面にある「スクランブル 荒れる株価は宿命か マイナス金利下の「新常態」」です。





 26日の日経平均株価は続伸し、年初から荒れに荒れた日本株市場はひとまず安定を取り戻したようにみえる。だが市場が予想する将来の株価変動率は高止まりしたままで、それは日銀が導入したマイナス金利とも浅からぬ関係がある。相場が荒れるのは日本株の宿命――。マイナス金利下で投資家は荒れる相場を「新常態」と受け入れるしかないのかもしれない。

 「落ち着いてきたようでも、まだ警戒は解けない」年初からの荒れ相場でパフォーマンスがさえないせいなのか、ある国内大手運用会社の日本株運用担当者はさえない表情だった。

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 市場参加者たちが相場波乱が収まったとは思っていないのは、日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)がなお高水準であることからも読み取れる。

 26日終値は34.09。12日につけた50.24からは下がったとはいえ、市場は日経平均が68%の確率で毎日2.1%(26日終値からは約340円)上下に振れると予想している計算になる。

 世界の主要市場のなかで、過去30日の日本株の変動率は年率44.7%で堂々のトップだ。中国の上海・深圳やブラジルなど新興国を上回る相場の荒れぶりに「日本株はなぜこれほど変動が大きいのかという投資家からの質問が後を絶たない」(UBS証券の大川智宏氏)のも、むべなるかな。

 輸出比率が高いため世界の景気変動の影響を受けやすいうえ、海外投資家のシェアが高く海外マネーの出入りで大きく動く――。日本株の変動率が高い理由は従来こう説明されてきた。いずれも正しいのだろう。そして、さらに株価変動を増幅する新条件が加わった。それがマイナス金利だ。

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 企業の理論株価は将来利益の合計を現在価値に割り戻して求められる。企業の利益成長がないと仮定した最も単純なモデルでは、理論株価は1株利益を割引率で割った値になる。

 割引率はリスクのない投資のリターンである長期金利(国債利回り)に、投資家が株を買うリスクの見返りに要求するリターンである「リスクプレミアム」を足して求める。そこにマイナス金利が登場し、日本株の株価算定の割引率を決めるベースとなる長期金利がマイナス圏に突入した。

 理論株価の算定式で考えると、1株利益とリスクプレミアムを一定とすれば分母の割引率の水準が下がり、株価は上昇する。だがそれと共に忘れていけないのは、リスクプレミアムが猫の目のようにころころと日々変動することだ。

 「マイナス金利下では割引率の水準が下がり、市場心理で決まるリスクプレミアムの振れが株価に大きな影響を与える」。大和証券の吉野貴晶氏はこう説明する。これは割引率と理論株価の反比例の関係を描いたグラフからも一目瞭然だ。

 世界景気という外部環境が落ち着いてくれば、相場もおのずと安定する――。この市場の経験則は正しい。ただマイナス金利下では理論上、株価の動きも変わってくるため、荒れる相場はそう簡単には元に戻らないかもしれない。マイナス金利は投資家にそんなうんざりする事実に向き合うことも迫っている。

(証券部次長 川崎健)



スクランブル 動くか「100兆円の山」 マイナス金利が迫る活用 2016/02/17 本日の日本経済新聞より

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 16日の日経平均株価は続伸した。株式市場は世界金融危機の再来さえ織り込み始めたかのような底知れぬ恐怖からひとまず解放された。そして日銀はこの日、マイナス金利の実際の適用を開始した。手元のキャッシュが減価していく新たな世界の始まりだ。マイナス金利は投資家のみならず、日本企業が長年築き上げてきた「巨大な山」を動かすよう迫っている。

 「先週、トヨタ自動車の種類株をあと10倍買いたかったという会社の記事を読みましたけど、ちょっとヘンですよね? 株主は会社に有効な資金運用を期待しているわけじゃないのに」

 その男性はにこやかな表情でこう話を切り出した。名は丸木強氏。野村証券出身で、村上世彰氏が率いた「村上ファンド」の中核メンバーだった人だ。村上氏の起訴後は、ファンドの代表として投資家への資金返還の実務を取り仕切った。

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 その後は表舞台から一度身を引いたが2012年に自らのファンド、ストラテジックキャピタルを創設。大和冷機工業、日本デジタル研究所、宝印刷……。約100億円の運用資産をキャッシュリッチで業績が安定した割安株に投じる。

 割安株といっても投資する企業は保有する現金からみると飛び抜けている。業務用冷蔵庫大手の大和冷機は時価総額に匹敵する約460億円の現預金(72億円の長期定期預金を含む)を抱える。日デジタルも時価総額に対するネットキャッシュ比率が指折りの高さだ。

 その大和冷機が3月に開く株主総会が近づき、今月1日に丸木氏は年10円の配当を67円に引き上げる株主提案を提出した。

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 創業一族が約4割の株を握るため提案が賛同を得る可能性は低そうだが、丸木氏は株主提案は成人が選挙で投票するのと同じ義務だという。「アジアに出たりシナジーがある調理器具メーカーを買収したり、まずは成長投資にお金を使ってほしい。それでも使い切れない手元資金は株主に配当で返すべきだ」

 日本ではアクティビストによる余剰資金の還元要求はこれまで、特殊な株主による「強欲な要求」として他の投資家たちの賛同を得にくかったのは確か。ましてや企業をや、だ。

 だがマイナス金利という新たな日本の金融環境ではどうだろうか。かつてドイツの経済学者シルビオ・ゲゼルが提唱した「スタンプ貨幣」のように、持っているだけでキャッシュの価値は減価していく。「マイナス金利下では多額の余剰金融資産を保有する企業は罪深い存在になる」。みずほ証券の菊地正俊氏はいう。

 機関投資家も株主価値を向上させるために投資先に積極的に「ものを言う」ことが義務づけられた。資金を寝かせたままの企業に何も言わないとマイナス金利下で受託者責任を果たしていないとみられてしまう。

 上場企業がデフレ経済下でバランスシートに積み上げたキャッシュの山は100兆円の大台が迫る。その山の岩盤を形成するキャッシュリッチ企業が変革の波にさらされつつある。マイナス金利は日本の株式市場の風景を一変させる爆発力を秘めている。

(証券部次長 川崎健)



スクランブル 騒ぐ相場、守る投資家 逃避マネーは内需銘柄に 2016/01/07 本日の日本経済新聞より

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 「騒ぐ申(さる)年」の本領発揮か。米利上げや原油安、中国景気など昨年来の懸案に、新春相場は中東リスク、さらには北朝鮮の「核実験」まで加わった。日経平均株価は大発会の4日から21年ぶりとなる3日続落。この間の下げ幅842円は1991年(950円安)以来、25年ぶりの大きさだ。リスク回避姿勢を強める投資家。資金はどこに向かうのか。

 6日の相場の頭を抑えたのは初めは中国要因だった。朝方発表された2015年12月の非製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.2と過去2番目に低く、景気低迷を示唆する50割れ目前の水準。「中国の減速感が一層強まった」(大和証券の細井秀司氏)との見方から、鉄鉱石など海上荷動きの鈍化が懸念され海運株などが売られた。

 さらに円高の重荷も加わる。円相場が一時1ドル=118円台前半と約3カ月ぶりの円高水準を付けるや、自動車や電機など主力の輸出関連株に売りが膨らんだ。

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 そこに正午前飛び込んできたのが北朝鮮の核実験ニュースだ。日経平均先物はみるみるうちに1万8000円を割り込んだ。投資家の不安心理はいやが上にも高まる。日経平均株価の将来の予想変動率を示す「日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)」は24.71。利上げが決まった米連邦公開市場委員会(FOMC)直前の昨年12月15日以来の高水準になった。

 「どうにも外部環境が不透明すぎる」(国内投資信託)なか、それでも投資家が資金を振り向ける銘柄はある。例えば、東証業種別33業種中、30業種が下げるほぼ全面安の6日、逆行高を演じたのが、NTTだ。個別の買い材料が出たわけではない。地政学リスクの影響が小さい内需銘柄の典型として選ばれたもよう。

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 要は15年から続く内需・ディフェンシブ選好というなじみのテーマだ。昨年は世界中の低金利を背景に「債券代替」として、業績が安定しており、株価のボラティリティー(変動率)の小さい食品や医薬、鉄道などが物色された。

 その資金流入を構造的に加速する金融商品も登場した。最小分散型と呼ばれる上場投資信託(ETF)だ。米国に上場する「iシェアーズMSCI EAFE最小分散」など、日本株を組み入れる時価総額の大きい2本のETFの発行済み口数(株式数に相当)は約1億と、昨年倍増し時価総額は約8000億円に達する。組み入れ上位にはNTTドコモや西日本旅客鉄道(JR西日本)、武田薬品工業、オリエンタルランド(OLC)などが並ぶ。

 昨年来のメーンテーマに、年初からの地政学リスクで「逃避マネーの受け皿」という買い材料が加わった格好。既に昨年大幅に上昇した銘柄も多いが、「割高な株でも選定基準に合えば機械的に買ってくる」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の古川真氏)のが、このタイプのETFだ。医薬や食品のセクター平均PBR(株価純資産倍率)は2倍超と割高な水準だが、この地合いで資金流入が続く可能性がある。投資尺度が効かないという「リスク」にも目配りが必要だ。

(湯浅兼輔)



スクランブル 日本株、相対優位に暗雲 世界景気減速で利食い売り 2015/08/21 本日の日本経済新聞より

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 204日の日経平均株価は大幅続落した。中国株の下落が止まらず、これが東京市場の先物売りを招いた。世界的な景気減速懸念で主要国では金利低下も進む。リスク回避を強めるマネーは、企業業績を評価して相対優位にあった日本株も見限ることになるのか。

 「毎日、中国に振り回されうんざりしています」。大手証券のトレーダーは不機嫌そうな様子で話した。

 20日の相場が動いたのは午後。後場寄りに値ごろ感の買いでプラスに浮上したが、中国株が下げ足を速めると「手のひらを返したように先物にまとまった売りが出た」(トレーダー)。決算シーズンを終え、国内には買い材料が乏しい。買い向かう投資家はほとんどいなかったという。

 最近の日本株の下落について、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘氏は「海外投資家の換金売りの対象になっている」と解説する。新興国や米国株の下げがきつく、今年の値動きが良好な日本株を売って損失を穴埋めする動きが出ているとの見立てだ。

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 変調をきたす中国の悪影響は、日本と並んで相対優位を保ってきた欧州にも波及している。ドイツでは中国関連銘柄に位置づけられる自動車大手フォルクスワーゲン株が過去1カ月で約15%安。独DAX指数も調整色が濃い。

 株式を避けるマネーが向かうのは安全資産である先進国の国債だ。日本の10年債利回りは節目の0.4%を割り込み、債券買いに拍車がかかっている。

 米10年債利回りも同様の傾向にある。本来、米連邦準備理事会(FRB)の利上げが意識される現在の市場環境なら、長期金利は上昇するはず。動きが逆になっているのは「利上げ後の世界的な景気鈍化を織り込み始めているためだ」と、JPモルガン・アセット・マネジメントの重見吉徳氏は語る。「利上げするほど景気がいい」という自信を投資家は持てていない。

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 株式から原油までリスク資産が一斉に売られ、債券に向かうマネーの「リスクオフ」。その波にのまれ、日本株も本格的な調整局面を迎えるのだろうか。

 もっとも、極端な悲観に傾く必要はないかもしれない。長期に資金を運用する有力投資家は日本株への関心を失っていないからだ。

 世界有数の政府系ファンド、アブダビ投資庁(ADIA)は7月末、日本株の運用責任者として明治安田アセットマネジメント出身の黒田恒氏を招き入れた。世界に分散投資する有力投資家が、日本を重点市場に位置づけている証左だ。

 メリルリンチ日本証券が9月に東京で開く日本株セミナーには500人近くの海外投資家が参加を表明している。アジアや中東の政府系ファンドから欧米の年金基金までが名を連ねる。

 日本企業は米欧に比べて企業収益が好調で、投資指標も割高感に乏しい。企業統治の改善も加わり、世界の主要市場の中で株価は相対優位を保ってきた。

 リスクオフの波に無縁ではいられないが、日本固有のプラス材料が消えうせたわけではない。リスク回避の波にもまれつつも、海外の長期マネーを根付かせられるかどうかに、日本株の行方がかかる。

(川上穣)



スクランブル 売られすぎた電機株 中国リスクが独り歩き 2015/08/14 本日の日本経済新聞より

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 13日の日経平均株価は3日ぶりに反発した。中国人民銀行が人民元相場の安定方針を示唆し、過度な警戒感が薄れた。今週一気に高まった中国懸念を映して株価がさえない業種の代表格が電機株だ。だが電機各社の業績は好調で、経営陣からは強気の発言が相次ぐ。電機株の売られ方を見る限り、中国リスクが市場で独り歩きしている感がぬぐえない。

 「今の生産能力では足りないほど中国のスマートフォン(スマホ)向けの受注が伸びているのに」。TDK幹部は自社の株価の低迷を嘆く。2015年4~6月期の連結純利益は前年同期から2.3倍に拡大。スマホ向け部品を手掛ける受動部品事業の営業利益は最高益を更新したが、株価は7月末の決算発表日に比べて4%安に沈んでいる。

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 13日はさすがに反発したが、業種別日経平均の電機株は6月24日の直近高値の8%安(日経平均は1%安)の水準だ。7月に米アップルが公表した7~9月期の売上高予想が中国のスマホ需要の減速が主因で市場予想を下回り、これを機に電機各社の中国リスクが意識されるようになった。

 ただ電機各社の経営陣の肉声に耳を澄ますと、各社の中国事業の先行きに過度に悲観的になる必要はないことが分かってくる。

 26年ぶりの公募増資直後で注目を集めたソニーの4~6月期は純利益が過去最高を更新。吉田憲一郎副社長は「主力の画像センサーは中国のスマホ向けに需要が強まっている」と指摘する。中国メーカー向け売上高が倍増した村田製作所の藤田能孝副社長は「(7~9月期に向け)受注はさらに上向いている」と言う。

 各社の発言から読み取れるのは「多少景気が悪くても十分補える」という自信だ。その自信は、中国市場での「強い製品」と「強い顧客」の存在が支える。

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 電機各社は金融危機後の構造改革で稼げる事業を育成。需要変動に右往左往する家電は主力ではなくなった。実際、ソニーのセンサー、日立製作所の昇降機は中国景気に左右されず数量と利益とも伸ばしてきた。

 アルプス電気も同社のスマホカメラ用の手ぶれ補正機器の技術をまねできるのは中国には1社もいない。甲斐政志常務は「うちは普及品ではなく高級機種向けなので」と話し、中国リスクはどこ吹く風だ。

 「強い顧客」との関係も強みだ。中国のスマホメーカーは勝ち組と負け組が鮮明だが、中国の大半の顧客との関係を築いたTDKは「強い顧客向けを徹底的に伸ばす」(上釜健宏社長)戦略が好業績につながっている。それに加え、今の電機各社には円安や好調な米国という追い風も吹く。

 「売られすぎの銘柄が多い」。アバディーン投信投資顧問の窪田慶太氏はこう指摘し、「中長期視点から電子部品などで競争力のある銘柄を見直したい」と言う。確かに中国リスクは不気味だ。だが「森」を見すぎて「木」をおろそかにすると、成長シナリオを見誤って買い場を逃す恐れもあるだろう。

(田中博人)



スクランブル 中国耐性はついたのか 輸出株にも買いジワリ 証券部 荻野卓也 2015/08/07 本日の日本経済新聞より

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 6日の日経平均株価は一時200円超上昇する場面もあった。久々に主役を張ったのが輸出関連銘柄。1ドル=125円台に乗せた円安進行が追い風だが、それだけでもない。7月以降関連銘柄の頭を抑えてきた「中国リスク」に一定の耐性がみられることも一因だ。

 「まるでバーゲンセール」。ある国内大手運用会社のファンドマネジャーは6日、中国リスクで割安になった銘柄を積極的に拾ったと明かす。村田製作所や日東電工といった好業績にもかかわらず、中国不安を背景に7月以降大きく売り込まれた銘柄だ。村田製は7月2日に年初来高値を付けた後、5日までに23%も下落した。

 6日付で出たあるリポートも「中国関連株は売られ過ぎ」との見方をサポートする。ゴールドマン・サックス証券による「中国リスク 日本の利益サイクルを損なうほどの影響はない」だ。題名の通り、中国経済の失速は懸念されるほど日本企業の増益基調を損なわない、と主張する。

 計算はこうだ。まず前提の中国の2015年の国内総生産(GDP)成長率を年6.8%と置く。一方、東証1部企業の全売上高に占める中国比率を約5%と推計する。このメーンシナリオの場合、東証1部の1株利益(EPS)は16年3月期に23%増加するという。その業績モデルに「中国関連売上高が25%減」「同50%減」という極端なリスクを加えて計算し直しても、EPSは1割増という結果になるという。

 「中国売り上げが最悪のケースでも、一方でインバウンド消費を通じた日本企業の利益押し上げ効果が見込める」。

キャシー・松井チーフ日本株ストラテジストは指摘する。

 大和証券が5日時点でまとめた「リビジョン・インデックス(RI)」にも同様の傾向が見える。

 アナリストの15年度の業績見通し(QUICKコンセンサス)について、上方修正と下方修正のどちらが優勢かを示す。注目なのが海外売上比率30%以上の外需型の企業に対する見方だ。足元で上方修正優位のプラス圏に転じている。決算が進むにつれ「機械や素材など業績が振るわないとみられた中国関連株で好決算が増えた」(鈴木政博シニアクオンツアナリスト)。

 久々に125円台に乗った円安という追い風も加わった。米アトランタ連邦準備銀行のロックハート総裁が4日に「9月の利上げは適切」と発言。米国株安→日本株安の展開になるかと思いきや株式市場の反応は限定的で、円安だけが進んだ。これを受け「ヘッジファンドなどが日本株買いに動き出した」(メリルリンチ日本証券の阿部健児チーフ日本株ストラテジスト)との声もある。

 無論、中国リスクのような大きな問題の影響は簡単に結論付けられない。7日発表の米国の雇用統計次第では再び輸出株に売りが広がる展開も考えられる。とはいえ、6日は日経平均が一時、6月24日に付けた18年ぶり高値(2万0868円)まであと約50円に迫る場面もあった。輸出株をテコにした高値トライ機運が透ける。



スクランブル 米利上げ、警戒じわり 運輸や資源、投資家が敬遠 2015/07/24 本日の日本経済新聞より

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 米国の利上げに市場が身構え始めている。23日の日経平均株価は反発した。好決算を手掛かりに内需株が買われる陰で、さえない銘柄群がある。海運、陸運、商社、非鉄。すべて世界景気に業績が影響される業種だ。年内に米利上げが確実視され、市場では新興国経済の先行きに悲観的なシナリオがささやかれる。日本株への楽観論は根強いが、投資家は近い将来の波乱に警戒感を強めている。

 23日、日本郵船と三井物産、住友金属鉱山は逆行安となった。株価は昨年末に比べてマイナスか横ばい圏で、高値更新を視野に入れる日経平均と比べて明らかに出遅れている。これらの銘柄は世界の荷動きや商品市況に業績が左右される共通項がある。

 米国に目を転じても状況は似通う。世界中にネットワークを張り巡らせる総合物流大手UPSやフェデックスの株価は伸び悩んでいる。主要な物流株の値動きを示すダウ輸送株指数は9カ月ぶりの低水準にあり、高値更新が続くダウ工業株30種平均との乖離(かいり)幅が広がっている。

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 物流は「経済の体温計」だ。荷動きの状況は世界経済の実情を映し出す。日米の運輸株の低迷は「米利上げを契機に世界的に荷動きが鈍化することへの警戒」(バークレイズ証券)が背景にある。東京海上アセットマネジメントの久保健一氏は「利上げで株価のボラティリティー(変動率)上昇が予想される銘柄は買いにくい」と漏らす。

 利上げ時期の前倒し観測が強まり、この傾向に拍車がかかっている。日興アセットマネジメントは10~12月としていた利上げの予想時期を9月に見直した。三井住友アセットマネジメントの石山仁チーフストラテジストは「雇用など米国の景況感を考えると9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送る理由はない」と指摘する。

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 米利上げによりドルへの回帰が起これば、新興国から米国に資金がシフトする。実際、株や債券、通貨といった新興国の資産は売られ始め、実体経済への影響が懸念されている。

 株の乱高下に揺れる中国も経済成長の減速が警戒されている。鉄鉱石や石炭などを運ぶ鉄道貨物輸送量は6月は2ケタのマイナスだ。「鉄鉱石などの在庫は過剰」(みずほ総合研究所の玉井芳野氏)で、マイナス基調は当面続きそうだ。中国の資源需要が低迷し、商品価格の総合的な値動きを示すロイター・コアコモディティーCRB指数は6年ぶりの安値圏に沈む。

 中国経済がふらつく中で利上げが重なれば、日米欧も無傷ではいられない。富国生命保険の山田一郎氏は「新興国での事業比率が高い企業の動向は要注意」と警鐘を鳴らす。

 米利上げで日米金利差が広がれば円安が進み、そのクッション効果で日本株の下落リスクは相対的に小さくなる――。こんなシナリオで先行きを楽観視する投資家は少なくない。だが「世界の金融市場が動揺すれば、株を手放すリスクオフは一気に広がる」(富国の山田氏)。日本株の利上げ耐久力を過信すると手痛いしっぺ返しをくらいかねない。

(湯浅兼輔)



スクランブル 不動産、中国リスクの影 富裕層マネーの退潮懸念 2015/07/10 本日の日本経済新聞より

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 朝安後、大きく買い戻された9日の東京株式市場。乱高下する上海株相場に引きずられる日本株の動きは改めて「中国リスク」を市場関係者に意識させた。中国からの観光客の需要減退を懸念する見方が広がるなかで、もう一つ、気になる問題がある。中国マネーが席巻する不動産市場と不動産株だ。

 「日本のインバウンド需要はどうなるのか」

 クレディ・スイス証券の日本株デスクには9日も海外投資家からの問い合わせが相次いだ。「外国人が売買できない中国株の代替として日本株の先物が売られている。日本の強いファンダメンタルは変わらないのに」。バジリアス・ダン氏はもどかしげだ。

 日本株のトレーダーは終日、上海株の動向に振り回された。日経平均は一時600円超下げる場面があったが、その後上海株の上昇につれて反発して引けた。

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 中国関連株の値動きは荒々しい。中国人観光客が買い物に訪れるラオックスの株価は一時15%安と急落後、午後にかけて買い戻され、結局2%安で引けた。インバウンド関連銘柄に詳しい野村証券の広兼賢治アナリストは「上海株の急落で『爆買い』が鈍る可能性がある」と危惧する。

 実は、もっと影響が懸念されそうな市場がもう一つある。中国マネーが流れ込む不動産だ。

 「いい物件があれば、日本で8000万円ぐらいのマンションを買いたい」

 40歳代の上海在住の女性弁護士は9日も強気だった。日本を訪れる中国人が好むのはブランド品や化粧品、日用品だけではない。都心のマンションや一戸建ても大人気の商品だ。

 中国の富裕層の多くは高度経済成長の中で不動産の転売を繰り返し、複数物件を所有している。中国国内では不動産価格の抑制策がとられているため、余剰資金は株式や海外の不動産投資に向かってきた。東京五輪を控え、彼らの目に日本の不動産は割安に映る。

 中国人が日本で不動産を買う際は全額現金で払うケースが多い。個人が中国から資金を海外に持ち出すのは難しいとされるが「海外企業設立や留学資金など名目を変える方法はたくさんある」(不動産関係者)。

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 都心のマンション価格はリーマン・ショック前と同じ6000万円台に上昇した。「買い手は節税対策の日本の富裕層と海外マネーが中心」(野村証券の福島大輔アナリスト)という不動産市場で「都心立地を好む中国人客は最後の買い手」(大手不動産会社幹部)なのだ。

 上海株相場の崩落が予感させるのは、様々な経路で日本の不動産に流れ込んでいる中国の富裕層マネーが細る懸念だ。

 14年度の日本の金融機関の不動産向け融資は12兆2544億円とバブル期の89年度を超えた。日本の都市部の不動産価格の上昇は続かないのではないか。そんな懸念を先取りするかのように不動産大手の株価は伸び悩み、業種別日経平均の「不動産」も日経平均を下回っている。不動産株の鈍い動きは中国富裕層マネーの陰りを映しているのかもしれない。

(戸田敬久)



スクランブル 海外発「第3のリスク」 原油安、米業績の重荷にも 2015/07/08 本日の日本経済新聞より

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 泥沼化するギリシャに中国の株安。海外発の2つの悪材料に揺れる東京市場だが、7日の日経平均株価は264円高と前日の下落幅の6割を取り戻した。だが、新たに気になる動きもある。海外発「第3のリスク」にもなりかねないのが6日に急落した原油価格だ。日本経済にはプラスの原油安も、世界経済のけん引車、米国の企業業績の重荷となる。折しも8日から本格化する米国企業の決算発表の行方が注目される。

 朝方から幅広く買い戻される中、特に買いが目立ったのが原油安の恩恵を受ける銘柄だ。ANAホールディングス、日本航空がそろって年初来高値を更新。業種別日経平均の「電力」と「パルプ紙」が3%前後上昇した。食品株の一角も物色された。

 手掛かりが原油先物の国際指標、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の下落だ。ギリシャ問題に歩をそろえるように6月下旬から下げ足を速めたWTIは、6日には1日で8%弱も急落。約3カ月ぶりの安値を付けた。投資ファンドなどがリスク回避の動きを強めている。

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 日本株にはどう影響するのか。この日関連銘柄が買われたように、基本的には原油安は特に内需企業にとって追い風。円安を相殺し輸入コストを抑える。ガソリン価格の値下がりを通じ消費も刺激される。

 だが、専門家は「原油がさらに大きく下落すると新たなリスクになりかねない」(みずほ投信投資顧問の柏原延行氏)と警戒する。“震源地”が米国だ。6日のダウ工業株30種平均は続落し、中でも石油大手のエクソンモービルとシェブロンが1%前後下落するなど、ダウ平均(0.26%安)と比べても下げがきつかった。「原油急落で石油大手の業績下振れ懸念が高まり、ダウ全体を押し下げた」(大和証券の壁谷洋和氏)という。

 米国では石油大手などエネルギー関連の企業業績全体に与える影響が大きい。これから決算発表が始まる主要企業の2015年4~6月期決算の市場予想は、純利益が前年同期比3%減と、5年9カ月ぶりの減益見通し。エネルギー関連が6割減と大幅減益になり足を引っ張る。

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 米国では決算の着地が事前予想を上回ることが多く「今回も上振れの可能性は高い」(壁谷氏)。とはいえ、回復基調にあった原油の急落は次の7~9月期の業績圧迫要因となる。10~12月期でのプラス転換というシナリオまで崩れるようだと、年初から何とか横ばい圏で推移する米国株の強い下押し圧力となる。

 現状では、金融政策の方向の違いもあり、日米株価の連動性は薄れている。「日本株への波及は当面は限定的」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘氏)との声が大半。ただ、リスクに敏感になったマネーが資産間の移動を通じて米国株を大きく揺さぶる展開になれば話は別。強い米経済は日本企業の好決算見通しの大前提だ。

 8日の非鉄大手アルコアを先頭に米企業の4~6月期決算発表が始まる。ギリシャ、中国を注視しつつもこちらからも目が離せない日が始まる。(伊藤正倫)



スクランブル 「理想より実力」見極め 投資家、財務戦略・決算を重視 2015/07/07 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマーケット総合1面にある「スクランブル 「理想より実力」見極め 投資家、財務戦略・決算を重視」です。





 ギリシャ情勢は混迷を深め、中国株も不安定な動きが続く。株式市場を取り巻く外部環境への楽観が一変し、投資家の目線は厳しさを増す。企業統治改革に期待した「理想買い」の局面は株主総会で一巡し、本当に実力を高めた企業を選別する色彩が強まってきた。

 全面安の6日の市場で、ひときわ下げが目立ったのが3日に公募増資を発表した東ソーだ。11%安と希薄化分の約8%を上回って下げた。「総合化学で2番目に財務内容が良いのに増資が必要なのか」(バークレイズ証券の山田幹也アナリスト)などと、疑問の声が噴出したのだ。

 東ソーの自己資本比率は6年前に20%まで落ち込んだが、その後の利益の積み上げで38%まで回復してきた。一方で、今期の年間配当は前期と同じ10円を予定し、配当性向は14%どまり。還元ブームの中で引き上げ余地は大きそう――。こんな株主配分の拡大期待を先回りして織り込む形で株価は堅調だったが、正反対の財務戦略である増資が出てきて、期待がはげ落ちたわけだ。

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 日経平均株価を2万円まで押し上げたのは、海外投資家の日本企業の変革への期待だった。実際、自己資本利益率(ROE)を目標に掲げる企業が増え、株主還元も増えてきた。

 もっとも、期待が先走りした面は否めない。株主総会が終わり、今後は「きちんと実績を示せるかどうかで銘柄の取捨選択が始まる」(三井住友アセットマネジメントの小林洋シニアファンドマネージャー)。

 その第一関門が7月下旬から本格化する2015年4~6月期決算発表だ。証券アナリストらは内容の事前予想に力を入れ、投資家は保有すべき銘柄を探そうと目を凝らす。

 6日は堀場製作所が2%高と逆行高を演じた。ゴールドマン・サックス証券は「4~6月期の業績が会社計画に対して上振れ、15年12月期通期の会社計画も上方修正含み」などと指摘した。ここ2週間、アナリスト予想に株価が敏感に反応する例が多く、JVCケンウッドや東洋紡など、大幅安となる銘柄も目立った。

 上場企業全体のROEは前期で8%強と、海外の機関投資家などが求めるとされる水準になってきた。ここから、さらに有望な銘柄を絞り込むため、利益の「質」に着目する市場関係者も増えた。

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 SMBC日興証券は会計上の利益と現金収支の差に注目する。「アクルーアル」と呼び、2つの差が小さいほど現金の裏付けを伴った良質な利益であることを意味する。00年以降のデータでみると、アクルーアルが小さい企業ほど「会社計画に対して業績が上振れしやすい」という。

 スズキは、社長交代とともに発表した中期経営計画が力不足とみられ、翌日の株が売られた。市場は、控えめな目標は自信のなさの表れと受け止める。東芝の不適切会計問題も影を落とす。銘柄選別の物差しは、どんどん厳しくなっている。

(松崎雄典)