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ゼミナール 内部留保の解剖(2) 企業、借入金に頼らず 2016/02/19 本日の日本経済新聞より

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 企業は、金融機関からの借り入れや、社債・株式といった有価証券の発行によって資金調達し、事業活動の費用に充てている。これに加え、毎期の売り上げから原材料費や賃金などの費用や配当を支払った後に残る「留保利益」も原資となる。

 財務省の法人企業統計で金融業・保険業を除く企業の2014年度の資金調達を貸借対照表からみよう。金融機関からの借入金が331兆円、社債発行が56兆円、株式発行による資本金および資本剰余金が244兆円、留保利益の蓄積である内部留保(利益剰余金)が354兆円だった。とりわけ留保利益が事業活動の原資になっている。

 1990年ごろまで、企業の資金調達は金融機関からの借り入れが中心だった。内部留保が顕著に増え始めたのは90年代後半からだ。90年前後に不動産や株式など資産価格のバブルが崩壊し、企業は債務・設備・雇用という“3つの過剰”を抱えた。経営の最優先課題は過剰の解消となった。金融機関も大量の不良債権を抱えて貸出余力が低下し、貸し渋りや貸しはがしが社会問題化した。

 企業は借り入れを減らし留保利益を増やして、財務の健全性を高めるようになった。企業全体の自己資本を総資本で割った自己資本比率は05年度に30%を超えた。

 その後も07~08年の世界金融危機や11年の東日本大震災で金融システムが不安定になり、企業の資金繰りに影響した。こうした経験から、企業は自分で稼いだ利益を事業活動の原資とする傾向を強めている。自己資本比率は14年度、39%になった。資金調達手段の変化を背景に内部留保は増加した。

(大和総研)



ゼミナール 日本財政は大丈夫か(6) 再建、税収の自然増頼み 2015/12/29 本日の日本経済新聞より

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 アベノミクスの「新3本の矢」の1本目は「希望を生み出す強い経済」だ。2020年ごろに名目国内総生産(GDP)600兆円達成を掲げる。これまで目標としていた名目成長率3%を5年間続けると、600兆円を達成できる。

 政府は名目成長率3%の「経済再生ケース」と2%の「ベースラインケース」で中長期の財政を試算。24日に閣議決定した16年度予算案では税収を57兆6千億円とする。3%の前提では20年度に約70兆円に増える。国と地方を合わせた公債残高のGDP比は14年度の195.6%から20年度に184.2%に減る。

 名目成長率が平均2%だと、公債残高はGDP比で膨らみ続け、20年度には198.8%になる。こうなった場合、今後の財政再建をどうするかという議論はされていない。現政権は、高成長下での税収の自然増により財政再建を進めようとしていると言える。高い名目成長率を前提とする財政見通しは、財政危機の過小評価につながる。

 海外の中期財政見通しはどうか。英国の予算責任局と米国の行政管理予算局の公表資料には、民間予測のGDP伸び率と消費者物価見通しの一覧表が、それぞれの局の見通しと比較する形で掲載されている。予算担当局と民間で大きな違いはなく、米英では中立的な成長率を前提として財政見通しを作成している。

 16年度予算で前提としている名目成長率は3.1%で、民間予測の平均2.1%と比べ甘い見通し。成長戦略としての高めの成長率の“目標”と堅実な財政再建に向けた“前提”は、区別して考えるべきだろう。

(日本経済研究センター)



ゼミナール 中国の環境を考える(4) 国予算割合、5年で6倍 2015/11/11 本日の日本経済新聞より

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 中央政府は2008年、国家環境保護総局を環境保護部(省)に昇格し、環境保全重視の姿勢を示した。国の予算のうち環境保全関連は09年に0.25%だったが14年には1.5%に拡大。汚染につながる行為を取り締まる権限が強化され、予算も確保しやすいようだ。ただ、14年の中央・地方合計の環境保全予算は国内総生産(GDP)比0.6%にとどまる。

 環境保護省の管轄として、地方政府の省と市・県レベルに環境保護局がある。環境保護省・局の主な責務は(1)環境保全の法整備(2)環境汚染の実態を把握すること(3)取り締まりである。

 環境保護省・局は、環境アセスメントである「環評」で「一票否決権」を持つ。投資計画は環境保護省・局が同意しなければ実行できない。

 しかし地方の環境保護局は、行政事務管理や人事で地方政府の影響を強く受けることが多い。地方政府は汚染源の企業でも納税者なので本格的に取り締まりたくない。

 近年、同局の姿勢は少しずつ変化している。広東省、浙江省、江蘇省などで水質汚染、化学工場の建設とごみ焼却炉の設置に対し住民の抗議行動が活発化。同局は住民の要望に応えざるを得なくなった。ただ、抗議行動が集中する大気や水質など目に見える汚染は対策が講じられても、重金属による土壌の汚染など見えない汚染は十分な対策が講じられない。

 行政の問題は環境保護省・局に対する監督監視が不十分なことだ。政策の中で環境保全がどんな位置づけなのかを検証すべきだ。行政の透明性が求められている。

(静岡県立大中国環境問題研究会)



ゼミナール 中国の環境を考える(3) 環境アセスメントに抜け道 2015/11/10 本日の日本経済新聞より

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 中国では企業が投資する際、政府環境保護局の「環評」(環境アセスメント)に合格することが必要だ。中国の環境基準は、世界保健機関(WHO)および先進国の環境基準を参考に定められた厳しい内容である。例えば自動車燃料の品質基準は、微小粒子状物質「PM2.5」を1キログラムあたり5ミリグラム以下に抑えるなどの欧州の「ユーロ5」と同様の「国5」基準が導入されている。

 問題は環境基準の順守が徹底されていないことだ。「環評」も形骸化の傾向がある。

 地方政府にとって企業誘致は首長の業績に関わる重要事項だ。静岡県立大中国環境問題研究会のヒアリング調査で、ある沿海都市の商務担当の副市長に「環境に多少有害な企業が投資することもできるか」と尋ねると「環評に心配はいらない。私が何とかする」と答えた。

 環境アセスメントに合格さえすれば厳しく監視されないのが現状だ。汚染源の企業は、アセスメントに対処し一時的に対策を取るが、合格後は汚染物質の排出を続ける。環境関連の国際標準規格であるISO14000を取得しても基準を守らない企業も少なくない。

 最も深刻なのは業者と環境保護局の幹部との癒着だ。研究会の調査では、地方政府による汚染源企業の保護が環境汚染をもたらしているとの指摘が専門家から寄せられている。

 地方政府は経済発展が最優先で環境保全を二の次にするが、中央政府は景気減速を「新常態」として受け入れる姿勢だ。これを地方政府にも浸透させる必要がある。

(静岡県立大中国環境問題研究会)



ゼミナール 米国の強さと課題(10) 通商協定阻む国際化の遅れ 2015/07/01 本日の日本経済新聞より

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ゼミナール 米国の強さと課題(9) 2つの超大国 並び立つか 2015/06/30 本日の日本経済新聞より

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 超大国としての米国の位置づけが揺れている。中国が台頭し、迫っているためだ。国際通貨基金(IMF)は、2020年の中国の国内総生産(GDP)が世界の16%に達すると予測している。米国(23%)には及ばないが、1990年の2%からは大きな躍進である。

 両国の外交姿勢は、対照的である。オバマ米大統領は「米国は世界の警察官ではない」と明言し「対外関与に消極的」との印象が世界に広まった。中国は、主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に主要な欧州諸国の参加を得るなど、米国中心の秩序を脅かそうとするかのようだ。

 世界の世論は、超大国の交代を意識する。14年に米調査機関のピュー・リサーチ・センターが20カ国で行った世論調査では「中国が米国の超大国の座に取って代わる」「すでに取って代わった」との回答が「取って代わらない」との回答を計20%近く上回った。両者が拮抗した08年と比べると米中逆転は、世界の共通認識になりつつある。

 米国の対中観は割れている。米外交問題評議会が15年3月に発表した報告書は「中国の成功は米国の国益を損なう」として、アジア地域で「意識的に中国を除外した」貿易協定を結ぶなど、断固とした対応を求めた。一方で、同年5月には、ルービン、ポールソンという2人の元財務長官が、米中の協力こそが「世界の様々な難問を解決する最大の希望である」として、両国の共存共栄を呼びかけた。

 2つの超大国は、並び立つのか。米国のみならず、世界にとって大きな問いかけだ。

(みずほ総合研究所)



ゼミナール 米国の強さと課題(5) 投資過少で実質金利低下 2015/06/24 本日の日本経済新聞より

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 米国で企業が資金を抱え込み投資が不足しているという懸念は、経済学者らの注目を集めている。発端は2013年秋のサマーズ元米財務長官の講演で「長期停滞論」として知られている。

 サマーズ氏によれば国内で投資と貯蓄どちらの需要が高いかによって、意思に反する失業がない「完全雇用」が実現するための「実質金利(均衡実質金利)」が決まる。貯蓄が多すぎれば実質金利は下がる。米国は慢性的に貯蓄過剰、裏返せば投資が過少で、長い間、実質金利が大幅なマイナスの可能性があるという。そうした状況では伝統的な金融政策で景気を刺激することは困難で、金融バブルを生むだけと警告する。

 さらに投資には需要と供給の両方に影響を与える「二面性」がある。実質金利の大幅な低下に対処せずに投資不足を放置すればどうなるか。設備投資需要が落ち込んで足元の景気低迷をもたらすだけにとどまらず、資本ストックの蓄積が進まずに供給が制約されて、潜在成長率が下がる。米議会予算局の推計では、投資不足が一因で米国の潜在成長率は鈍化している。

 サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁らの推計でも実質金利は下がっており、ここ数年はゼロ近傍。イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は今後の金融政策について、実質金利がゆっくり持ち直すのに合わせて利上げペースを調整するとの考えを示している。

 なぜ実質金利は極めて低いのか。そして必要な処方箋は何か。2つの論点を巡り、サマーズ氏の前に強力な討論相手が登場した。バーナンキ前FRB議長が自身のブログで異を唱えたのである。

(みずほ総合研究所)

ゼミナール 米国の強さと課題(3) いくつもの「大国」の顔 2015/06/22 本日の日本経済新聞より

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 「世界の工場はどこか」と問われれば、多くの人は中国と答えるだろう。だが実は、米国こそ世界一の工業国、モノづくり大国である。国連によれば、2013年に米国の製造業が生み出した付加価値額(MVA)は05年を基準とした実質値で1.7兆ドルにのぼり、世界シェアは2割近くを占める。中国は1.6兆ドルで、米国に次ぐ2番手である。その後には、日本、ドイツが続く。

 米国は世界最大の農産品輸出国でもある。国連によれば12年の世界輸出シェアは10%を超え、6%前後で続くオランダ、ブラジル、ドイツなどを大きく引き離している。現在進められている環太平洋経済連携協定(TPP)交渉では、米国はこうした農業大国としての顔を見せる。

 資源大国、金融大国など、米国はほかにも複数の大国の顔を持つ。

 19世紀半ば、現在のカリフォルニアでは金の採掘ブーム(ゴールド・ラッシュ)が起きた。現在も米国は、金の生産量では中国、オーストラリアに次ぐ規模を誇る。

 近年、米国はサウジアラビアやロシアを抜いて世界最大の産油国となった。シェールと呼ばれる地層に含まれる原油の生産が急増したためだ。不満を抱いた石油輸出国機構(OPEC)は昨秋、世界の原油市場の需給調整役を放棄し、原油価格の暴落につながった。

 米国が金融大国であることは多くの人が知っていよう。世界を揺るがせた08年のリーマン・ショックの傷は、大卒者の低賃金雇用といった形でいまだに残る。その一方で、すでに株式市場や債券市場では新たなバブルの芽生えすらみられる。

(みずほ総合研究所)

2014/12/17 本日の日本経済新聞より 「ゼミナール 観光立国への挑戦(1) 訪日客拡大へ戦略構築課題に」

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 2013年の訪日外国人旅行者数は初めて1千万人を突破し、今年も昨年実績を上回る勢いで増加傾向が続いている。今年第3四半期の訪日外国人旅行消費額は約5500億円となり、年間では2兆円規模も視野に入る。04年には赤字幅が3兆円に近かった旅行収支も改善が進み、今年4月には単月で約44年ぶりの黒字となった。

 インバウンド(訪日)旅行拡大の要因としては、近隣諸国などの経済成長、為替水準の変化、ビザ要件の緩和、航空ネットワークの充実などが挙げられるが、03年以来官民一体となって推進してきたインバウンド振興策の成果も大きい。

 観光立国の実現は、日本再興戦略にも盛り込まれており、政府は20年に2千万人、30年に3千万人の目標を掲げ、インバウンド旅行拡大に向けた取り組みをさらに進める方向にある。

 国連世界観光機関によれば、1950年に2500万人程度だった世界の国際旅行者数は、既に10億人超の規模に拡大しているという。同機関は今後も年率平均3.3%の増加を予測しており、20年には14億人、30年には18億人程度の規模になると見込んでいる。

 この予測に従えば、世界の国際旅行者数は、20年に4割増程度、30年に8割増程度になる。一方、日本は20年に13年の2倍規模、30年には3倍規模のインバウンド旅行者数を目指しており、世界動向を上回るペースの拡大が必要になる。

 日本が目指す高い目標を達成するためには、これまで以上に効果的な戦略を構築し、多方面の連携や協働を進めることが求められよう。

(大和総研)

2014/11/19 本日の日本経済新聞より 「ゼミナール 岐路に立つ中国経済(10) 「法の支配」の実現には課題」

今日の日経注目記事は、日本経済新聞14版の31面(経済教室)にある「岐路に立つ中国経済(10)「法の支配」の実現には課題」です。





 習近平政権は発足前後から、「中国の夢」とするスローガンを掲げている。過去の指導者の理念に比べて平易な言葉だけに、一般にも広く知られているもようだ。

 しかし、その具体的内容となると様相が異なる。10月に開催された党中央委員会第4回全体会議(四中全会)において、指導部は政策運営に「法治」を重視する姿勢を強調した。

 「人治的」ともいわれる中国の政策運営において、「法治」が西側諸国の考える「法の支配」と捉えられれば望ましい。他方、中国では共産党が政府を指導(領導)する関係にあり、「法治」の徹底は党指導部や中央の権限強化につながる可能性も考えられる。

 経済面では法整備を通じてマクロ経済環境の調整と市場の管理監督を強化する方針が示された。さらに、公平で競争的な市場整備を図るなど、わが国をはじめ同国への進出企業にはプラスの効果も期待できる。ただし、党中央の法解釈により環境が激変するリスクもある点には留意が必要だ。

 国内外の環境変化に伴い、中国経済には様々な課題が噴出しているが、これらを一度に解決することは容易でない。習政権はこのところ、経済状況が「新常態(ニューノーマル)」を迎えつつあるとの見方を示し、構造改革の必要性を周知させる姿勢もみえる。

 現指導部の舵(かじ)取りの行方は、中国経済の浮沈のみならず、世界経済の動向を左右する大きな岐路に立っているといえよう。

(この連載は第一生命経済研究所・主任エコノミストの西浜徹が担当した)

=この項おわり